おぼんろ『ビョードロ』開幕!末原拓馬「人生を変える物語」

当ページには広告が含まれています

末原拓馬率いる劇団おぼんろの『ビョードロ~月色の森で抱きよせて~』(再演)が、2019年2月14日(木)に東京・新宿FACEにて開幕した。本作は、大人のための寓話を物語り続けて来たおぼんろが全身全霊をかけて紡ぐ、美しくも儚い愛の物語。2013年の初演では、追加公演を含む全26ステージで2,097人を動員した。

客席と舞台を分けない独自のスタイルで上演を続けるおぼんろだが、そのスタイルは今回も変わらない。舞台中央を囲むように作られた客席は、舞台がまさに目と鼻の先のいわゆる“かぶりつき”もあれば、全体が見渡せる椅子席もあり、参加者はそれぞれが座りたい席で物語を堪能する。参加者とは、他公演で言うところの観客にあたるが、おぼんろの公演では劇場を訪れた人は公演の”参加者”と呼ばれ、物語の一員として迎えられる。

今回の語り部(キャスト)には鎌苅健太、黒沢ともよのほか、末原、わかばやしめぐみ、さひがしジュンペイが名を連ねているが、彼らは客入れ中も客席の間を歩き回り、時には話しかけてきたりと、参加者は劇場に入った瞬間から絵本の表紙をめくるような高揚感を体験することだろう。

(以下、物語・配役について触れています)

『ビョードロ』

【あらすじ】
ユスカとタクモはビョードロ。ビョードロと言うのは、鬱蒼とした森の奥底に住まう民の名前で、彼らは「病原菌」を作り出す技術を持っており、何百年もの間、忌み嫌われてきた。作られた病原菌は細菌兵器として戦争や政治に利用されることが常であった。

街に暮らす金持ち、ジュペンの依頼により作られた一体の病原菌は、ジョウキゲンと名付けられた。彼は彼なりに無邪気に意気込み、自分を造り出したビョードロを喜ばせるため、より凶悪な病原菌になろうとし続ける。手を触れればどんな者でも苦痛を伴わせて殺してしまうジョウキゲンは、次第に、自分がある願いを抱いていることに気付く。しかしそれは、絶対に絶対に叶えられてはならない願いなのだった・・・。

『ビョードロ』

ユスカ役の鎌苅はひたすらに役をまっすぐに演じ、衣裳やメイクだけでなく劇場のすべてのエネルギーを味方につけて、解き放たれたような演技を披露。タクモ役の末原の発する一音一音には、台詞のとおりだけではないたくさんの意味が丁寧に込められており、劇場の空気と参加者の心を切なく震わせる。

『ビョードロ』

さひがし演じるジュペンは、登場人物の中でも数々の葛藤を抱える複雑な役どころ。父親であり、街の権力者もであるジュペンの優しくそれでいて重厚な立ち姿は、劇場のどこにいても思わず目で追ってしまう。その娘であるリペン役の黒沢は、表情や台詞や動きを感じたままに剥き出しに表現。リペンの揺れ動く心の変化を参加者に見せつけた。またユスカ、タクモとの過去の回想シーンも必見だ。

わかばやし演じるジョウキゲンは、名前のとおりまさに上機嫌。歌い、踊り、「ウシャシャ」と無邪気な笑顔を見せる。大きな展開を見せる物語後半のジョウキゲンの叫びは、参加者の胸に鋭く突き刺ささることだろう。

『ビョードロ』

また、本作を語る上で欠かせないのは、新しく加わったムーブメントアクターの存在。全日本アクロ体操競技選手権で3度も優勝を重ねた武子展久、世界バトントワーリング選手権2年連続の団体金メダリストの渡辺翔史、上海国際映画祭など国際的に知られるコントーションのスペシャリスト茉莉花、ももいろクローバーZのLIVE公演などで活躍するダンサーRina.ら第一線で活躍する彼らの動きは、参加者の想像を超えた肉体の美しさをその目に焼き付ける。指先、つま先まで神経を張り巡らせたムーブは、その影さえも幻想的であった。

『ビョードロ』

この物語で描かれる“愛”は一つの色をしておらず、それぞれの登場人物の“愛”ゆえの気持ち、言葉、行動はバラバラだ。しかし、大切な人を守りたい、目を見て話がしたい、抱きしめたいという彼らの思いは、ひたむきで痛々しいほどに切ない。参加者は愛することの喜び、そして愛した人に愛されることの幸福に改めて気付かされることだろう。その日その時に集った参加者と共に、月色の森での出来事を見届けてほしい。

以下、初日を迎えた末原のコメントを紹介。

◆末原拓馬(作・演 タクモ役)
素晴らしい時間になるだろうとは思っていましたが、初日は想像以上の感動があり、自分たちでやってきたことながら、正直とても驚いてます。参加者のことを改めて仲間だと思えましたし、物語りが完成したな、最後のピースが揃ったな、と感じました。この経験を共にした僕たちは、こらからも物語を紡いだ思い出を楽しく語り合えることでしょう。みんなの人生も、僕自身の人生をも変えるような物語りを紡いでいます。勇気を持って一歩踏み出して、ぜひ参加してください。

おぼんろ第17回本公演『ビョードロ~月色の森で抱きよせて~』は2月14日(木)から2月17日(日)まで東京・新宿FACEにて上演。

【公式HP】https://www.obonro-web.com/
【Twitter】@obonro

(撮影/MASA、取材・文/エンタステージ編集部)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

エンタステージは、演劇初心者からツウまで、演劇に関する情報、ニュースを提供するサイトです。サイトを訪れたユーザーの皆さんが、情報をさらに周囲に広めたり、気になる作品や人物などを調べたり・・・と、演劇をもっと楽しんでいただける情報を発信していきたいと思います。

目次