シェイクスピア不朽の名作であり、古今東西の俳優たちがその頂を目指してきた四大悲劇の一つ『ハムレット』。2026年、この巨大な山嶺に、新時代の歌舞伎俳優・市川染五郎が挑む。
祖父・松本白鸚、父・松本幸四郎が歩んだ道を、若干20歳(上演時は21歳)の染五郎が、世界的巨匠デヴィッド・ルヴォーの演出のもと、當真あみ、石黒賢、柚香光らというジャンルの垣根を超えた顔ぶれと共に、どのように『ハムレット』を解釈するのか。
約100名の一般オーディエンスが見守る中、協賛である「ブシュロン」の華やかなジュエリーを身にまとって登場したキャスト陣の口から語られた、作品への意気込みや現在の心境などをレポートする。

デヴィッド・ルヴォー×市川染五郎で構築する2026年版の『ハムレット』
『ハムレット』は、父を殺され、母を奪われた王子の復讐劇であると同時に、人間が抱える根源的な「孤独」と「問い」を描いた作品だ。
今回、演出を託されたのは、演劇界の巨匠デヴィッド・ルヴォー。彼はこれまで、古典を現代的な感覚で再構築し、観客の心に直接訴えかける演出で世界を虜にしてきた。リアルを追求し、過去と現在、生と死といった相反する要素を繊細に表現する名匠の手によって、誰もが知る悲劇を、時代劇ではない血の通った“現代の物語”として再構築される。
市川染五郎、祖父・松本白鸚から譲り受けた「リング」と共に三代の絆を背負う

会見の冒頭、まず『ハムレット』という作品への想いを口にした染五郎。「『ハムレット』という作品は、私の祖父(松本白鸚)、父(松本幸四郎)も演じており、本当にとても大切な作品です。その作品に挑戦し、第一歩を踏み出せることをとても嬉しく思っております。ルヴォーさんの演出を受けての稽古はこれからですが、すでに公開されているポスターからも『今までのハムレットとは少し違うな』と感じていただけると思います。私自身も楽しみにしています」と、静かな熱を込めて挨拶した。
特筆すべきは、この日、染五郎の指で鈍い光を放っていた指輪だ。それは、祖父がかつてハムレットを演じた際に身につけていたものだという。直接譲り受けたというその指輪を、染五郎はお守りとして大切に持参しており、「本番でもつけられたらつけたいなと思っておりまして。お守り代わりのような感じで今日も身につけさせていただいております」と、伝統を文字通り“身に纏い”ながら、自分にしかできないハムレットを模索する覚悟の深さを感じさせた。
また、出演に対して、祖父や父からは具体的な演技指導というよりも「最後の決闘シーンのために『フェンシングやらなきゃね』とだけ言われました」と微笑ましいエピソードを明かす一幕も。
「歌舞伎と宝塚は似ている」異ジャンルの才能が集結

染五郎を支え、あるいは対峙するキャスト陣もまた新鮮な顔ぶれだ。悲劇のヒロイン・オフィーリアを演じる當真は、今回が初めての舞台出演。「出演が決まってから、1日1回は思い浮かべるぐらい緊張していたんですが、皆様とお会いして、素敵な皆様と稽古をして舞台に上がれることが楽しみです。経験豊富な皆様からたくさん吸収させていただけたらと思います」と語るその瞳には、未知の世界への好奇心が輝く。
また、以前ドラマで共演していた上白石萌音が出演する舞台を観にいき、舞台出演することが決まった旨を報告したところ、上白石から「楽しんで。緊張すると思うけど、そういう空気も含めて、自分の中でガチガチに固めずにいろんなことを柔軟に受け止められたらいいよ」とアドバイスをもらったと明かした。

一方、復讐の対象となる叔父クローディアスを演じる石黒は、自身のキャリアを振り返りながら「人生は本当にわからない。まさか私がシェイクスピア作品に出演することになるなんて思いもしませんでした。共演者も演出家も初めて尽くしの現場です」と感慨深げ。「誤解を恐れずに申し上げればシェイクスピア作品に漠然と難しい印象を抱いていた時もありました。しかし、言葉の使い方が素晴らしく、メメントモリが底流に流れている作品。重い責任を負っていると思いましたが、死ぬ気でがんばります」と不退転の決意を滲ませた。

そして、母・ガートルード役の柚香は、宝塚歌劇団での華々しいキャリアを経て、本作が初めて挑むストレートプレイとなる。柚香は、「宝塚を退団後、鬼だったり、いずれ王となる女子高生として戦ったりと、剣を振る役が続いていたのですが(笑)」と微笑みながら、ハムレットの役年齢が30歳前後という説に触れ、「ハムレットと私は実年齢がほとんど一緒なんですが、ガードルートは44歳ぐらいと言われています。一回りも違う母親役をどう演じるのかが課題だと思っております。柚香に任せてよかったと言っていただけるように励んでまいります」と新境地への意欲を見せた。
また、「歌舞伎と宝塚は似ている」と言う染五郎に対して、「何か特別な、二人でしか築けない親子関係を作っていけるのではと感じております」と期待を投げかけていた。

ブシュロンの輝きが解き放つ、役者たちの「内面」
今回の会見を彩ったのは、キャスト全員が身に纏った「ブシュロン」のハイジュエリーだ。それぞれの装飾が、単なる美しさを超えて役作りの一助となっている様子が伺えた。
染五郎は、昨年パリの本店とアトリエを訪れた際の経験を振り返り、若い職人たちが伝統を重んじつつも瑞々しい感性で命を吹き込んでいる姿に感動したという。「伝統がある格式のある重みを感じながら、またどこか瑞々しさを感じるようなところが素敵です」と語り、當真もまた「気持ちも一段階引きあげてくれるような、素晴らしいジュエリー」と笑顔を見せた。
普段はあまりアクセサリーを身に着けないという石黒は、「大仰な言い方になってしまいますが、役への入り口を開いてくれたような気がいたします」とコメント。役者は衣装や小道具をきっかけに内面を作ることがあり、今日のジュエリーが自分をハムレットの世界へと誘ってくれたようだと感謝を述べた。
柚香は、光の下だけでなく影の中でも煌めきを失わない美しさに「驚きと感動をいたしました」と話し、ガートルードという光と影を併せ持つ女性を演じる上で、その煌めきが重要なヒントになることを予感させた。
「To be, or not to be」市川染五郎の現在の解釈

「To be, or not to be――生きるべきか、死ぬべきか」。このあまりにも有名なフレーズに象徴される『ハムレット』。あの有名な独白を今の時点でどう捉えているかという問いを投げかけられた染五郎は、自分の解釈を言葉で説明しすぎることを避けたいとしつつ、「生きるべきか死ぬべきかという訳もありますけれども、それよりも、自分が“どうあるべきか”という問いかけ、自分への問いかけ、どう生きたらいいのか、という解釈が、今の自分には最も自然であると感じています」と、思慮深く言葉を選びながら、自身の哲学を明かした。
また、ポスタービジュアルについても言及。衣装合わせの際には「『これ、ハムレット?』とびっくりしました」と正直な感想を述べた。しかし、荒波が打ち付ける海岸で撮影を行った際、「ハムレットの抱える一所にとどまらない感情と言いますか、揺れ動いていく感情を表したポスターになったのでは」と感じたと振り返った。石黒もこれに同意し、「常にぶっ壊して新しいものを作っていこうぜっていう気概に溢れている気がして、新しいハムレットを作りたいんだろうなという気概を感じました」と、ルヴォーの演出意図を考察していた。
「生きた演劇として、現代に生きるハムレットを目指したい」

最後に、染五郎は「ハムレットという作品を、単なる“若者の苦悩や葛藤”とは捉えておりません。あくまでもデンマークの王子として生まれ落ちた環境の中で、どう生きればいいのかと、悩み葛藤する話だと解釈しています。危うさにフォーカスするのではなく、心の部分をきっちりと積み上げていきたいと思っています」と語った。
また、物語の舞台である実際のクロンボー城も訪れたそうで、現地の空気感を肌で感じた経験もすべて作品に注ぎ込むつもりだ。「生きた演劇として、現代に生きるハムレットを目指したいと思います」と前を見据えていた。
「生きるか死ぬかではなく、どう生きたらいいのか」――伝統芸能の枠を飛び出し、世界のルヴォーと共に未知の航海へと漕ぎ出す染五郎の挑戦に注目だ。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部1号)
舞台『ハムレット』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 舞台『ハムレット』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】2026年5月9日(土)~5月30日(土) 日生劇場 【大阪公演】2026年6月5日(金)~6月14日(日) SkyシアターMBS 【愛知公演】2026年6月20日(土)~6月21日(日) 名古屋文理大学文化フォーラム(稲沢市民会館) 大ホール |
| スタッフ | 作:ウィリアム・シェイクスピア 演出:デヴィッド・ルヴォー 翻訳:松岡和子 |
| キャスト | 市川染五郎、當真あみ、石川凌雅、横山賀三、梶原善、柚香光、石黒賢 ほか |
| チケット情報 | 【一般発売】2026年2月28日(土)10:00~ 【料金】 東京・大阪: S席14,000円 A席9,000円(全席指定・税込) 愛知:全席指定 14,000円(税込) |
| 公式サイト | https://hamlet2026.jp/ |
| 公式SNS | @hamlet2026 |


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