2月9日(火)から上演予定だった『蜷の綿 –Nina’s Cotton–』の公演延期が決定した。本作は、マームとジプシー主宰の若手劇作家・演出家 藤田貴大が、”蜷川幸雄”をテーマに書き下ろし、蜷川本人演出と藤田演出による2作同時上演することで注目されていた作品。蜷川は2015年12月中旬、『元禄港歌-千年の恋の森-』の稽古中に体調を崩し、軽度の肺炎と診断され入院。1月上旬から本作の稽古に入る予定だったが、体力の回復が十分でなく、地方公演を含め全公演を延期することとなった。
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以下、蜷川と藤田の公演延期に関するコメント全文を紹介する。
◆蜷川幸雄
『蜷の綿 –Nina’s Cotton–』は、50歳離れた藤田貴大さんが時間をかけてぼくのことを戯曲に書き上げてくれました。恥ずかしい気持ちはあるのですがとても面白いので、演出しようと決意していただけに、悔しい気持ちでいっぱいです。早く回復して劇場に戻ります。
◆藤田貴大
蜷川さんが「やはり現場に来て、自分で演出をしたい」とおっしゃったのは、とてもポジティブなことだと、ぼくはおもいました。稽古初日に彼の姿はなかったのです。彼が不在のまま、作品が進んでいこうとしていました。
作品がいちばん良い状態でつくられていくこと、すなわち彼自身が演出を施していくことを、やはり彼は選んだわけです。
『蜷の綿 –Nina’s Cotton–』は彼自身の物語です。
長い時間をかけて、ぼくが彼にインタビューをしながら書き進めてきた作品です。ここ最近の彼の姿を見つめながら、ぼくが感じたことも正直に書いています。
「自分自身の身体が、だんだん自分の作品が存在する場所に行かせてくれなくなった」
彼は、そんな現実のなかで葛藤しています。身体はもうとっくに、ぼくらが想像できないくらい苦しいはずなのに、演出家としての彼はまだまだつくりたいともがいている。
だから、「やはり現場に来て、自分が演出をしたい」とおっしゃったのを聞いて、とてもうれしかった。彼が用意してくれたこんなにも大切な時間のなかで、ぼくは彼を待っていたいとおもいました。
『蜷の綿 –Nina’s Cotton–』という作品においては、ぼくもマームとジプシーも蜷川チームに付随するものだという自覚があります。チームの方針に合わせながら、ぼくらも動いていきたい。
彼がまた稽古場に戻ってくることができて、作品づくりの環境が整ったら、ぼくらも再始動します。その日まで、きちんと準備を進めていきながら、待っています。
なお、蜷川演出版の代替公演として、さいたまネクスト・シアター×さいたまゴールドシアター『リチャード二世』、藤田演出版の代替公演として、マームとジプシー『夜、さよなら』『夜が明けないまま、朝』『Kと真夜中のほとりで』が上演される。
『蜷の綿 –Nina’s Cotton–』公演延期に伴うチケットの払い戻しは、SAFチケットセンターほか各プレイガイドから購入者へ連絡されるとのこと。詳細は、彩の国さいたま芸術劇場公式ホームページにてご確認を。