舞台『BACKBEAT』の東京公演が、2026年5月3日(日)に東京・EX シアター六本木にてスタートした。ビートルズの創成期を描く本作は、戸塚祥太、加藤和樹らが出演する人気シリーズの集大成だ。
ステージ中央に据えられた空の額縁。戸塚祥太演じるスチュアート・サトクリフは、虚空のキャンバスに一心不乱に筆を走らせる。「スチュが帰ってきた・・・!」その姿に、ステージから客席へさざなみのように熱が伝播した。
3度目であり、ファイナルを銘打った本公演が、プレビュー(水戸)・愛知・大阪公演を経て、熱狂を東京へ届ける。東京公演の開幕に先立って行われた取材会と、公演レポートをご紹介する。

舞台『BACKBEAT』とは?ビートルズ創成期を描く青春群像劇のあらすじ

舞台『BACKBEAT』は、デビュー前のビートルズの創成期、なかでも”幻の5人目のメンバー”スチュアート・サトクリフと、若き日のジョン・レノンの青春と友情、そして葛藤を描く鮮烈な青春物語だ。2019年の初演、2023年の再演を経て、再々演となる本公演は、本作の集大成にしてファイナルステージでもある。
物語は、ビートルズの出身地・リヴァプールから始まる。戸塚演じるスチュアート・サトクリフは、将来を期待される才能豊かな画学生。加藤和樹演じるジョン・レノンは、そんな”スチュ”の才能と容姿に惚れ込み、自身のバンドにベーシストとして参加しないかと声をかける。

メンバーは他に3人。辰巳雄大演じるジョージ・ハリスン。JUON演じるポール・マッカートニー。そして上口耕平演じるピート・ベスト。スチュアート加入後「ビートルズ」と改名したこの5人組グループは、ハンブルグへと巡業に旅立つ。
ハンブルグで5人を待ち受けていたのは過酷だが刺激的な演奏生活。なかでもジョンとスチュアートは、自由奔放に熱く、2人の青春を駆け抜ける。

やがて5人は、愛加あゆ演じる若き写真家アストリッド・キルヒヘアと出会う。スチュアートとアストリッドにとって、それは運命的な出会いとなるが、ジョンや「5人のビートルズ」にとっても大きな転換点となり・・・そうして物語は動いていく。
【取材会】戸塚祥太・加藤和樹らキャストが語る見どころ

取材会には、スチュアート・サトクリフ役の戸塚祥太、ジョン・レノン役の加藤和樹、ジョージ・ハリスン役の辰巳雄大、ポール・マッカートニー役のJUON、ピート・ベスト役の上口耕平、アストリッド・キルヒヘル役の愛加あゆ、クラウス・フォアマン/リンゴ・スター役の林翔太、エルヴィス・プレスリー役の尾藤イサオ、そして翻訳・演出を手掛ける石丸さち子が登壇し、公演に向けた熱い思いを語った。

会見冒頭、ひときわ目を引いたのは、ビートルズ来日時に用意されたJAL(日本航空)のお揃いの法被(はっぴ)を羽織った尾藤イサオの姿だ。今年でビートルズ来日からちょうど60年。尾藤は当時、武道館での前座を務めた伝説の証人でもある。この公演の前に「そういえば家にあるな」と思い出したそうで、このファイナルでお披露目してくれた。
実は辰巳も、以前にYouTubeの企画で岩手県の古着屋を訪れた際、非売品として飾られていたものと見たことがあったそうだが、思わぬ“本物中の本物”の登場に、「びっくりしました!」と大興奮の様子を見せた。

初演から彼らを導いてきた演出の石丸さち子は、「誰も知らない頃のビートルズを演じていいのかと、苦悩しながら手探りで作ってきました。でも3度目の上演にして、彼らは何のてらいもなくぶつかり合っている。激しく、悲しく、そして生き抜こうとしている姿が見られる舞台です。劇場の空間を活かした生々しいライブと、洗練されつつも荒々しいストレートプレイをお楽しみください」と、キャストたちの成長に目を細める。地方公演を経て、東京公演ではさらにブラッシュアップしているそう。
ジョン・レノン役を演じる加藤和樹は、「自分が引っ張らなきゃと悩んだこともありましたが、結局『ただ自由でいればいい』と気づきました。めちゃくちゃやれば、みんなが助けてくれて『ジョン』にしてくれるんです」と、メンバーへの絶大な信頼を口にした。

初演時に「出たすぎるあまり『ギターが弾けます』と嘘をついた」という驚きのエピソードを持つジョージ・ハリスン役の辰巳雄大は、そこから7年間ギターに触れ続け、今では周囲から「ギタリストの手をしている」と絶賛されるまでに。カンパニーへの愛もたっぷりで、「舞台はファイナルですけど、バンドとしては一生続けたい。いつか武道館に立ちたいです」と力強く宣言した。
ポール・マッカートニー役のJUONは、役に合わせて左利きでベースを演奏。「脳の転換の努力をしたら、今では右で弾くより左で弾く方が快感になってしまいました」と、ミュージシャンとしての本業にも影響が出ているほどのめり込んでいる様子。
ピート・ベスト役の上口耕平は、「舞台人は調整しながら舞台に立ち続けるものですが、この作品に関してはそれが不可能(笑)。リハーサルでも『今日はセーブしようね』と言ったそばから爆発するんです」と、毎公演が全力投球であることを明かした。
初参加となる林翔太は「初めてドラムを触ったのですが、先生から『天才』と褒められました」とにっこり。「5人で武道館に立ちたい!」と、同じドラマー役の上口に挑戦状を叩きつけたが、「ドラム2個用意しなきゃ」と周囲から解決案が提示された。ダブルドラムのビートルズも、見てみたいものだ。
紅一点、アストリッド役の愛加あゆは、「さち子さんから『客席の人に嫌われてもいいから、それぐらいの強い女性であってほしい』と言われました」と語り、前回よりもさらに達観し、芯の通った天才写真家としての役作りに手応えを感じていると語った。

会見の最後、「演劇好きの方だけではなく、ビートルズ好き、音楽好きの人も確実に楽しんで帰ってもらえる作品になっています」と改めて自信を見せた加藤。
そして、戸塚は「ファイナルにして、最高傑作が出来上がりました。気軽に、パーティーに行こう!という感覚で劇場に遊びに来てください。一緒に楽しみましょう!」と、笑顔で呼びかけた。
【観劇レポート】徹底レビュー!戸塚祥太・加藤和樹らの成熟した熱狂、青春を駆け抜ける奇跡の物語

本作でスチュアート・サトクリフは、鋭敏な感性を持つ天才として描かれる。
皮肉屋で華やかなジョンとは対照的に、静謐さの奥に激しい情熱を宿すスチュアート。その危うくも美しい人間性を、戸塚は役を抱き締めるように丁寧になぞり、演じた。繊細な感性、目を惹く存在感、ひたむきさ、そして愛情深さ。スチュアートと戸塚は溶け合うように共鳴する。物語のなかで、スチュアートは絶えず自問を重ねる。戸塚の独白は次第に熱を帯び、爆発寸前のエネルギーを宿すかのように観客を圧倒する。
とりわけ際立つのは戸塚の身体表現の豊かさだ。スチュアートのガラスのような精神性と、その危うい生き様を全身で体現する。なかでも心身の不調にもがく表現は圧巻で、目を逸らしたくなるほど痛々しい。スチュアートは常に二律背反の狭間で揺れている。ビートルズとアート、ジョンとアストリッド。戸塚はその相克を、のたうつ心と身体の痛みとして鮮やかに浮かび上がらせた。

ジョン・レノンという「伝説」がそこにいる。加藤演じるジョンにはその説得力がある。世界を打ち砕くような存在感、そして爆発的な歌唱力。その華に誰もが目を奪われることだろう。
本作のジョンは、自信家で皮肉屋という表層の裏に、深い欠落感を抱えている。その隙間を埋めるかのように、ひたむきに”スチュ”を追い求める。加藤はその人物像を、力強さと弱さの両面から立ち上げた。
甘さ、優しさ、そして深さを併せ持つ多彩な声が表現の核にある。ふと覗くジョンの本音が、加藤の声を通して胸に迫る。なかでも”スチュ”の心がビートルズやジョンから離れていく過程では、ジョンの揺れる感情が細やかに描き出されていた。
とくに注目したいのは、劇中の生演奏シーン。本作では場面ごとに様々な楽曲が、「ビートルズ」としてバンド演奏される。喜び、情熱、高揚、あるいは不安と不協和音。そうした感情のすべてを、加藤は巧みに歌唱や演奏にのせていく。その瞬間、客席は舞台『BACKBEAT』の観客でありながら、若きビートルズの観客にもなるのである。

本作に明るさをもたらすのが、辰巳雄大演じるジョージ・ハリスンだ。ジョージはグループ最年少の弟分。青春の痛みが色濃く描かれる本作において、一種の緩衝材ともいえる存在である。
物語が進むにつれ、ジョンたちの背中を追う少年だったジョージもまた、少しずつ青年へと変化していく。辰巳は、その成長をさりげない所作のひとつひとつから自然に表現し、舞台に確かな印象を残した。実は初演時にはギターが弾けなかったという辰巳だが、再々演となる本作では、伝説的ロックバンドのギタリストとして十分な説得力のある演奏を披露している。得意のダンスシーンも見どころのひとつだ。

スチュアートがジョンにとっての「今」だとすれば、ポールは「未来」である。本作でポール・マッカートニーを演じるJUONは、ギタリスト、バンドマンとしての高い技術と経験で、本作の音楽性を確かなものにしている。

同時に印象に残るのは、JUONの人柄がにじむような、落ち着きと先を見据えたポールのまなざしだ。JUON演じるポールは、音楽の礎であると同時に、グループをつなぎとめる要でもある。利き手を捨てた規格外の演奏も技術も見逃せない。

上口耕平演じるピート・ベストは、一本筋の通った、硬派な存在感を放つビートルズ創成期のドラマー。周囲の悪ふざけにも動じず、ドラッグの誘いも毅然と断る。上口の清廉な雰囲気とも重なり、その凛とした佇まいは実に魅力的だ。多様な個性が交錯する本作において、ピートは物語のリズムキーパーでもある。ドラムと同じように一歩引いた立場で、ときに自身も巻き込まれながら、スチュアートたちの狂騒を見つめている。口数が少ないピートの熱量を、上口は理知的な視線、立ち姿、表情の変化、そしてドラムで表現した。

愛加あゆ演じるアストリッド・キルヒヘアは、力強さと優しさをあわせ持つ、芯の強い先見的な女性だ。スチュアートと惹かれ合いながらも、彼女自身も写真家として鋭い感性を備え、ビートルズの行く先、そしてスチュアートの居場所を見抜いている。
愛加は、そうしたアストリッドの魅力を、揺るがぬ演技でしなやかに表現した。その姿に、スチュアートの危うさが、彼女という安定を求めたのだろうと思わせられる。アストリッドの在り方は、欠落を抱え”スチュ”を求めるジョンと鮮やかな対照をなす。風通しのよい軽やかさをまとい、物語に自然になじんでいた。

「ビートルズ最初のファン」クラウス・フォアマンと、後にメンバーとなるリンゴ・スターを演じる林翔太は、初演からの続投組が多い本公演において、林は今回が初参加。その重圧もあったはずだが、クラウスを端正かつ清涼感のある佇まいで表現した。ビートルズとアストリッドを見つめるクラウスのやわらかな表情は、安らぎさえ感じさせる。

また、1966年のビートルズ来日時、日本武道館公演で前座を務めた尾藤イサオが、初演・再演に続いて本公演にもエルヴィス・プレスリーとして参加。「伝説」と呼ぶにふさわしい存在感と歌声。まさに「ビートルズの先人」として、舞台に確かな彩りを加えていた。
そのほか、初演からの続投組として、ビートルズをハンブルグに招くクラブオーナーのブルーノらを鍛治直人が、ビートルズの最初のマネージャーであるブライアン・エプスタインらを東山光明が、それぞれ重厚な安定感をもって演じている。
さらに本公演からは田川景一、安楽信顕らも加わり、ビートルズを取り巻く60年代のハンブルグとリヴァプールの熱気を、より色濃く舞台上に立ち上げていた。
舞台『BACKBEAT 2026 FINAL』はどんな人におすすめ?見どころと観劇ポイント

観劇の印象はまさに「あっという間」だった。めくるめく人間ドラマと、興奮に満ちた楽曲演奏。「舞台」と「ライブ」を同時に体感するような作品である。
客席はみな、”スチュ”とジョン、その仲間たちの姿を、熱に浮かされるように見つめていた。若き日のビートルズとともに、観客も「時代」を駆け抜けるかのような体験。それは、当時の熱狂の一端に触れる時間なのかもしれない。

開演前から立ち込める客席の期待感と終演後の熱気。劇場に漂う空気も印象的だった。また客層の幅広さからも、ビートルズの今なお衰えない人気を実感した。
3月の公開稽古取材で、本作演出を初演から務める石丸さち子は、「リヴァプールで当時10代後半だったビートルズのメンバーたちが出会ったこと自体が奇跡だったと思う。そして、この忙しいメンバーが三度集まれたということも奇跡」と語っていた。まさに二重三重の奇跡が重なった本公演。
『BACKBEAT 2026 FINAL』東京公演は、5月17日(日)まで。その後、兵庫公演が控えている。きらめく熱を帯びる彼らの青春は、重ねた音とともに耳の奥にじんわりと熱を残す。その余韻は、きっと劇場を出たあとも消えない。
(取材・文/飴屋まこと、撮影/エンタステージ編集部 1号)
『BACKBEAT』2026 公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 『BACKBEAT』 |
| 公演期間・会場 | 【プレビュー公演】 2026年4月12日(日) 水戸市民会館 グロービスホール 【愛知公演】 【大阪公演】 【東京公演】 【兵庫公演】 |
| スタッフ | 作:イアン・ソフトリー、スティーヴン・ジェフリーズ 翻訳・演出:石丸さち子 音楽監督:森大輔 |
| キャスト | 戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹 辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(THE & ex FUZZY CONTROL)、上口耕平 愛加あゆ、林翔太 鍛治直人、東山光明、田川景一、安楽信顕 尾藤イサオ |
| チケット情報 | 【プレビュー公演(水戸)】2026年2月14日(土)発売 S席 10,000円/A席 9,000円/B席 7,500円 【愛知公演】2026年3月15日(日)発売 【大阪公演】2026年3月15日(日)発売 【東京公演】2026年2月14日(土)発売 【兵庫公演】2026年4月12日(日)発売 ※全席指定・税込/未就学児入場不可 |
| 公式サイト | https://www.backbeat-stage.jp |
| 公式SNS | @BackbeatStage |


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