いよいよ目前に迫った第71回トニー賞授賞式。先日ノミネーションが発表されましたが、どんな作品・俳優なのか詳細が気になるところ。今回は、その中でもミュージカル作品賞と演劇作品賞にフォーカスし、現地メディアの声と共に紹介します。
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【ミュージカル作品賞ノミネーション】
◆『カム・フロム・アウェイ』(『COME FROM AWAY』)
9.11テロの際、カナダの小さな町に緊急着陸した飛行機38機とその乗客7,000人。町の人々はこの不運な“外から来た者”(COME FROM AWAY)を温かい心で迎え入れ、服や食べ物だけでなく、電話を提供するなど尽力します。そんな、この町で起こった実話を基に描かれたミュージカル。
『カム・フロム・アウェイ』は、一人のキャストが町の住人や、飛行機の乗客、乗員、そして動物まで、何種類もの役を演じ分ける演出などが高く評価されています。また、町の人々が突然の訪問者たちに何の見返りも求めず助ける優しさが描かれたストーリーは、「どんな皮肉屋だろうと涙なしでは観られないだろう(ニューヨークタイムズ)」と伝えられています。
ミュージカル作品賞、ミュージカル演出賞など7つの部門でノミネートされています。
◆『ディア・エヴァン・ハンセン』(『DEAR EVAN HANSEN』)
ある時、孤独な少年エヴァン・ハンセンのクラスメイトが突然命を絶ちます。その際に見つかった手紙のため、彼は一躍注目の的になるというもの。音楽は、映画『ラ・ラ・ランド』の歌詞を手掛けたベンジ・パセックとジャスティン・ポールが担当していることでも話題になっている作品です。
「人の心を打つ素晴らしいニューミュージカル(ニューヨークタイムズ)」「すぐに心に突き刺さる(エンターテイメント)」と各メディアで紹介されています。「このミュージカルは、簡単な回避よりも、より活発で複雑な方法を探している家族にふさわしい(ニューヨークタイムズ)」「DEAR EVAN HANSEN.私たちを見つけてくれてありがとう。あなたのようなミュージカルを長い間待っていたのです(タイム)」と悩める心の声を代弁したことで共感を呼んでいます。
9部門でノミネートされ、ミュージカル作品賞の最有力候補の1つと目されています。
◆『恋はデジャ・ブ』(『GROUNDHOG DAY THE MUSICAL』)
1993年の同名映画を基にしたミュージカルです。同じ日が半永久的に繰り返される時間空間に閉じ込められてしまった男が、その中で時に人生を楽しみ、時に自暴自棄になりながら生きる姿を描いた作品。
現地メディアでは「『マチルダ』のクリエイターが再び魔法を使った。再び(NBC)」と紹介。「(作詞・作曲の)ティム・ミンチンの才能はこの作品にぴったりだ(Chicago Trilbune)」「彼らの楽曲はダニー・ルビンの脚本に不条理な深みをさらに加えている。すべてが素晴らしい素材だ(Chicago Trilbune)」と相性の良さを評しています。
特に評価が高かったのが、ミュージカル主演男優賞にもノミネートされたアンディー・カール。「『恋はデジャ・ブ』でスターが生まれた!(ニューヨークタイムズ)」と記事の見出しを飾るほど。「カリスマ性とゴールデンボイスを持ちあわせた彼の演技は、穏やかでコミカル(ニューヨークポスト)」と非常に高い評価を得ています。
ミュージカル作品賞、ミュージカル主演男優賞など、7つの部門でノミネートされています。
◆『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』(『NATASHA, PIERRE & THE GREAT COMET OF 1812』)
ロシア人作家トルストイの「戦争と平和」を基に創られた『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』。ジョシュ・グローバンとデニー・ベントンという二人の人気俳優が主演を務めていることでも話題になっています。
「ほかのブロードウェイ作品と違ってスリリング!(ガーディアン)」「興奮する音楽と魅惑的なパフォーマンス(デイリーニュース)」と評されるように、スピード感溢れる舞台、さらに、ロック、ポップ、ソウル、フォークソング、エレクトロニックダンスミュージック、ブロードウェイ音楽をミックスしたという楽曲が特徴です。
その注目度は高く、「『ハミルトン』以来の革新的で新しいミュージカル(ニューヨークタイムズ)」と言われているほどです。
12部門でノミネートされた本作も、ミュージカル作品賞の最有力候補と目されている作品の1つです。
『ナターシャ、ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812』の舞台レポートはこちら!
【演劇作品賞ノミネーション】
◆『人形の家 パート2』(『A DOLL’S HOUSE, PART 2』)
イプセンの『人形の家』から15年後の様子を描いている『人形の家 パート2』。ルーカス・ナスによって書かれた続編は、家族のもとから去ったノラがフェミニスト作家として成功し、「男女平等、結婚という制度の撤廃という楽観的な望み(エンターテイメント)」を抱く人物として再び戻って来る様子が描かれています。
「洗練された続編は活気がありウィットがある(ガーディアン)」「二次創作文学で最も質が高く、ナスの脚本は不敬な部分はあるものの、資料に忠実で敬意を払っている(エンターテイメント)」と高く評価されています。
演劇部門で最多となる7部門でノミネートされており、演劇作品賞最有力候補の1つです。
◆『インディセント』(『INDECENT』)
劇作家であり作家のショーレム・アッシュが1923年に『復讐の神』(『God of Vengeance』)でブロードウェイでデビューした際、物議を醸しました。この実話を基に書かれた新作です。
「啓蒙的で悲しい作品である『インディセント』は、『復讐の神』の50年近い歴史を描いている(タイムアウト)」「啓示的な作品(ニューヨーカー)」とその内容が紹介されています。また「演出は詩的で洗練されている(ニューヨーカー)」ということ。
演劇作品賞のほかに演劇演出賞など3つの分野でノミネートされています。
◆『オスロ』(『OSLO』)
1993年のオスロ合意(パレスチナ暫定自治宣言)の裏で行われていた交渉について実話を基に書かれた作品。「興味を引く人間ドラマだ(ニューヨークマガジン)」「非常に人間的でとてもおもしろい。興味を引かれ、魅力的で、観るのをやめられない(バラエティ)」など人間模様が最大の魅力となっています。
その実力は「今シーズンの新作演劇賞は楽勝(ワシントンポスト)」と囁かれるほど。「『オスロ』は紛れもなく大作だ。近年、巨匠の手によって演出された幾つかのブロードウェイ作品と同じくらい拡張的で野心的だ(ニューヨークタイムズ)」と、とても高い評価を得ています。
7部門でノミネートされ、演劇作品賞の最有力候補と目されています。
◆『スウェット』(『SWEAT』)
子供の頃からずっと一緒にいた親友たち。大人になってからも同じ工場のフロアで働き、仲良く過ごしていました。しかし、工場の人員削減やストライキなどでその関係は崩壊し始めます。経営者と労働者、人種など思いもよらなかったことが原因で。
「心のこもった人生でとても感動的な物語(ニューヨークタイムズ)」と表現されたように、いくつものメディアがこの親友たちを「心のこもった人生」と評価しています。それをつくりあげるのは「感情を震え上がらせる演出(タイムアウト)」。「鋭く観察され驚くほどおもしろい(ニューヨークタイムズ)」と評価されています。
演劇作品賞、演劇助演女優賞でノミネートされています。
これらの中から、一体どの作品が栄冠に輝くのでしょうか。第71回トニー賞授賞式は、日本時間2017年6月12日(月)午前9時からスタート。WOWOWにて、授賞式の様子が生中継で同日午前8時より放送されます。
◆放送情報
『生中継!第71回トニー賞授賞式』(二カ国語・同時通訳)
案内役:宮本亜門、八嶋智人、スペシャル・サポーター:井上芳雄、スペシャル・ゲスト:坂本昌行
6月12日(月)午前8:00 WOWOWプライム
『第71回トニー賞授賞式』(字幕版)
6月17日(土)夜7:00 WOWOWプライム