2019年1月10日(木)に開幕した少年社中『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』。劇団の20周年記念のファイナルを飾る本作は、主宰の毛利亘宏がオペラ「トゥーランドット」をモチーフに「演劇で世界を変える。世界は変わる。」と打ち出した意欲作だ。
物語の中心を担うのは、生駒里奈と松田凌。毛利作品で、それぞれ自身の“世界が変わった”という二人に、本作に向けて抱く思いを聞いた。
※取材は稽古開始前に行ったものです
――お二人とも毛利さん、少年社中の皆さんと再び、ですね。
生駒:また少年社中さんに参加させていただくのが目標の一つだったので、決まった時はすごく嬉しかったです。やれるまで、がんばりたいなと思っていたので、こんなに早くまた機会をいただけて感謝しています。
松田:僕は『パラノイア★サーカス』(少年社中×東映 舞台プロジェクト第1弾として2016年1月に上演)ぶりになりますね。今回、また白羽の矢を立てていただいたのは自分にとても光栄なことでしたし、これをまた一つの誇りにできるよう尽力したいなと思っています。
――松田さんは毛利さんと旧知の仲だと思いますが、今回は事前に何かお話をされていましたか?
松田:演劇で“世界を変える”作品を作りたいんだというお話と同時に、「凌にぴったりな役があるんだ、どうかな」と声をかけていただいたんですよ。・・・ずるいですよね、その誘い文句は(笑)。無論、出ますと二つ返事でした。この作品の持つテーマは、自分の役者人生の中でも、一つの大きなテーマとして持ってるものだったので、毛利さんのもとで、今回の役を背負えることは、これ以上嬉しいことがないぐらいだと思っています。
――生駒さんは、前回ご出演された少年社中さんの『モマの火星探検記』が、ご自身にとって初の主演作(矢崎広とW主演)となりました。毛利さんの作品を経験して、何か変化はありましたか?
生駒:モマ(『モマの火星探検記』)は私に「芝居やっていいんだ」と思わせてくれた作品になりました。実はあの作品を経験した上で、自分がお芝居をやれる人間なのか、やれない人間なのか、やりたいのかを自分自身の中で判断しようとしていたので。そんな私に、素直に「やりたい!」と思わせてくれたのが、毛利さんであり、少年社中さんでした。すごく楽しかったし、すごく悔しかった。あの経験があったから、自分のお芝居に対する思いに素直になることが出来るようになったと思います。
――先ほど松田さんもおっしゃっていましたが、毛利さんは本作に「演劇で世界を変える」というストレートで強い思いを感じるキャッチコピーを付けられました。この言葉を、お二人はどのように受け止めていますか?
松田:・・・血湧き肉は踊るような、自分そのもののように感じました。このご時世、もしかしたら後ろ指を刺されてしまうかもしれないのに、恥ずかしげもなく言える毛利さんの強さを感じました。役者として、このテーマを掲げた作品の一員となれるのは、これ以上心が震えることはないです。怖さもありますけどね(笑)。ここまで大きく啖呵を切ったからこそ、大きく響くのだと思います。
生駒:このキャッチコピーを知ったのはビジュアル撮影の日だったんですけど、「え!そういう感じなの?どうしよう!」ってちょっと慌てました(笑)。まだまだ何も出来なくて。ただ、演劇のおかげで、自分を変えることが出来たという実感はあるので、それに対する感謝や、私が感じた衝撃を観に来てくださった皆さんにも微力ながら伝えられたらいいなと思って、一生懸命取り組みたいと思います。観に来てくださったお客さんの世界を少しでも変えたいと思います!
――ビジュアルも美麗で、引き込まれました。
生駒:今まで、ここまで雰囲気を作りこんで撮影したことがなかったので、自分自身って、こういう風に変わるんだ・・・なんか、強そうだなって思いました(笑)。
松田:ビジュアル撮影の時に生駒さんと初めてお会いしたんですが、とても素敵でした。皆さんもとても素敵で。ただ、出来上がってきたチラシを見て、僕はとにかく藤木(藤木孝)さんに心を射抜かれてしまいました・・・。どこからこのポージングが出てきたのかと!情熱を感じました(笑)。
生駒:(『トゥーランドット』のチラシは三面折のため)開いたら、誰よりも目がいきますよね。存在感がすごいです(笑)。
松田:藤木さんとは共演させていただいたことがあって(舞台『野球』飛行機雲のホームランにて)。ものすごく情熱があり、お芝居に対しても丁寧で愛のある方なんですよ。このチラシをパッと開くと「藤木さん?!」というインパクトがありますが、舞台でもどんな驚きをもたらしてくださるのか、すごく楽しみです。
――お二人は、初対面の時にお互いどのような印象を持たれましたか?
松田:ビジュアル撮影の時間は、すごく短かったんですよね。
生駒:一瞬でしたね。
松田:どんな印象でしたか?何でも言っていただいて大丈夫ですよ(笑)。
生駒:実は、松田さんが出演されていた『人間風車』を観に行っていたんです。あの作品で、松田さんは殺されてしまう役をやっていて、途中までおもしろくお芝居を観ていたんですが、殺されるところがすごすぎて・・・ひたすら怖かった印象が(笑)。『モマ』の時、松田さんが観に来てくださって、楽屋に来られていた時にちょっとだけご挨拶したんですけど、舞台の上だと「こんなに雰囲気が変わる人なんだ」とびっくりして。共演させていただけることが決まった時、そのことを思い出して「この人からいろいろと学びたい・・・」と思いました。
松田:僕は『モマ』で生駒さんのお芝居を拝見して、小柄な身体から湧き出るエネルギーと情熱に圧倒されました。出演者がたくさんいる中でも、一際輝いていたんですよね。僕、ものすごく泣いてしまったんですよ。作品として感動したというのはもちろん、生駒さんの輝きに心打たれて。生駒さんとの共演は、今回この作品をやる上で楽しみの一つであり、僕も生駒さんから学ばせていただきたいなと思っています。可能性や情熱をたくさん秘めた生駒さんの足を引っ張らないように、日々邁進していきたいです。
――今お話を聞いていて、なんだかお二人は本質的に似たものを持っていらっしゃるように感じました。作品の中でもお二人の関係性は重要なものになってくると思いますが、毛利さんの作り上げた物語の印象はいかがでしたか?
松田:劇中劇が行われるということは、あらすじなどで分かっていると思うのですが、元々“お芝居”という、言葉を変えるなら虚構の中で、もう一つの虚構を重ねるというのは、なかなか高度なことですよね・・・。自分も、経験がない、かつ、その主軸の一つを担うとなると、その二つの虚構をきちんとお客様に届ける技術が必要になるなと。どういう仕上がりになるのか、想像がつかなくて普通に興味も湧きました。
生駒:私は・・・芝居を初めてまだ日の浅い私が「これ言っていいんだ、嬉しいな」と思う台詞があったんです。今の自分が言ったら、この台詞がどう響くんだろうという自分への期待感もありますし、その一言だけで、お客様の心を持っていってやろうという野心もあります(笑)。きちんと届けられるよう、がんばりたいなと思います。
松田:それ・・・すごく素敵ですね!なんだろうな、生駒さんは人を惹きつけるようなものを、本質的に持っていらっしゃるんだなと感じますね。
――物語の中では“革命”が一つのキーワードになっていますが、お二人は、ご自身として今、何か「変えたい」と思っていることはありますか?
生駒:私は、感情だけで動きたくない、と思っています。私は、乃木坂46として活動させていただき、卒業して、お芝居の道へと入らせていただきました。最近、同じく乃木坂46を卒業した若月佑美ちゃんと、お互いに「生き様だけで感動させたくない」と話をしているんです。“私”ががんばっているというだけが、感動の対象になりたくない。そう思われてしまったら、まだまだ技量が伴っていないか、その役が出来ていないように思ってしまうので。もちろん感動してもらえることは何でも嬉しいことではあるんですが、それだけでいいのかなと思います。きちんとお芝居で魅せて、感動させる役者になることが、今後の課題だと思っているので、そう変わっていきたいです。
松田:僕はー・・・今のこの現状、でしょうか。言葉を知らない自分を変えたい、ということになるのかな。自分の中で巡る思いがあるんですが、自分が持っている言葉の中で、最も適切だと思う言葉が見つけられない感じがして。もっと言葉を知っていればなあと思うことが多いんですよね。お芝居に関しても、伝統芸能、文学、海外戯曲、シェイクスピア作品と、そのためには、もっと勉強しなくてはと・・・。
役者として、まだまだ知らないことばかりだと思う日々です。身体一つ、感情一つでやってきましたが、ロジカルに脳内でもっと組み立てられるような役者にもなりたいです。それができるようになると、お客さんに伝えることがもっと増えますから。人間の言葉は、伝えたいことが10あったら、そのうちの3割ぐらいしか伝えられていないと思うんです。だったら、伝える方法をもっと身につけた方が絶対にいい。時代ごとの言葉や、感情を伝える上での適切な表現など、演じる上での知識や技術を学ぶことによって、役者としての技量が上がっていくんだと、最近すごく感じています。
――お二人が、それぞれより高みを目指していく姿を楽しみにしております。
松田:生駒さんと対談させていただいて、改めて一緒にお芝居できることに喜びを感じました。生駒さんの引力で、お客さんは前のめりになって食い入るようにこの作品を観てくださるでしょう。その横で、僕も自分の表現を追求できる。想像しただけでもう楽しい、自分の世界も変わりそうです。小さなことから“世界”って変わっていくものだと思うので、劇場に足を運んでくだされば、何かしら皆様の世界を変えれると、確信めいたものを感じました。あとは、自分たちがすべてを板の上に残すだけ。ぜひ、それを劇場まで確かめに来てください。よろしくお願いします。
生駒:(松田さんの発言を受けて)うっ、プレッシャー・・・(笑)!
松田:フフフ(笑)。
生駒:少年社中さん、そして毛利さんは、いつも私にいろんなスパイスを与えてくれるんですよね。それで料理すると、私がめちゃくちゃ美味しくなるんです(笑)。『モマ』をご覧になった方には、より成長した姿をお届けしたいですし、新しい年に携わる最初の作品でもあるので、私は「この作品でお客様の世界を少しでも変えさせられなかったら前に進めない」という覚悟で挑みます。幕が開いたら、楽しい時間が待っていると思いますので、ぜひ観に来ていただけたら嬉しいです。劇場でお待ちしております!
◆公演情報
少年社中20周年記念ファイナル 第36回公演『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』
【東京公演】2019年1月10日(木)~1月20日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年1月24日(木)~1月27日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2019年1月30日(水)・1月31日(木) ももちパレス
【脚本・演出】毛利亘宏
【出演】井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之
生駒里奈、松田凌 / 有澤樟太郎、赤澤燈、ザンヨウコ、馬場良馬、鈴木勝吾 / 藤木孝
【公演特設HP】http://www.shachu.com/trd/