2019年1月に上演される少年社中20周年記念ファイナル 第36回公演『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』。劇団「少年社中」主宰の毛利亘宏は、記念すべき20周年の最後を飾る作品として、オペラ「トゥーランドット」をモチーフに、遠い未来、厳格な管理社会に抗い、運命に立ち向かう者たちの物語を描く。
「演劇で世界を変える。世界は変わる。」このコピーに込められた思いとは?毛利と厚い信頼関係を築いてきた鈴木勝吾と、念願の少年社中初出演を果たす馬場良馬を交え、作品について語ってもらった。
※本インタビューは稽古開始前に行いました
――少年社中20周年のファイナルを飾る作品が発表されました。今作の「演劇で世界を変える。世界は変わる。」というコピー、ぐっときました。
毛利:ストレートすぎるかなとも思ったんですが、恥ずかしげもなくエンタメをやろう!と決意表明しました(笑)。
――今回のモチーフに、オペラの『トゥーランドット』を選ばれたのは?
毛利:ずっとやりたかった作品の一つだったんです。ただ、元がオペラということもあり、ストレートプレイとしてやるからには、何か趣向を凝らさないといけないですよね。少年社中なりの解釈を加えたいと思います。
――鈴木さんは少年社中さんにとって馴染みの顔となってきましたね。馬場さんは初参加ということで・・・。お二人の共演も久しぶりですね。
鈴木:舞台『さらば俺たち賞金稼ぎ団』以来ですね。今、毛利さんのお話聞いていて思い出したんだけど、『さらば俺たち賞金稼ぎ団』で、何故か俺ら二人だけ歌うシーンがあったよね。しかも、かなりガッツリ・・・。
馬場:あったあった、何故かフル尺でね。・・・なので、僕らオペラできます!
毛利:今回はオペラじゃないけどね(笑)。
――(笑)。謎が多い物語になるとお聞きしていますが・・・。
毛利:言えないことが多いんですが、多重構造になっている、とだけ。毎度ですが(笑)。「演劇で世界を変える。世界は変わる。」この言葉が、どういう役割を果たしていくのか、楽しみにしていてください(満面の笑みを浮かべる毛利さん)。
鈴木:本編の中で演劇をやるんですよね。そういう意味でも、演劇が持つ本質的な部分とか、自分の中の引き出しが問われそう。「あぁ、どうしよう」って考えることも多いけど、楽しいだろうなあ・・・。
毛利:多重構造って言うと、複雑に聞こえるかもしれないんだけど、蓋を開けてみたらすごくシンプルな作品になるだろうなと思ってるんだよね。まだ何も始まってないんだけど、すごく絵が見えているんです。現状は、自分の中にあるアイデアに「これはすごいぞ!」って一人ほくそ笑んでいる状態なんですが。これを、早く皆と分かち合いたいという気持ちでいっぱいです(笑)。
鈴木:プロットを読んだ段階での印象の話なんですけど、毛利さんがすごくウキウキしながら書いている気がしました。
毛利:まさに、そう! なんで分かったの?
鈴木:毛利さんって、いつも「これ、やってみたかった!」「こういうの、やらせてみたかったんだよね!」って稽古中も楽しそうにしているのが印象的なんですけど、そのウキウキ感がもうプロットの状態から感じられたんですよ。だから、俺はもうこの作品がすごく好きです。どんな風に毛利さんがこれから書くのか、全然予測はつかないけど(笑)。
馬場:すごい。そういうの聞くと、こっちまでウキウキしちゃう。
――馬場さんは、今回が少年社中さん初参加になりますね。
馬場:そうなんです。今まで、脚本だけ毛利さん、というケースはあったんですが、少年社中さんに呼んでいただいたのは初めてで。
毛利:ずっと出てもらいたいと思っていたのが、やっと叶いました。
馬場:僕も、マネージャーの枕元でずっと「少年社中さんに出たい・・・、少年社中さんに出たい・・・」囁いていたんですよ(笑)。やっと実現して、モチベーションはめちゃめちゃ上がっております!
――鈴木さんをはじめ、少年社中さんに出たことのある俳優仲間の方も多かったかと思いますが、馬場さんの目に、少年社中さんはどう映っていましたか?
馬場:根本的に、関わっている皆さんが楽しそうだと思っていました。僕自身も、公演を観させていただいた時に「あ~、この作品自分もやりたかったな」とか、「自分も参加できていたら、どうなっていたんだろう」と憧れることも多くて。役者をやっている身でそう思うのは、すごくいいお芝居を楽しくやれているのがいいなって感じたからだと思うんです。
これまで関わった役者仲間からも、少年社中愛をよく聞いていましたし、皆口を揃えて「また出たい!」って言ってるから、本当に幸せな空間なんだなと。「出たい」という願いが叶ったからには、役者として結果を残したいですね! 少年社中の皆さんと一緒に作っていく中で、僕の持ちうる限りのものを出して、自分自身の中でもターニングポイントになる作品になったらいいなと思っています。
なんか、ずっと片思いをしていた女の子に、やっと少し気持ちが伝わって、遊びに行けることになった男の子のモチベーションみたいなんですよね(笑)。今は「どこ行こう?」「何しよう?」「何食べよう?」みたいな感じで・・・めちゃめちゃやる気、あります!この気持ち、言葉にするのが難しいですね。
鈴木:いやいや、めっちゃ伝わってきましたよ(笑)!!
――同感です(笑)。そして、少年社中愛と言えば鈴木さんも負けていないと思いますが。
鈴木:僕も、「出たい出たい」ってうるさいぐらい言い続けて使ってもらっているので(笑)。今年の年始に、少年社中さんの20周年記念第1弾として上演された『ピカレスク◆セブン』にも出させてもらって、ファイナルを飾る今回の作品にも出れるというのは、光栄でしかないです。
個人的に、来年は自分もデビュー10周年なんです。それから、30歳になります。いろんな節目の年にやる最初の作品が、少年社中さんの20周年ファイナルの作品というのは、すごく大きな意味があるなと思います。毎回、毛利さんとご一緒できる度に思うけれど、がんばっているといいことありますね(笑)。
毛利:二人とも、嬉しいこと言ってくれるね~。
――少年社中さんは、20周年記念として、まず少年社中×東映の舞台プロジェクトとして『ピカレスク◆セブン』、続いて『MAPS』、そして劇団員のみで上演した『機械城奇譚』の再演と、公演ごとに毛色の違うアプローチをされてきましたよね。
毛利:「少年社中と言えばこれ」というのは、形があってないようなものなので。その時に、一番おもしろいと思うものを全力で、持てる技術をすべて投入して、出し惜しみしないというスタイルでやってきました。改めて「エンターテインメントをやる」ということ以外は、少年社中として決まっていることはないんだなと。そういう意味でも、非常に充実した一年でしたね。同時に、自分も劇団も強くなった感じもして、これからもエンターテインメントをずっと作り続けるという“覚悟”みたいなものが、劇団の中で生まれた気がしています。だから20周年記念の「ファイナル」と銘打っていますが、次へのスタートという節目でもあります。今作は、これから「次の少年社中が始まる」という“決定版”のお芝居にしたいなと思います。
鈴木:俺・・・プライベートで見てきたことも含めてなんですが、この1年を通して、毛利さんがどんどん元気になっていくのがおもしろいなと思っていて(笑)。『ピカレスク◆セブン』の時も、飲みながら話をする度に、劇作家、演出家、劇団主宰といろんな顔を持つ毛利さんの中で、“人間”毛利さんが肯定されていっているというか、いい軌道に乗っている感じを受ける1年でしたね。
毛利:確かに、そうかもしれない。
馬場:僕は、少年社中さんとして20周年記念公演をやりながら、『宇宙戦隊キュウレンジャー』でメインライターや演出、脚本などをやっていらっしゃったのが、本当にすごいなと思いました。毎月、毎週、毎日、他の作品をやりながら、自分の劇団としての活動も大切にして、しかも毛色の違う作品をバンっと出せる。純粋に「この人、すごい!」と思いますね。
鈴木:そうですよね。劇団を続けていく中でも命を削っているはずなのに、さらにスーパー戦隊のメインライターをやりきったって、本当にすごいことだと思う。
――鈴木さんと馬場さんは、ご自身にとってターニングポイントだと思った瞬間ってありましたか?
鈴木:僕は『侍戦隊シンケンジャー』がデビュー作だったので、デビューは、役者としての始まりというより、何者かになった瞬間だったんです。僕の中で、ヒーローはヒーローそのもので、役者という仕事ではないと思っていたから。シンケンジャーが終って、そこからなんとなく役者になった感じなんですが、それから、演劇に出会わせてくれたのが毛利さんだったんです。だから、この作品のコピーについていた「演劇で世界を変える。世界は変わる。」という言葉が、すごく分かる。少なくとも、僕の世界は演劇で変わったので。自分には「これしかない」と思った瞬間が、演劇に救われた瞬間であり、一番革命的なターニングポイントでしたね。
馬場:僕は、役者を始めたこと、かな。役者を始めるまで、別に何がやりたいわけでもなく、なあなあで生きていたんですよ。役者になるお話をいただいた時も「女の子にモテるかも」とか、本当に単純な動機で。でも、実際に役をいただいた時に、自分の小ささに気づかされたんです。行き当たりばったりで何となくうまくやり過ごして生きてきたけど、これじゃだめだって。「お芝居をやる」ということを通して、すごく自分と向き合う作業が増えて、ようやく地に足をつけて歩けるようになったという感覚が持てて・・・。もちろん、作品や役との出会いも大きな影響を受けたものはたくさんあるんですけど、革命的な出来事と言ったら、役者を始めることなのかなと、今、聞かれて思いました。
――この作品でも、誰かにとっての革命的な作品になるかもしれないですね。年が明けて、最初に観るのがこの作品という方も多そうです。
鈴木:「明けましておめでとうございます」って、前回も毛利さんとそう言っていた気がしますが(笑)。おもしろい作品になることは大前提として、劇場で、演劇の力で世界が変わる瞬間を、皆さんと共有できたら幸せだなと思います。来年、劇場で会えるのを楽しみにしています!
馬場:僕は、満を持して少年社中さんという片思いの相手をデートに誘うことができましたから(笑)。どうにか両想いになれるよう、一生懸命ここから口説き落とさないと!両想いになるためには1回目のデートが肝心です。ちゃんとプランニングして、年明け、両想いになって世界を変えます。皆さん、応援していてください(笑)!
毛利:大きなことをやることが大事なのではなく、自分のやりたいことを考えていきたいと思います。創作意欲に対して素直になって作品と向き合い、皆と一緒につくっていきたいと思っております。エンターテインメントをつくり続けていきたいという覚悟ができたのは、この20年間の間で、お客様、関わってきてくださった皆さんのおかげです。20年の時を経た、少年社中の新たな一幕が始まりますので、ご期待ください。劇場でお待ちしております。
衣装協力:「GOSTAR DE FUGA」(馬場)/ヘアメイク:林美由紀
◆公演情報
少年社中20周年記念ファイナル 第36回公演『トゥーランドット~廃墟に眠る少年の夢~』
【東京公演】2019年1月10日(木)~1月20日(日) サンシャイン劇場
【大阪公演】2019年1月24日(木)~1月27日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
【福岡公演】2019年1月30日(水)・1月31日(木) ももちパレス
【脚本・演出】毛利亘宏
【出演】井俣太良、大竹えり、岩田有民、堀池直毅、加藤良子、廿浦裕介、長谷川太郎、杉山未央、山川ありそ、内山智絵、竹内尚文、川本裕之
生駒里奈、松田凌 / 有澤樟太郎、赤澤燈、ザンヨウコ、馬場良馬、鈴木勝吾 / 藤木孝
【公演特設HP】http://www.shachu.com/trd/