2024年11月8日(金)に、堂本光一主演『Endless SHOCK』のラストを飾る帝国劇場公演がついに開幕。初日を前に行われた公開ゲネプロおよび開幕記念会見の模様をお届けする。
上演回数2100回超え!堂本光一の魂こもった『Endless SHOCK』が閉幕へ
日本を代表するエンターテイメントミュージカル『SHOCK』シリーズ。2000年、当時21歳の堂本光一が帝劇史上最年少座長として東京・帝国劇場で初主演を務めて以来、ここまで歴史を紡いできた本作は堂本光一のライフワークといえる作品だ。
作中の主人公・コウイチが“Show must go on”を掲げたように、堂本自身もこのショーとともに走り続けてきた。2005年にはタイトルを『Endless SHOCK』へと一新、そこからは堂本が脚本・演出・音楽すべてを手掛け、彼の表現したいものがより凝縮されていった。彼がライフワークとして本作を上演すると同時に、ミュージカルファンにとっても本作がライフワークになっていったのではないだろうか。
そんな『Endless SHOCK』は、2025年の帝国劇場建替と同時に終幕が発表されている。今年4・5月に帝国劇場でスタートしたラストイヤーは、7・8月に大阪・梅田芸術劇場、9月に福岡・博多座で上演。博多座で上演された9月28日の昼公演では、シリーズ通算2100回公演を達成した。そして、11月の帝国劇場で惜しまれつつもラストステージを迎える。
ラストを飾る11月公演では、ライバル役を佐藤勝利からバトンを渡された上田竜也が担当。上田の本編出演は、シリーズ20周年記念公演として上演された2020年ぶりとなる。
また、博多公演で久々の出演となった福田悠太、辰巳雄大に続き、11月公演から越岡裕貴と松崎祐介が出演。『Endless SHOCK』を長年に渡り支えてきたふぉ~ゆ~の4人が再び揃う形となった。このほか、松尾龍が4月公演から続投、松浦銀志は11月公演から新たに出演する。
オーナーの娘リカ役は綺咲愛里と中村麗乃のWキャスト、オーナー役は前田美波里が演じ、2005年からカンパニーに参加しているパーカッショニストの石川直も出演。
これまで『SHOCK』シリーズが歩んできた歴史を感じる面々とともに、コウイチ最後のショーが幕を開ける。
ゲネプロレポート:幕が閉じてもきっと彼らの物語は続く
『SHOCK』の文字がスクリーンに映し出され大階段が現れると、いよいよか・・・という気持ちが押し寄せる。後輩の上田竜也、ふぉ~ゆ~の4人といった、ともに歴史を積み上げてきた顔ぶれを引き連れて階段を降りてくる堂本光一の姿は神々しい。オープニングでは堂本が「2000年に始まった『SHOCK』も、いよいよラストの帝劇公演となりました」と挨拶。4月にこの地からスタートしたラストイヤーの締めくくりに向けて、軽やかに、しかし熱く言葉を紡いだ。
本作の代名詞ともいえる美しいフライングとともに、止まらないショーが始まる。コウイチたちのカンパニーがオフ・ブロードウェイの小劇場で上演していた演目が世間の目に止まり、夢の舞台であるオン・ブロードウェイへの道が拓けていく。
憧れの舞台への高揚感が華やかにステージ上で表現されたのも束の間。眩しい世界に身を置くからこそ、濃い影がカンパニーに落ちていく。カンパニー内で生まれたコウイチとタツヤ(上田竜也)の衝突を軸に、羨望と嫉妬に彩られたショーの幕が上がり――。
2000回以上、コウイチとしてステージに立ってきた堂本の存在感はやはり別格。コウイチとしての人生を、長年自らの心血を注いで創り上げてきたとあって、最後の帝国劇場でもいい意味でいつも通りに完璧な姿を見せてくれた。なかでも2幕の芝居とパフォーマンスは圧巻。コウイチの孤独を浮かび上がらせるために磨かれた表現と演出がピタリとハマり、深化しつくしたパフォーマンスの力というものを感じずにはいられない。
11月公演では、久々のカムバックとなった上田竜也にも注目したい。近年は年の離れたライバル役が続いていたが、上田と堂本は4歳の年の差。その距離感がコウイチとタツヤとのライバルとしての在り方に説得力を持たせる。上田がこの4年で積み重ねた人生経験がにじみ出るようなタツヤは、ギラつきだけでなくどこか哀愁も帯びている。それがよりいっそう、ドラマとしてのおもしろさを強固なものとしているのだろう。上田らしさを感じられる細かなアップデートも多く、4・5月の帝劇公演の記憶が残っているファンの目には新鮮に映るだろう。
久しぶりといえばふぉ~ゆ~の4人。4人が揃うのは実に10年ぶりとなり、彼らがコウイチの脇を固めている絵には、なんともいえない安心感がある。4人が揃ったことで、カンパニーとしての一体感は自然と増す。フライングでのフッキング時のコウイチと福田の呼吸感や、細かく投げ込まれる瞬発力抜群のアドリブなどなど。コウイチと4人の間で育まれた信頼感が随所で感じられると同時に、ジャンルレスにエンタメに食らいつき吸収してきたふぉ~ゆ~の底力のようなものを感じられた。
コウイチに想いを寄せるリカを演じるのは乃木坂46の中村麗乃(※綺咲愛里と中村麗乃のWキャスト、この日のゲネプロでは中村が出演)。2023年の「Eternal」が初参加となった中村は、本作ではさらに成長した芝居でリカの持つ芯の強さを表現。
作品に欠かせないオーナー役の前田美波里は、7年ぶりの出演となった博多公演で終わりへのカウントダウンが始まったことを「つらい」とコメントしていた。オーナー同様、作品やカンパニーへの強い愛を持つ前田が、慈愛とも形容できそうな深い愛で作品を包みこんだ。
今年は全公演コンプリートとなる松尾は、得意のクラシックバレエでも存在感を示す。新たに出番が追加された公園のシーンでのバレエもお楽しみに。初出演となる松浦はフレッシュな17歳。上田や松崎に頭をポンポンとされている場面も多く、みんなの弟感がなんとも微笑ましい。
洗練された演出とパフォーマンスで、最後の地でも変わらず観客を魅了した『Endless SHOCK』。ついに11月が来てしまったのか・・・という寂しさと同時に、『SHOCK』という1つのジャンルを創り上げた堂本光一が、次にどんな世界を生み出してくれるのか楽しみでならない。
開幕記念会見:堂本光一「終わりがあっても走り続ける」
ゲネプロのカーテンコールにて、開幕記念会見が行われた。この日出演していなかったリカ役の綺咲愛里も登場し、カンパニー全員での会見となった。
いよいよラストとなる帝劇での公演が初日を迎える。堂本光一は「地方公演をやっていたときはまだ最後だということを意識できないでいました。それはそれで良かったと思いますが、ここ帝劇に戻ってきて、帝劇の稽古場で稽古をしているときに『この稽古場も最後なんだな……』と。ここ数日やってきた帝劇での場当たりも今日のゲネプロもラストで、1つ1つが最後なんだと感じてきています」と、今の心境を語った。
同時に「ステージに立つときは、初日だろうが千秋楽だろうが、意識している暇が無いくらいで。今日の夜から始まる公演も1つ1つの公演に向き合って、いつも通りです」と、笑顔を浮かべる。
「全力でこの1ヶ月間、光一くんのサポートをやらせていただけたら」と意気込みを語るのは、ライバル役を務める上田竜也。記者から“オリジナリティのあるライバル役でしたね”と評されると、堂本が「この風貌ですからね(笑)」と笑いを誘う。
今回のタツヤは、胸部にペイントが施されているのだが、上田は「誤解なきよう言っておきますが、プライベート用じゃないです」と説明し、さらに会見は笑いに包まれた。ペイントにはかなり時間がかかるそうで、数日前には堂本のご飯の誘いを断り、数時間掛けて描いてもらったそう。上半身をはだけるシーンでは、ぜひこの模様にも注目してみてほしい。
ふぉ〜ゆ〜にとっても、本作は特別な作品だという。辰巳雄大は『Endless SHOCK』に4人揃って出たことをきっかけに、「ふぉ~ゆ~」というグループ名が生まれたエピソードを披露。「『Endless SHOCK』が僕らにとっての生みの親のようなもの」と、作品への想いを語った。また、ふぉ〜ゆ〜と堂本とで、帝劇の稽古場で記念の5ショットを撮ったことも明かしてくれた。この秘蔵ショットをどこかで拝める日がくることを心待ちにしよう。
堂本にとっても、ふぉ〜ゆ〜の4人が揃った稽古場は楽しかったようだ。堂本が「動物園になるかと思った」と語ると、すかさず松崎祐介や福田悠太が動物の鳴き真似をはじめ、一気にステージ上が賑やかになる。そんな彼らに笑顔でツッコミを入れつつ、堂本は「今回は変更点が多かったものの、4人で話し合って動いてくれて頼もしかった」と、頼れる後輩たちにメッセージを送った。
さらに後輩の松浦に話が及ぶと、彼の両親が40歳ちょっとと聞いて堂本が大ダメージを受けて床に臥せってしまう場面も。そこに上手と下手から瞬時にふぉ〜ゆ〜が駆けつけて肩を貸す姿は、台本のあるコントのよう。さすがのチームワークだ。クラシックバレエという武器を持つ松尾には、「龍が銀志の面倒をずっと見てくれて、龍にとってもすごくいい経験になったと思う」と、兄のような父のような優しい笑顔を向けていたのが印象的。
オーナー役の前田は、堂本との思い出を聞かれると「こんな素敵な王子様と毎日一緒に踊れるんです。だから若くいられるんですよ」と回答。「早く王様になりたい」と言う堂本に、「この作品が終わるまでは私のためにも王子様でいて」と、チャーミングにおねだり。
リカ役を演じる綺咲は「色々な“最後”と向き合う1ヶ月になります。改めて身の引き締まる思いです」、中村は「前日の綺咲さんのゲネプロを観て、終わることを実感しました。最後のステージをいい時間にできるよう精一杯頑張りたいです」と胸中を語った。
本作は“Show must go on”がテーマ。堂本は「タツヤのセリフに『コウイチは消えることを知りながらも走り続けている』という言葉がありますが、『SHOCK』自体も終わりが見えていても最後までもっとよくするために千秋楽までやっていくと思います。何のためにするのか、もうそこに答えはないんですよね。幕を開けたらお客様がいる、ステージに立って振り返れば素晴らしい仲間がいて、オーケストラピットにも素晴らしい奏者の皆さんがいて。そういった皆さんのために頑張ろうという気持ちがすべてじゃないかなと思います」と、改めてショーへの想いを言葉にする。
また、振付のトラヴィス・ペインとステイシー・ウォーカーが本作のために来日したことも明らかに。「稽古はしなくていいから、僕たちが作ったものを観て楽しんでほしいと思って稽古場で観てもらったんですよ。そうしたら、みっちりレッスンが始まりました(笑)」と、稽古を振り返った。直接指導でさらに磨きのかかった「Dead or Alive」や「Higher」、「MUGEN(夢幻)」をお見逃しなく。
堂本は最後に「この後、初日を迎えます。支えてくださっている皆さんとともに、ここからの1ヶ月間を応援していただければと思います」と、会見を締めくくった。
有終の美へ向けてのカウントダウンがついに始まった。最後となる『Endless SHOCK』11月公演は、11月8日(金)から11月29日(金)まで帝国劇場にて上演。上演時間は3時間15分(休憩30分)を予定。大千秋楽は全国各地の映画館でライブビューイングも実施される。
(取材・文・撮影/双海しお)