2019年9月9日(日)より東京・東京グローブ座にて、Sexy Zoneの菊池風磨主演『HAMLET ―ハムレット―』が開幕。初日前にはフォトコールと囲み取材が行われ、菊池風磨、南沢奈央、安蘭けい、大谷亮介、演出の森新太郎が登壇した(台風の接近に伴い9月8日の公演は中止となった)。
最終的に主要な登場人物の全員が死んでしまう、シェイクスピア四大悲劇の一つにして最高峰“デンマーク王子、ハムレットの悲劇”に挑むのはSexy Zoneの菊池。菊池の舞台出演は、2015年9月に上演された『DREAM BOYS』以来約4年ぶりで、本作が舞台単独初出演かつ、初めてのストレートプレイ挑戦となる。
オフィーリア役には南沢奈央、ポローニアス役に大鷹明良、クローディアス役に大谷亮介、ガートルード役に安蘭けい、ホレイショー役に宮崎秋人、レアティーズ役に章平が出演。そのほかに風間由次郎、小柳心、味方良介、末原拓馬、福原冠、冨永竜、森田甘路、駒井健介、天野勝仁、新垣ケビン、花王おさむらが名を連ねる。
演出は『クレシダ』『The Silver Tassie 銀杯』『プラトーノフ』など、卓越した演出で高い評価を得ており、『夏の夜の夢』『ジュリアス・シーザー』『十二夜』に続き4作目のシェイクスピア作品演出となる演出家・森が務める。
フォトコールでは、一幕二場から一幕終了までのシーンが公開された。最初に公開されたシーンは、クローディアスがガートルードと重臣たちの前で、ハムレットの母であり亡き先王の妻ガートルードを妻とすることを伝える会合シーンが披露。回転舞台の上で回りながらの重厚な会話のやり取りが観る者をシェイクスピアの世界観に引き込む。その話を聞き、うろたえるハムレットにホレイショーたちが「見張り中に王の亡霊を見た」と伝えると、ハムレットは事の真相を見極めるために見張りに立つことに。
次にオフィーリアが、兄のレアティーズと父のポローニアスからハムレットとの仲を忠告されるシーン。南沢は、ハムレットに思いを寄せながらも父の言いつけとの間で揺れるオフィーリアの葛藤を見せてくれる。
そして、一幕クライマックスとなるハムレットと父の亡霊とのシーン。亡霊から自分を殺したのは弟のクローディアスだと告げられたハムレットは、狂気を装い復讐の機会を伺うことを決意する。短い時間ながらも、菊池は舞台単独初出演にして初ストレートプレイとは思えぬ迫真の演技で、舞台上に堂々たる存在感を示していた。
囲み取材では、初日に台風が接近していることもあって、菊池が「一筋縄にやらせてくれないのがハムレットだなと」と心境を明かすと、森も「台風より激しいものが吹き荒れるでしょう、彼の心の中で」と見事な返しを行った。
本作への出演が決まった時のことを、菊池は「伝達ミスだと思ったんです。(中山)“優馬”と“風磨”で間違えたのかなと(笑)」と冗談を交え「ずっと実感が湧かなくて、立ち稽古に入った時にもう逃げられないんだなと思いました(笑)。それだけ重圧もあり、ジャニーズ事務所の先輩方も役者の先輩方も『ハムレットを一度はやってみたい』とおっしゃっているのはよく聞いていたんですけど、僕はもう少し経験を積んだ時にハムレットをやりたくなるものなんだなと思っていたんです。
だから『ハムレットをやりたい』と思えるようになったら、ちょっとレベルアップしたのかなという指標と考えていたので、まだそんな大それたことを思ってもない時からとは。青天の霹靂です」と振り返った。
森の演出について、菊池は「厳しいですよ。昨日、言っていたことと180度違う時とかがあるんですよ。昨日、言われた通りにやったことで、すごく怒られたりとかすることもあったんです」とオーバーに語ると、その言葉に森が「悪口か、お前(笑)」とツッコミをして、会場は爆笑。
続けて、菊池は「ジャニーさんみたいで懐かしい感じがしました。ジャニーズJr.の時に、すごく理不尽なことで怒られていたので(笑)」と懐かしみ「その場で変えることにはどちらかというと慣れているので、それは楽しくできました。だから変えれば変えるほど良くもなっていっている実感はありますし、変えた分だけ楽しめている感じはあったので、楽しいなと思える時間が結構ありましたね」と語った。
さらに実感として良かったと思ったところを「『さっきのところは良かった』と森さんに言われたりすると、ちょっと抱かれてもいいかなって思いますね(笑)」と大胆発言。森は「抱いてもいいですけど(笑)」と返しながら、役者としての菊池について「初めてのストレートプレイで、ハムレットで、大変だなとは想像していたんですけど、僕のひと夏を返してほしいぐらい本当に大変でした(笑)。でも逆に言うと、もう上に行くしかないので。フォトコールの時もできなかったことができていたりして、だからそれは楽しいですよ」と笑顔を見せた。
南沢は、相手役としての菊池に対して「日々変わっていくハムレットにドキドキしました。どんどん格好良くなっていて、難しいセリフも心から言っていて、様になっていてすごいなと」と感心し「オフィーリアという役はいつかやってみたいと思っていた役でした。森さんの演出で稽古していくなかで試行錯誤してやっていたんですけど、それこそ昨日言っていたことと翌日に全く違うことを言われたりしました(笑)。でも、やっていくうちにどんどん見つけていけた感じがあるので、本番を通して成長していきたいです」と意気込んだ。
菊池と初共演となる安蘭は「最初は母親のような気持ちで『大丈夫かなぁ・・・』と見ていました(笑)」と明かし「初舞台でハムレットはハードルも高くてプレッシャーもあるだろうし、このプレッシャーに打ち勝てる精神があるのかという心配があったんですけど、ここまで成長できたのは本当に森さんのおかげなので、森さんにちゃんと感謝しなさいと母親の心で言いたいですね」と母親役らしくコメントすると、菊池も「承知いたしました! 千秋楽で」と即答し、会場の笑いを誘った。
菊池の印象を尋ねられた大谷は「(菊池からの)差し入れの梨がびっくりするほど美味しかった」と笑い「僕は敵対する役なので、任せて大丈夫だという感じが最初の頃からしていました。幕が上がる直前になると立派になって、僕が出ていないシーンでもすごくおもしろそうなので安心しています。逆に僕らがしっかりしないといけないなと思っています」と気を引き締めた。
また、ハムレットの狂気を演じることに関して、菊池は「ハムレット自身が狂気を演じているという設定で、ハムレットも途中から自分が狂気なのか、はたまた本当の自分なのか分からなくなってると思うんです。なので途中からどれが本当のハムレットなのかを追求すればするほど掴めなくなってきたりして。それがおもしろさの一つでもあると思うんですけど、そこの苦労は未だに感じています。森さんのご意見をお聞きして、二人三脚で作っていくような感じです」と苦労を明かした。
そして劇中にあるフェンシング・シーンの稽古では、菊池が左利きにもかかわらず、それを言わなかったために右利きでマスターしてしまうハプニングも。菊池は「まさか僕の意向で左利きにしてもらえると思ってなかったので、右でやってみようと。すっごい大変でした」と振り返ると、森から「アクション担当の人が『言えよ!左利き用のがあるぞ』と言ってました(笑)。でも右でマスターしちゃった」と裏話を披露され、会場は笑いに包まれた。
本作への出演に対してのSexy Zoneメンバーの反応を質問された菊池は「びっくりしてました。3度聞きぐらいされました」と答え「中島(健人)は興奮してましたし、マリウス(葉)は生粋の宝塚ファンなので、僕よりも『安蘭さんと一緒なんだ!』と身震いしてました(笑)。(佐藤)勝利も、同じ時期にドラマや映画を撮っているので、そこで『お互いがんばろうね』みたいなのはありました」と答え、ソロコンサートでシェイクスピアをやっていた中島が観劇することについて「お互いに刺激を与え合えたらと思います」と述べた。
続いてジャニーさんに本作を観てほしかったかと尋ねられると「(上演時間が)約4時間あるので、『長いよ!』と言って絶対に観に来なかったと思います(笑)。逆に今のほうが観てくれてるかもしれないです」と笑いながらも感慨深い表情を浮かべた。
最後に、ハムレットを演じることによるこれからについて、菊池は「これを駆け抜けた時にどう感じるのかすごく楽しみです。それが少しでも自信になっていたらいいですし、課題が見えていたらそれはそれでいいと思いますし、何か絶対に感じると思います。それが千秋楽を迎えて、どういう気持ちを抱いているのか楽しみに演じています」と期待を寄せた。
『HAMLET ―ハムレット―』は、以下の日程で上演される。
【東京公演】9月8日(日)~10月6日(日) 東京グローブ座
【大阪公演】10月9日(水)~10月15日(火) 森ノ宮ピロティホール
【公式HP】http://hamlet2019.jp/
(取材・文・撮影/櫻井宏充)