2018年8月4日(土)東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて舞台『宝塚BOYS』が開幕した。ここでは同作のオフィシャルレポートと舞台写真をお届けする。
『宝塚BOYS』は、1945年から9年間、宝塚歌劇団に男子部が特設された、という史実を元に描かれた作品で、2007年初演、戦後の復興と共に全力で夢に挑んだ青年達の一途な姿を描き、多くのファンを生み上演を重ねてきた。今回、5年ぶり、5度目の上演となる。
今回は、以前に『宝塚BOYS』出演経験のある人気俳優陣が結集した「team SEA」(8月4日~8月11日出演)と、2.5次元の舞台などでも活躍が目覚ましい新世代のキャストが集った「team SKY」(8月15日~8月19日及び各地公演出演)という2チーム制で上演される。さらに、舞台、ドラマで活躍中の実力派俳優・山西惇と、宝塚歌劇団元トップスターの愛華みれが、両チーム共に出演し一座を支える。
物語は、女性だけの劇団・宝塚歌劇団の創始者・小林一三に、男子登用の嘆願書を送った上原金蔵(良知真次)が、歌劇団の稽古場に足を踏み入れるところから始まる。戦争で青春を奪われ、絶望を味わった上原が終戦と同時に描いた夢は、「宝塚歌劇団」の舞台に立つことだった。その願いは小林一三に届き、いずれは男女共に出演する「国民劇」を創りたいと思っていた小林の想いと一致し、男子部の特設に至ったのだった。
稽古場に続々と入ってくる「男子部」のメンバー。電気屋の竹内重雄(上山竜治)、宝塚のオーケストラメンバーだった太田川剛(藤岡正明)、旅芸人の息子・長谷川好弥(木内健人)、闇市の愚連隊だった山田浩二(石井一彰)、そしてプロのダンサー星野丈治(東山義久)・・・。
宝塚歌劇団から男子部の担当として派遣された池田(山西惇)は経理の人間で、「舞台のことはよくわからない」という。池田から「訓練期間は2年。歌劇団の生徒との接触は一切禁止」と厳しく言い渡され、日々レッスンに励むメンバーたち。それぞれが、戦争で負った心の傷を抱えながらも、それを振り払うかのように、夢に向かって必死にレッスンを重ねる。1年程経った頃、新メンバーとしてやって来た竹田幹夫(百名ヒロキ)に驚く山田。竹田は以前からの知り合いだったようだ。
2年、3年・・・と、男子部が宝塚大劇場に立つ機会はなかなか訪れない。ヤケになりフラストレーションをぶつけ合うメンバーを、池田は時に叱咤激励し、寮母の君原佳枝は優しく見守り男子達を励ます。不遇の状況にあっても、舞台に立てる日を夢見てレッスンを重ねる青年達の姿が胸を打つ。
『宝塚BOYS』に2度目の参加となるキャストが多いteam SEAだが、2010年に続き星野役を連投する東山義久を除き、2013年竹内役を演じた良知真次が上原役に、2010年に同じく竹内役を演じた藤岡正明が太田川役に、2013年に竹田を演じていた上山竜治が竹内役に、2010年に竹田役だった石井一彰が山田役に・・・と前回とは違う役に取り組むキャストが多く、新鮮で力強いチームが生まれた。
良知演じる上原は、柔らかい物腰の中にも情熱と決意を秘める。藤岡扮する太田川は、関西弁で明るく、純粋さが光る。上山が演ずる竹内は、熱くまっすぐで、しかしどこかユーモラスさもにじませる。『宝塚BOYS』初出演となる木内は、熱さと涼やかさをあわせ持つ好青年の長谷川を好演。同じく初参加メンバーの百名は、竹田という末っ子キャラが良く似合う。石井は一見強面だが純で心優しい山田を熱演。そして星野演ずる東山は、この上なくプロダンサーとしての説得力を放っている。7人のBOYSのそれぞれの個性が生かされたキャスティングと、キャストの作品に対する深い理解によって、物語がよりリアリティをもって伝わってくる。
更に、今回初出演となる愛華演ずる君原は、寮母としてBOYSを見守りながら、彼らが迷った時に、そっと大事な示唆をし、癒しの手を差し伸べる。愛華の柔らかいオーラが会場を包む瞬間、ほっとした気持ちになる。同じく初出演の山西は、池田というキーマンを演じ、作品の緩急を生み出している。門外漢だと言いながらも、その実BOYSを宝塚大劇場の舞台に立たせようとする池田は、厳しくも深い愛情を秘めている。物語のラストで展開されるレビューは圧巻だ。BOYSが、歌い踊る“男性のレビュー”は、美しさと迫力に、魅了されるに違いない。
舞台上のBOYSの“生き様”に、時に共に笑い、時に共に涙し、宝塚歌劇団の稽古場で一緒に青春を過ごしているかのような、そんな気持ちになる舞台だ。BOYSの夢の行方を劇場で共に追いたい。なお、team SEAキャストは、東京公演の8月4日(土)から8月11日(土・祝)まで出演。8月15日(水)から8月19日(日)までの東京公演後半及び各地公演は、team SKYキャストによる公演となる。開幕にあたり、team SEAキャスト上原金蔵役・良知真次と太田川剛役・藤岡正明からメッセージが届いた。
◆良知真次(上原金蔵役)
『宝塚BOYS』は、前回の4回目から出演させていただき、僕にとっては2度目の出演になりますが、オリジナルを創る気持ちで出演させていただいております。役も、前回の竹内役から今回は上原役になります。team SEAは、過去『宝塚BOYS』を経験してきた人達が多いチームですが、ほとんどのキャストの役が変わり、関係性も変わるということで、1からというよりゼロから創ってきました。いよいよ初日を迎えるということで、初めてご覧になってくださる方、またこの作品を愛して楽しみに待っていてくださるお客様のために、全身全霊で歌って踊りたいと思っております。一度と言わずに二度三度、四度五度六、七、八公演ありますので(笑)。ぜひ劇場に足を運んでいただいて、応援のほど、よろしくお願いいたします。公演ですべて出し尽くしたいと思います。
◆藤岡正明(太田川剛役)
皆が一致団結して本当にこの日を待ちわびておりました。過酷な過酷な稽古の中で、戦ってきた戦友がここにいます。僕にとっては、まさかまた、この『宝塚BOYS』の世界に戻ってくることができると思っていませんでしたので、今回本当に青春が戻ってきたなと思っています。これは俳優としてやってきたご褒美だと捉えて、一公演一公演、大切に大切に演じていきたいと思っております。必ず何か持って帰っていただける作品です。だまされたと思って(笑)、ぜひ劇場にお越しいただきたいと思っております。
『宝塚BOYS』は、8月4日(土)から8月19日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウスにて上演。その後、名古屋、久留米、大阪を巡演する。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】8月4日(土)~8月19日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【名古屋公演】8月22日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【久留米公演】8月25日(土)・8月26日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【大阪公演】8月31日(金)~9月2日(日) サンケイホールブリーゼ
【公式HP】 http://www.takarazukaboys.com/
(文/オフィシャル提供、撮影/桜井隆幸)