2018年8月から9月にかけて、5度目の上演を迎える『宝塚BOYS』。100年の歴史を持つ宝塚歌劇団に、かつて「男子部」があった・・・という、これまであまり語られてこなかった事実にスポットを当て、夢を追った青年たちの青春グラフィティを、今回は「team SEA」「team SKY」の2チームで描く。
本インタビューでは「team SKY」の永田崇人に、本作への出演にまつわる思い、自身の“青春”について、語ってもらった。
――『宝塚BOYS』は5度目の上演になりますね。まず、ビジュアル撮影で燕尾服に袖を通されましたが、着心地はいかがでしたか?
着慣れないので、ちょっと落ち着かないです(笑)。『宝塚BOYS』は、前回公演のDVDを拝見したのですが、僕もこれを着て舞台に立つのだと思うと、すごく、しゃんと背筋が伸びる気がしました。
――出演発表の際、作品の印象について“青春”というキーワードを挙げていらっしゃいましたが、改めて本作について、感じられたことを教えてください。
男の人たちが目標に向かって走る姿・・・こう言うと、簡単に聞こえてしまうかもしれないんですが、甲子園を目指す球児のような泥くささや熱が込められた作品だなと思いました。たくさん汗をかいて、でも、それが美しくて。まさに、僕の想像する“青春”でした。
登場人物にも、観ていてとても惹かれました。特に一幕の最後には、心を持っていかれましたね。自分にないものをたくさん持っている役ばかりだから、今回の出演は、僕にとって挑戦だと思っています。
――演出の鈴木裕美さんとは、作品出演が決まってからお話されましたか?
はい。『宝塚BOYS』という作品は、7人の関係性で成立する物語だから、それを作るのに一番時間がかかると教えていただきました。だから、最初は稽古がなかなか進まないそうで(笑)。でも、関係性作りというのは、演劇をやる上で芯になる部分だと思うので、しっかり、いろいろお話しさせていただきたいなと。そして、先輩方から良いところを盗んでいったりできたらいいなと思います。
――今回の『宝塚BOYS』は、「team SEA」「team SKY」の2チームでの上演です。
「teamSEA」は、以前の上演時にも出演されていた方が多いですが、僕の参加させていただく「teamSKY」では、また違った作品の形をお見せできれば。
――同じチームの皆さんとは、出演が決まってからお話はされましたか?
しました。塩田(康平)くんと(川原)一馬くんとは、ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」で一緒にやってきたのですが、今回の作品では、また違った形でもっとコアな関係性を作りながら、作品の中心部分に入っていける嬉しさがある、みたいなことを話しました。実際に始まってみないとどうなるか分からないですが、すごく信頼しているお二人と一緒ですし、チーム全員、座組全員でたくさん助け合っていけたらと思います。
――2チームだから生まれるものも多いのではと思います。
他の方の芝居を観ていて、「いいな」と思うことはたくさんあります。でも、ただ真似をするのではなく、自分のフィルターを通して、自分のものにする。それは、今回に関わらず、舞台を観に行ったり、稽古でも同じで、「なんで今こうするんだろう?」「どういう意図があるんだろう?」と常に考えていて。いいなと思ったことは、大体次の芝居で使っています(笑)。
――ちなみに、宝塚歌劇団の作品を実際にご覧になったことはありますか?
劇場では、まだ拝見したことがないんです。でも、DVDで『エリザベート』を見ました。当たり前ですが、『宝塚BOYS』で描かれているものとはまるで違う、夢の世界のようでした。
宝塚といえば、華やかなレビューショーも特徴だと思うんですが、僕はレビューショーも舞台の中のお芝居だなって思いました。『宝塚BOYS』の中でも、レビューショーをやらせていただきますが、DVDで拝見した良知さんがすごく素敵で!僕も、楽しくやれたらいいなと思いました。
――宝塚には「清く、正しく、美しく」というモットーがありますが、永田さんのモットーは?
演劇に対してだけではないですが、「笑顔で、元気に、明るく」ということを心がけています。言葉にすると、簡単に聞こえてしまうかもしれないんですけど、いつか「笑顔で、元気に、明るく」が「清く、正しく、美しく」を超える日が来るといいなという気持ちで。
――宝塚では、女性が演じるからこそ“男性のかっこよさ”が際立ちますよね。永田さんご自身は、芝居をする中での“かっこよさ”を、どのように意識していらっしゃいますか?
そうですね・・・ぱっとひらめいたのは、アンニュイな雰囲気の中に“かっこよさ”。色気にともなって、自然と生まれてくるものではないかと思います。ただ・・・マネージャーには、「色気がない」って言われるんですよ。僕なりに、出そう出そうとがんばっているんですが・・・(笑)。
――少し個人的なことをお伺いいたしますが、永田さんにとっての“青春”の象徴はなんでしたか?
“青春”とは言えないかもしれないんですが、象徴と言うならば「勉強」な気がします。進学校に通っていたので、勉強ばかりしていたんですよ。部活でサッカーをやっていたので、そっちも勝ちたいからがんばってはいたんですけど。大学に合格するために、勉強ばっかりしていた学生時代でした。
――俳優になろうと思ったきっかけは?
大それた考えがあったわけではなく、ただ目立ちたがり屋だったんです。ちやほやされたくて(笑)。
僕、大学で何かやりたいことがあったわけじゃなくて、大学に入ることが目標になってしまっていたんです。だから、せっかく入ったのに、勉強が楽しくなくて、合わないなと思ってしまって・・・。人生、楽しいほうがいいなと思っている時に出会った、熊本の地方紙でカメラマンをやっている方に「じゃあ、俳優になりなよ」と言われたのを真に受けたところから、じゃあ東京行くぞ!って大学を辞めて、この道を目指し始めました。・・・すごく単純なんです(笑)。
――それはちょっと意外なお答えでした。
俳優を目指したといっても「芸能人になりたい」とか「テレビに出たい」とか、漠然としていて。そんな中で、「東京ワンピースタワー」で、ライブアトラクションに出る機会をいただいたんです。そこで、演出家のウォーリー木下さんと出会って、舞台のおもしろさを知りました。舞台をいくつか経験させていただく中で、一筋縄ではいかないおもしろさを感じて、そこにすごく惹かれるようになって。今では「お芝居のことを考えてる時間が一番幸せ」と思うくらい、のめり込んでいます。
――ウォーリー木下さんとの出会いは、永田さんの中で一つ大きなターニングポイントになったんですね。
そうですね。その後、ウォーリーさんの演出するハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」で、孤爪研磨役と出会わせていただいたことも大きかったと思います。「ハイキュー!!」って、これぞ“青春”という熱量が詰まった作品じゃないですか。そんな作品の中で、孤爪研磨という役は、真逆とも言えるスタンスの人物だったので、「この作品の中で、この役を表現するためにはどうおすればいいんだろう?」と真剣に考えたことが、僕が演劇に“ハマる”上で大きなきっかけになった気がしています。
――考え続けるって、前に進む原動力ですよね。
どこかで、森山未來さんが「役作りって“こうやって作ります”と事前にやっていくものじゃない」という趣旨のことをお話されていたんです。演劇って何だろうと考えた時に、この話が思い出されて。役と向き合う上で、一番おもしろいのは稽古場であり、生まれる場所なんですよね。役に対しての根っこは持ちつつ、何が起きるか分からない稽古場に行く。考えることは“化学反応を起こすための準備”と思って、すごく大事にしています。
・・・僕の青春、もしかしたら“今”なのかもしれないですね。今が一番、人生の中で一生懸命かもしれない。
――永田さんは、もうすぐ25歳。これからの目標は?
俳優として、「永田崇人」の名前をもっと大きくできたらいいなと思っています。最近、「永田崇人」が自分だけの名前じゃないなと実感することが増えてきたんです。「永田崇人」はファンの皆さんの支えや、自分の発言、行動のすべてで成り立っているものだと思うので、その存在をもっと大きくしていけたら嬉しいなと思います。そしてやっぱり、もっとお芝居が上手くなりたい。お客さんと一緒に、いい作品に巡り合えたらいいなと思います。
まずは、『宝塚BOYS』で「team SKY」良かったと言われることが目標です。2チームあるからといって、比べるものではないんですけど、負けないように。観に来てくださるお客様と一緒に、青春を体感できればと思います。
◆公演情報
『宝塚BOYS』
【東京公演】8月4日(土)~8月19日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【名古屋公演】8月22日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【久留米公演】8月25日(土)・8月26日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【大阪公演】8月31日(金)~9月2日(日) サンケイホールブリーゼ
【原案】辻(辻) 則彦「男たちの宝塚」(神戸新聞総合出版センター刊)より
【作】中島淳彦
【演出】鈴木裕美
【出演】
<team SEA>
良知真次、藤岡正明、上山竜治、木内健人、百名ヒロキ、石井一彰、東山義久
愛華みれ、山西惇
<team SKY>
永田崇人、溝口琢矢、塩田康平、富田健太郎、山口大地、川原一馬、中塚皓平
愛華みれ、山西惇
【公式HP】 http://www.takarazukaboys.com/
(撮影/エンタステージ編集部)