俳優集団D-BOYSによる演劇ユニット公演「Dステ」では、シェイクスピア作品をオールメール上演するシリーズとして、演出に青木豪を迎えこれまでに『ヴェニスの商人』(2011年)、『十ニ夜』(2013年)が上演してきた。シリーズ第3弾に選んだのは、シェイクスピア喜劇の中で一番幸福な物語とも言われる『お気に召すまま』。2016年10月14日(金)より東京・本多劇場にて開幕したこの公演の模様をレポートする。
今は亡き栄光の騎士サー・ローランド・ド・ボイスの末弟オーランドー(柳下大)は、家督を継いだ長兄オリヴァー(三上真史)からの不遇な扱いに不満を抱えていた。一方ロザリンド(前山剛久)は、父をその弟であるフレデリック公爵(松尾貴史)に追放されるが、宮廷で暮らすことを許され、公爵の実娘シーリア(西井幸人)と仲睦まじく過ごしていた。
ある日、オーランドーは公爵主催のレスリング大会に出場し優勝する。そこで、試合見物に来ていたロザリンドと出会い、二人は一瞬で恋に落ちた。しかし、ロザリンドは突然公爵から追放を言い渡されてしまう。そこで彼女は、男装して身分を隠し、シーリアと道化のタッチストーン(牧田哲也)と一緒に父が暮らす場所へ向かった。オーランドーも兄が自分の命を狙っていることを知り、身の安全を図るため家を離れることに。二人が向かったのは、奇しくも同じ「アーデンの森」だった・・・。
シェイクスピア作品は様々な形で上演されているが、この作品はドストレートに向き合っていると感じた。小難しさを感じさせない青木の演出は清々しく、シェイクスピア作品の持つ魅力を明快に伝えてくれる。
オーランドーを演じる柳下は、恋に心奪われる青年を好演。何よりも、台詞を届ける力が強く、培われた表現力の豊かさを感じさせた。
そして前山は、オールメールの見どころの一つである“女性”を見事に演じきっていた。表面的に美しいだけでなく、気高さや強さといった精神的な美しさも秘める。同じく女性役を演じる西井は、前山とは違った“女性らしさ”を体現。オールメールの醍醐味が詰まっている。
物語はオーランドーとロザリンドの恋模様を軸に展開していくが、二人を取り巻く登場人物たちも大変個性豊かだ。女性役は前山と西井の他に、オードリー役として遠藤雄弥、フィービー役として山田悠介が務めている。こちらも、それぞれ存分に存在感を発揮。
三上の変わり身の早さや牧田の道化っぷりもストーリーにアクセントをつけてくれるし、ジェイクイズ演じる加治将樹の自由さと豪胆さを兼ね備えた芝居は非常におもしろい。そして、大久保祥太郎演じるシルヴィアスの、恋に浮かされた目も印象に残る。
そんな若者たちの芝居を、石田圭祐、松尾貴史、鈴木壮麻というベテラン勢がしっかりと支え、どこを切っても見応えたっぷりな仕上がりだ。
「演劇の楽しさ」をそこかしこにしのばせてある本作。仲間に対する信頼やリスペクトが磨き上げた芝居と、その場でしか味わえないハッピーな高揚感をとくと味わってきてほしい。劇場に訪れる際は、ちょっとだけ時間に余裕を持って足を運ぶことをおすすめする。
Dステ19th『お気に召すまま』は、10月14日(金)から10月30日(日)まで東京・本多劇場にて上演。その後、山形、兵庫で公演を行う。日程の詳細は、以下のとおり。
【東京公演】10月14日(金)~10月30日(日) 本多劇場
【山形公演】11月12日(土)・11月13日(日) シベールアリーナ
【兵庫公演】11月19日(土)・11月20日(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール