シェイクスピアの傑作「ヴェニスの商人」を鄭義信(作・演出)ならではの視点から捉えなおし、悪人シャイロックを物語の中心に据えた音楽劇『歌うシャイロック』が東京・サンシャイン劇場で上演中。本作には、岸谷五朗、中村ゆり、岡田義徳、和田正人、渡部豪太、福井晶一、マギー、真琴つばさらが出演している。
『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』など数々の名作を世に送り続ける鄭義信が、シェイクスピアの傑作「ヴェニスの商人」を鄭義信ならではの視点から捉えなおし、悪人シャイロックを物語の中心に据えた音楽劇『歌うシャイロック』。悪名高い高利貸しで町の嫌われ者ながら娘ジェシカ(中村)のことを一心に考えているシャイロック(岸谷)と、親友パッサーニオ(岡田)のため自身の肉1ポンドを担保にシャイロックから金を借りるアントーニオ(渡部)らを中心に物語が描かれている。
本作の特徴といえばやはり登場人物全員が関西弁であること。コテコテの“陽気なおっちゃん”なシャイロックと威勢のいいジェシカ。ただならぬ関係性(?)のパッサーニオとアントーニオ、ジェシカと恋にして駆け落ちを狙うロレンゾー(和田)、父親から莫大な遺産を譲り受け多くの男たちに求婚されてきたものの父が遺言で残した求婚試験のせいでいまだ独身のポーシャ(真琴)と女中のネリッサ(福井)。
関西弁で軽快に、歌や踊りも交えてそれぞれの思いや事情が紡がれ、くすっと笑えるような楽しい雰囲気で話は進んでいくが、途中からはシェイクスピア作品らしい重厚なストーリーが展開されていく。駆け落ちに成功したジェシカのその後や、覚悟を持って裁判に臨むシャイロック・・・正直『ヴェニスの商人』を見たときに考えたことのなかったシャイロックの事情をこう見てみると、何とも言えない気持ちになる。
自分たちが思い描いていた“悪者”とは違うのかもしれない、そう思わされる。それは登場人物が関西弁であることに加え、岸谷が親しみのあるシャイロックを体現していて共感しやすいキャラクターになっているのも要因だろう。第1幕の終盤から第2幕、段々と心が締め付けられるような展開が続き、目が離せなくなった。そして、シャイロックに対してこんなに好意的な感情になんてと驚くことになる。
そんな緊張感あふれる終盤でも、真琴と福井のポーシャ&ネリッサは程よい緩和をくれる。第1幕では求婚試験のせいで“いかず後家”となってしまったポーシャが嘆きながらも「本当に女に男は必要なのか」とネリッサに問いかけ歌われる楽曲や、第2幕で夫となったパッサーニオの為の作戦を思いついた時のナンバーでは見事なコンビネーションで素晴らしい歌とダンスを魅せてくれる。本作の見どころのひとつとなっている。第1幕80分、第2幕115分(休憩25分)という時間ながら、緩急のある物語展開で最後まで楽しむことができるだろう。
公演情報
上演スケジュール
【京都公演】
2023年2月9日(木)~2月21日(火)
南座
【福岡公演】
2023年2月25日(土)~2月27日(月)
博多座
【東京公演】
2023年3月16日(木)~3月26日(日)
サンシャイン劇場
出演
シャイロック役:岸谷五朗
ジェシカ役:中村ゆり
パッサーニオ役:岡田義徳
ロレンゾー役:和田正人
アントーニオ役:渡部豪太
マーシャリー・パルサザー役:小川菜摘
ラーンスロット役:駒木根隆介
ネリッサ役:福井晶一
モロッコ大公・公爵・グラシアーノ役:マギー
ポーシャ役:真琴つばさ
車貴玲
五味良介
曽我廼家桃太郎
武田亮汰
谷田奈生
西村聡
羽鳥翔太
平井珠生
平岡亮
山村涼子
スタッフ
【脚本・演出】鄭義信
ほか
企画・製作
松竹株式会社
公式リンク
公式サイト:https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202302_minamiza/