2015年10月7日(水)より、東京・サンシャイン劇場にて幕を開けたタクフェス第3弾『くちづけ』。タクフェスとは、2012年に惜しまれつつ解散した東京セレソンデラックスで作・演出を務めていた宅間孝行が仕掛けるエンターテインメントプロジェクト。第3弾となる今回は、2010年に東京セレソンデラックスが上演した作品の再演になる。同作は、2013年に堤幸彦監督により竹中直人、貫地谷しおり主演で映画化もされた。
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初日前の公開ゲネプロ後には囲み取材が行われ、今回も作・演出を手掛ける宅間のほか、金田明夫、森田涼花、大和田獏、かとうかず子、柴田理恵、上原多香子が登壇。初日を迎えるにあたり、宅間は「まずは初日のお客さんに100%のものを。これにお客さんの笑い声や空気感も加えて、120%のものにしていきたいなと思っております」と意気込んだ。
物語の鍵となる知的障がいを持つ娘・マコ役は500人以上が参加したオーディションから森田が選ばれた。「あっという間に稽古が終わって本番で。先輩方についていこうと心に決め、ひたすら後姿を見て追いかけてきた感じです」と振り返る森田。マコは30歳、心は7歳の役だが、実際は「23歳です…」とはにかんだ。
また、ちーちゃん役を演じる町田萌香は、20歳の時に9歳と診断されたという知的障がいを持つという。宅間はオーディションで彼女と出会い、「一緒に仕事をすべきなんじゃないか」と思い、新たな役として加えたと明かす。「ご家族の方にいろいろ話を聞いたり、稽古場での彼女の進化を目の当たりにしてまして。(一緒に演じてみて)何を持って障がいというのか、僕らも考え方や見方がまた変わりました」と、初演や映画版よりさらに深みを増した物語の姿を垣間見せた。
これが約1年ぶりの仕事復帰となる上原は、「稽古の一ヶ月間がすごく濃くて、本当にあっという間でした。ご覧になった皆さんにどう感じてもらえるか本番がすごく楽しみです。(今は)お話を頂いてからやっと今日を迎えられるという喜びでいっぱい。待っていてくださるお客様に早くお会いしたいなと思っています」と笑顔を見せた。
稽古場では、上原が炊き込炊飯器を持ち込み、炊き込みご飯を振る舞ってくれたことがあったという。「その炊飯器が、そのまま稽古場に置かれたままで(笑)だから、お米とごはんのお供を持ってきて、みんなでごはんを食べるようになった」(宅間)というエピソードも明かされ、まさに“同じ釜の飯を食う”仲間として培ってきた座組みの温かな雰囲気がうかがえた。
最後は、主演の金田が「これから寒い季節まで、全国いろんなところを回ります。5年前からさらに追及され、排気量が大きくなった芝居になっていますので、皆様楽しみになさっていてください」と締めくくった。
知的障がいを持つ人たち楽しく暮らすグループホーム“ひまわり荘”。そこへある日、かつて大ヒット作品を一度だけ世に送り出した漫画家(金田)が、娘のマコ(森田)を連れてやってきた。純真なマコと、ひまわり荘で暮らす一際明るく元気なうーやん(宅間)は心を通わし、マコの誕生日であるクリスマスに“結婚しよう”と指切りを交わす―。
実際にあった話を元に、エンターテインメント性ある仕上がりになっている作品だが、明るさの中に現実が含む様々な問題に真正面から向き合っている。社会派ドラマの枠を超え、優しくも切ない物語に思わず目頭が熱くなった。誰しもが幸せに生きていける、理解ある社会の実現を願ってやまない。
タクフェス第3弾『くちづけ』は、東京・サンシャイン劇場にて10月7日(水)から10月18日(日)まで上演されたのち、地方公演が予定されている。
公演日程は下記の通り。
10月7日(水)~10月18日(日) 東京・サンシャイン劇場
10月27日(火)・10月28日(水) 北海道・わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
11月1日(日) 富山:富山県民会館
11月3日(火・祝) 新潟・りゅーとぴあ・劇場
11月11日(水) 長野・まつもと市民芸術館
11月14日(土)・11月15日(日) 福岡・キャナルシティ劇場
11月17日(火) 島根 ・島根県民会館 大ホール
11月20日(金)~11月29日(日) 大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
12月5日(土) 宮城・仙台電力ホール
12月11日(金)~12月13日(日) 愛知・刈谷市総合文化センター アイリス 大ホール