中屋敷法仁率いる劇団柿喰う客、約1年半ぶりの本公演『天邪鬼』観劇レポート

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柿喰う客の新作本公演『天邪鬼』が、2015年9月16日(水)に東京・下北沢 本多劇場にて幕を開けた。柿喰う客は、若手演出家として注目を集める中屋敷法仁を中心に結成された劇団で、女優だけでシェイクスピアを上演する“女体シェイクスピアシリーズ”、子どもと大人が一緒に楽しめる“こどもと観る演劇プロジェクト”といった様々な活動を行っている。本公演が行われるのは、『世迷言』(2014年)以来約1年半ぶり。

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「よく学び、よく遊び、よく殺せ。今、壮大な“戦争ごっこ”が始まる―」シンプルなセットが組まれた劇場に、今回は七味まゆ味、玉置玲央、永島敬三、大村わたる、葉丸あすか、中屋敷法仁と出演者は劇団員のみで挑む。繰り広げられていくのは、他愛もない“ごっこ遊び”だ。荒廃した世界、混沌とした時代の中で、無邪気に仲良く“戦争ごっこ”に熱狂する子どもたち。玉置、七味らのしなやかな肉体が、こどもの果てしないイマジネーションを表現していく。なにより久しぶりに、役者として舞台に立つ中屋敷の姿も観ることができる。

『天邪鬼』

その中屋敷は、上演にあたり「いつの間にか、我々は現実世界というものを失ってしまったのではないだろうか。この世界の当事者であるということの実感を保てなくなっているのではないだろうか。今、現実の世界を奪還すべく、さらなる虚構の空間を築く必要を感じる。この演劇で、私たちの現実を取り戻したい」とコメントを寄せている。

『天邪鬼』

玉置演じる“あまのじゅんや君”が、朗々とした声で「この指とまれ」と繰り返す中、「桃太郎」「シンデレラ」といった寓話と並列しながら、センシティブな台詞が矢継ぎ早に飛び出す。最初は結びつかなかった単語も、物語が進むにつれて想像力が思考力を追い抜き、作品の世界へ引きずり込まれるような感覚がしてぞっとした。

『天邪鬼』

客電がつき、我に返る。きっとその瞬間が、虚構空間と現実世界の境界だったのだろう。時間は90分しか経っていなかったが、果てしないイマジネーションの世界に流れる時間は、その何倍も密度が濃かった。“バンバンバン”拳銃に見立てられた指先はまっすぐ、その日、その時、その席にいる他でもない観客自身に突きつけられているのではないだろうか。

『天邪鬼』

柿喰う客『天邪鬼』は、東京・下北沢 本多劇場にて2015年9月23日(水・祝)まで上演中。その後、9月25日(金)から9月28日(月)まで兵庫・AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)、9月30日(水)から10月1日(火)まで岐阜・大垣市スイトピアセンター文化ホールにて上演される。

『天邪鬼』

◇柿喰う客、10万人動員宣言!!◇
柿喰う客は10周年を迎えるにあたり、「10万人動員宣言」を行った。“柿食う客の舞台を10万人のお客様に届けたい”と、一部上演作品の戯曲・動画の全編公開する「となりの柿喰う客」や、全国の演劇部・演劇サークルに資料を無償提供する「めこちゃん宅急便」、まだ柿喰う客を知らない方と出会うために作られたポストカード「柿の種」や、劇団マスコット“めこちゃん”があしらわれたクリアファイルの配布などを行っている。まだ公演を見たことがないという方は、是非、柿喰う客という、演劇を“生きる”存在に触れてみてほしい。

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