柿喰う客 玉置玲央インタビュー「僕は“演劇”を生きている。いつかは“演劇”を散歩するくらいになりたいです(笑)」

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来年結成10年目を迎える劇団「柿喰う客」の最新作『天邪鬼』が9月16日より東京・本多劇場を皮切りに幕を開ける。“怪優”と評される劇団員の玉置玲央は、高い身体能力と幅広い役柄をこなす演技力であらゆる団体の客演としても活躍する。小劇場界で類稀に見る存在感と世界観を確立した劇団と一俳優の“今”とは? 稽古に入る前の某日、劇団の歴史から役者としての生き様までを赤裸々に語ってくれた。

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――来年は、劇団結成10年目を迎えられますね。その前の新作公演ということで、ご心境はいかがでしょうか? やはり意気込みも違いますか?

いつもと変わらないつもりでやろうとは思っているんですが、今回1年半ぶりの新作なんですよ。その間も原作があるものでの公演はあったんですが、僕自身は出られなかったりで。久しぶりの参加で、かつ中屋敷(法仁)の書き下ろし。そういう意味では、いつも通りではいられない部分もありますね。

――玉置さんは客演でも本当に多くの作品で様々な役を演じられていますよね。久しぶりの劇団公演はやはり、ホームという感覚はあるんでしょうか?

あんまり変わらないですね、他の客演先と。僕自身あまり分けて考えていないんですよ。劇団は劇団、客演は客演っていう風に。全部が自分の演劇活動で、その枠の中で自分がどうやるかっていう。環境という意味でのホーム感はあっても、お芝居をする上ではあまり変わりませんね。

――今回の役どころはどうですか? チラシを拝見したところ、学園モノで、そしてかなりハードな感じかなと思ったんですが(笑)

そうですね。(公演チラシを指差して)実はね、今はまだ僕らもみなさんと同じで、この情報しかわからないので(笑)、僕自身も今回どんな役をやることになるんだろうって楽しみにしています。ただ、昔の柿喰う客って、学生とか生徒とか「教育」に関わる人間が必ず出てきてたんですよ。若かったっていうのもあるかもしれないんですけど。それがいつからか出てこなくなったなぁと思っていて…。

――でも今回はこうしてみなさん制服を…!!(チラシを見ながら)

そう! なので、教育に関連する人物が出てくるんだと思うんです。あくまで予想なんですけど(笑)そこは原点回帰じゃないですけど、なんか面白いですよね。それだけではなく、ここ2,3年で扱っている「戦争」や「人が人を脅かす」っていうことも融合しているような感じで。僕らの歴史の昔と今が融合した作品になるのかな?っていう僕の予想です!

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――このタイミングで劇団員だけでの公演を行われるのはなぜだったのでしょう?

3年前にも一度、劇団員だけの公演があったんです。みんながどうかはわからないんですけど、その時に感じた感覚というか、稽古や公演での手応えがすごいしっくりきたんですよ。僕自身が演劇をやる上で。あれをもう一回やりたいねっていうのがこのタイミングだったのかなって思います。もちろん、客演さんに出て頂くことの尊さや良さってすごいあるんですけど、劇団員だけで何ができるのかっていうのはずっと探っていて。なので、このタイミングでできるのはいいなと思います。

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柿喰う客は絶対王政。でも市民権はありますよ(笑)

――来年の10周年を前に振り返っていただきたいのですが、心に残っている出来事や作品は?

いろんな人から声をかけていただくんですよ。「柿、もう来年10年になるのか」とか「もっと長くやってると思ってた」とか。そんな中でよく言われるのが、「昔の柿喰う客って大人数出てドタバタ暴れまわって、最後はみんなで歌って踊って終わる。そんな感じの劇団だったよね」っていうことなんです。

――年月の中で、作風というか劇団の色も変わってきたということなんでしょうか?

僕たち自身はあまり意識はしてないんですけど、人に言われて振り返った時に感じますね。今回の公演の話とはちょっとズレてしまうかもしれないんですけど、そういうドタバタやってた頃の再演もまたやりたいなっていうのはあります。

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――歳を重ねたり、経験が増えることで変わっていく部分がまた違った色になるんでしょうね。それは長くやられている劇団ならではですね!

そうですね。振り返ると、若さに任せて色々やれてたことに立ち返っていくのもいいなって思います。それはもちろん比較できるだけ“積み上げてきた今”があるからなんですけど。だから、どれが心に残っているっていうよりは、そういう劇団の歴史そのものについて考えています。

――次はどういう作品をやろうとかこういう作風にしようっていうのはみなさんで話し合われるんですか?

いや、僕らは案外しないです。うちは主宰の中屋敷法仁の絶対王政で…(笑)
でも劇団のコンセプトとしては、中屋敷法仁の作・演出作品を上演していこうっていう団体なのでいいんです。大切なのは僕ら劇団員がそれに興味を持てるかどうかっていうことなんですよね。なので、次はこういうのやろうとか、こんな役やりたい!っていうのはあまりないですね。役者としてどれだけ応えられるかっていうことに徹しています。でも、市民権がないわけじゃないので、納得できないことや言いたいことは全然言いますよ!(笑)

――初めて観られる方もいらっしゃると思うのですが、ズバリ、「柿喰う客」の魅力とは?

なんですかね・・・でも、一時期ちょっとしたところで“デートに使える劇団”って言われていたことがありました。それは、なんかいいなって思いました(笑)

――演劇人口を増やすにあたっては大いなる魅力ですね!玉置さんはじめ、身体性を目の当たりにするというか、声を生で聴く、動きを生で観るっていうのは圧倒的な意味がありますよね!

確かに初めて観る人に一番わかりやすいのはそこですね。僕らはライブを、“生きる”ってことをやってる。人類すべからく生きているんですけど、ぼくらはそれを舞台でやってるから。瞬間瞬間を、刹那的に“生きている”というのを2時間分やっているつもりなんです。そういうライブならではのエネルギーや生命力は魅力だと思います。とくに柿喰う客はそれが強いと思うので。「最近くさくさするな」とか、「ちょっと疲れてるわ…」っていう人が観て楽しくなってくれたら。「楽しい」っていうのは僕自身のテーマでもあるんですけど。

――なるほど。深い意味での“ライブ”なんですね。

なんでもそうですけど、楽しくないとやっぱりいけないですよね。僕らは自身が「楽しい!」でやっているので、観た人にもそういう風に思ってもらえたらと思うんです。元気になりたい人に来て欲しいですね。

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たくさんの人たちとの出会いで変わった演劇観

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――ご自身でここは変わったと思うことはありますか?

ざっくり言うと演劇観そのものが変わったと思いますね。がんばって演劇を続けていかなきゃ、観てもらわなきゃということをやってきてたんです。でも、いつからか、「そんながんばらなくてもいいんじゃない」っていう風になってきたんですよね。これは先輩方の影響が強いと思うんですけど。そこが如実に変わったところだと思います。がんばって演劇を“やる”んじゃなくて、演劇を“生きる”というか。

――そういった感覚には、やはりそれだけの場数を踏まれないとなれないですよね!

そうですね。経験という点ももちろんありますし、自分の出る舞台の種類が年齢とともに変わってきたという部分も大きいと思います。若い時は同世代ととにかく動いて汗をかくっていうような感じだったんですけど、経験を重ねる毎に「これが自分の生活になっていく」っていう感覚になっていきました。

――何か、これ!というような大きなきっかけがあったんでしょうか?

というよりは、薄々感じていくものなんですけど、共演者の方や演出家の方たちの出会いの中で徐々に強くなっていくんですよね。僕が出会った人はみんな呼吸するように演劇する人たちばかりだったんです。がんばんなくてもいいよって言われているような気がしました。

――特にこの人に影響を受けたという方はいらっしゃるんですか?

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栗山民也さん、吉田鋼太郎さん、麿赤児さん、手塚とおるさん、北村有起哉さん…
あげたらきりがないですね。本当にたくさんの方がいらっしゃいます。
麿さんは、誰よりも早く劇場に来られて何をするでもなく舞台をただ歩いてるかと思ったら、開演ギリギリまでタバコ吸って、ふわ~って舞台に出ていくんですよ。この人は演劇を“散歩してる”んだなあって思いました。圧巻でした。そんな人たちを目の当たりにしたら、やっぱり憧れるじゃないですか、青年玉置は!
鋼太郎さんにはコテンパンにやられたりもしたんですけど(笑)

――コテンパン!? どんな風に?

同世代ばかりでなく、年代の上の方と一緒の舞台に立っていくようになった初めの頃にご一緒したんですけど、多分その頃ちょっと天狗になってたんですよね。同世代の中ではできる方だと思っていたんだと思います。そこをもう本当にボロクソに言われたんですよ。だけど、僕その時に純粋に、これは愛だ!って思ったんです。内容は辛辣だったんですけど、言ってくださることがもう愛だって。

――熱いエピソードですね。

その後に別の舞台に出た時に、鋼太郎さんが観にいらしてたんです。それで終演後に僕の姿を見つけて「玲央、すごいよくなった! 説教した甲斐があったな」って言って下さって。コテンパンにやられてから2年くらい経ってたと思うんですけど、やってやった!という気持ちとありがとうございました!という気持ちでいっぱいでしたね。あれはグッときました。一つのターニングポイントです。

――たくさんの人との出会いによって、ぐっと変わられた時期なんですね。

そうですね。そんな人たちと出会って、「こういう風に演劇やっていけたら楽しいんだろうな」っていう憧れが自分の演劇観を変えていきましたね。決して遊んではいないけど、とにかくみんな演劇を生きている。なので僕も、いつかは演劇を散歩するくらいになれたらいいんですけど(笑)。

――最後に、玉置さんにとって演劇ってズバリどんなものですか?

最終的に作品の話に戻ってくるんですけど、演劇って虚構ではあるから、それを僕たちがどれだけ信じてあげられるか、真実としてやれるかっていうことにかかっていると思うんです。そこに嘘がなかったら成立する世界。それも演劇を生きるってことだと僕は思っています。

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◇玉置玲央(たまおき れお) プロフィール◇
1985年3月22日生まれ。東京都出身。劇団「柿喰う客」の中心メンバーとして活躍。その他、『戯作者銘々伝』、『朝日のような夕日をつれて2014』、『赤鬼』、『SEMINAR-セミナー-』、『真田十勇士』、『飛龍伝』など客演多数。NHK連続テレビ小説『花子とアン』、CX『探偵の探偵』、NHK『美女と男子』など映像出演も増え、活動の幅を広げている。
今後は『また愛か』、『ライチ☆光クラブ』への出演が控える。

柿喰う客『天邪鬼』

◇柿喰う客『天邪鬼』 公演情報◇

【作・演出】
中屋敷法仁

【出演】
七味まゆ味
玉置玲央
永島敬三
大村わたる
葉丸あすか
中屋敷法仁

【公演日程】
2015年 9月 16日(水)~9月 23日(水・祝)  東京・下北沢 本多劇場
2015年 9月 25日(金)~9月 28日(月)  大阪・伊丹 AI・HALL
2015年 9月 30日(水)・10月 1日(木)  岐阜・大垣市スイトピアセンター

【あらすじ】
よく学び、よく遊び、よく殺せ。今、壮大な“戦争ごっこ”が始まる。
荒廃した世界、混沌とした時代の中で、無邪気に仲良く“戦争ごっこ”に熱狂するこどもたち。両手を拳銃に見立て、互いの急所を撃ち合ううちに、やがて指先から虚構の弾丸を放つようになる。イマジネーションが生み出したその弾丸は、ホンモノの人間を撃ち殺し、戦車を破壊し、戦闘機を落とす。
大人たちは、こどもたちのイマジネーションを操る能力に注目し、能力開発の為に新たな教育システムを採用する。その為に採用されたのが“演劇”。
今やすべての教育機関で、こどもたちは強制的に演劇を学ぶ。ホンモノの“戦争ごっこ”の為に。

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