世田谷パブリックシアター主催の舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』が、2015年2月1日(日)、東京・シアタートラムにて日本初演を迎えた。イラク戦争(2003年~)の爪痕が生々しく残る時期に書かれた本作は、2005年にイギリスで初演され、荒廃した世界観と、挑発的で過激な描写から観客を騒然とさせた作品である。
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本作に出演する高橋一生(兄・エリオット役)と瀬戸康史(弟・ダレン役)、そして演出の白井晃から初日公演を終えた現在の心境についてコメントが届いた。ステージ写真と共にご覧いただきたい。
高橋一生「2005年に発表されたこの作品を預言書のようだと感じていますが、そのような過酷な世界になったとしても何を守り、大切にし、信じて生きていくか。最後の牙城は人間の愛だと思いました。また改めて舞台に立って感じたのは、これは希望の物語だということです。俳優として、希望の物語にしなくてはいけないのだという使命を感じました。お客様に少しでも伝わればと思います」
瀬戸康史「この作品はタイムリーで、世界で起こっていることと重なっているようでもあります。自分が出演していることは運命的で、意味がある。そして責任があると感じられる作品です。全27公演をひとつひとつ大切にしていきたいですし、その時、ダレンがどう生きているかということを演じていきたいと思います」
――それは今なのか近い未来なのか。暴力や略奪がはびこる街のボロボロの部屋に、エリオット(高橋)とダレン(瀬戸)の兄弟がやって来る。早速パーティーの準備にとりかかるが、そこにひとり、またひとりと集まってくる。そしてついに始まったパーティーは思わぬ展開に――。
白井晃「初日が終わってこのように震える思いになったのは初めてです。この作品が持っている意味、演劇が持っている意味というものを改めて感じることができました。俳優たちが必死にこの時間を生きようとしているのを見て、演出家として非常に嬉しく思いましたし、一緒に舞台上で息をしているような気持ちになりました。凄い作品だと改めて思いましたし、多くの観客にこの空間を感じて色んな感想を持ってもらいたい、そのように思いました」
白井は「本作を彼が書いた背景には、アメリカが彼の母国イギリスらと共闘したイラク戦争への強い憤りがあるのです。この作品を書くことは、一部の権力者により実行された無意味な戦争に対するクリエイターとしてのフィリップの抗議であり、闘いだったのでしょう」と語る。そして初演から10年たった今、『マーキュリー・ファー』の世界に追い付き、凌駕しそうですらある現実を目の当たりにし「これこそ、今上演すべき作品」と感じた白井は日本での上演を決意したという。
リドリー作品の多層的な魅力を引き出す兄弟役を演じるのは、高橋一生と瀬戸康史。この他、中村 中、水田航生、小柳 心、小川ゲン、半海一晃、千葉雅子が出演する。
舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』 は、2015年2月22日(日)まで、東京・シアタートラム、2015年2月28日(土) 兵庫・兵庫県立芸術文化センター、2015年3月8日(日) 福岡・キャナルシティ劇場にて上演される。
撮影:細野晋司