イギリスの劇作家フィリップ・リドリーによる戯曲『マーキュリー・ファー Mercury Fur』が、2015年2月日本初演を迎える。演出は日本で唯一リドリー戯曲を手掛ける白井晃。そして、舞台はもちろんTVや映画でも活躍する実力派俳優・高橋一生や、D-BOYSの瀬戸康史といった注目のキャストが顔をそろえ、美しく残酷な世界を描き出す。
舞台は、暴力や略奪がはびこる街。兄エリオット(高橋)と弟ダレン(瀬戸)がとある“パーティー”の準備をしていると、そこに様々な人々が訪れる。異常なほど饒舌な会話を交わしながらもそれぞれの役割をこなしていくが、“パーティープレゼント”の異変により思わぬ展開を迎えてしまう…。荒れ果てた世界の中であぶりだされる人間の本質、そして生きることと愛を渇望する人間の美しさが描かれた物語だ。
映画監督としても知られるリドリーは、人間の凶暴性や本能をむき出しにするような世界観で“第2のデヴィッド・リンチ”とも称されている。演出を手掛ける白井とのタッグは、『ピッチフォーク・ディズニー』(2002年)、『宇宙でいちばん速い時計』(2003年)、『ガラスの葉』(2010年)に続き、本作が4度目となる。そんな白井でさえ最初に読んだときは「彼の作風は理解していたつもりだったが、ここまできたか、と。とても手が出せないと思った」と評すほど人間の残虐性を過激に描いた本作。2005年にイギリスで初演されて以来10年が経つが、白井は現代の日本とそこに生きる若者たち、そして『マーキュリー・ファー』の世界と登場人物に通じるものを見出し、「今上演すべき作品」と語っている。
高橋にとって白井の舞台は2012年の『4 four』に続き2作目となるが、過激な作品に挑むことについて「白井さんの演出する作品はスノードームのような美しさがある。白井さんでなければ、このハードで暴力的な内容はできないのでは」と白井への信頼を感じさせるコメント。また、白井の舞台に初出演となる瀬戸は「自分が変われるきっかけになるのではと思った」とその意気込みを明かしている。くしくも高橋は今年のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』で黒田家の家老、井上九郎右衛門役、瀬戸は来年の大河ドラマ『花燃ゆ』で松下村塾の四天王のひとり、吉田稔麿役を演じる。何かの縁を感じる二人がどのような化学反応を見せるか期待したい。
出演は、高橋一生、瀬戸康史、中村中、水田航生、小柳心、小川ゲン、半海一晃、千葉雅子。
舞台『マーキュリー・ファー Mercury Fur』は、2015年2月1日(日)から2月22日(日)まで東京・シアタートラム、2月28日(土)は兵庫県立芸術文化センター、3月8日(日)は福岡・キャナルシティ劇場にて上演予定。チケットは発売中。