1947年に出版された坂口安吾『白痴』の舞台が2018年月28日(水)に東京・CBGKシブゲキ!!にて幕を開ける。物語の舞台は戦争の真っただ中。映画演出家の青年伊沢が暮らす街の人々は一癖もふた癖もある人物たちで、戦時中を逞しく厚かましく生きている。更に隣家は街の人々から「気違い一家」と呼ばれる住人であり、伊沢は「人間」という存在に失望しながら暮らしている。ある日伊沢は家の押し入れの中に、隣の家の妻、サヨが入り込んでいるのを発見し・・・。
主人公の伊沢を演じるのは、これが舞台初主演となる小早川俊輔。候している仕立て屋の主人は、佐伯亮が務める。稽古初日、初めての本読み直後の二人に話を聞いた。
観劇後に見えてくるものを、僕たちが創る
――小早川さんの主演舞台決定は、2017年末に行われた『る年祭(ゆく年く・る年冬の陣 師走明治座時代劇祭)』に日替わりのゲストとしてご出演された際に、発表されたんですよね。
小早川:そうなんです。実は、『る年祭』にゲスト出演すると聞いた時は、まだこの舞台のことはまったく発表されていなかったのと、る・ひまわりさんの作品に出させて頂くのもこれが初めてなので、正直、受け入れてもらえるのかなと心配で僕一人だったら「無理なんじゃ・・・」と思ったのですが(笑)。同じ日に、事務所の先輩であるコバカツ(小林且弥)さんもいらっしゃったので、それなら大丈夫かなと、恐る恐る参加させていただきました。
――お客様がびっくりされるのも目の当たりにされたんですね。
小早川:はい。だから、ずっと喜びとそわそわが混ざっている感覚を味わいました(笑)。司会をされていた三上真史さんをはじめ、先輩方が盛り上げてくださって、お客さんが喜んでくださっているのも感じられて、嬉しかったですね。
――佐伯さんは、ご出演決定時は・・・。
佐伯:僕の方は、いたって普通に、事務所を通して依頼をいただいての発表でした(笑)。
小早川:普通、そうだよね(笑)。
佐伯:(笑)。るひまさんの作品にはずっと出たいと思っていたので、声をかけていただけてすごく嬉しかったです。念願叶いました!
――今回、『白痴』という作品に取り組まれますが、まず原作を読まれた印象を教えてください。
佐伯:あの・・・難しくて・・・(笑)。ぜんぜん読み進められなかったんですよ・・・。そうこうしているうちに、ほさか(よう)さんの書かれた台本をいただいて、そちらを読んだら「こんな物語だったんだ!」とハッとして。
小早川:短編だからボリュームはそんなにないんだけど、戦争のリアルな描写と、最後の生々しい情景のインパクトが強いよね。原作の文体は独特だから慣れないと難しいのかも。
佐伯:そう~。でも、台本を読んで、魅力的な人間ばかり登場する作品だと感じました。いろんな人に共感できる。だからこそ、どんな舞台になるのか楽しみです。
小早川:僕が演じる主人公の伊沢は、町の人たちを批判することで自分を保ちながら、自分の理想に向かうけれど、うまくいかない。そこでもがき葛藤しながらも疲弊する中で、白痴の女性と出会うんです。こうやって説明すると難しく聞こえるかもしれないけれど、読んでいると「僕にもこういう時期があったよな」と感じるんです。これからも伊沢のような精神状況になることもあるだろうなとも思います。
台本には、原作にはあまり多く描かれていないキャラクターがしっかり出てきたり、人物描写も分かりやすく描かれていて、クスッと笑えるようなユーモアが散りばめられているので、とても観やすくなっていると思います。
――ほさかさんの台本による『白痴』がどう見えるのか、楽しみですね。
小早川:原作は、読み終わった後に、明確な答えが提示されているわけではないけれど、無責任に放り投げることもないんですよね。舞台では“その先に見えるもの”を、これから僕たちがきちんと創っていくことが大事だなと感じています。
年齢も性別もバラバラのキャスティング
――キャストの皆さんと読み合わせをしてみていかがでしたか?
佐伯:僕の演じる仕立て屋は、小早川くん演じる伊沢よりも年上だろうし、もっと年上の俳優さんが演じても成立する役だと思うんです。だからこそ、自分としてどう役を創っていけばいいんだろうというイメージが、最初はあやふやでした。でも、やっていくうちに、年齢も大切だけど、まずは伊沢に「どれだけ影響を与えられるか」ということを大事にすればいいんだと気づきました。演出のほさかさんと相談しながら、自分なりの仕立て屋を創ってお見せしたいと思います。
小早川:年齢については、原作でははっきりとは決まってはいないんですよね。今回、女性を男性が演じるというキャスティングもおもしろいと思います。ほさかさんは「年齢や性別にとらわれず、今の僕たちのできる関係性で舞台を創っていこう」とおっしゃっていたので、すごく信頼しています。
また、実際に本読みをしたことで、一人で台本を読んでいた時には思い浮かばなかった可能性に気づいたりもしました。やっぱり、今ここに集まったキャストでしか創れないものを生み出すためには、自分の過去の経験を芝居に反映させるだけでなく、今目の前にいる人たちとの関係を大事にしたい。僕も誰かに影響を与えたいし、みんなが僕に対してアプローチしてくれたことをフラットに受け入れられる状態でありたいです。
佐伯:たくさんディスカッションもしたよね。それから、稽古に入るまでの期間に仕立て屋としてどんなアプローチができるか、考える上での課題をもらえたので、やることが明確になったのは大きかったです。ディスカッションにより皆の共通認識を確認したり、戦争についての感じ方だったりと、考えられることが増えたのですごくありがたかったです。
――共演者の皆さんのご印象は?
小早川:お会いする前から、加藤啓さんや谷戸亮太さんはとてもおもしろい方だと聞いていたんです。お会いしてみて、やっぱりおもしろい方々だなと。
佐伯:インパクトが強い方ばかりなんですが、ほさかさんの印象が強くて・・・(笑)。想像とまったく違う方で驚きました。周りから「ほさかさんの演出はすごくいいよ」とたくさん聞いていたのですが、なぜかちょっと怖いイメージもあったんです。でも、ご一緒してみるととてもお茶目で魅力的な方で、印象がガラッと変わりました。ほさかさんのこと、もっともっと知りたいです(笑)。
――今回の作品でも、お二人の新しい面が見られそうな予感がします。
佐伯:まずは、気負わずに観に来てほしいです。人間味溢れる人たちの話なので、きっと共感できるキャラクターが一人はいるはず。僕たちは劇場で瞬間を生きるので、ぜひ、その世界観を楽しんでください。
小早川:きっと『白痴』を観た後に、これからどうやって生きていこうかと考える方もいれば、そうでない方もいらっしゃると思います。ですが、観劇後“何かのきっかけ”になるものを、僕たちは作品としてお届けするつもりです。それは、時間を作って劇場に足を運んでいただける以上、お約束します。ぜひ、最後まで楽しんで行ってくださいね!
◆公演情報
『白痴』
3月28日(水)~4月1日(日) 東京・CBGKシブゲキ!!
【原作】坂口安吾
【脚本・演出】ほさかよう
【出演】
小早川俊輔、佐伯亮、中村龍介、碕理人、二瓶拓也、谷戸亮太、熊手萌、加藤啓/木ノ本嶺浩
衣裳:NOT CONVENTIONAL/KINGLYMASK
スタイリスト:EIKI
アシスタント:大山瑠梨花
ヘアメイク:藤澤和紀
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<応募期間>
2018年3月23日(金)~2018年4月1日(日)まで
当選者には、エンタステージのTwitterアカウントよりDMにてご連絡を差し上げます。
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皆様のご参加をお待ちしております!
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部、編集協力/河野桃子)