ともだちって?『僕のド・るーク』小林且弥×辻本祐樹×小早川俊輔インタビュー

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『僕のリヴァ・る』から3年。る・ひまわり×鈴木勝秀が贈る会話劇から成るオムニバスストーリー『僕のド・るーク』が、2019年3月7日(木)に開幕する。「ドルーク」とは、ロシア語で「ともだち」という意味だそうだ。“ともだち”って?改めて考えてみると、「ともだち」とは、大切なものであり、自分の存在を証明するものである一方で、とても曖昧なものだ。

今回は、鈴木(以下、スズカツ)は「森の主と少年」「サリエリとモーツァルト」、夏目漱石「こころ」の3つの物語を、男性5人の会話劇に仕立てた。出演は、上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、小早川俊輔と井澤巧麻(Wキャスト)、小林且弥と鎌苅健太(Wキャスト)。

“ともだち”って?奥深いテーマについて、出演者より小林、辻本、小早川に語ってもらった。

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――2016年に上演された『僕のリヴァ・る』に続くこの作品、今回の座組はどんな雰囲気ですか?

小林:僕は、前作にも出演させていただいたんですが、だいぶ雰囲気が違いますね。前作は出演者が4人でしたから。今回は、僕と鎌苅(健太)くん、小早川くんと井澤(巧麻)くんがWキャストなので、参加するのは全部で7人。舞台の上では5人。いい意味で未知数なので、計算ができないんですよ。

辻本:かなりフレッシュですよね。

小早川:僕は、キャストが決まった時、事務所の先輩である且弥さんのお名前と一緒に自分の名前があって嬉しかったです。個人的に、少ない人数でのお芝居はまだあまり経験がないのですが、以前から面識のある方がほとんどということもあり、すごく濃い時間になるんじゃないかなと思っています。

――本作は3本の物語が連なるオムニバス形式となっていますね。

小林:全編を通して、言葉に苦戦するような気がするんですよね。ともすると、シェイクスピアのような雰囲気もあり、単純な会話劇ではないので。そこを、どうスズカツさんが演出してくださるのかなと・・・。

辻本:僕、台本をいただいて一人で読んでいた時と、皆さんと一緒に台本を読んだ時の印象がずいぶん違って、本自体がすごくおもしろいなと思いました。オムニバスなので、3つの世界観が一見バラバラに見えるんですけど、終わったあと、ちゃんと一つの共通するものとして“ともだち”というテーマが見えてくるんです。それがちゃんと伝えられるといいな・・・そう思うと、多少プレッシャーを感じます(笑)。

小早川:3つの物語をそれぞれ完成して、一つの作品としてどう繋がっていくのか、演じる身としてもすごく楽しみです。

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――前作の『僕のリヴァ・る』も、全体が見えた瞬間ゾクッとしました。

小林:三者三様であり、独立しているようでもあり。この“間”を、スズカツさん自身も狙っていらっしゃると思うんですよね。これは、映像では成立しない遊びの部分なので、非常に演劇的な方法だなと思いました。舞台であることの意義が、すごく大きな作品ですよね。視覚的な部分を極力排除して、役者と物語で伝えようとするスズカツさんの見せ方は、すごく素敵だなと、前回やっていても思いました。

辻本:以前別の作品でスズカツさんとご一緒させていただいた時、感情を抑えるというか、 “どう思いますか?”と、お客さんに身を任せるような、感情を伝えすぎない演出をつけていただいたんです。やっていて難しかったんですけれども、終わったあとすごく楽しかったなと感じていたことを思い出しました。
まだ掴むことができたかどうかは分かっていないんですけど、今回、ちゃんと掴めるように、掴んだなと思えるように、スズカツさんと向き合って、キャストみんなで作り上げられたらなと思います。

小早川:僕はスズカツさんの演出を受けるのは初めてなんですけど、自分がこれまでに触れたことのないような感覚をくださる方だなと思いました。考えさせてくれるんですが、置いてけぼりにはしないというか・・・・。この引き込まれるように、スズカツさんの思い描く世界に身体一つで飛び込んでいけたらいいなと思っています。

――3つの物語「森の主と少年」「サリエリとモーツァルト」夏目漱石の「こころ」での主な役どころは?

辻本:僕は「森の主と少年」では語り部役です。語り部役はお客様と作品をつなぐ役割でもあるので、ちゃんと心を交わせるように、物語を繋ぐためにお客様の気持ちを離さないようにしながら次々と別の世界へと連れていく、という立ち位置をしっかりやっていきたいなと思っています。もう一つの大きな役割は「こころ」の先生役です。

小林:こころの先生・・・(笑)。

辻本:つなげるとちょっと響きが(笑)。合ってるんですよ(笑)。

小林:合ってる、合ってるね(笑)。

辻本:台本をいただいた時点で、すでにそこにどういう演出がしたいのか書かれていたんですよ。スズカツさんの中にある確固たるイメージに近づくのは、僕の中でとても難しいと気がしているんですが、ちゃんとスズカツさんの中にある世界を演じきって、お客さんに伝えたいですね。

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小早川:僕は「森の主と少年」での少年役が大きいです。且弥さんと鎌苅さんが木の役なので、二人でできるシーンが多かったので嬉しいです。オムニバスだから、直接関わらないこともあるのかなと思っていたので。

小林:「森の主と少年」は、この作品のかなり大事な部分だよね。結構ちゃんとやらないと・・・(笑)。『僕のリヴァ・る』の時に、スズカツさんがおっしゃっていて、今でも忘れられない一言があるんです。「膨大な台詞をしゃべって、いろんなことをやるけど、お客さんが帰って夜寝る前に思い出すのはこのシーンだよ」って。「森の主と少年」はオムニバスの一遍であり、それぞれの物語の間を繋ぐものでもあるから、大事に、慎重に演じないとね。小早川くんは少年から老人まで演じるので、そこもがんばらないとだね。

小早川:器用なタイプではないので、どうなるか・・・。

小林:歳を取らないという表現もあるよ。僕はこういう解釈でしたって。

小早川:ああ、なるほど。自分の頭だけで考えていた時は、そういう視点でしか読めていなかったので、皆さんとこうやって一緒に話したり演じたりする中で出てくるアイデアは、新鮮ですね。

小林:イメージの交換は大事だね。特に、歳を取ることって説明になってしまいがちだから、それをどういうさじ加減でやるのかが大事だね。例えば、赤ちゃんを演じるって、物理的にそのままは無理じゃない。

――『僕のリヴァ・る』を思い出しますね。

小林:そうそう。説明を尽くして伝えるべきものと、そこに重きを置いていないもの、どう解釈するかで伝え方も変わってくるかと思うし。かといって、どちらかに振り切りすぎても、お客さんとコミュニケーションが取りづらくなってしまうと思うし。さじ加減が難しいね。だから、がんばってください(笑)。

小早川:はい(笑)。

辻本:ははは、先輩からのアドバイスだ(笑)。

――小早川さんはWキャストのペアは小林さんのみですが、小林さんは一部公演で、相手が井澤さんになるので、それもまた違いが出ておもしろいですね。

小林:「森の主と少年」は、本当にやりようによるから・・・Wキャストって大変ですよね。スズカツさんは「大変じゃないから~、内容は変わらないから~」っておっしゃってましたけど。

小早川:(笑)。

辻本:そうなんだけど!おっしゃることは分かりますし、そのとおりなんですけど!って思いますね(笑)。

――小林さんと鎌苅さん、小早川さんと井澤さん、それぞれまったくタイプも違いますしね。

小林:Wキャストはタイプが違うからこそ、おもしろみがありますよね。まったく同じには絶対にならないので。ご覧になる皆さんもそうだと思うんですけど、こちらも楽しんでやりたいと思います。大変だけど(笑)。

辻本・小早川:(笑)。

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――「ドルーク」はロシア語で「ともだち」という意味だそうですね。3つのお話を拝見して、一口に「ともだち」と言っても、これだけ形があるんだと思いました。

辻本:形があるし、3つじゃないし、お客さん一人一人が違うシーン、違う台詞で反応すると思うんですよ。「そのこと言う?」「そうだよね」「そんなこと思わない」・・・一人一人の人生によって受け取り方が違うはずなので、終わってからのお客さんの反応がすごく楽しみです。「ともだち」って、言葉にすると難しいよね。

小早川:確かに。定義がしづらいものかも。

――お三方にとって「ともだち」ってどういう存在ですか?

辻本:僕は・・・“途切れない人”ですかね・・・。一年ぐらい会話をしていなくて、久しぶりに会っても変わらない人、というか。まめに連絡するタイプでもないのですが、相手に対する感情は一切変っていない。お互いにそういう形でつながっていられるのが、今の僕にとっての「ともだち」なのかなと思います。でも・・・ほかにもまだ言いようはある気がします。難しいですね。

小早川:僕、18歳で地元を離れたんですが、地元の友達と合うと一瞬でその頃の空気に戻れるんですよね。それぞれの人生で動いているんだけれど、すぐに戻れる。動いている指標のような感覚がして、いつもおもしろいなと思っています。ずっと会い続けていたら、また関係も変わってくるんだろうけれど。匂いとか味とか、感じた時に、そのときの過去の記憶を思い出したりする、あの感覚に近いのが「ともだち」なのかな、と。ちょっと今、僕、詩的でした(笑)?

辻本:詩的だった(笑)。考えれば考えるほど、おもしろいですね。

小林:ものすごく抽象的なんだよね。具体性もないし、絶対的なものでもないじゃないですか。血がつながっていれば「家族」とか「兄弟」とか具体的な言葉があるし、職業上では「上司」「部下」とか、学校では「先生」と「生徒」、「先輩」「後輩」とか。「ともだち」は、そのいろんな枠を飛び越えるものだよね。

辻本:双子の人は、お互いが友達でもあるそうですよ。

小林:そうか、兄弟でも「ともだち」が成り立つのか。「ともだち」って思っているよりも、当てはめようと思ったら何にでも当てはまって、自分がそうだと思ったら、それが「ともだち」なのかも。

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――深いですね。公演の中でどんな「ともだち」という関係が見えるのか、楽しみにしています。最後に、お客様へメッセージをお願いします。

辻本:3つの物語が、僕たちが演じることで、観終わった方の中で一つになればいいなと思っています。今もこうやって話していて「ともだちって?」と考えてしまうので、その感覚が皆さんに届くようにしていきたいですね。

小早川:皆さんが寝る前に思い出すシーンが違うように、自分も、日ごとに印象に残るシーンが違うと思うんです。それがすごく楽しみです。短い公演だからこそ、一公演ごと大切に役を生きていきたいなと思っています。Wキャストが2組あるので、それだけでもまったく違う印象を抱くと思いますので、楽しみにしてもらえたらと思います。

小林:今の小早川くんのコメントを僕にください。

小早川:えぇ~~~!?

小林:全部言われちゃったんだもん。

辻本:事務所の後輩だからって(笑)。

――ぜひ、前作の経験も踏まえた小林さんの言葉をください(笑)。

小林:なるほど!そこだ!

辻本:小早川:(笑)!

小林:構成はオリジナルですが、3編とも、ほとんどの人が知ってるお話がもとになっています。前作から続く雰囲気もありつつ、キャストも変わり、テーマも変わり、また新たな作品ができました。舞台って、瞬間だと思うんですよ。演じる人によっていかようにも変わるし、観た人の受け取り方でもいかようにも変わる。その瞬間を、劇場に目撃しに来てください!

小早川:締まりましたね(笑)。

辻本:しかもなんかすごくかっこいい言葉が出てきました(笑)。

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◆公演情報
『僕のド・るーク』
2019年3月7日(木)~10日(日) オルタナティブシアター

【上演台本・演出】鈴木勝秀
【出演】上口耕平、多和田任益、辻本祐樹、小早川俊輔/井澤巧麻(Wキャスト)、小林且弥/鎌苅健太(Wキャスト)

※辻本祐樹の「辻」は「一点しんにょう」が正式表記

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