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東京・アトリエファンファーレ高円寺にて今秋上演される舞台『ウエアハウス~Small Room~』。『ウエアハウス』とは、脚本・演出を務める鈴木勝秀がエドワード・オールビーの『動物園物語』をベースに、サブタイトルを変えながら様々なスタイルで上演してきたシリーズ。サブタイトルを「Small Room」とした最新作に出演する佐野瑞樹、味方良介、猪塚健太に話を聞いた。
――本作には膨大な“暗唱”が台詞の中に出てきますが、(この日の時点で)稽古の進捗はいかがですか?
佐野:やっと暗唱が頭に入りました!しかも、登場人物は3人だけだからね。
味方:しかも、佐野さんはほぼ舞台袖に引っ込まないですよね?
猪塚:味方くんの冒頭の暗唱の時ぐらいしかいないシーンがないですよね。
――佐野さん演じるごく普通の人間・エノモト、味方さん演じる人との距離の取り方がおかしいシタラ、猪塚さん演じる普通のようで普通でないテヅカ。3人の登場人物を演じるにあたって、共感できる部分と理解できない部分はありますか?
佐野:僕は、エノモトとは違って家庭を持ってないところが決定的に違うんですが(笑)。それ以外は普通の人なので理解できます。僕自身も、ごく普通の人ですから。だからこそ、エノモトの心に何かが引っかかっているのも分かります。
味方:僕が演じるシタラは、共感・・・しづらいですね。僕はシタラと違ってストレートに人に物を聞くタイプなので。シタラは相手に答えさせるんです、自分は分かっているのに回りくどく・・・それでいて、結局自分で答えてしまう。どこか人を試しているところがあるんです。僕の周りにも回りくどい人はいるけど、シタラほどの人は、いるようでいないですね。
猪塚:テヅカは相手によって態度を変える人。そうはなりたくないと思って生きています(笑)。自分の知っていることをひけらかしたり、ちょっと周りを下に見たりするんです。もちろん腹黒い部分は僕にもありますが、それを表に出すか出さないかの違いかなって。表に出してしまうのがテヅカですね。
――演出の鈴木さんからは、役作りについてどのようなリクエストがありましたか?
佐野:スズカツ(鈴木)さんに言われたこと・・・思い出せない!今、覚えなければならないことが多すぎて逆に思い出せない(笑)。本末転倒だよ、これは(しばし考え込む佐野さん)。
猪塚:相手が分かっていようと分かってなかろうと、テヅカは知識をひけらかすキャラだからマイペースでいてくれって言われました。
味方:僕には、嫌な奴になってくれって。観ているお客さんが、僕のことを嫌いになるくらいになってくれたら、多分シタラを演じる上では“勝ち”だから、ってスズカツさんに言われましたね。
――佐野さんは思い出しましたか?
佐野:うーん、思い出せない・・・。何か、大事なことを言われた気がするんだけどなあ・・・。
猪塚:稽古をしているうちに思い出しますよ(笑)。
――この作品は、テーマに「コミュニケーション」があると感じたのですが、作品を少し離れて、現代のコミュニケーションについて皆さんが感じていることを伺いたいのですが。
佐野:劇的に進歩していますよね。僕は携帯電話がない時代を知っていますけど、この二人は、スマホがあって当たり前の生活しか知らないでしょ?20年前とか、本当に何もなかったので。そこから考えるとものすごい進化だなって思います。スマホ一つで全部できるって、夢の時代ですよ!この勢いだと、たぶん近いうちに人類は滅びるね。俺の生きているうちには、そうならないだろうけど(笑)。
猪塚:僕もそれほどスマホ世代じゃないんですよ。中学生くらいで初めて携帯電話が出てきたけど、大学生のときは二つ折りのパカパカ(フューチャーフォン)。仕事はFAXで受けてました。一人暮らしの部屋にFAXを置いて、仕事の香盤表や台本を受信していました。「インクがない!」って買いに行ったり、「紙がない!」ってまた買いにいったり(笑)。今は便利ですけど、逆に手書きのあたたかさとかがなくなって、ちょっと寂しいです。それから、携帯電話の普及で、人との待ち合わせの仕方も変わりましたよね。
佐野:ああ!結構待ち合わせは苦戦していたね。「どこだ?動いていいのか!?」って(笑)。昔は地図を持っていても道に迷っていたけれど、今はスマホの位置情報で100%迷わなくなりましたね。
――スマホ世代の味方さんはいかがですか?
味方:人がズルくなりましたよね。言葉に責任がないから何でも言うし、何でも叩くし。でも「面と向かって同じことが言えるの?言えないでしょ」と思います。スマホ経由で何でも情報がすぐ手に入るから、相手も同じ情報を知っているだろうと考えている。僕らのような仕事をしていると、僕らよりお客さんのほうが「知っている風」になってしまうんですよ。だから平気で「お前、なんかあそこがダメだ」とツイッターなどでつぶやかれたりするんです。「お前は俺の何を知ってるの?直接言えばいいじゃない!?俺は顔を出して仕事してるのに」って。・・・皆、顔を出さずにキツイことを言うようになりましたね。
そして、自分を大きく見せすぎていますよね。ネットの上では皆がヒーロー、皆が正義になれる。それで勘違いしている人が増えたんだなと思います。
猪塚:メールやLINEがある中で、僕らは仕事柄「手紙」をもらう機会が多いじゃないですか。手紙を書くってことは、まずは便箋と封筒を買って、3枚くらい書こうする・・・それってものすごく時間かかる行動ですよね。でも、メールとは違うあたたかさがあるって思うので、いいコミュニケーションだな、大事にしたいなと思います。
――対面のコミュニケーションについてはいかがですか?
佐野:僕らはこういう仕事なので、あまり変化を感じたことがないですね。いかに人と会話をするかを大事にしていますし、飲みに行っても意識して会話します。カンパニーは2、3ヶ月で別れ、また新しく出会う、これの繰り返しですから、コミュニケーションがうまく取れないと死活問題ですよ(笑)。
――この3人のコミュニケーションも、すでにバッチリですか?
佐野:今日(インタビュー当日)初めて全員で飲みに行くんですよ。「台詞を全部覚えるまでは飲みに行かない」ってルールを、僕が決めていたんです。お酒を飲むと全部忘れちゃうから、まずは記憶を定着させてから飲みに行こう!ってことで(笑)。
――佐野さんから見た若手の味方さん、猪塚さんの印象はいかがですか?
佐野:二人ともお芝居が好きなのがすごく分かります。その姿勢がないと、すごくしんどいです。だって3人しかいない座組ですから。僕がこのぐらいの年齢の時はそりゃあひどいモノで・・・(笑)。
味方・猪塚:ひどいって(笑)。
佐野:10代、20代の頃は、とにかく何も考えずにやっていました。「お芝居っておもしろいな」と思えてきたのは30歳を過ぎてから。「本格的にがんばろう」と思ったのは35歳を過ぎてからです。二人は、すでにお芝居に対してきちんと意志を持ってやっています。味方なんて、最初から「舞台俳優になりたい」と思ってこの世界に入ったっていうし。その姿が、逆に刺激になっていますね。
僕は芸歴25年、四半世紀です。四半世紀、芝居をやっている人間が、キャリア5、6年くらいの子に追いつかれてしまいそうです(笑)。
猪塚:味方くんは僕より5歳くらい年下なのにすごく不思議な、いいオーラを持っていますね。
佐野:そういう空気を持っている人って魅力的だし。次にどういうものを出してくるか、気になってつい見てしまいますね。芝居も楽しいし、普段話をしていてもおもしろいし、人間としてもすごく魅力的。おまけに、すごく飲むらしい(笑)。
味方:ほどよく、です(笑)!
――味方さんから見た、猪塚さんってどんな方なんですか?
味方:猪塚さんは、本読みをする時に「この段階でそこまでやるんだ!」と思うようなスパイスをいろいろと入れてくるんです。スパイスというのは、言葉のニュアンスだったり、間だったり。そして、3人の場面になった時に圧倒的な存在感を感じます。すごいですよ。
佐野:猪塚くんは、顔の作りもやさしそうでいい人そうだし。
――猪塚さんから見た、佐野さんの魅力ってどこでしょうか?
猪塚:佐野さんは、普段の会話のやり取りも台詞のやり取りも「受け方」が柔軟なところですね。
佐野:・・・思い出した!!スズカツさんに「その柔軟さをしばらく出さないで」って言われたんだった。「味方と猪塚がどんなことを言ってきても佐野くんは受けとめてしまうから、今回は逆にそのリアクションをしないでくれ、むしろ無感情で返してくれてもいい」と言われましたね。
猪塚:僕らとしては、佐野さんがうまく受けてくださることで「ああ、この台詞ってこういう意味を持っているんだな」と早い段階で分かるんです。役者としてはありがたいです・・・。でも今回は演出で封印されてしまいましたね(笑)。
――スズカツさんの演出方法は独特だと聞いたことがあるんですが、具体的にどういうやり方をなさっているんですか?
佐野:通し稽古がすべてです。毎回、通し稽古ばかりで終わってしまいます。だから「台詞をまずは頭に入れてほしい、覚えた瞬間から通し稽古が始まるから」と言われました。それがどういうことになるのかが楽しみだし、稽古がおもしろくなりそうです。稽古時間も短いので、乗り遅れてはいけないなと感じています。
味方:稽古場にも(舞台セットの)椅子が入りましたね。景色が変わりました。
猪塚:やっと動ける、って感じですね。
佐野:この状態でちゃんと台詞が出るか、だな(笑)。
猪塚:ちゃんと台詞は入っているんだけど、立ち位置に立つことによって出てこないってこと、ありますよね?
――味方さんは事前に劇場を見学されてきたと伺いました。どのような劇場でしたか?
味方:客席との距離が、本当に近い!「トイレに行く」というシーンがあるとしたら、本当に役者がステージから降りて実際のトイレに入るくらいでした(笑)。
佐野:でもそのくらいの距離で芝居ができるっておもしろいよね!・・・ただ、俺が一番恐れているのは、客席の誰かと目が合った瞬間に台詞が飛ぶんじゃないかってことだけど(笑)。
味方・猪塚:あるあるある(爆笑)!
猪塚:僕は、このサイズの劇場で演じている時、最前列にツバが飛んだりするのがすごく気になっていまして(笑)。
佐野:(笑)。あとは、客席でひそひそ会話をされると、本当に気になりますね。
――スマホの着信音やバイブ音なんて聞こえた日には・・・。
佐野:論外です!(笑)
味方・猪塚:ですよね!(笑)
◆公演情報
『ウエアハウス ~Small Room~』
10月8日(日)~11月7日(火) 東京・アトリエファンファーレ高円寺
【脚本・演出】鈴木勝秀
【出演】佐野瑞樹・味方良介・猪塚健太
【公式HP】https://www.stagegate.jp/stagegate/performance/2017/warehouse/index.html
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(撮影/エンタステージ編集部)