畠中恵による人気ファンタジー時代小説『しゃばけ』(新潮文庫刊)。シリーズ15周年を記念して、上演された、お江戸ほっこりミュージカル「しゃばけ」の第2弾が、2017年9月に上演される。今回は、サブタイトルを「~空のビードロ・畳紙~」とし、主人公・一太郎の兄である松之助と、前作にも登場した妖・屏風のぞきを中心に物語を描く。
松之助役として、新たにミュージカル「しゃばけ」に参加する平野 良と、前作から一太郎を過保護なほどに大切に見守ってきた佐助役の滝川英治に、作品のことから、パーソナルな部分まで語ってもらった。二人が大切にしているものとは―?
――ミュージカル「しゃばけ」、第2弾ですね!滝川さんは前作にもご出演されていましたが、振り返ってみていかがですか?
平野:どうでした?
滝川:今年の頭なんですよね・・・。ずいぶん前な気がする。ほんと、蓋を開けてみないと、どうなるかわからないような作品でして。鳴家役として小さい子がたくさん出ていたんですけど、下は3歳ぐらいの子もいたので。
平野:鳴家役の子は何人ぐら出ていたんですか?
滝川:1ステージで、10人くらいかな。
平野:それは・・・すごく多いですね(笑)!
滝川:3、4歳ぐらいの子が、歌って踊って、ちゃんと台詞も振りも覚えて、すごいのよ。でも、子どもだから本番でちゃんと言えるのか・・・みたいな感じもあって(笑)。まあ、それもナマ感というか、かわいらしくて、結果良かったんじゃないかなって思っていました。そういう魅力もあって、幸せな気持ち、ほっこりした感じにお客さんもなっていただけたんじゃないかな。一方で緊迫したシーンもあったので、メリハリのあるエンターテイメント要素の高い、良い作品になったんじゃないかなと思いましたね。
――平野さんは、前作は映像でご覧になったそうですが、どうでしたか?
平野:なんというか、(中村)誠治郎さんと英治さんと掛け合いが、ちょっと新喜劇みたいだなと(笑)。
滝川:(笑)!
平野:そういう笑えるところもありつつ、ミュージカルとしての音楽も、テイストが和っぽさだけでなく、ロック調とか、いろんな要素が取り入れられていて、飽きさせない作品だなという印象ですね。
――平野さんは、今回、主人公である一太郎の兄・松之助役として登場されます。松之助といえば、前作でも名前が出てきていましたね。
滝川:松之助のお話は、前回の物語の裏で進んでいたお話ですしね。
平野:今回の作品は、僕の演じる松之助がメインの「空のビードロ」と、ふっきーさん(藤原祐規)演じる屏風のぞきがメインの「畳紙」、その二つのお話を描きます。いわば、スピンオフ的なところもありますよね。
――一つの物語を多面的に見られるのも、おもしろい要素ですね。
平野:僕、ドラマでも「同じ世界観で作ったものを日替わりで放送する」という企画があったら、めっちゃおもしろいのにって、よく思うんですよね。今、警察モノとか多いじゃないですか。同じクールで、同じ警察もので、同じ警視総監という役職が出てくるとして、やっている人が違うと「違うんかーい!」って言いたくなっちゃうじゃないですか(笑)。だから、こういう同じ時間軸で作品作りができるのは、すごく楽しいですよね。
――ちなみに、平野さんはご出演が決定されてから、植田さんとお話はされました?
平野:してないんですよ~。会う機会がなくて・・・。
滝川:でもなんか、俺、噂で聞いたよ。
平野:噂?何の?
滝川:俺が聞いた話によると、植田圭輔が「今回出ないけど、滝川さんをよろしくお願いします」みたいな感じのことを言っていたらしく、しかも「ああ、滝川さんね。滝川さんほど何も得るものがない先輩はいないね」って・・・。何も得るものがないって!まあ、正解なんですけどね(笑)。
平野:あははははは(笑)!
滝川:だいたいそう言われますから。俺がその場にいなくても・・・。
――滝川さんは、よく舞台でミラクルを起こされますからね(笑)。
滝川:ミラクルしか起きてないです・・・ってちょっと(笑)!
――良い意味で、ですよ(笑)。
滝川:まあ、歩くパワースポットなので・・・(笑)。でも、真剣にやってますからね?それも、舞台の醍醐味の一つだと思うんですよね。
――醍醐味を味わえるのを楽しみにしています(笑)。ご兄弟と言えば、お二人ともお姉さんがいらっしゃいますよね。姉弟の思い出とか、ありますか?
滝川:そうだなあ・・・俺、意外かもしれませんがお姉ちゃんっ子だったんです。小さい頃から、お姉ちゃんについて回って、お姉ちゃんの友達とかとも一緒に遊んでいました。結婚しても近くに住んでいるので、甥っ子姪っ子に会いに行かせてもらったり。
平野:今も仲が良いって、いいですね。甥っ子姪っ子かわいいですか?
滝川:かわいいね~。実は、今回の鳴家のオーディションに参加したらどうか?とかお姉ちゃんと話してたんだけど・・・冷静になって考えたら、やっぱり嫌だなって(笑)。
平野:なんでですか(笑)。
滝川:現場に親族がいたら、集中できないよ。特別扱いもできないし(笑)。
――厳しいとか言われても、つらいですね(笑)。
滝川:稽古なのに、仕事の時の顔じゃない顔になっちゃうから。
平野:急に、あの手この手で甥っ子姪っ子をおいしくさせようとしたりね(笑)。
滝川:ダメダメダメ(笑)。良は?
平野:昔は仲が良かったですけど、一回、姉ちゃんが病気したことがありまして。しばらく入院していたんですよ。だから家にいない期間が結構あって。ちょうどその頃、僕は思春期を迎えていたので、戻ってきた後、急に人と人の距離感になっていましたね。
滝川:そうなんだ。あんまり連絡取ったりしないの?
平野:いや、たまに取ったりしますよ。仲が悪いわけではないので。来年、親が還暦を迎えるので、二人で何かやろうかとか、相談したりしています。でも、普段会うことはあんまりしないかな。性格もぜんぜん違うんですよ。どっちかって言うと、秀才と異端児、みたいな感じだったので。学校でも常に先生に比べられる、みたいな。高校まで同じだったんで、すごく比べられていましたね。「弟は出来損ないなんだな」って、めっちゃ言われるなみたいな(笑)。
――ちょっと松之助の気持ちが分かる感じですか?
平野:分かりますよ~。一時期、役者を辞めて社会人やってた時にも、お店でパートさんとかにすごく虐げられていましたから(笑)。
滝川:なんで?!
平野:仕事場が、神奈川から東京の支店に移ったことがあって。神奈川と東京で仕事の細分化が違ったんですね。神奈川のお店では、全部自分でやらないといけなかったんです。だから、なんでも知っていたんですよ。そうしたら「何あの子?」みたいになって・・・虐げられていました(笑)。
滝川:ええ~?!
平野:だからいつも公園で、一人で弁当食べていたんですよ。雨の日は、軒下で立ったまま。そうしたら、公園にいたホームレスのおじさんが「おまえ、そんなのいかんぞ。うち来い」って声をかけてくれたんですよ。でも、驚いて「結構です」って丁重にお断りしたんです。そうしたら、イスを持ってきてくれて「せめて、これに座れ。立ちながら食うな」って。人の優しさに触れましたね。
――不思議な居場所があったんですね。ちなみに今、ご自身にとっての「居場所」って言われて、ぱっと思い浮かぶのってどういうことですか?
平野:「居場所」か・・・。思春期の多感な頃、精神的に不安定になる時期って誰でもあるじゃないですか。そういう時に、『金八先生』に出ていた頃の仲間が、結構支えになってくれました。社会人をやっていた頃も『金八先生』で共演していた亀梨(和也)が、「修二と彰」ですごくブレイクしていたりしたので、直接的にではないですけど、刺激になったりとか。大先輩の佐藤隆太さんにも良くしていただいていたんですけど、そういう方が第一線で活躍されている姿を観ると、がんばろうって奮い立ちましたね。そういう昔の仲間の存在が、役者として戻ってきた僕にとって、大きなものでした。
滝川:僕は~・・・友達いないんで・・・。
平野:ちょっと(笑)!そんなこともないじゃないですか。
滝川:基本、家から出ないから(笑)。「居場所」・・・愛犬かなあ。パールっていって、もう10歳になるんですけど。最近ちょっと耳の病気になっちゃって、病院によく通うようになったんですね。こういう仕事してるとなかなか早く家に帰れないんですけど、常に考えちゃう。
平野:最近は、あんまり飲みに行ったりもしていないんですか?
滝川:うん。家に帰って、一緒にいる時間が自然と増えている気がする。なんか、付き添っていると、心がすごく穏やかになってくるんだよ。パールと一緒にいたいから、夜家を空けることはなくなってきた。そうすると、自分で料理とかもするようになった。朝、散歩にも行くから規則正しい生活になってる。年齢的にもね、若い頃みたいにできないからね(笑)。
――お二人の大事にされているものが、垣間見えた気がします。大事にされているといえば、『しゃばけ』には屏風のぞきのように大切にされたものが妖になったりしていますが、お二人が大事にしているものってなんですか?
滝川:俺はね、500円玉貯金。
平野:英治さん!犬の話といい、生活感出しまくりじゃないですか(笑)。
滝川:ヤバいよね(笑)。でもね、500円玉を狭い穴に入れるのがね、こう・・・ちょっとクセになっていて。お釣りも、なるべく500円玉をもらえるように計算しちゃうの。500円玉をお釣りでもらえると超感動する、みたいな。貯金箱も、ちょっとおしゃれなヤツにしたの。
平野:よくあるやつじゃないんですね。
滝川:早く30万貯めたいわけ!いっぱいにしたいの(30万円が貯まる貯金箱をお使いの様子)。
平野:でも、それが積もり積もるとね。定期預金みたいなもんですからね。
滝川:お金じゃないの!夢がつまってるんだよ。
平野:いっぱいになったら、奢ってもらおう(笑)。
――滝川さんの夢で(笑)。平野さんは何かありますか?
平野:僕はね、あの、ダルマをやってまして。
滝川:ダルマをやる?
平野:ダルマって、まず片目を入れて、願いごとが叶うか、もしくは、1年経った時に両目を入れて、奉納してまた新しいものを買うってのが、正規のダルマの使い方なんですけど。さらに、毎年買い換える度に、ちょっとずつ大きいものにしていくといいんですよ。最初は手のひらに乗るくらいから始めて、1年経ったら両目を入れて、1号大きめのを買って・・・とやっていたら、今ちょっと抱えるくらいのサイズになっていて。
滝川:ほうほう。
平野:で、「ちょっと待てよ?」と思ったんです。友達が家に来た時に、こんな大きなダルマあったら、ちょっと怖いんじゃないかと。・・・どこでやめるべきか、ちょっと悩んでます。
滝川:今、何年目?
平野:5、6年目かな?今はまだ、ギリギリ大丈夫なような気がしているんですけど、これの1サイズ上になると、ちょっとなんか、存在感が強くなるというか(笑)。だから、(やめ時を)迷ってるんですよ。
滝川:途中でやめるのも・・・なんか、ねえ(笑)。
平野:そうなんですよ。ずっと階段を登っていく感じだったので・・・。不運が続いた時とかは、ちゃんとこう、家を出る前に柏手打って拝んだり。僕、そういうのをやり過ぎてまして・・・。破魔矢も方角をちゃんと調べて置いたりしてたんですけど、ちょっとやりすぎかなと思って少しずつやめて(笑)。今は、お守りとダルマを大事にしています。・・・それでも、結構やってるんだけど(笑)。気持ち悪い時に、お守りを噛むといいって知ってます?
滝川:どういうこと?
平野:昔、聞いたことがあって。10代の頃、実は『金八先生』のオーディションに行くバスの中で、酔って吐いちゃったんです。ヤバい・・・と思って、その時に、何故かは思い出せないんですけど、持っていたお守りグーって噛んだんですよ。そうしたら、そのオーディションに受かったんです。役者に復帰した時も、1年の中で5回くらい病気をしたことがあって、調べたら前厄だったんですね。「これ、本厄になったら死ぬかもしれない・・・」と思って、その年はちゃんと正装して初詣に行きました。そうしたら、ミュージカル『テニスの王子様』への出演が決まって。信じているわけじゃないんだけど、そういうことを経験してきたから、なんか続けてしまうんですよね・・・。
――対象はなんであれ、心の拠りどころがあるっていいですね。お二人とも、ぜひ続けてほしいです。
滝川:貯金、続けよう(笑)。
平野:じゃあダルマ、大きくしていこうかな(笑)。
――それでは、最後に公演を楽しみにしている方へメッセージをお願いいたします。
滝川:前回、好評をいただきまして、今回第2弾ができます。今回から初めて加わる方もいらっしゃるので、前作を経験している者として、引っ張っていかないといけないなとも思っています。また、平野良が参加するということで、すごく信頼もしていますし、期待もしていますし、また違った新しい風を吹き込んでくれたらなと。お客さんも一緒になって楽しんでいただけるような作品にしたいと思っていますので、よろしくお願いします!
平野:このミュージカル「しゃばけ」弐は、前作で英治さんや植ちゃんがやってきた世界観があるからこそ、すごく活きてくるものです。その上で、ポップさやハッピー感とは少し違った、寂しさや辛さ、より繊細だからこそ生まれる温もりのある、現実に寄った物語になるのではないかなと思っています。それをやらせていただけるのは、とても光栄ですし、小さな光が感じられるような、そういう作品にできればと思っているので、ぜひぜひ、“エモい”気分になっていただけたらな、と(笑)。
滝川:じゃあ、観たあとに「しゃばけ、エモかった!」っていう感想ツイートがすごい出るね。そういう“ナウい”舞台にしたいね(笑)。
平野:“ナウい”はもう、ナウくない(笑)!
◆公演情報
ミュージカル「しゃばけ」弐 ~空のビードロ・畳紙~
9月2日(土)~9月10日(日) 東京・紀伊國屋ホール
【原作】畠中恵「しゃばけ」シリーズ(新潮社刊)より『ぬしさまへ』所収「空のビードロ」/『おまけのこ』所収「畳紙」
【演出・音楽】浅井さやか(One on One)
【脚本】神楽澤小虎(MAG.net)
【出演】
平野 良、藤原祐規、石井智也、岡村さやか、福井将太、田宮華苗、齋藤健心、山崎千惠子、朝倉伸二、滝川英治、植田圭輔(声の出演) ほか
※山崎千恵子の「崎」は「大」の部分が「立」が正式表記
挿絵:柴田ゆう (C)2001 畠中恵/新潮社 (C)2017 CLIE
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