キャラメルボックスの『ゴールデンスランバー』早くも衛星劇場でテレビ初放送!成井豊インタビュー「何より僕が観たかった」

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2007年に出版され、本屋大賞、山本周五郎賞や「このミステリーがすごい!」第1位を受賞した伊坂幸太郎の人気小説「ゴールデンスランバー」を、演劇集団キャラメルボックスが舞台化。2016年のクリスマスツアーとして上演された作品が、早くもTV初放送される。仙台を舞台に、首相暗殺犯に仕立てられた宅配便ドライバー・青柳の逃亡劇をスリリングに描いた本作。

脚本と演出を手掛けた成井は、原作の大ファンだという。放送に先駆け、好きだからこそ、舞台化する際に苦労した点や、劇団初のオーディションを行ったキャスティングなど、知られざる制作秘話を語ってもらった。

キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』衛星劇場

――舞台化は、いつ頃から考えていたんですか?

原作を読んだ後に、すぐやりたいと思ったくらい好きな作品なんです。でも、やりたいと思っただけでイメージは漠然としていました。だから、劇団にすぐ提案をしたわけではないです。自分だったらどう作るのか。最初の糸口をずっと探していた感じです。

――脚本を書く時に苦労した点は?

お客さんに見せるということを考えた時に、絶対外せないシーンが多いんです。何よりも、僕が観たいんですから(笑)。空き地に放置された車の中で主人公の青柳が手紙を読むシーンや、彼のお父さんがインタビューで怒る場面・・・、全部入れようと思ったら2時間を超えてしまう(笑)。うちの劇団は2時間以内で上演するという約束ごとがあるから、あの長い小説を2時間にまとめる作業は大変でした。

キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』衛星劇場

――シーン数は41と伺いました。しかも、1シーンにつき約3分という芝居の中で、キャストが激しく動きますね。

セットや舞台装置の転換をなくして、役者が動くことで時間の流れを表現しました。青柳役の畑中くんは、ほぼ出ずっぱり。彼には、たくさん走ってもらいましたね。青柳の友人である森田の語りもかなり重要。あのキャラに説明台詞を託しましたけど、どれも観ている人たちがほしい情報ばかり。ムダな語りはありません。森田は死んだ後もずっと青柳の前に現れます。きっと、彼の存在を青柳は感じていたんだと思うんですよ。実際、ずっと心の中にいたんだろうと。だから、森田は青柳の心情をビジュアル化しただけなんです。

――語り手である森田役は、ゲスト出演の山崎彬さんですね。

森田役は、語りの上手い人にやってほしかったんです。去年、他の芝居を見に行った時、たまたま山崎くんが語りを担当していて。それが抜群に上手かったんです。これはもう、森田役にぴったりだなと。でも、山崎くんは「客演で呼ばれると大抵語り手なんです」と言っていましたね。申し訳ないことをしたなと思ったので「ごめん」って謝りました(笑)。

キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』衛星劇場_2

――物語のキーパーソンでもあるキルオは、劇団史上初のオーディションで選ばれた一色洋平さんが演じられました。一色さんのどんなところに魅力を感じましたか?

キャラクターに合っていたことはもちろん、演技力や身体能力がズバ抜けていたんです。ただ、彼は一つ前のキャラメルボックス作品にもゲスト出演していたんですね。しかも、その公演中にオーディションを開催したので、2本続けてというのはどうなんだろうと、最後まで悩みました。でも、一色くん以上のキルオはいないと思ったし、誰よりも“やる気”を感じました。それが決め手でしたね。

――仲間が誰かのために力を貸したり、過去の自分と向き合ったりするストーリー展開は、いつものキャラメルらしさが色濃く出た作品のように感じられました。

実は、総理大臣がなぜ暗殺されたのかという説明は一切省いているんです。そういう意味では、ミステリー好きの人には謎が解かれないというストレスが溜まる作品のなのかもしれません。青柳がいかに逃げ切るか。そして、青柳の知り合いたちが、彼をどんな風に逃がすのか。人と人との繋がりや友情物語が描かれていますけど、僕が見たいのはこれなんです。犯人探しや政治力学には興味がない。脚本を書き終わって、普段のキャラメルボックス作品とそんなに大きな違いはないなと気付きました。

キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』衛星劇場_4

――劇中では“人間の最大の武器は習慣と信頼”という台詞が飛び出しますが、成井さんが守り続けている「習慣」はありますか?

30代があまりにもひどかったので、41歳から生活を改めました(笑)。毎朝体重をチェックして、夜はストレッチと筋トレ。創作活動のために、一年間に本を300冊読んで、映画は120本観ることに。自分が決めたから、やるに決まっている。自分がやりたいことを習慣にすることが大切なんだと思います。

キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』衛星劇場_5

◆キャラメルボックス『ゴールデンスランバー』放送情報
【本編尺】150分
【製作年】2016年
【原作】伊坂幸太郎
【脚本・演出】成井豊
【出演】
畑中智行、渡邊安理、山崎彬、一色洋平、坂口理恵、岡田達也、菅野良一、三浦剛、左東広之、阿部丈二、小多田直樹、森めぐみ、近藤利紘、大滝真実、石森美咲、元木諒、竹鼻優太
【放送日】3月12日(日) 午後4:00/3月24日(金)午前7:30

公式サイトはこちら
http://www.eigeki.com/special/theater

(舞台写真/伊東和則)

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