2016年明けてすぐ、西田シャトナー演出の『ロボ・ロボ』主演で話題となった玉城裕規。3月には映画『血まみれスケバンチェーンソー』で女学生&忍者を演じることが発表され、その美しい女装姿が話題になっている。舞台や映画を縦横無尽に駆け巡り、ロボットから女学生までさまざまなキャラクターを演じる役者、玉城裕規に話を聞いた。
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――舞台でも大活躍ですが、映画にも挑戦されていますね。
どちらも基本は変わらなくて、役の気持ちを大事にしています。唯一違いがあるとすれば、動きが大きくならないように、声を張らないように気を付けているくらいですね。映像作品で腹から声を出すと周りがびっくりしちゃうので(笑)。
――舞台でもマンガ原作の作品に多く出演されていますよね。『血まみれスケバンチェーンソー』もマンガ原作ですが、もともとご存知でしたか?
知らなかったんです。実は僕、あまりマンガを読まないんですよ。好きなんですけど、マンガやゲームはすぐに没頭しちゃうので、手をつけないようにしているんです。だから今作も映画のお話をいただいてから原作を読みました。読んでみると……面白かったですね!スプラッターなので残酷なシーンもありますが、コミカルで残虐性はあまり感じないです。思いきり振り切った世界観が描かれているので、怖くなかったですよ。
――ストーリーは、女子中学生・ギーコが改造人間にされた同級生と闘うアクションスプラッターですよね。
タイトルから想像するとスプラッター映画なので、エグいのかなと心配されるかもしれません。でも実際に見るとコミカルに描かれていて、そのエグさが心地いいんじゃないかな。血も飛びますけれど、おどろおどろしい感じはないです。何も考えずに楽しんでいただけるエンターテイメント作品だと思います。
――一緒に見るなら家族や恋人よりも、やっぱり友達?
絶対的に友達です!余談ですが、僕、中学生の頃に女の子と『最終絶叫計画』を観に行ったんですよ。下ネタ満載のパロディー映画で、途中で「もう終わった…」と思いました。当然怒られましたね。たくさんある映画のなかでなぜ俺はこれをチョイスしたんだろうと未だに後悔しています(笑)。『血まみれスケバンチェーンソー』には下ネタはないですけど、純粋に楽しむならやっぱり友達と観ていただくのがおすすめです。映画を観終わった後にご飯に行って盛り上がれる作品だと思いますよ。
――どんなところが今作の魅力でしょう?
どの登場人物たちも、素直で人間味があるんですよ。僕の演じる怨憎(ハンゾウ)という役も、純粋に「忍者」が好きで憧れているような子なんです。仲間思いで、戦闘中に味方の様子が気になったりしちゃう。大好きなことに対して真面目で純粋だからこそ、ちょっと間違った方向に進んでしまったりする。そんな純粋さがコミカルでもあり、どのキャラクターも「可愛らしいな」と思える愛嬌があると思います。『血まみれスケバンチェーンソー』というスプラッターの世界観の中だから、純粋な気持ちがギャップとして輝くんじゃないかな。
――玉城さん演じる「怨憎」は、原作ではチョイ役ですよね。
原作を読んで「あれ、怨憎、死ぬの早いなー?」と思いましたよ(笑)。それが映画では、怨憎という人物がしっかりと掘り下げて描かれています。監督も細かい事は言わない方なので、かなり僕の自由に演じさせていただきました。とはいえ映画のオリジナルストーリーというわけではなく、全体の流れは原作と同じですね。
――事前に話題になっていましたが……女子中学生の格好もされたとか?
そうなんですよ……。怨憎はふつうの大人しい女子中学生が男性に改造されるという設定なんです。でも、まさか僕が演じるわけないと思っていたんですよ!台本を読んだ段階では、改造されて男になった後だけを演じるものと思いこんでいたんです。
僕が女子学生をやると知ったのは、衣装合わせの数日前ですね。その時の衝撃たるや凄くて、「あ、僕がやるんですね~…」って笑っちゃいました。それからすぐに、急いで足の毛を剃りました。結局ロングスカートになったので、スネ毛は関係なかったんですけど(笑)。
――セーラー服の恰好をした自分を見たご感想は?
「やっべぇ~」と思いましたよ。肩幅や腕の太さが男なんですもん。しかも周りの役者さんがみんな若くて綺麗な本物の女の子ばかりなので、そのなかにあっては頑張ったんですよ……。もしご覧になった方が「ヤベェな」と感じたら、監督のせいにしてください(笑)。
でも、まさか30歳にして女子中学生役をいただけるとは思わなかったので、すごくいい経験をさせていただきました。
――舞台では女性役を演じられたこともありましたよね。
極上文學 第4弾『藪の中』という作品で、真砂という女性を演じました。でも舞台なので、映像ほどリアルな格好はしないんですよ。今回は完全に本物の女の子になるので、初体験です。ちょっと肩を丸めるようにしたら女性らしいかな、なんて研究しましたね。
実は最初、セリフが一言だけあったんですよ。僕の声は男なのでどうなることかと思っていたのですが、結局監督が「言わなくていい」と言ってくれました。救われましたね(笑)。
改造されて男になった後は、カッコいいシーンもありますよ!アクションシーンも満載です。舞台と違って映像のアクションシーンでは武器と武器をちゃんと当てるので、迫力もありますよ。
――怨憎の武器は何ですか?ポスターでは手裏剣のようなものを投げていますね。
忍者の道具をいろいろと使いますよ。改造される前の怨憎は「忍者研究部」の部長なので、忍術に憧れているんです。でもなぜか武器は刀ではなく、農業に使う鉈(ナタ)。よく忍者が持っていそうな長い刀で戦うのかなと想像していたら、まさかの農業用の鉈なので最初は「え?」と思いました。手裏剣も、よくある四つ角が尖ったものではなく、指と指の間に小刀を挟むタイプのものでした。でも、そのちょっとしたズレが良いんだと思います。本物の忍者ではなくて「忍者研究部員」なので、忍者に憧れている感じが出ているんじゃないかな。
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ほかには変わり身の術や、印を結んだりもしましたよ。最初に監督に「印を結んで」と言われた時は「印ってなに!?」と戸惑ったんですけど、知人の舞台で印を結んでいたシーンなどを見てオリジナルポーズを考えました。おかげで撮影はうまくいったんですが、アフレコの段階でいきなり「印を結んでるシーンで忍術っぽく何か呟いた声を入れて」と監督に言われたんです。でも撮影した時には無言だったので、口は動いてないんですよ!監督は「南無阿弥陀仏とか、ホンジャマワカとか適当にボソボソ言って」と要求するんですが、口が閉じているので映像と声が合わない。僕としては「口が動いてないけど大丈夫かな?なにも言わない方がいいんじゃないかな?」と心配しながら、結局「ううぅ……」みたいな感じで唸りました。あとは監督がうまく編集してくれるだろうと信じています(笑)。
――山口ヒロキ監督とは何度もお仕事をされていますので、きっとお互いに信頼感があるのでしょうね。
そうですね。映画『メサイア』シリーズでご一緒させていただいていることもあり、今作でも安心して演じることができました。山口監督は柔らかくてフワッとした空気感の、優しい方なんですよ。僕のなかのイメージでは妖精です(笑)。でも現場にはユルい空気感はなく、限られた撮影時間だからこそ自然に作品に集中できる環境ができていたので、とても良かったですね。
――共演者の方はみなさん若い女性の方ばかりですが、現場では仲良く過ごされるんですか?
男性が少なかったので、現場での雑談や打ち上げでもよく話しかけていただきました。みなさん気遣いをしてくださり、良いチームでしたね。とても素敵な役者さんばかりですし、主役のギーコを演じる内田理央さんはじめ素直に役を演じているんですよ。そのおかげで僕も気負わず演じることができました。
――今後、玉城さんが挑戦してみたい役はどんな役ですか?
最近は、なんでもやってみたいと思うようになりました。自分がやりたい役だけやろうとするより、いただいた役を素直に受け入れる方が楽しいかな。自分の希望を追い求めると「あ~、あの役やりたいのにできないな~」とフラストレーションが溜まりそうですし。歳を重ねるごとに、幅広くなんでもやってみたいと貪欲になってきましたね。
――では、役者以外でやってみたいことはありますか?
すっごくやりたいのは、歌のボイトレ、乗馬、英会話ですね!乗馬はずっと気になっていたし、英語が話せるようになっていろんな人と直接コミュニケーションがとりたいんです。僕、飲みに行って隣に外国の方がいると話しかけたりするんですよ。でも、自分で「飲んでます?」って声をかけたものの結局しゃべれない(笑)。簡単なことを言いたいだけなのに、ひたすらジェスチャーをしても伝わらないのが悔しくて。また地元の沖縄でバーベキューに行くとアメリカの方と盛り上がることもありますし、そんな時に身振り手振りだけだと伝わらないことが多いから、会話したいですね。
役者という職業は、法に触れなければ、経験したことに損はないと思うんです。だからなんにでも挑戦して、いろいろなことをやってみたいな。
――5月には舞台『曇天に笑う』も控えています。今後のご活躍に期待しています。
ありがとうございます!
◆玉城裕規プロフィール
1985年生まれ、沖縄県出身。2004年、テレビ東京『エコエコアザラク・眼』で俳優デビュー。以後、数々の映画・ドラマ・舞台に出演しており、舞台代表作は『弱虫ペダル』『ライチ☆光クラブ』『曇天に笑う』(主演・曇天火役)など。現在公開中の映画『メサイア —深紅の章—』は、『血まみれスケバンチェーンソー』の山口ヒロキ監督による作品である。
映画『血まみれスケバンチェーンソー』オフィシャルサイト
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