ミュージカル『スコット&ゼルダ』 ウエンツ瑛士と濱田めぐみにインタビュー!「“今年一番”のミュージカルを目指します!」

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とある病院に一人の男がやって来る。男は作家で、精神を病んで入院中の女に会いに来たのだ。女の口から語られる華々しい過去の物語。“ロストエイジ”と呼ばれる時代を駆け抜けた「スコットとゼルダ」が見たアメリカンドリームとは何だったのか・・・。10月17日(土)に東京・天王洲 銀河劇場で開幕する『スコット&ゼルダ』。「華麗なるギャツビー」で知られる作家、スコット・F・フィッツジェラルドと、その妻ゼルダの姿を描いたジャズテイスト満載のミュージカルだ。本作でスコットを演じるウエンツ瑛士と、ゼルダ役の濱田めぐみに今の気持ちを語って貰った。“あのミュージカル”以来、20年振りの共演となる二人は何を思うのか?

ウエンツ瑛士、濱田めぐみ『スコット&ゼルダ』

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――『スコット&ゼルダ』ではお二人とも実在の人物を演じられます。ウエンツさんは今回が初めてで、濱田さんは川島芳子(『李香蘭』)、ボニー(『ボニー&クライド』)に続いて3回目。役に対するアプローチはいかがでしょう?

濱田:実際に存在した人を演じると、その人についての史実だったりエピソードだったり、迷った時に帰れる“軸”があるように思うんです。この前まで演じていた『サンセット大通り』のノーマのように、リアリティがある人物造形で架空のキャラクターという役柄が実は一番難しくって。今は資料を読みながら、ゼルダという人が周囲からはどう捉えられていたのか、そしてそのセルダという役を私が演じたらどういう風になるのかをイメージして、彼女に近づこうとしている状態です。

ウエンツ:僕は実在の人物を演じるのは今回が初めてで、やはり資料を読むところから始めています。ただその資料には書き手の主観が含まれている訳で、その主観の中からスコット(=フィッツジェラルド)の愛すべき点や欠点と言われるポイントを読み取って役作りに生かしていけたらと。今はどちらかというとスコットのネガティブな面より魅力的な面をたくさん見つけようとしていますね。大変な人ではあるんですが、なるべく多くの人に愛される役にしていきたいですし。

――製作発表の時にウエンツさんが「きっとフィッツジェラルドの霊がどこかにいるだろうから、それを捉えて演じたい」と仰っていたのが印象的でした。濱田さんの役作りとがっちりリンクしそうですね。

濱田:ウエンツ君を見ていて「あれ、この人1920年代に生きてたことがあるんじゃない?」と、ふと思うことがあって。今回私たちが実在の人物を演じる機会を得たってことは、きっと何か大きなご縁が働いているんだと思うよ。

ウエンツ:そうかもしれないですね。僕、段々スコットの人物像が自分の中に入ってきてるみたいで、この前生まれて初めて、お店にいるお客さん全員におごっちゃいましたよ(笑)。彼の豪胆さが自分に入ってる時だったんでしょうね。千秋楽が終わる前に破産しないよう気を付けないと(笑)。

――『サンセット大通り』の濱田さん版ゲネプロ(関係者向け舞台稽古)の時に、とても真剣に舞台に見入っているウエンツさんの姿をお見かけしました。

ウエンツ:あの時は本当に圧倒されました。いつの間にか体ごと舞台に持って行かれるような感じで。

濱田:ゲネプロって実は俳優にとって一番過酷な過程で、時間もない中いろいろなことを確認しながら何とか本番と同じように舞台をやり遂げなくちゃいけない。ウエンツ君は舞台の上で必死にノーマを演じる私の姿を見て応援してくれていたんだと思う。そう言えば『天才執事ジーヴス』演出の田尾下(哲)さんから、今回の共演が決まった時に「ウエンツはいい奴だから!頼んだ!よろしく!」ってメールが届いたの。

ウエンツ:それは嬉しいですね。田尾下さん、ありがとうございます(笑)! 僕はまだ舞台の経験も少ないんですが、そこに立たせていただく以上、少しでも共演の皆さんに近づけるよう、出来るだけの準備はしなければ、と思ってきました。特にミュージカルは、小さい時からその世界を目指して必死に頑張っている方たちも多い中、自分が主要な役をやらせていただいていいのか迷ったり壁にぶつかることもありますが、キャストの皆さんと同じ世界を共有できるよう、精一杯やれたらと思ってます。

目次

二人の共通点は“THE 完璧主義”!?

ウエンツ瑛士『スコット&ゼルダ』

――お二方とも前作ではアンドリュー・ロイド・ウェバーさんの楽曲を歌われ、今回はワイルドホーンさんのナンバーに挑戦されます。

ウエンツ:製作発表でも歌わせていただいたんですが・・・正直、難しかったです。ワイルドホーンさんのメロディーと日本版の訳詩がある中、そこに自分の感情をのせていくことがこんなにも大変なのかと。まだ自分の中で確固たるフィッツジェラルド像が出来ていない中、どうこの難しく素晴らしいナンバーと向き合えばいいのか、これからの大きな課題の一つですね。

濱田:ウエンツ君は完璧主義者だよね。

ウエンツ:ですね。ちょっとでも引っ掛かることがあるとなかなか前に進めませんし。

――感覚を大事にする完璧主義という点ではお二人とも似ているような。

濱田:確かに私もどんどん自分を追い込みながら追求していくタイプかも・・・うん、似てるね(笑)。

ウエンツ:僕はきっちり出来ないとまず自分に醒めるんですよ。一つでも出来ないことがあるとふと素に戻ってイラっとしちゃう。

濱田:あ、その感じ分かる!そうならないように自分が持ち直すための“仕掛け”を要所要所でちゃんと作っていかないとね。

――いろんな意味でお二人の共演はとても刺激的なものになりそうです。

濱田:私、実はポンコツなんですよ。

ウエンツ:いやいや、いきなり何ですか、その爆弾発言は(笑)。

濱田:いや、本当に。抜けてる所も多くて稽古場でもぼーっとしてたりするから、共演者が心配して「自分がしっかりしないと」って思うみたいなの。稽古中に次にどこの場面を返すのか、役のことを考え過ぎてて分からなくなっちゃってたり、違う場所に立ってたりなんてことも日常茶飯事。で、相手役の人が「これはまずい、この人は自分が引っ張っていかないと」って頑張るうちに物凄い勢いで成長を遂げるという(笑)。

ウエンツ:そんな成長の仕方があるんですね(笑)。僕、今回の共演でとても楽しみにしているのが、ゼルダが投げてきたボールをいかにウエンツではなく、スコットとして自然に返していくかということなんです。その場合、僕の中での投げ手はいつもゼルダなので、リードをよろしくお願いします(笑)。

濱田:あ、そういう方向?分かった、任せて!でも毎日違うよ。

ウエンツ:それが何より楽しみなんですよ!その繰り返しと積み重ねでスコットとゼルダの関係性が出来ていくと思っていますので。そこから僕もゼルダが驚くようなリアクションを返していきたいですね。

信頼できるクリエイター陣と『スコット&ゼルダ』の世界を創る

濱田めぐみ『スコット&ゼルダ』

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――舞台上のボールと言えば、演劇界から参戦の山西惇さんとの絡みも楽しみです。製作発表では初対話と思えない面白さでした。

ウエンツ:山西さんは今回の役柄が、スコットとゼルダ、そして時代を客観的に見つめるというキャラクターですし、ご本人もそういう所をお持ちの方の様な気がします。何か迷った時や「ん、これどうなのかな?」なんて思った時に色々聞くと、凄く冷静に答えを返して下さるんじゃないかと。

濱田:うん、分かる!ぼそっと返ってくる答えが超リアルなの。ミュージカルではない分野でも活躍している方がカンパニーにいらっしゃるのは心強いです。

――今回は少数精鋭でソリッドな作品を創るという鈴木裕美(演出)さんの言葉もありました。

濱田:裕美さんの演出って、ご自身が思う所やプランをまず説明して、後は俳優の自由度に任せて下さる部分がとても大きいんです。だから最初にミュージカルの約束事である音楽を体に入れて、あとは役の人物としてその場にきちんといられたら、全てのことがとても楽になる。演技というより、ただ存在しているという感覚をもたらしてくれるんですね。お客様にも俳優が自由な状態でいるところを観ていただくと、より作品の真意が伝わるとも思います。

ウエンツ:僕は裕美さんの演出は初めてということもあって、これから本格的な稽古に入る中でいろいろ新しい気付きがあると思っています。裕美さん演出の『サンセット大通り』を見せて頂いた時にまず感じたのは「濱めぐ、凄いな!」ということ。実は僕、物語がなかなか頭に入って来なくて・・・と言うのも「ああ、この人と次に一緒にやるんだ」って思ったら圧倒されちゃったんですね。で、だんだん「自分がジョーを演じていたら、どうこのノーマと対峙していたんだろう」というモードにもなって。濱めぐさんには凄い実力があって、安心して共演させていただけるという安堵感と、あの人と一緒に舞台に立つんだというある種の恐怖感が一気にきた感じでしたね。それがさっきお話した“前のめり”の状態の真実です(笑)。

濱田:それは何か戸惑いもあったということ?

ウエンツ:自分では意識していなかったんですけど、舞台を観ながら「嫌だなぁ・・・」って言ってたらしいです(笑)。色んな感情が渦巻いちゃったんでしょうね。

濱田:楽屋に来てくれた時に「あー ウエンツ!(嬉)」って声を掛けたら、「ああ・・・」って暗いトーンだったよね(笑)。

ウエンツ:いや、本当にすみません(笑)。何だかあの時は「最高でしたよ!」って言える状態でもなく・・・濱田めぐみという人の凄さに完全に飲み込まれてましたね。

濱田:さっき、ウエンツ君から20年前に共演した時の写真を見せて貰ったんですよ。良く持ってたね。今やお宝だよ!

ウエンツ瑛士、濱田めぐみ『スコット&ゼルダ』

――お二人の20年振りの化学反応が楽しみです。

ウエンツ:この『スコット&ゼルダ』という作品に今の自分が巡り会えたことに、幸せを感じています。これがなかったら、フィッツジェラルドという人の人生に深く触れることもなかったと思いますし、共演者の皆さんとも舞台上で出会う事はなかったかもしれない。そんなさまざまな運命に身を委ねながら、時にその運命に逆らって、僕なりの爪痕を残せたらと思っています。“今年一番”のミュージカルに出来るよう精いっぱいやらせて頂きます。

濱田:今日の製作発表で“今までにない作品”に仕上がるんじゃないかと大きな予感がありました。1920年代が舞台ということでビジュアル的にもそうですし、ワイルドホーンさんの音楽にもジャズテイストが多く取り入れられていて耳に新しいのではないかと。私は10代からゼルダがこの世を去る48歳までの時代を物語の中で行き来する訳ですが、役の気持ちや、佇まいの切り替えが今回自分にとってのチャレンジになりそうです。どうやらほぼ舞台に出ずっぱりになりそうですし。お洒落ではあるけれど軽くない…観た方の心に刺さるメッセージがある作品になると信じていますので、ぜひ劇場にいらして下さい。


実は20年前に上演されたミュージカルで共演経験があるウエンツ瑛士と濱田めぐみ。互いの現場で切磋琢磨を重ね、今回久し振りの共演を果たす。オフトークで「この二人は世間から見たら幸福ではなかったかもしれないけれど、本人たちはきっと幸せだったんだと思う」と語るウエンツの笑顔が頼もしい。

『サンセット大通り』のノーマに続き、絶世の美女として時代を駆け抜けたゼルダを演じる濱田は「やっとノーマが抜けてきた」と笑いながら、新しい挑戦への決意を語る。こんなに自然体の人のどこからあの他を圧する熱量が生まれるのかと、今回もその“落差”に驚かされた。

華やかでゴージャスだけれど軽いだけの作品ではない・・・二人が語る『スコット&ゼルダ』の世界がどう具現化され、私たちに驚きをもたらしてくれるのか。10月17日の開幕が楽しみでならない。

『スコット&ゼルダ』

◇ミュージカル『スコット&ゼルダ』◇
2015年10月17日(土)~11月1日(日) 東京・天王洲銀河劇場
2015年11月7日(土)~11月8日(日)大阪・新歌舞伎座

撮影:高橋将志

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