『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』松田凌にインタビュー!「きっとここで何かが変わるんだと思います」

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昨年日本で初上演された『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』が早くも再演決定。フランス系カナダ人のルネ=ダニエル・デュボワ作、1986年初演の作品でカナダ、イギリスでも上演を繰り返されている名作だ。
舞台は1967年。カナダ、モントリオールの裁判長の執務室。男娼を生業としている「彼」が肉体関係のある大学生を殺したとして自首してきた。「彼」は殺人したという事実は認めているものの、事件の「真実」を明かそうとはせず、刑事は激しく苛立つ。刑事の濃厚なやり取りの果てに見えてくるものは……。
初日を数日後に控え、難役に挑む松田凌に熱い意気込みを聞いた。

松田凌『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

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――稽古はいかがですか?

今、稽古が始まって2週間くらい。一つ一つの稽古の内容が濃いかなと感じています。僕はシングルキャストで刑事役の方がスウィッチ・キャスト。常に集中した状態でいますね。これまで出演した作品は音や照明があったり、メイクをしたりといろんな「武器」があったんですが、今回は音もなく照明もほぼなく、ワンシチュエーションの会話劇。役者としては丸裸の状態で舞台に立つんです。本当に「板の上で生きる」という感覚を覚えていますね。

――翻訳戯曲を演じるのは初めて?

今まで脚色や変更が加えられたものはあったんですが、翻訳戯曲をストレートに演じるのは初めてです。日本とカナダとは文化や環境が違うので、たとえばノック一回にしても違うんですよ。そういった日常の些細な部分がこの作品では引っかかってくるので、演出の古川(貴義)さんやスタッフと話し合った上で、この作品を作り上げていっています。

――日常の延長線上の感覚では演じられないものでしょうか。

そうですね。僕が演じる「彼」が非日常の空間で刑事と繰り広げる会話劇なので。一言一言にその変化が気になったり、苛立ちや切なさ、楽しさを感じたりするんです。この間出演者の山口さんと談笑してたときも、日常の感覚もすごく研ぎ澄まされていたのを感じたんですよ。前より自分のアンテナがいろんなものに過敏に反応しちゃって。こんなに日常に影響を及ぼすことって今まで何回もなかったんですが、今回も「ついに来たな」(笑)と。

松田凌『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

――男娼で殺人者という設定は、実際の松田さんとはかけ離れてますよね。

でも、僕はむしろ、男娼で殺人者であるという設定に惹かれてしまって。僕は同性愛者ではないし、殺人なんてもちろん犯さない。でも、演じているうちにいつの間にか、自分自身の気持ちが出てきちゃっている気がするんです。「彼」と僕とは人生も時間も違うんですけど、根本は離れてないんじゃないかって。

――だんだん「彼」と松田さんがシンクロしていってる?

「演じようと思わないで芝居する」ということをよく聞きますけど、そうしたかったわけでないのにそうなってしまう瞬間があって。自分とかけ離れた人物を演じるのは役者の醍醐味だけど、そういうこと以上に「彼」の根本に魅力があるんですよね。「彼」がどうしてそんな行動に及んだのか、そこに至るまでの感情のうねりは正直な話、僕には理解できなかったんです。でも作品を通して日々自分の中に浸透させていくうちに、バラバラのピースが少しずつでも集められるようになってきています。

松田凌『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

――とことん役と向かい合って、つきつめて演じてらっしゃるんですね。この作品は20年以上前にプロデューサーがイギリスで見て惚れ込んだ思いが再燃し、昨年初上演に至ったそうです。そして、松田さんが今回演じることになって…不思議なご縁を感じずにはいられません。

この役に選んでいただいたとき、もし仮に僕が断ってしまって他の人が演じるのがいやだったんです。この役は僕がやりたい。こんな千載一遇のチャンスは逃してしまったら僕の人生はもうないと思って。自分の中でもターニングポイントだと思ったし、他の人には渡したくなかった。

――松田さんがデビューしてから3年。多くの役を演じてらっしゃいますが、「今まで同じような役を演じたことがないんです」とお聞きしたのが印象的でした。

そうですね。新撰組から始まり、オタクや神様、スパイをやったり、いろんなことをやらせていただきました。そして今度は男娼……(笑)。その前はピーターパンをやって(『遠ざかるネバーランド』)、さらに前は裏の稼業の人(『URASUJI2015-綱渡り-』)。こうやっていろんな人生が歩めるのは役者ならではの嬉しさですよね。

――「今度はこういう役がやりたい」とイメージしてチョイスしているんですか?

そういうわけではないんですけど、時代背景も環境も国も年齢も違うような役を序盤からいただいたので。その分苦労はしましたけど、今の自分の身になっているかなと思います。今回の『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』は多分、デビュー1、2年目だったらできなかったと思う。挑戦という言葉にするんだったら、今が一番ちょうどいいかな。「できるかできないかわからない」くらいの感覚。スレスレの限界をさまよっているような極限状態で臨めるのがいい気がするんです。

――では、今まで積み上げてきた経験をすべてぶつけられそう?

デビューしてから4年間というわずかな経験ですが、それが今の自分に繋がっていると思います。でも今回は、その引き出しの中からすべて出そうとは考えてなくて。自分が一から引き出しを作れる作品だからこそ、チャレンジしている部分が多いんですよね。

――「彼」役で、新しい松田さんが見られそうですね!

きっとここで何かが変わるんだと思います。

松田凌『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』

――楽しみです! 最後にメッセージを願いします。

『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』と出会って、ここまで役者が裸で勝負できる作品ってないと思うんです。今の自分たちだからできる役者の極致を一つの形にして届けられる自信があります。「こんな舞台があるんだ」と見て下さった方の心に刻みつけられるような作品なので、その衝撃をぜひ劇場で感じていただければと思います。


◇松田 凌(まつだ・りょう)プロフィール◇
1991年9月13日生まれ、兵庫県出身。2012年、ミュージカル『薄桜鬼 斎藤一篇』で舞台初出演&初主演。以降、舞台、ドラマ、映画で活躍。主な舞台作に『露出狂』『ドリームジャンボ宝ぶね』『メサイア−銅ノ章−』『美女と魔物のバッティングセンター』『K』『URASUJI2015』など。2013年にはドラマ『仮面ライダー鎧武/ガイム』に城乃内秀保/仮面ライダーグリドン役で出演した。5月13日(水)より舞台『メサイア−翡翠ノ章−』に出演。

◇舞台『Being at home with Claude~クロードと一緒に~』
1967年7月5日、午前10時。カナダ・モントリオール。裁判長の執務室。
殺人事件の自首をしてきた「彼」は、取り調べを行う刑事に面倒くさそうに答えている。部屋の外には大勢のマスコミ。取り調べは36時間を超えた。
「彼」は男娼を生業にしており、被害者の大学生とは肉体関係があった。インテリ青年と思われる被害者が、なぜ男娼を家に出入りさせていたのか。十分な調書を作れないまま時間だけは過ぎ、いら立ちを隠せない刑事。
殺害後の足取り、2人の出会いなどを ふてくされながらも包み隠さず告白する「彼」だが、殺害の動機だけはあいまいな言葉を濁すばかりで…。
この事件の真相はどこにあるのか――。

<出演>松田 凌、山口大地、唐橋 充、鈴木ハルニ
<作>ルネ=ダニエル・デュボワ
<翻訳>イザベル・ビロドー、三宅優
<上演台本・演出>古川貴義(箱庭円舞曲)

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