ジャンク歌舞伎『春風外伝』石坂勇×花園直道インタビュー

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2014年春に、大好評で幕を閉じた『SHUNPU Gaiden~春風外伝~』が、新たなキャストを迎え2015年4月に東京・銀座8丁目 博品館劇場で再演される。初日を約2週間後に控えた3月23日(月)、東京都内のスタジオで行われている稽古現場にエンタステージが潜入。本番に向かい、製作陣、キャスト陣ともに真剣な面持ちで稽古が行われる中、前回に引き続き徳川宗春役を演じる石坂勇と、今回から新たに徳川吉宗役を演じる花園直道に話を伺うことができた。

花園直道、石坂勇『春風外伝』

再演に挑む石坂と、大成功を収めた舞台に新たに参加する花園。それぞれの立場から見た本作の魅力とは!?

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――『春風外伝』の再演が決まった時の心境をお聞かせください。

石坂 自分が携わった作品で、もう一度お声がかかって、その作品ができるっていうのは、一言でいえば「嬉しい!」ですよね! だいたい、舞台って終わった時に何かしら悔いが残るものじゃないですか?人間なので“100%”はないですし…。そんな中、再演ができるということは、前回を超えてもっといいものを伝えることができるということになります。その分、自分にもプレッシャーがありますけどね。全員同じキャストというわけにはいきませんが、「新しいキャストで、どこまでできるか」っていう新たな挑戦ができるので嬉しかったです。

――前回、初めて『春風外伝』の台本をご覧になった時の印象と、実際に演じてみて変わったところなどはありましたか?

石坂 “ごった煮芝居”ってチラシにも書かれていますけど、実際にやってみると、もっと“ごった煮”感が出るというか…。台本を読んだときは、「普通に話が流れていくな」っていう印象なんですけど、実際、役を演じる役者が現れて稽古場で演じていくと、台本のイメージを覆すような人たちが出てくるんですよね。シーンの作り方と言うか、劇画チックと言うか、普段やっている時代劇やストレートプレイなどとは、まるっきり作り方が違うので…。
僕は、台本を読むときに自分の役より「周りの人たちが、どんな役なんだろう」って思いながら読んでいるんですよ。「自分がどんな役をやらなきゃいけない」っていうのは、二の次で。みんなの役を読んでいると普通に芝居がつながっているのに、稽古に入ると「え、こんな風になるの!?」っていう、ある意味、驚きがある舞台と言いますか…。台本を読んだ時の印象と、実際に舞台を作り上げていく作業をしていくと、「こんな風になるんだ!」と想像を超える驚きがありましたね。

石坂勇『春風外伝』

――花園さんは、前回大成功した舞台の再演に出演されるということで、プレッシャーなどあったのでしょうか?

花園 そうですね。でも、“ごった煮”感とか、“ジャンク歌舞伎”とか、僕としては、そういったキャッチフレーズにすごく魅力を感じましたね。と言うのも、自分が普段、どちらかというと歌あり、踊りあり、津軽三味線あり、さらにはちょっとしたお芝居や殺陣とか…、言ってみれば“ごった煮”感があるショーをやっているので。プレッシャーももちろんありますがSAMさん(=石坂)とか、みなさん本当に良い方たちばかりなので…。

石坂 いやぁ(照)。

花園 いやいや、本当に!! 製作の方々も含め、みなさん本当に僕の緊張をほぐしてくれています。

――今回、花園さんをはじめ、新しいキャストの方も加わりましたが、稽古場の雰囲気はいかがでしょうか?

石坂 まだ、全体を見るほど自分自身に余裕がないので何とも言えないのですが…。一人ひとり何となくは見ているんですけど、間違いなく「みんなが精一杯、一生懸命やっているな」っていう感想ですね。
誰かが悩んでいるとか、誰かが落ち込んでいるとか、誰かが自分だけ勝手にやっているとかというのではなくて、みんなそれぞれが今は、自分のことを一生懸命やっている段階ですよね。ここから一人ひとりが作り上げたもので、一つの場を固めていって、それをどんどん次の場、次の場につなげていく“リレー”というか、“バトンタッチ”をしていって、最後にエンディングでドーンとみせる。座組みとして、全員でスタートして、全員でゴールするというところまで、稽古場でいければいいんじゃないかなと思っています。
芝居って、いい意味で自分を出して、相手もそれを受け取って、また投げ返すっていう“キャッチボール”じゃないですか。だから、相手が誰であれ、“ボールをとってもらう”それから“もう一回投げ返してもらう”っていう作業が大事で、まずそれをやらないと本当の意味で「この人は、こういう人なんだ」って分かってこないと思うんですよね。
台本に書かれている台詞のやり取りの裏側に、どんな気持ちで自分のバックボーンを持ってきて、この舞台に出すかっていうのがすごく大事。だから、これから本当に深く、みんなを掘って、掘って、掘り下げて、浮き上がってきたものがどうなるかっていうのが、一番楽しみですね。

――逆に花園さんは新たに参加される立場になりますが、稽古場ではどんな印象を持たれましたか?

花園 お芝居主体の公演というのは2回目なんですが、台本の読み合わせで、最初に部屋に入った時に雰囲気がめちゃめちゃ固くて「これ、どうしようかな…」って思ったんです(笑)。でも、台本を読みだしたら、どんどん気が楽になっていって…。その後、立ち稽古になってからは、もう楽しさしかないですね!いろんな稽古場があると思うんですけど、SAMさんを筆頭にとてもアットホームな稽古場だなと思います。演出・脚本家の米山(和仁)さんもとても気さくですし。

花園直道『春風外伝』

――花園さんご自身がなさっている様々なパフォーマンスと、この『春風外伝』とは共通点も多いと思うのです。実際に稽古をされてみてどのように思われましたか? 

花園 似ていますね!最後の桃奴(蒼井翔太)の一座がやる“ジャンク歌舞伎”というショーなんですけど、「うちのショーが始まるのかな?」って思うくらいで(笑)。いろいろなところが似ていると思います。
僕も、古典舞踊を小さいころから習っていて、それをもっと気軽に見てもらいたいという思いがあっていろんなことにトライしているんです。そういうところで“ジャンク歌舞伎”っていうフレーズっていうのは、僕にはすごく魅力的で!「ここにいろいろなヒントがあるんじゃないかな?」と。この公演が終わって自分の公演をやる時に、ここで学んだことから何か活かせるんじゃないかなと思っています。具体的に「どこがどう活かせる」かは、僕もまだ余裕がないのでわからないですけど。楽しみですね。

石坂 合ってるよね!“ジャンク歌舞伎”ってフレーズが。(花園に)合ってるんじゃないかな?

――石坂さんの演じられるキャラクターについて“破天荒”という表現が出てきましたが、石坂さんご自身と宗春と言うキャラクターに共通点などはありますか?

石坂 すごくありますね!初演で、台本を読んだ時にも思いましたし、実際にやってなおさらそう思いました。今回の稽古でまた思ったんですけど…。
僕は、人が好きで、人を見ているのが好き。「話しかけたらどういう風にくるんだろう?」って、人と交わるのがすごく好きなんですよ。だから、この“役者”という職業をしているんです。
宗春にしても、きっと人が好きなんですよね。“自分”っていうものを自分で考えて自問自答しているんではなく、誰かに自分を見せてそれに対して返ってきた答えで「あ、僕ってこうなんだ!」ってわかるところが、僕自身にもあるんですね。たぶん宗春も同じで、周りの人間にいっぱい声をかけて、その返ってくる言葉で「あ、僕って今こういう人なんだ」っていうのをすごく実感するタイプなんですよ。
だから宗春自体も、町の住人とか出会ったことのない人たちとか、偉そうに藩主をやっていても見えてない部分を、言葉を発して態度で見せて、そこから返ってきたもので自分が次に何をすべきか、どう考えるべきかを考えている。「この方がいいんじゃないか」って口に出してみて「違う」って言われたら、「ああ、違うのか」って知る。
宗春は、人の中で生きる人だと思うんですよ。自分で何かを作って「こうだ!よし、ついてこい!」じゃなくて「僕はこう思うんだけど、みんなどう?」「あ!じゃあ、こうしようか!」って“ベストをみつける男”なんですよね。皆さんの中で生かされているからこそ、自分のベストが見つけられるっていう人生は、たぶん僕とすごく重なりますね。

――花園さんが今回演じられる吉宗は、歴史上は倹約家で娯楽を制限しているという人物で、花園さんのイメージとは正反対なように思ったのですが…。

花園 え!! そうですか!?(笑)

――花園さんのパフォーマンスは、華やかで革新的なイメージが強いので、質素倹約を旨とする吉宗とは逆のイメージかと思って。実際のところご自身と吉宗に共通点はありますか?

花園 今回、描かれている吉宗とはすごく似ている部分があって…。僕も最近は、プレッシャーからかすごく胃が痛くなっちゃうんです。(笑)いきなり、冒頭でそういったセリフがあるので、台本を読んだ時に「あれ、これは最近の僕じゃないかな?」ってちょっと思ったんです。
自分の公演はもちろん自分がしっかりしなければいけませんが、裏に入ると「本当は、俺はこんなにたくさんの人の前で踊るとかそんなことができる人間じゃないんだけど」と思うときがある。今回描かれている徳川吉宗とは、似ているところがあると思います。

花園直道、石坂勇『春風外伝』

――今回の公演も土日が早々に完売と大人気ですが、この舞台がこれだけ支持をうけている大きな理由はなんだと思いますか?

石坂 初演を見て今回来る人、初演のうわさを聞いて「じゃぁ、今回見てみようか」っていう人もいると思う。僕らは台本の中、演出家の演出の中、稽古でやったものを舞台にのせるわけじゃないですか。でも、本当の舞台の出来上がりって、お客様が入って、劇場と言う空間で、初めてその日、一生に一度しかないあの時間を共有したときに生まれる空気感だと思うんですね。その空気感がきっと『春風外伝』っていう作品を良くしてくれているんですよね。つまりお客様もこの作品を作っているんです。
稽古場で作ったもの、プラスお客様の気持ちがそこに乗っかった「作品」が素晴らしくて、お客様が拍手をくれる、それに対して僕たちは初めて「ありがとうございました」っていうお辞儀ができると思うんです。前回舞台を作るといううえで、お客様と演者と一つになって幕を下ろすという作業ができた。だからこそ、もう一回観たいと思ったのか、観ていない人に「あなた、これ観なかったの!? 今度、再演があるから行こうね!」って言ってくれたのか、そういうことだと思うんですよね。
お客様と一つになって作ったからこそ、今の結果になっていると思うので、本当にお客様に感謝ですよね!その一言につきます。

花園 お客様に支えられているなって思っています。エンディングに「僕たちはお客様がいなければ何もならないな」と、改めて考えさせられる吉宗のセリフが出てくるんですよね。とにかく、お客様が大事ということです。

石坂 この舞台にかかわらず、作ったものを最後に仕上げるのはお客様次第だと思うんですよね。良し悪しを決めるのもお客様ですし。だからこそ、僕たちは稽古場の限られた時間でできる限りのことをして、舞台にのせて「どうですか?」「いかがでしたしょう?」っていうことじゃないですか?この『春風外伝』は、一つ一つのやっていることは新しくはなくても、こうして“ごった煮”にしてやっているということがとっても新しい試みで、それを今のお客様が受け止めてくれて、楽しんでくれているっていうのが答えだと思うんです。その答えやお客様の気持ちを信じて、僕たちはやればいい。とてもいい味方がいっぱいいるからこそ、なんですよ。一人一人が思う気持ちがもっと強く、熱くなれば絶対に大丈夫っていう感じがしています。

花園直道、石坂勇『春風外伝』

――最後に、公演の見どころ、そして意気込みをお願いします!

石坂 前回見られたお客様は、新しい吉宗が来て「どうなの?」って期待しているでしょうし、もちろんずっと(花園)直道君を見続けているお客様も「どんな風になるんだろう?」って楽しみだろうし、何も先入観なく来るお客様も「あ、こういう人がいるんだ!」って思わせなきゃいけないだろうし…。たまたま、今は二人しかいませんが、特に直道君見ていただきたいですね。今まで自分でやり続けているものと、たぶん僕たちとぶつかることで今までの自分じゃないものが出ると思うんですよね。だからそれを見てほしいですよね。

花園 みなさん本当に個性的だし、武器をたくさん持っている方が集結しているので、見どころもたくさんあって、“ここ”っていうのは言えないんですけど、全部で『春風外伝』っていう感じですね。僕も踊る場面はきっちり見せて、強いところはちゃんと将軍らしく、でもあとは胃が痛いし自信がない、弱々しいっていうギャップをうまく出したいですね。本当に芸ある方たちばかりなので出演者みなさんを見ていただきたいです。僕も負けないように、頑張りたいと思います。

石坂 いい言葉ですよね! 老いも若きも経験も全然関係ないじゃないですか。「絶対に誰にも負けない!」っていう気持ちで、役者は舞台に立たないとダメなんですよね。「いや、あの人にはかなわない」とか、誰一人思っちゃいけない。「俺が一番だ!」って、「俺が、俺が」っていうのがない限り、絶対に人に優しくできないと思うので…。だから、「負けないように」っていうのはとてもいいと思います。

花園 特に今回はそういう思いが強いですね。それでどんどん良くなっていくんだと思います。


【プロフィール】
石坂勇

1986年、今村ねずみ主宰「THE CONVOY SHOW」に参加。Vol.8を除いた全作品に出演している創設メンバーの一人。歌・ダンス・タップダンスなどで魅力を発揮する一方で、殺陣もこなし、時代劇の出演も多い。主な出演作は戦国シェークスピア第二弾『SHINGEN』『ロックミュージカルBLEACH』『クラブスレイジー』『DONZOKO』など。6月10日(水)から上演される『銀河英雄伝説~星々の軌跡』への出演が決定。

花園直道
幼い頃より古典舞踊(坂東流:名取/坂東蔦之龍)と津軽三味線を学ぶ。2011年『古の花』で徳間ジャパンよりCDデビュー。日本舞踊と歌を融合させ、新感覚で斬新なステージは国内メディアのみならず海外メディアでも賞賛される。舞台『THE SHINSENGUMI』『ヤジキタ!』など。TVではNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』『人生が変わる一分間の深イイ話』『関ジャニ仕分け∞』『スッキリ!!』など出演。4月8日(水)に新曲『東京・ア・ゴーゴー』リリース。5月17日(日)には中野サンプラザにて単独公演を開催。

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