舞台俳優として活動してきた山﨑晶吾の音楽プロジェクトが、1st EP『Midnight Drift』という形になった。2026年9月2日にリリースされた本作は、これまでデジタル配信されてきた楽曲に新曲を加えた全7曲入り。山﨑が舞台俳優デビュー10周年を迎えるタイミングで作られた、いわば現在地を刻む一枚だ。
作品の軸にあるのは、山﨑自身が大切にしている「なんとかなるさ」という言葉。とはいえ、その言葉が7曲すべてで同じ意味を持っているわけではない。
思い切り前を向ける日もあれば、夜になって「もうダメだ」と思う日もある。誰かに背中を押してほしいこともあれば、自分で自分を奮い立たせるしかないこともある。
『Midnight Drift』は、そんな「なんとかなるさ」のいろいろな顔を、ポップスからロックまで幅のあるサウンドで描いた。プロデューサーへのインタビューをもとに、7曲それぞれがどんな思いから生まれたのかを追っていこう。

原点は「生バンド」――10周年を記念する軸のあるテーマで音楽を

プロジェクトのスタートは、至ってシンプルだった。プロデューサーが「音楽で何かやりたいことはありますか?」と尋ねた際、山﨑から返ってきたのは「生バンドでやりたい」という素直な希望。これを目指し、「10周年を記念する軸のあるテーマで楽曲を作ろう」という本格的なプロジェクトが立ち上がった。
テーマの軸となったのは、ここまでの山﨑自身の生き方やマインド「なんとかなるさ」。この『なんとかなるさ』という言葉を軸に、さまざまな視点から描いた楽曲で構成されたのが、『Midnight Drift』というEPである。

「応援してくれているファンへの感謝と、純粋に音楽として聴いた新しいリスナーを惹きつける挑戦」――静かだが熱い山﨑の想いが、その歌声に込められた。
『Midnight Drift』全7曲ライナーノーツ(楽曲解説)
Track 1:「Light It Up」~山﨑晶吾の名刺代わりとなる、ポジティブ・ポップロック~
EPの1曲目に置かれた「Light It Up」を聴いてまず感じるのは、とにかく明るいことだ。山﨑晶吾という俳優のポジティブ思考「なんとかなるさ」「失敗しても明日は来る」をそのまま音像化した爽快なポップロックナンバーだ。
言葉だけを拾えば、いかにもポジティブなメッセージソングに見える。けれど、この曲の場合、そこに無理をしている感じがない。むしろ「本当にそう思っていそうだな」と思わせる軽やかさがある。
実際、この曲が1st EPの第1弾リリースになったのには理由がある。もともとは表題曲の「Midnight Drift」を最初に届ける予定だったという。ところが打ち合わせを重ねる中でプロデューサーが感じたのが、山﨑の「想像以上のポジティブさ」だった。
ならば、その人自身を最初に知ってもらう曲を出したほうがいい。そうして選ばれたのが「Light It Up」だった。ちなみに、デモを聴いた山﨑本人の第一声は「これ、俺のこと言ってますね!」だったそう。その共感の通り、彼の明るいマインドがリスナーに元気を注入してくれる名刺代わりの一曲となった。

Track 2:「Flowin’」~ファルセットが夜に溶ける。甘すぎないセルフ・ラブソング~
「Light It Up」の勢いから一転して、「Flowin’」では少し夜の匂いがする。
第2弾シングルとして配信された「Flowin’」を聴く上で外せないのが、山﨑のファルセットだ。プロデューサーが「最大の武器」として挙げる、美しく抜ける裏声。その声を生かすことを前提に作られたのが、このミドルナンバーだった。
山﨑自身、ストレートなバラードや甘いラブソングには少し気恥ずかしさがあったという。そこで、ただ甘いだけではなく、ロックの質感を残しながら、昭和レトロやシティポップを思わせるサウンドへ昇華した。
悩みと向き合い、弱い自分を受け入れなければならない日もある。「Light It Up」のように明るく背中を押すのではなく、弱さや孤独を抱えたまま、それでも少しずつ前を向いていく。
そんな「なんとかなるさ」も、この曲には描かれている。
Track 3:「Midnight Drift」~夜の落ち込みに寄り添う、もう一つの「なんとかなるさ」~
アルバムのタイトルに掲げられた「Midnight Drift」だが、この曲は「なんとかなるさ」を一番ストレートに歌う曲ではない。むしろ、「なんとかならないかもしれない」と思っている時間を描いている。
失敗して、深く落ち込む。夜、窓の外を眺めながら「もうダメだ」と思ってしまう。そんな日常のリアルなネガティブ感情に寄り添うところから、この曲は始まる。
「Light It Up」が山﨑自身のポジティブさを映した曲なら、「Midnight Drift」は、その反対側にいる聴き手のための曲だ。ここが、このEPの面白いところであり、今作の核心と言える。
「なんとかなるさ」と本気で思える人だけに向けた音楽ではない。今はそう思えない人もいる。落ち込んでいるときに、いきなり「前向きになろう」と言われても、そんな簡単にはいかない。だったらまず、その気持ちをそのまま置いておく。
そして、少しずつ顔を上げる。
「Light It Up」と「Midnight Drift」は、単なるポジティブとネガティブではない。同じ「なんとかなるさ」という言葉が、違う人、違う夜にはどう聞こえるのか。その両方を入れたことで、このEPには明るいだけではない奥行きが生まれている。
Track 4:「Beautiful Noise」~クールな男の中で燃える青い炎~
ここからは、明らかに空気が変わる。4曲目の「Beautiful Noise」は、山﨑が自身の音楽的ルーツとするロックから受け取った熱量を、真正面から鳴らした一曲だ。
山﨑は、感情を表に強く出すタイプではない。クールに見える。けれど、その内側にあるものまで静かなわけではない。
プロデューサーが山﨑について話す中で印象的だったのが、「静かに燃える青い炎」という言葉だ。「Beautiful Noise」は、その内側の熱を音楽にしたような曲になっている。
ライブでは、観客と一緒に拳を突き上げる。普段なら言葉にしない感情も、その場所なら音にして吐き出せる。日々の鬱憤も、もやもやも、ステージの上で鳴らしてしまえばいい。
「生バンドでやりたい」という山﨑の最初の言葉を思い出すと、この曲がライブで鳴る意味が、大きく感じられる。
Track 5:「Believe Myself」~音に身を任せ、ライブで感情を解放する~
「Beautiful Noise」が内側にある熱を燃やす曲なら、「Believe Myself」は、その熱を一気に外へ放つ曲だ。エレクトロの要素を取り入れたサウンドと、ドライブ感のあるリズム。ライブのセットリストの中で、一体感や高揚感を生み出すことを意識して作られたアッパーチューンである。
ここでは「自分を信じる」というタイトルそのものが、客席との関係にもつながっていく。ステージに立つ山﨑が歌い、客席が応える。一人で聴いているときには自分自身に向けられていた言葉が、ライブではその場にいる全員のものになっていく。
『Midnight Drift』には、こうした「ライブで完成する」ことを想定した曲がいくつもある。音楽は、聴いて終わりではなく、実際に人が集まった空間で鳴ったとき、もう一段違う表情を見せる。「Believe Myself」は、その役割を担う一曲だ。

Track 6:「Find Your Way」~肩の力を抜き、心地よく揺れながら深呼吸~
全力で走ってきたところで、ふっと肩の力が抜ける・・・「Find Your Way」はそんな曲だ。
今回の楽曲には、ボーカルとして100%の力を使って歌い切るような難易度の高い曲が多い。だからこそプロデューサーが求めたのは、少し違うものだった。
「肩の力を抜いて、観客と一緒に手を振りながら心地よく流せる曲を」そのオーダーから生まれたのが、このEPのための新曲「Find Your Way」である。
実は、この楽曲は「今っぽいUSポップロック」を目指して制作されたそうだが、山﨑本人の最初の感想が感想が「故郷の山が見えてくるような感覚」だったのがおもしろいところ。聴いた人がどんな光景を思い浮かべ、どんな感情を抱いても、音楽は自由だ。そして、山﨑が歌えば山﨑の色に染まる。
音楽の中で派手なことをしなくてもいい。少し立ち止まって、深呼吸する。ここまでの5曲で上がっていた熱を、いったん落ち着かせてくれる。そんな山﨑らしい色に染まったこの一曲があることが、EP全体の聴きやすさにつながっている。
Track 7:「僕等の唄」~「ありがとう」を直接言わないからこそ伝わるもの~
EPのフィナーレを飾るのは、人気ロックバンド「Ivy to Fraudulent Game」のドラマー・福島由也から楽曲提供を受けた「僕等の唄」。山﨑自身が内に抱える「ファンへの感謝」を表現するために、あえて哲学的な比喩や詩的表現を得意とする福島に依頼。直接的な言葉を使わずに美しい詩で、山﨑の伝えたい想いを包み込んでいる。
そして、この曲の最後にはシンガロングがある。ここまで山﨑が歌ってきたEPが、最後には聴き手の声を必要とする。10周年という時間を振り返りながら、11年目以降も一緒に歩いていく。その未来を、客席と声を合わせることで確かめるような構成だ。
一方で、サウンドはかなり攻めている。特にドラムは、人間離れした打ち込みパターンを採用しているという。ライブで再現する際の生ドラムテクニックも聴きどころのひとつ。
感謝を伝える最後の曲だからといって、穏やかに終わるわけではない。むしろ、最後までロックだ。
7曲を聴き終えたとき、「なんとかなるさ」の意味が少し変わっている

『Midnight Drift』の曲順を決める作業は、プロデューサー自身が「相当悩みましたね・・・」と振り返るほどだったという。
こうして並べてみると、7曲そのものがひとつの時間のようにも思えてくる。ただ、面白いのはこの物語がライブでは別の形になることだ。ライブでは曲順も変わり、同じ楽曲でも置かれる場所によって見える景色が変わる。
「Light It Up」は音源では山﨑の名刺だったものが、ライブでは観客と一緒に歌う曲になるかもしれない。「Beautiful Noise」や「Believe Myself」は、音源で聴く以上の熱を帯びるだろう。そして「僕等の唄」の最後には、客席の声が加わる。
作品として完成した7曲が、今度はライブという場所で別の物語を始める。“その日だけの”特別な感情に寄り添ってくれるだろう。
9月25日のZepp DiverCity(TOKYO)でのツアーファイナル公演において、ファンの声と合わさることで、その物語はまた違う形の「完成」を迎えることとなる。
「なんとかなるさ」という言葉も、いつだって同じ顔をしているわけではない。その日の自分、その日の場所、その日に相対する誰かによって、少しずつ違って聞こえる。7曲を聴き終えたあと、もしその言葉が最初に聴いた時より少しだけ違って聞こえたなら。

(写真 @reconyan:https://x.com/reconyan)
いよいよファイナルを迎える山﨑のファーストライブツアー。Zepp DiverCity Tokyoのステージで鳴り響く音に身を委ね、会場全体で声を重ねる時、私たちは山﨑晶吾という表現者の「今」と「これから」を目撃することになるだろう。
EP「Midnight Drift」
CD+DVD/紙ジャケット仕様/6,600円(税込)
<収録内容>
-CD-
1.Light It Up
2.Flowin’
3.Midnight Drift
4.Beautiful Noise
5.Believe Myself
6.Find Your Way
7.僕等の唄
8.Light It Up Instrumental
9.Flowin’ Instrumental
10.Midnight Drift Instrumental
11.Beautiful Noise Instrumental
12.Believe Myself Instrumental
13.Find Your Way Instrumental
14.僕等の唄 Instrumental
-DVD-
MV「Midnight Drift」
<取扱店>
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