「何に興味を持ってもいい」ネルケプランニング「WELCOME KIDS PROJECT」が開く“演劇の入り口”【特別インタビュー】

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2.5次元ミュージカルをはじめ、数々のヒット作を世に送り出してきたネルケプランニング。2022年7月より「2ndシーズン」と銘打ち、新体制となった同社が力を入れて取り組んできたのが、子どもたちに演劇の扉を開く「WELCOME KIDS PROJECT(ウェルカム キッズ プロジェクト)」だ。

本インタビューでは、プロジェクト誕生の背景から、子どもたちと向き合う中で考えた“演劇の未来”まで、プロジェクトリーダー・下泉さやかに話を聞いた。

 

<「WELCOME KIDS PROJECT(ウェルカム キッズ プロジェクト)」とは?>
「WELCOME KIDS PROJECT」は、「たくさんの子どもたちに演劇に触れて、一生の思い出となるようなモノに出会ってもらいたい!」という強い思いから、次世代の演劇界を盛り上げるために発足したネルケプランニングのプロジェクト。

 

一言で言うと…
・子どもたちに“演劇の入口”を届けるネルケプランニングの取り組み
・“子ども向け”ではなく、“大人が観ても本気で楽しめる作品”を目指している
・観劇支援だけでなく、制作体験ワークショップも実施

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目次

すべての原点は「みんなで何かを作ることが楽しい」

──プロジェクトのお話を伺う前に、まずは下泉さんの演劇的ルーツをお伺いしてもよろしいでしょうか?

小さい頃、親に連れられてよく教会に通っていたんです。聖歌隊と一緒にみんなで歌を歌ったり、クリスマスに降誕劇をやったり、毎年夏には大人数でキャンプに行って。そういう環境で育ったもので、みんなで力を合わせて何かをする、ということが好きだったんです。

中学・高校では、演劇部に入っていました。演じることが好きというよりは、子どもの頃と同じように「みんなで何かをすることが楽しい」から。その流れで、芸術系の大学への進学を考えていたんですが、先生から「あなたは専門的な学校では埋もれて道を見失ってしまいそうだから、演劇が盛んで色々なことが学べる大学の方がいいんじゃない?」と言われまして。素直だったもので、言葉通り、演劇が盛んだった早稲田大学を目指して進学しました。

もしかしたら、大学に入ったら違うことに興味が向いたりするのかなと思っていたんですが、「ミュージカル研究会」という人たちが大学構内で『RENT』の「Seasons of Love」を歌っているところに遭遇しちゃったんですよ。それが、めちゃくちゃかっこよくて!そこから、大学の4年間はミュージカル研究会に没頭していました。

そこでも、私はサークルのマネージャーや制作といった裏方の仕事を好んでやり倒していました。やっぱり、根幹にあるのは「みんなで何かを作り上げることが楽しい」だったんです。

──そこから、どうやってプロの演劇の世界へ?

就活そっちのけでサークル活動をしていたんですが、社会に出るタイミングで改めて考えて、「演劇の仕事がしたい」と思ったんです。
そのあと、芸能プロダクションのマネージャーを経て、ご縁があってネルケプランニングに入社しました。いろいろ経験させていただきましたが、「みんなで何かを作り上げたい」という気持ちが変わらず根幹にあり、今に至ります。

子どものためではなく「子どももウェルカム」!「WELCOME KIDS PROJECT」誕生の背景

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

──現在はプロデューサーというお立場で、「WELCOME KIDS PROJECT」に取り組まれていらっしゃいますが、このプロジェクトはどのように生まれたんですか?

私、経歴の話と同じように、自分の中に根付いていることから何もかもがスタートする生き方をしておりまして。「WELCOME KIDS PROJECT」も、自分の子どもとの触れ合いの中から気づきを得ました。

在宅で仕事をする機会が多いのですが、舞台の本番映像をチェックしている際に子どもがすごく興味を持ったんです。観ていたのは、舞台『魔法使いの約束』や『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』といった、全く子ども向けではない作品でした。当時まだ未就学児だったんですが、「この銃や剣は本物なの?」と質問してきたり、本編とメイキング映像を見て「この人とこの人は同じ人なの?」と役者さんに興味を持ったり。知らない作品、しかも大人向けの作品にも、子どもがこんなにのめり込むんだと驚きました。

ネルケプランニングは女性社員が比較的多い会社でして、当時、ちょうど子どもを持つ社員が増えてきたタイミングでもあり、「子どもたちと一緒に楽しめるって思える舞台があったらいいよね」という話が出ていたんです。これまでも「子どもも楽しめるものに」と考えて作った作品はありましたが、2022年、会社として変化するタイミングできちんとプロジェクトとして立ち上げてチャレンジしていこうという想いから動き出したのが「WELCOME KIDS PROJECT」の始まりでした。

親として子ども向けの舞台やイベントに子どもを連れて行くと、自分が舞台を楽しむというよりも「子どもたち、楽しんでるかな?」ってことが気になっちゃうじゃないですか。でも、大人ものめり込んで楽しめて、子どもも同じレベルで楽しめるものなら、帰り道の親子の会話が「親と子」ではなく「人と人」の会話になって絶対に面白いと思ったんです。

だから、このプロジェクトは「キッズプロジェクト」ではなく、「私たちが今まで通り大人に対して本気で作ってきた作品に、子どももウェルカムですよ」という意味を込めて、「WELCOME KIDS PROJECT」という名前にしました。この枠組みの考え方は、私たちのこだわりです。

90分以内、エンタメ要素を凝縮・・・舞台公演で挑戦してきたこと

──実際にプロジェクトとして立ち上げた舞台では、どのような工夫をされたのですか?

公演の立ち上がりはプロジェクトとして発足する前でしたが、、「Dr.STONE」THE STAGE~SCIENCE WORLD~では「WELCOME KIDS PROJECT」として目指すものを意識しました。オリジナルのドクタローというキャラクターを登場させて、サイエンスショー(科学の実験コーナー)を設けて、クイズコーナーのような参加型シーンを加えてみたりしました。ドクタロー役を演じてくれた石田 隼くんが天才的にやりきってくれて、すごく盛り上がりました。

「Dr.STONE」THE STAGE~SCIENCE WORLD~ オフィシャル写真

プロジェクトとして、最初に立ち上げたのは2022年11月に上演したミュージカル「Shuffle!〜まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』〜」です。こだわったのは、時間は絶対に90分以内にすること。あとは、台詞のワードを分かりやすくしたり、戦隊ヒーロー出身の小宮璃央くんに主演をお願いしたり。子どもに静かなお芝居を見せ続けるのは難しいから、歌やダンス、殺陣といったエンタメ要素も詰め込みました。

ミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」小学校貸切公演

ミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」小学校貸切公演

演出を手掛けてくださった児玉明子さんとも、役者の皆さんとも「何が子どもにとっておもしろポイントになるんだろうか」とたくさん話し合ったんですが、最終的に「子どもが何を思うかは分からないから、自分たちが“楽しい”と思うものを作るしかない」という結論に至りました。こっちがワクワクすることをやれば、年齢関係なくそのワクワクは伝わるんじゃないかなって。

――実際にやってみて、プロジェクトとして手応えを感じたこと、課題を感じたことはありますか?

ずっと試行錯誤しています。でも「今回はこういうところが良かった。次はこっちをやってみよう」「良かったけど、難しいところもあった」みたいな感じで、明確に「これはダメだった」と思ったことはあまりないんです。無限にやり方があるから、今はまだ一つずつ扉を試しながら開けているという感じです。

私の中で「うちの子どもたちが、私たちが本気で作ってきた作品に興味を示した」ということがスタートなので、目線を下げて子どもの視点で作品を作るのではなく、大人が見ていて楽しいもの、今までどおり私たちがおもしろいと思うものを作ろうという気持ちは忘れてはいけないと思っています。

稽古場作りからゴミ袋の用意まで!?1つの公演を作り上げる「超・実践的ワークショップ」

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

──「WELCOME KIDS PROJECT」では、子どももウェルカムな公演作りのほか、「ワークショップ」も開催されていますね。

「Dr.STONE」THE STAGE~SCIENCE WORLD~もミュージカル「Shuffle!~まぜこぜ図書館『若草三銃士物語』~」も、小学校の貸切公演をやらせていただいたんですが、その時に生徒さんに書いてもらったアンケートがきっかけで、「ワークショップ」をやろうと決めました。

貸切公演の開幕前、私がステージに出ていって「何に興味を持ってもいいんですよ」という話を子どもたちにさせていただいたんです。ストーリーだけじゃなくて、「照明がチカチカしてすごい!」とか、「あの髪型かわいい」とか「あの衣裳すてき!」とか、劇場に入る時に「チケットをもぎってくれる人がかっこいい!」って思ってもいい。

演劇は舞台上だけのものじゃなくて、ありとあらゆる方向からたくさんの人が関わってその瞬間を作っています。お客さんとして劇場に気軽に来てほしいという気持ちはもちろんあるんですが、それと同じぐらい、「演劇っていう仕事があるんだよ」と知ってもらいたいという想いがありました。

そうしたら、後日届いた参加生徒さんたちの感想文に「照明はどうやって作るんだろうと思いました」「衣裳は誰が考えているんですか?」など、スタッフワークへの感想も書いてあったんです。ちゃんと話が伝わったんだ!って、嬉しかったですね。興味を持ってもらえるなら、舞台を観るだけではわからない裏方の仕事にも触れられる「ワークショップをやろう!」ということになりました。

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

――「ワークショップ」は、これまでに2回開催(2025年夏・冬)されていますが、実際にどのようなことをやるのでしょうか?

夏に開催したのは、1週間のワークショップで、毎日同じメンバーが集まって最終的に「1つの作品を作る」ことを目的として行いました。午前の部は、みんなでゲームをすることから始めて、脚本を読んだり、振付をやったり。後半の日程では、立ち位置をつけた稽古もしました。

午後の部は、去年の場合は「制作ワークショップ」として、舞台を裏から支える『制作(運営・進行)』のワークショップを行い「稽古場を作る」ところから始めました。例えば、「お手洗いはこちら」という貼り紙を書く、とか。他にも、ケータリングコーナーを作ったり、ゴミ袋を用意したり、スケジュール表を作ったり。我々がいつもやっていることですね。これがすごく評判が良くて。講師をお願いしていた末原拓馬さんが「これ、役者のみんなも受けた方がいいよ。改めて支えてもらっていると実感できるから」って言ってくださいました(笑)。衣裳も舞台美術も自分たちで。大枠の方向性だけ伝えて、あとは子どもたちのアイディアを盛り込んで創作してもらいました。

本番前には客席を作ったり、発表会当日に配るチラシを折り込んだり。舞台道具の設置、いわゆる「仕込み」もみんなでやりました。最終日には、ワークショップ全体の成果発表会をして、午後はバラし体験と打ち上げというカリキュラムでした。

――想像以上に実践的な内容ですね!実際、やってみた手応えはいかがでしたか?

シンプルに身体が疲れました(笑)。というのも、「ウェルカム」という部分に一番重点を置いているプロジェクトなので、私たちも「一緒にやる」ということを大事にしようと思っていたんです。最初のゲームから、ネルケの社員も一緒に全力で参加して、お昼ごはんも子どもたちに交じって食べました。パワーに圧倒されましたけど、何とも言えない爽やかな疲労感がありましたね。

3日目ぐらいになってくると、子どもたちの中にも“制作魂”が芽生えてくるんですよ。掃除機がけとかも率先してやってくれるんです。「時間になったら声をかけるのが制作です」と伝えたところ、休憩終わりの時間に声をかけてくれる子がいたり、歌ったり踊ったりすることには消極的だった子が、制作面ではすごく積極的だったり。いい制作スタッフがいっぱい生まれるなぁと思いました(笑)。

この「WELCOME KIDS PROJECT」では、演技を上達させることだけを目的としていないので、「歌うのが苦手」「人前に出るのが苦手」という子でも全然大丈夫です。「照明の電気を触りたい」というなら、それも演劇の一つの仕事だからOK。全然参加しないで座っている子もいますし、すぐに泣いちゃう子も、喧嘩しちゃう子もいました。でもそんな子たちも、必ずどこかで自分のできること、やりたいことを見つけて、最終日には仲間たちと一緒に生き生きとキラキラしていました。

自分もずっと、表に出て表現することより、裏でみんなを支えたり束ねたりすることが楽しくて演劇に関わってきたので、子どもたちに知ってもらうことで、それぞれの適性を探す場、可能性を広げる場になったらいいなと思っています。

あえて「親御さん見学NG」子どもが“個”になり、親が自由になる特別な時間

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

──ちなみに、親御さんは見学NGなんですよね?

はい。どんなに開放的なご家庭でも、親がそこにいたら子どもは絶対に自分を解放しきれないと思うんです。子どもも親も、「個」になる時間は大事ですから。責任を持ってお預かりすることを伝えて、送迎だけにしていただきました。最終日の発表会だけ、親御さんにも来ていただいて、子どもたちが1週間何をやっていたのか見ていただいています。

ワークショップ中は、我々もルールを決めて徹底して危険のないように目を光らせていますし、看護師さんにも常駐していただいております。親御さんにとっても「自由な時間」を作る機会になればと思っています。

――実際に参加された方々の反応はいかがでしたか?

最初の参加動機としては、演じることが好き、歌が好き、みたいな方が多かったと思うんですけど、スタッフワークを含めて一つの公演をみんなで作る体験をすることで、「新たな発見ができた」「学校ではできない体験ができた」「家でもずっとやったことの話をしてくれる」といった声を多く寄せていただきました。

参加した子たちのコミュニティができて、ワークショップが終わったあとも繋がりがあるそうです。家庭、学校以外のところで、同じ志を持って、同じ時間を過ごし、一緒に一つのものを作り上げた友達ができるっていうのは、とても大きな経験になったと言っていただけました。

ワークショップというと、「うちの子、参加して大丈夫かしら」と考える親御さんもいらっしゃるかと思うんですが、プロを目指すわけではなく「演劇の入り口」に触れていただく企画です。その入り口も「何でもあり」です。意味と意義のある「遊び」として、子どもたちの「やりたい」を見極めながらバランスを取ってやっていけたらと考えています。「何か体験させてみたい」と思っていただけたら、ぜひ参加してみていただきたいですね。

演劇のバトンを次世代へ――10年後に「あの時、ワークショップに参加した」子どもたちと出会うために

WELCOME KIDS PROJECT 夏休み!オン・ワークショップ2025 オフィシャル写真

――6月には、目黒区との取り組みで「WELCOME KIDS PROJECT 出張めぐろ!オン・ワークショップ」を開催されますね。

私たちの発信って、演劇に興味を持ってくださっている人たち以外に届きにくいんですよね。「WELCOME KIDS PROJECT」を立ち上げてから、どうにかこれを広げられる道筋はないだろうかと探ってきました。自治体や企業の方に「一度見に来てください」とお声がけして、実際に見に来ていただいたりしていたんです。目黒区さんも、ネルケプランニングの本社が目黒区にあることから、今回ご縁をいただきました。今後も会社の事業の一つとして続けていくために、「一緒に何かやりませんか?」といろいろな方面にお声がけしながら、可能性を探っていきたいなと思っています。

──最後に、このプロジェクトを通じて、下泉さんが思い描く「未来の夢」を教えてください。

多くの若者が劇場に足を運んでくれるようになること、はもちろんですが、 10年後、15年後くらいに「あの時、ワークショップに参加して(あるいは舞台を見て)働くことを決めました」っていう子に出会うことですね。プライベートで仲良くしていた年下の友人が、音響のスタッフになって、今同じプロの現場で働いているんですよ。それがもう、胸熱すぎて!私が何かを教えたわけじゃないけど、自分が歩いてきた道を見て「こういう道もあるんだな」と後に続いてくれた。それを知った時、生きてきた意味あるなって思いました。大人になって、日々苦しんで生きている中で「自分に続いている子がいる」って思うことほど、力になることってないなと。そうやって、誰かが誰かに力をもらって前に進んでいけるように、このバトンが続いていってくれたらいいなと思っています。

『夏休み!オン・ワークショップ2026』公演情報

公演情報
タイトル 夏休み!オン・ワークショップ2026
公演期間・会場 2026年7月21日(火)~7月26日(日) 東京都内スタジオ
スタッフ 講師:末原拓馬
特別講師:わかばやしめぐみ、奏夢、美木マサオ、飛田紗和
音響:前田規寛
照明:木村奏太
主催:ネルケプランニング
チケット情報 参加料金:無料
対象:小学1年生~中学3年生
定員:30名程度
参加者募集期間:2026年6月11日(木)12:00~6月23日(火)12:59
公式サイト https://www.nelke.co.jp/stage/wkp-ws_2607/
公式SNS 公式Instagram:https://www.instagram.com/welcomekidsproject_nelke/
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この記事を書いた人

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