世界中で大ヒットを記録し、多くの人々に愛されたフランス映画『最強のふたり』が、日本発の完全オリジナルミュージカルとして舞台化。いよいよ2026年5月1日(金)より、ヒューリックホール東京にて開幕する。
開幕を目前に控え熱気を帯びる稽古場で、ドリス役の川平慈英と、イヴォンヌ役の紅ゆずるにインタビューを実施。型破りな介護人・ドリス(川平慈英)、車椅子の気難しい大富豪・フィリップ(浦井健治)を、映画とは一味違う新たなバディ像をどのように打ち出しているのか、リスペクトに溢れた稽古場の様子を語ってもらった。

映画『最強のふたり』をミュージカル化!“年齢逆転”は演出・板垣恭一のアイデアだった?

――個人的にも大好きな映画『最強のふたり』がミュージカル化されるということで、とても楽しみにしております!お二人は、この作品がミュージカルになると最初に知った時はどう思われましたか?
川平:「してやったり!」でした(笑)。実はこの話、健ちゃん(浦井健治)と「何か面白い作品をやりたいね」というところから始動したんです。もう3年ぐらい前になるかな。いろんな作品が候補に挙がっていたんですが、なかなかしっくりくるものがなくて。僕から「『グッド・ウィル・ハンティング』とかはどう?」って、マネージャーを通して提案したのが始まりでした。
――慈英さん発信だったんですね!
川平:バディもの、あるいはバチバチの男二人の作品がいいなと思って。そうしたら『最強のふたり』が候補に挙がって、もう僕は「くぅー!キターーー!」でした(笑)。健ちゃんとやる『最強のふたり』、大ビンゴだと思ったんです。
――発表時、映画とはドリスとフィリップの年齢の設定が逆になると知って驚きました。
川平:僕も、最初は皆さんの予想と同じで、僕が大富豪のフィリップで、健ちゃんが生意気な若い介護人のドリスになるんだろうと思っていたんです。そうしたら、ある日、板垣さん(脚本・作詞・演出の板垣恭一)から「逆はどうですか?」といただきまして。
話を聞いた当初は、正直目が点になったんです。「え、俺と健ちゃんを逆にするの?」って。でも、上がってきた本を読んだらすごく理にかなった究極の配役になっていたんです。年長者である僕(の年齢)じゃないと言えないような台詞があったりして、「これは面白い!」と。何より、僕自身がどうなるか想像できなかったのがとても面白かった。
ぶっちゃけ、車椅子のフィリップを僕が演じている姿は、容易に想像がついたんですよね。逆に、健ちゃんのフィリップは想像できないし、介護人のやんちゃなヤツを僕が演じるのも想像できなかった。だから、これは面白いチャレンジになるぞ!と思いました。
――すごく腑に落ちました。確かに、その発想はミュージカル化する面白さがより深まりますね。
川平:その配役で考えた方が、板垣さんも想像が湧いてペンが走ったらしいです。たぶん、僕が健ちゃんを困らせたり、いじったりするような姿が画として見えたのと、「(年齢設定が映画どおりだと)予定調和的になってしまうな」と思われたんでしょう。
実際に稽古に入ってみて、すごくフィット感がありました。楽しいですよ。健ちゃんをイジるのも、紅さん(の演じる役)をイジるのも楽しいです(笑)。
紅:(笑)!めちゃめちゃイジられています。好きですよね、イジるの(笑)。
紅ゆずるの挑戦!日本オリジナル版『最強のふたり』ならではの役どころ

――紅さんは、本作への出演が決まった時はどう思われました?
紅:めっちゃすごい挑戦だと思いました。オファーをいただいたことも、驚きました。私、本格的なミュージカルからはだいぶ遠ざかっていたので。
川平:4年ぶりだっけ?びっくりでしょ。
紅:そうなんですよ。自分の中で、ミュージカルをやらないと決めていたわけではないんですけど、もしこのまま機会が来なくても別にいいかな・・・と思っていて。自信がないから、「いえ、大丈夫です。遠慮します」みたいに避けていたことも否めず。今回オファーをいただいた時も、最初は「私が入らないほうが作品のバランスが崩れないと思います」とお伝えしていたんです。
でも、プロデューサーさんから「絶対やってほしい!」と熱いオファーをいただきまして。こんなに豪華なキャストさんの中でやらせていただけるのはすごい刺激になるし、学びたいと思って、「頑張ってやってみよう」と思いました。参加してよかった。本当に、めっちゃ面白いです。
川平:そうだったんだ。でも、楽しそうに、キラキラしてやってらっしゃいますよ~。
――紅さんが演じるイヴォンヌは、映画とは少し役割が変わっていて、2つの役が一つになっているとお聞きしました。
紅:そうなんです。ベースは、家政婦長・秘書の役です。映画と違うのは、オタク気味で、あまり男性が得意ではないというキャラクターになっています。映画でのマガリーの要素が混ざっています。ジェンダーの設定はないんですけど。
川平:ドリスは、触れると手を拭かれたりしています(笑)。
紅:こうやって(実演)。
川平:ほかにも、板垣さんがまったく新しい戯曲として作り上げてくれています。ドリスも、映画では家族として弟が登場するんですが、このミュージカルでは息子になっています。しかも、確執がある。だから、陽気な裏にいろいろ背負っているんじゃないか、という奥行きが出る。紅さんの役も、男嫌いだけど本当は恋をしたいと思っているんじゃないか、という余白が生まれている。演劇的に、すごくよくできているんです。
――板垣さんはローカライズをするのがとてもお上手だなと常々思っているんですが、この作品にもその手腕が効いているんですね。
川平:そうなんです!もともと、映画は人種問題や貧富の格差など、社会のブラックな面を描いている部分がありますが、そこは日本のお客様がより分かりやすく感じられるようになっていると思います。
紅:確かに。舞台の上の出来事をダイレクトに受け止めてくれたら、結果的に皆さんがその物語で見たいものを見出してくださるようなものになっていると思います。「あの頃の私がそこにいる」とか、「あれは私の知ってる人だ」とか、「今の私がいる」とか。きっと、自分を投影できるようなキャラクターがいると思います。老若男女楽しめるし、親子で見るのもグッとくるんじゃないかな。
川平:本当にすごく楽しい。稽古をしていて、すごくウキウキします。20分の休憩を入れた二幕モノとしても、すごく見やすいテンポの作品になっています。
川平慈英×浦井健治が5年ぶりの共演!多彩なジャンルで魅せる完全オリジナル楽曲の秘密

――川平さんと浦井さんは『ビッグ・フィッシュ』ぶりの共演になりますね。
川平:稽古に入って目が合った瞬間に、5年間の空白が吹き飛びましたね。一緒に何かやりたいねって話していたけど、やっぱり一緒の舞台に立てるのは特別。さっきも言ったけど、健ちゃんイジるの好きだし、健ちゃんも僕にイジられるの嫌いじゃないから(笑)。それが、なんか心地いいバランスで。
浦井健治が徹頭徹尾、車椅子に乗っている姿ってなかなか見ることないですよね。身体は車いすの上でも、歌で羽ばたいてます。飛んでます!
紅:私はそんなお二人に癒されてます。健ちゃんのフィリップからは自分の足りないものをもらって、慈英さんのドリスには「好きにやんな」って自由に泳がせてもらっていて。お二人の存在が、すごくありがたいです。
川平:ドリスとしては、イヴォンヌを「この秘書すげえな!」って感じで見てるよ(笑)。面白いパワーを出してくるから。
――オリジナルミュージカルということで、楽曲もとても気になります。
川平:本当にいろんなジャンルの音楽が出てきますよ!今回は、作曲・編曲・音楽監督を桑原あいさんがやってくださっているんですが、お一人が作ったとは思えないぐらいの引き出しの多さ。しかも、オーケストラと言うよりもバンドっぽい生演奏です。
紅:私たちもまだ本番の生オケ、どうなるんやろなと楽しみなんです。少数精鋭のバンド編成なんですけど、ストリングス(チェロ)がいるんですよ。曲調も、ポップスあり、クラシック、レゲエ、ロック、ラップもあり。
川平:すごくいい音楽。僕は悪戦苦闘しているんだけどね(笑)。シンコペーションの裏(拍)がむちゃくちゃ難しい。でも、それを自分に落とし込めたら歌う側も気持ちいいんですよ。
簡単にできちゃうものって、完成品も面白くないじゃない。苦労して手に入れた演技だったり歌だったり、生み出したものは面白いんです。振付もそうじゃない?やっている時は「なんでこんな難しい振付なの!」って思うけど、できるようになると・・・。
紅:面白いですよね!初日に「なんで私、これができへんかったんやろ?」と思うぐらい稽古序盤はできないのに、自転車の運転みたいに「そういうことだったのか!」ってなるから。できたら、すごく良いものが仕上がるんですよ。仕上げないといけないんですけど(笑)。
慈英さん、この曲のオケだけをひたすら聞いたことあります?ベースがずっと同じで、ちょっとずつ変化していくんですよ。自分たちの歌のメロディで変化させていく感じ。伴奏に乗るんじゃなくて、自分たちの歌で引っ張っていく感じ。
川平:そうそう、だから怖い!ちゃんと気持ちが乗っていないとどこを歌っているのか分からなくなる(笑)。
紅:それが、登場人物の心境の変化とかをダイレクトに伝えてくれるんですよね。「そうそう、ミュージカルってこれが面白いんやった!」と思い出しました(笑)。
川平:4年ぶりだからね!
紅:「いやもう、小節数これしかないやん!」みたいな(笑)。しっかり気持ちを乗せていけたらすごくいいものになる、素敵な音楽が揃っています。
愛とリスペクトに溢れる『最強のふたり』カンパニー!舞台が届ける“セカンドチャンス”

――今のお話を伺っていても、皆さんが楽しんで作っていらっしゃるのが感じられます。
川平:みんながプロフェッショナルに楽しんでいて、やんちゃにはしゃいでいるから本当に楽しい。
紅:慈英さんがそういう雰囲気を作ってくださっているんですよ。「みんな楽しくやろうね」って。やっぱり、主演の方の雰囲気って大きいですから。慈英さんは、もちろん芯はピシッとされているんですけど、私たちには「どう来てくれても大丈夫やで」みたいな顔を見せてくださっているから。「主演の方ってこうあるべきなんやな」と思いながら、私は大変勉強になっております。
川平:僕を泳がせてくださってありがとうございます!って感じです(笑)。稽古が始まって最初の1週間は、板垣さんも若手を引っ張り上げようとたくさん対話をしていたから、稽古のスタート時と今とではもう全然違う。エレノア役の福田えりちゃんとか、めちゃくちゃ良くなっている。そういうの見ていると、おじさんは娘の成長を見ているような感じで・・・「いいよ、そのままでいいよ!」って思っちゃう(笑)。
そもそも、稽古場ってそういうものだよね。昔、坂東玉三郎さんの演出する『ロミオとジュリエット』をやらせてもらった時に言われたのが、「慈英、キザかもしれないけど、芝居は愛だ。稽古場は愛だ。愛情に包まれた現場からいい作品が生まれる」って言葉。リスペクトっていう意味の“愛”が大事って言ってたのを、すごくよく覚えてる。
紅:今、相手の負の部分を見つけて攻撃するような時代の風潮があるじゃないですか。だから、この作品みたいにお互いをリスペクトすることって、すごく大事ですよね。
川平:そうそう。抑圧してピリピリするんじゃなくて、みんなでリスペクトし合って響かせる空気が大事だよね。実は、板垣さんがもう一つ「セカンドチャンス」をテーマにしたいって言ってたんです。どんなに若くても老いていても、失敗しても、チャンスは必ずまた来る。
劇中に「風になろう」っていう歌があるんだけど、それを聞いて「必ず私にも光り輝くチャンスが来るんだ」って思ってもらえたら、この舞台は勝利だね。つぶし合いが横行する世の中でも、必ずまた這い上がれるセカンドチャンスがあるんだって。
紅:前向きになって、劇場から軽やかに帰っていっていただきたいですよね。「持ち帰り曲」、いっぱいありますから。
川平:板垣さんも、稽古の2週目ぐらいの頃にボソッと「伝説作ろうよ!」って言っていたからね。
紅:オリジナルって産みの苦しみがありますけど、それが一つずつ出来上がっていくのを感じられるのは本当に楽しいです。今はまだ、作っては崩してもう1回、って感じなんですけど。それができるのもオリジナルの強みやなと思うから、もがいております。
川平:みんなで楽しくもがいてね。どうせやるなら、楽しくもがこう!
皆さん、最強の作品、最強の音楽と最強の演出家、最強のキャストとスタッフで、この『最強のふたり』をお届けします。観ていただければ、あなたも最強になります!最高のハピネスを、一緒に共有しましょう!
編集後記:川平慈英と紅ゆずるの「最強のルーティン」

【質問】「これがあれば私は最強!」というものを教えてください。
川平:サウナ!健ちゃんも好きだから、『ビッグ・フィッシュ』の時にも一緒に行ったりしていました。僕にとって欠かせないものです。
紅:私もサウナ好きなんですが、私を最強にしてくれるのは「掃除」です。潔癖ではないんですけど、拭くのが好き。特にトイレ。別に汚れていなくても、拭くことによって「よし、今日もきれいな気持ちで1日が始められる」みたいなルーティンになっています。いつもはウェットシートでやるんですけど、お休みの時は、お水にちょっとだけ日本酒と塩を入れてやります。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
ミュージカル『最強のふたり』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | ミュージカル『最強のふたり』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】 2026年5月1日(金)~5月10日(日) ヒューリックホール東京 【大阪公演】 2026年5月14日(木)~5月17日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール 【名古屋公演】 2026年5月21日(木) 御園座 |
| スタッフ | 脚本・作詞・演出:板垣恭一 作曲・編曲・音楽監督:桑原あい ほか |
| キャスト | ドリス:川平慈英 フィリップ:浦井健治イヴォンヌ:紅ゆずる アントニー:宮原浩暢(LE VELVETS) アダマ:小野塚勇人エレノア ほか:福田えり マルセル ほか:加賀谷真聡 アルバート ほか:宮野怜雄奈 マガリー ほか:元榮菜摘 エリザ ほか:菊池愛 |
| チケット情報 | 全席指定:13,800円(税込) |
| 公式サイト | https://saikyonofutari.jp |
| 公式SNS | 公式X:@saikyofutari_jp |







