奥田いろは(乃木坂46)、小南満佑子らで装い新たなミュージカル『レイディ・ベス』へ【製作発表レポート】

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『エリザベート』『モーツァルト!』など、日本ミュージカル界において不動の人気を誇るこれらの名作を生み出した、ミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)とシルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)の黄金コンビ。彼らが、世界的な演出家・小池修一郎と共に創り上げた歴史ロマン大作ミュージカル『レイディ・ベス』が帰ってくる。

2014年の世界初演、2017年の再演を経て、実に9年ぶりとなる2026年の上演がついに決定。新たなキャスト、新たな演出、そして新たなタイトル表記で挑む今回の公演に向け、製作発表記者会見が行われた。

150名のオーディエンス(東宝ナビザーブ会員から選出)が見守る中、新キャストとしてタイトルロールを演じる奥田いろは(乃木坂46)・小南満佑子をはじめ、有澤樟太郎・手島章斗、丸山礼・有沙瞳、内海啓貴・松島勇之介らキャスト8名と、演出・訳詞の小池修一郎が登壇。新生『レイディ・ベス』の指針が感じられる会見の模様をレポートする。

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目次

【歌唱披露】名曲が彩る、新たな『レイディ・ベス』の世界

会見は、キャストによる劇中歌の歌唱披露からスタートした。生演奏のピアノが奏でる旋律に乗せ、4組のキャストがそれぞれの楽曲を歌い上げる。

まずは、スペイン王子フェリペ役の内海啓貴と松島勇之介による『COOL HEAD』。クールでシニカル、大人の色気を漂わせながら会場の空気を一瞬にして作品の世界へと引き込む。

続いて登場したのは、メアリー・チューダー役の丸山礼と有沙瞳。楽曲は『悪魔と踊らないで』。丸山は情念たっぷりに、有沙は凛とした強さの中に脆さを滲ませて表現し、圧巻の歌声を響かせた。

吟遊詩人ロビン・ブレイク役の有澤樟太郎と手島章斗は、『俺は流れ者』を披露。自由を愛するロビンの軽やかさと芯の強さを、有澤は伸びやかに、手島は力強く歌い上げる。

そして最後を飾ったのは、レイディ・ベス役の奥田いろはと小南満佑子による『秘めた想い』。 未来の女王としての運命を背負いながらも、一人の女性としての愛や自由を渇望するベスの心情を、二人は透明感あふれる歌声で紡ぐ。奥田のピュアで真っ直ぐな歌声と、小南の包容力と意志の強さを感じさせる歌声が重なり合い、会場は温かい拍手に包まれた。

【演出家・小池修一郎の挨拶】なぜ『レディ』から『レイディ』なのか? 2026年版の狙い

歌唱披露の興奮冷めやらぬ中、会見ではまずは演出・訳詞・修辞を務める小池修一郎が、今回の再演における「大きな変化」について語り始めた。

小池がまず言及したのは、ファンが最も気になっていたであろうタイトル表記の変更についてだ。これまでの『レディ・ベス』から、今回は『レイディ・ベス』へと改められている。

「なぜ今回『レイディ』にしたかと言いますと、舞台上で登場人物たちはみんな彼女のことを『レイディ』と呼ぶんです。正しくは『レイディ』ですし、おそらく日本ではかつて『マイ・フェア・レディ』という作品がヒットしたことで『レディ』という言葉が定着しましたが、その頃の感覚でいうと『レディ=淑女』という、少し軽いニュアンスが含まれてしまう気がします」と、小池は言葉を選びながらタイトルの持つ意味の重さを解説。

「ベスは『プリンセス』という称号を剥奪されています。日本で言う内親王のような立場を剥奪され、名前の前に『レイディ』と呼ばれるということは『プリンセスではない』という意味です。この作品は、そこから『クイーン』になるプロセスが描かれている物語。あえて『レイディ・ベス』というタイトルにした原点に立ち返り、改めてそのように認識しました」

さらに、今回の2026年版は、2022年のスイス公演(ザンクト・ガレン版)の要素を逆輸入する形で、大幅なブラッシュアップが施されるという。「ミヒャエル(・クンツェ)さんは再演のたびに必ず手を入れる方ですが、ザンクト・ガレン版も驚くほどの違いがありました。改めて整理させていただいたところ、ベスらしい生き方、主張がすごく強く前に出る形に直されています。以前ご覧になった方は『えっ?』と思われるかもしれませんが、同じ曲で歌詞が全く違うものもございます」

改訂は、歌詞が変わるほどで、そこには現代社会への強いメッセージが込められている。 「女性のリーダーがいかにして国を背負っていくか。その立場をどう受け入れていくか。現代を生きる若い人たちにも、何らかの共感を得られる物語になるはずです」と、小池は力強く自信を覗かせた。

奥田いろは・小南満佑子、有澤樟太郎・手島章斗らWキャストの個性が見えた挨拶

続いて、フレッシュなキャスト陣がそれぞれの想いを語った。グランドミュージカル初主演・初座長という大役を担う奥田いろは(乃木坂46)は、緊張した面持ちながらも「初めての座長、初めてのタイトルロールです。(オーディションの)合格の発表が来た時は、喜びよりもプレッシャーや、『私に務まるのかな』という不安の方が大きくて・・・。でも、私が見えない私を信じて選んでくださる方がいらっしゃる。その方々に誠実に、そして小池先生の美しい演出を信じてついていきます」と、その言葉には芯の強さが宿っていた。

一方、デビュー10周年の節目を迎える小南満佑子は、「今日の日を迎えるのが緊張して、さっきも“ど根性ガエル”みたいに心臓が飛び出そうなほどドキドキしていました(笑)。初演・再演を作り上げた先輩方から引き継ぐことができるのが何よりの喜びです。ベスの波乱万丈な人生を学ぶ中で、『この人の人生を生きたい』と強く願いました」と、溢れ出る想いを語る。凛とした佇まいの彼女から飛び出した“ド根性ガエル”という言葉のギャップに、会場からは温かい笑いが起きた。

有澤樟太郎は、会場に集まった150名のオーディエンスと多くの報道陣を見渡し、「この静まり返った緊張感。2026年版がものすごく期待されているんだなと肌で感じています」と挨拶。「過去の公演を愛して待ち焦がれた方々の記憶を蘇らせつつ、新たにこの作品に出会う皆さんに衝撃を与えるような作品を作らなければならない。プレッシャーも感じていますが、僕たちならできると思っています」と決意を示した。

Wキャストの手島章斗は、「グランドミュージカルに出演できることが光栄ですし、個人的には生オーケストラでやるのが初めてなのでワクワクしています」と笑顔を見せる。「今の製作発表も豪華すぎて楽しんじゃったくらい(笑)。カンパニーの皆さんと一緒になって、丁寧に真摯に務めていきたいです」と、初々しくも頼もしさを感じさせた。

そして、注目を集めたのがメアリー・チューダー役の丸山礼。ものまねタレントとしても活躍する彼女は、これが初のミュージカル挑戦。「もう、本当に緊張してるんですけれども・・・」と切り出しつつ、「持ち前の明るさと、やっぱり『ものまね』で耳が肥えているんでしょうね、私!」と、早速自身の武器をアピール。「オーディションを受けませんか?というお話を頂いた時は“ど根性ガエル”みたいに目が飛び出てしまって(笑)。芸歴10周年を超え、新しい扉を開くことは挑戦ですが、一生懸命やり切りたいです」 ユーモアを交えながらも、真摯に役に向き合う姿勢を見せた。

同じくメアリー役を演じる有沙瞳は、宝塚歌劇団退団後、初の小池演出作品への参加となる。「宝塚を卒業してからも小池先生の作品に出たかったので、夢が一つ叶いました。そしてリーヴァイさんの楽曲を歌わせていただける喜び。精一杯頑張ります」と、喜びを噛み締めるように語った。

スペイン王子・フェリペ役の内海啓貴は、「まさか神奈川の田舎出身の男が、スペイン王になるとは・・・(笑)」と会場を笑わせつつ、「3度目の小池先生の作品です。守りに入らず攻めて、『色気ぶんぶん』で頑張っていきたいです」と独自の表現で意気込みを披露。

Wキャストの松島勇之介は、「お話をいただいた時は飛び上がるほど、いや“ど根性ガエル”ほど嬉しかった」と小南・丸山のコメントに被せる機転を見せ、「僕が誰よりもフレッシュにたくさん学び、挑戦し、この作品の一ピースとして務められるよう頑張ります」と爽やかに挨拶した。

質疑応答で見えた「意外すぎる素顔」

会見後半の質疑応答では、Wキャストのお互いの印象など、カンパニーとして始動したばかりながらもキャスト同士の関係性が見えるエピソードが次々と飛び出した。

奥田は小南について、「もうすでに頼りにさせていただいてます。すごくしっかりされているイメージがあるので、お姉さんに学ばせていただこうという気持ちです」と全幅の信頼を寄せる。対する小南は、「いろはちゃんは可愛らしい印象から打って変わって、すごくしっかり者。私がデビューした頃の年齢がいまのいろはちゃんぐらいなので感慨深いです。こちらこそ頼りにさせていただくことがたくさんあると思います」と返し、互いにリスペクトし合う「姉妹」のような絆を見せた。

男性陣のトークは、少々独特な方向に転がった。手島について、まず「男らしい」と前置きした有澤は、「初対面の時に『僕、じっとしてると目が赤くなるんだよね』って教えてくれたんです(笑)。初手からなんでもない話をしてくれたなと思って、そういうのを共有できる仲っていいなと」と、彼らしい(?)独特の着眼点から人物評。

この話を笑いながら受けた手島は、「有澤くんは顔が小さくて足が長い! まず最初に『股下何センチあるの?』って聞いちゃいました(笑)。最初は独特な感じかと思ったけど、すごく自然体。素敵なバディになれそうです」と返し、すでに息ぴったりの様子。

そして、一番の盛り上がりを見せたのがメアリー役の二人だ。丸山が有沙を「すべてを一から教えていただいて、ありがたい師匠です。あと、二人とも鼻の形が似ているなって親近感を持っています!」と称賛。さらに「有沙さんが、自己紹介で『中身が5歳なの~』っておっしゃっていて。そうしたら周りの皆さんも会話に入ってきてくださって、小南さんは『私は中身がおじさんだから』、奥田さんは『私はおばあちゃんです』っておっしゃって。みんな、人格バラバラなんです~(笑)」と、見た目からは計り知れないそれぞれの自己分析に、会場は大爆笑。笑いが止まらない有沙は「丸山さんは本当にユーモアがあって面白い方です(笑)」とコメント。シリアスな歴史劇を演じるとは思えないほど、カンパニーの空気は明るく、和やかだ。(ちなみに丸山と有沙は、初対面で互いの故郷のお菓子を交換する儀式を行ったそうで、丸山は「物々交換から始まった絆です」と胸を張った)

フェリペ役の二人には、顔を合わせてから日が浅いながらも運命的な共通点があったようだ。内海が「今日、楽屋で順番につけてたAirPodsのケースが色違いなことに気づいたんです(しかも店舗とかに売っていないリーズナブルなものとのこと)。価値観が似ている。これは本気でフェリペを共有できるんじゃないかと思いました」とエピソードを披露すると、松島は「ひねり出しすぎじゃないですか(笑)?!」とツッコみつつ、「内海さんはまだお会いして日が浅いですが、舞台では拝見していました。ラフに話しかけてくださって、高校時代からの先輩後輩かのような心の安らぎがあります」と、絆が生まれる気配を感じさせた。

【深掘り】なぜ丸山礼が「メアリー」なのか? 小池修一郎の慧眼

質疑応答の終盤、丸山に「これまでの経験がどう役作りに活きるか?」という質問が飛ぶと、丸山は「物心ついた時から『真似の人生』でした。メアリーの怒りや憎しみを表現する中で、微かにものまねが入ってしまうかもしれません(笑)。・・・やりませんが、培ってきたものが良い方に活かせれば」と回答。

ここで、演出の小池修一郎がマイクを取り、丸山の起用理由について補足した。「深夜にテレビを見ていて、たまたま彼女の出演していたドラマ(NHK『ワタシってサバサバしてるから』)を目にしたんです。『こんな面白い人がいるんだ』と、ファンになりまして」――なんと、小池自らがテレビで丸山を発見し、オーディションに呼んだのだという。

「体格的にもいい声が出るんじゃないかとお声がけをして、歌っていただいた動画をリーヴァイさんに見せたところ、『大変に期待している』という評価が返ってきました。彼女はキャラクターとしては極端ですが、同時に人間としての苦しさや葛藤を吐露する部分が、メアリーと被るところがある。面白いなと思います」

日本演劇界の巨匠と、世界的作曲家が見出した「丸山礼のメアリー」。新たなミュージカル俳優の爆誕なるか?

単なる「再演」ではなく、「今、上演する物語」へ

「歴史劇でありながら、現代の視点で、若い人の感受性で表現されることによって、今の時代に伝わるものになっていく」と語った小池。今回の『レイディ・ベス』は、単なる再演ではない。

タイトル表記の変更、脚本・歌詞の大幅な改訂。個性豊かでエネルギーに満ちた新キャストたちとこれらすべてがかみ合った時、本作が「今、上演すべき物語」へと進化しそうだ。

ミュージカル『レイディ・ベス』は、2026年2月9日(月)から3月27日(金)まで東京・日生劇場にて上演後、福岡・名古屋を巡演する。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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ミュージカル『レイディ・ベス』公演情報

公演情報
タイトル ミュージカル『レイディ・ベス』
公演期間・会場 【東京公演】2026年2月9日(月)~3月27日(金) 日生劇場

【福岡公演】2026年4月4日(土)~4月13日(月) 博多座
【愛知公演】2026年5月3日(日)~5月10日(日) 御園座

スタッフ 脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ
音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイ
演出/訳詞/修辞:小池修一郎(宝塚歌劇団)
キャスト レイディ・ベス 役(Wキャスト):奥田いろは(乃木坂46)/小南満佑子
ロビン・ブレイク 役(Wキャスト):有澤樟太郎/手島章斗
メアリー・チューダー 役(Wキャスト):丸山礼/有沙瞳
フェリペ 役(Wキャスト):内海啓貴/松島勇之介
シモン・ルナール 役:高橋健介
ガーディナー 役:津田英佑
キャット・アシュリー 役:吉沢梨絵
アン・ブーリン 役:凪七瑠海
ロジャー・アスカム 役(Wキャスト):山口祐一郎/石川禅 ほか
チケット情報 【東京公演】料金(全席指定・税込)
平日:S席15,000円/A席10,000円/B席5,000円
土日祝日・千穐楽:S席16,000円/A席11,000円/B席6,000円
チケット一般前売開始: 2026年1月10日(土)
公式サイト https://www.tohostage.com/ladybess/
公式SNS @toho_stage
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