2026年3月9日(月)より東京・シアタークリエにて上演されるミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』。その製作発表記者会見が行われ、演出の日澤雄介、ミッキー役の小林亮太・渡邉蒼(Wキャスト)、エディ役の山田健登・島太星(Wキャスト)、ミセス・ライオンズ役の瀬奈じゅん、そしてミセス・ジョンストン役の安蘭けいの7名が登壇した。
会見では、中心となるWキャスト4名の関係性が伝わる掛け合いや、元宝塚歌劇団トップスター同士の母トークのほか、本番では同じ舞台に立つことのないWキャスト4名が並び立つスペシャル歌唱披露も行われた。盛りだくさんな会見の模様をレポートする。

ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』とは:あらすじと見どころ
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、脚本・音楽・歌詞をリバプール出身の劇作家ウィリー・ラッセルが手掛け、貧困、格差社会、迷信、そして抗えない運命といった重厚なテーマを、軽快で美しいメロディに乗せて描いた傑作ミュージカル。1983年にロンドン・ウエストエンドで初演され、同年のローレンス・オリヴィエ賞で最優秀新作ミュージカル賞に輝いた。
その後、ウエストエンドでは1万回を超えるロングラン公演を記録し、アメリカ・ブロードウェイでもトニー賞にノミネートされるなど、世界各国で上演され続けている。日本では1991年に初演されて以降繰り返し上演されてきたが、東宝版としては今回が17年ぶりの上演となる。
物語の舞台はイギリスの工業都市リバプール。生活に困窮するジョンストン家の子だくさんの母、ミセス・ジョンストンは、双子の男の子を妊娠するものの養う余裕がなく、裕福だが子供に恵まれない雇い主のミセス・ライオンズに、双子の片方を極秘に養子に出すという契約を交わしてしまう。貧しい家で兄たちと泥だらけになって遊ぶミッキーと、裕福な家庭で何不自由なく厳格に育てられるエディ。
引き裂かれた二人は7歳の時に運命的な出会いを果たし、互いが双子であることを知らぬまま「ブラッド・ブラザーズ(義兄弟)」の誓いを立てるが、やがて成長し同じ女性・リンダに恋をした二人の絆は、容赦ない不況と階級社会の壁によって残酷に引き裂かれていく――。
小林亮太&渡邉蒼、山田健登&島太星、それぞれが語るミッキー&エディ像


会見の冒頭、ミッキー役の小林亮太は、公演初日まであと1ヶ月強というタイミングでの会見に「実のある話ができれば」と真摯な表情を見せ、同じくミッキー役の渡邉蒼は「今日は綺麗な格好をしていますが、劇中では泥だらけ、煤まみれになりながら演じています(笑)。ぜひその姿を劇場へ見に来てほしいです」と挨拶。


一方、エディ役の山田健登が「短い時間ですがよろしくお願いします」とスマートに挨拶を終えると、Wキャストの島太星が「今日はお忙しい中お集まりいただき誠にありがとうございます。お仕事頑張ってください!」と記者たちを激励し、冒頭から4人の個性が炸裂していた。
ミッキーという役柄について、小林は大人目線で子どもを見るのではなく、実際に演じるために“子ども目線”に立つことの重要性を挙げ、「今回、僕らは7歳の子ども時代から演じることになります。大人の僕らが演じる上で子ども目線に立った時、大人のいろんなしがらみを排除できるなと思いました。そして、生活の苦しさがあってもそれにめげずに人生を正当化しようとするミッキーの姿勢は、子どもとか大人とかではなく一人の人間としてすごく魅力的だなと感じています」と語った。

また、エディという存在については、稽古前までは自分を肯定・補完してくれる存在と捉えていたが、実際の稽古を経て感覚が変化したという。「自分が笑えないところで笑ってくれてたり、言葉にしなくても目と目で通じ合って、その場を一緒に生きてくれる。それにすごく救われるし、最高の友達なんじゃないかなと思います」と、パートナーへの信頼を滲ませた。
一方の渡邉は、演出の日澤から受けた「子どもを演じるというのは、子どもの時のことを思い出すことなんじゃないか」という言葉が印象に残っているという。「ミッキーみたいな部分って、皆さんの中にもあったんじゃないかなって思うんです。己の『かっこいい』とか『面白い』に対してとことんストイックに向き合っていく。大人顔負けで、そこがかわいくもあり、僕もそういう部分を持ち続けていきたいと思わせてくれる子です」と分析した上で、エディについては「ミッキーが持っていなかったものをエディが運んできてくれる感じがあります。やっぱり『一緒にいなきゃダメだ』っていう、絶対に一緒にいるべき存在なんだろうなと感じます」と熱弁した。

エディ役の山田と島は、かつて同じグループ(Love Harmony’s, Inc./ラブ・ハーモニーズ・インク)で活動していたこともあり、互いをよく知る仲。山田は、「僕は(彼のことを)“たいちゃん”って呼んでいて、たいちゃんの音楽をしている姿は見ていたんですけど、お芝居をしている姿を見るのは初めてで。どんな感じなんだろうと思っていたら、やっぱりすごく良くて。人柄がそのままお芝居に出ているんです。独特なテンポ感や空気感がすごくいいなと思いました。狙って出せるものじゃないなと」と絶賛。さらに「歳的には先輩なんですけど、僕ももうちょっとフレッシュにやらないと・・・と感じたので、負けじとフレッシュにいきたいなと思います」とライバル心を覗かせた。
これに対し、『レ・ミゼラブル』で山田の芝居を見て「本当にすごく素敵だったので、今回同じ作品でお芝居ができることを楽しみにしていました」という島。「これは言ってもいいのかな?健登って、めちゃくちゃ優しいんですよ。びっくりするほど裏表がなくて、健登から悪の話を聞いたこともない」と、その人柄を“完璧”だと評していたが、芝居を通して印象が変わったという。
「お芝居を見たら、優しさの裏にはしっかりと葛藤や暗い部分も存在していて、『健登は優しいだけじゃなくて、本当に人間なんだな』と改めて思いました。大好きな友です。そして、僕たちの共通点は同じ人間ということですね。ぜひ両ペアをご覧いただきたいです」という島の独特な話の結びに、「確かに、間違っていない」と優しい眼差しを向ける山田。ほっこりの方向性が違う二人が作り上げるそれぞれのエディ像が楽しみだ。
安蘭けい&瀬奈じゅん、元宝塚歌劇団トップスターたちは意外にも初共演

そして、二人の対照的な母を演じる安蘭けいと瀬奈じゅんは、宝塚歌劇団を退団後、意外にも今回が初共演。安蘭が「実は在団中も共演したことがなく、これが生まれて初めての共演です。でも初めてとは思えないような意思疎通ができているような感じがする」と言うと、瀬奈は「瞳子さん(安蘭の愛称)の背中を見て、私もがんばらなきゃなと思う毎日です。でも瞳子さん、何か面白いことがあったりすると、すぐに私の顔を見るんですよ(笑)。チェックされているので、気を緩めないようにしないと・・・」と困り顔を見せた。
安蘭が「笑いのツボも宝塚時代から分かり合っているので。『今どんな表情してるかな~』ってついつい見ちゃう(笑)」というぐらい仲の良い二人だが、仲が良いゆえに「朝子(瀬奈の愛称)と芝居をする時に、ちゃんと役としていられているかなって」と本音をポロリ。劇中では二人が格闘するようなシーンもあるそうで、演出の日澤からは「普段の仲の良さは消していただいて(笑)」とツッコまれていた。

ちなみに、演出の日澤曰く、本作でナレーター役を務める東山義久が「ちょいちょい悪戯をする」そうで、「東山さんはサービス精神が旺盛なので、僕のオーダーに100点で応えてくれるんです。それを瀬奈さんが食らいまくっている(笑)」と、ベテラン陣も稽古場で楽し気な様子を見せていると明かした。
社会派・日澤雄介が仕掛ける「本気の遊び」

日澤雄介は、劇団「劇団チョコレートケーキ」の主宰であり、ストレートプレイ(演劇)界で確固たる地位を築く“硬派”な演出家。緻密なリサーチに基づいた重厚な社会派演劇や歴史劇で知られ、読売演劇大賞の優秀演出家賞を受賞するなど、高い評価を得ている。
「本作の持つ寓話的面をベースとしつつも、運命だけで片付けたくないと思っていて。登場人物ぞれぞれの選択、そこに絡んでくる人間の欲、愛、憎しみ、悲しみ、喜びといった人間そのものを深く掘って、演出できればなと思っています」とストレートプレイの演出家らしいリアリティ重視のアプローチを語ったが、その稽古場は意外にも(?)遊び心に溢れているようだ。
小林は、日澤の提案で稽古場にて全員で「鬼ごっこ」をしたエピソードを披露。「お芝居を作っていて鬼ごっこをするなんてなかなかないけれど、日澤さんがやらせてくれて本当に楽しかったです。無邪気に遊ぶことは、子ども大人も関係ないんだと思える、すごく印象深い瞬間でした」と、理屈ではなく身体感覚で役に入る日澤の演出手法の効果を明かしてくれた。
Wキャストはお互いのペアをどう見ている?
また、今回はWキャストの組み合わせが固定(小林・山田ペア/渡邉・島ペア)されていることも大きな特徴。安蘭が「それぞれのペアが全く違うのがめちゃくちゃ面白いんですよ。Wキャストにお互いの稽古の様子を見せない現場とかもあるけど、今回はお互いを見ているじゃない?どう感じてる?」と問いかけると、小林は「正直、稽古が始まった当初は相手のペアを見て『うわっ、いいな!』と思うある種の嫉妬がどこかにあったんですけど、稽古に入って時間が経った今は、二人(渡邉・島ペア)のことが愛おしく見えるようになって、すごくいい作用になっている気がします」とWキャストならではの相乗効果を言葉にした。

渡邉は、島とのペアについて「今、会話をしていてもそうなんですが、僕らはなんかふわふわしているんです。兄さん方(小林・山田ペア)を見ていると、推進力がすごくあってクールだなって思うんですけど、僕らは(お見合いするみたいに)『あっ、あっ、あっ・・・こっちか!』みたいなんです。でも、僕自身が実際にそういう子どもだったんです。だから、兄さん方のミッキー&エディも、子どもの頃こんな感じだったのかなと想像が働いて、すごくおもしろいです」と、自分たちのチームカラーをにじませた。
なぜウィリー・ラッセルは大人が子どもを演じる形にしたのか
楽しいカンパニーだが、向き合う物語はなかなかに重い。安蘭は、2003年の上演版を観劇した際は「なんて悲惨な話なんだろう」という印象しかなかったと振り返る。しかし自身が演じる立場になった今、台本を読み込む中で「宿命を動かすことで運命を変えられるのかな、とか考えてみたりして。最近、映画で『国宝』を見ました。『国宝』も生まれや血、宿命といったものを描いていましたが、この作品でもそれを感じます。こういう結末を迎えるのも宿命だったのかな、と感じながら稽古しています」と語った。
また、瀬奈は自身が特別養子縁組で二人の子どもを授かっているというプライベートな経験に触れ、「血が繋がっていること」について直面する場面が多いと吐露。その上で、「1回目の特別養子縁組をした時には、周囲の反応が『すごいね』とか『偉いね』だったのが、5年後に2人目を授かった時には『おめでとう』という言葉に変わっていたんです。世間の変化はすごく大きいなと思っていて。なので、今私たちがこの作品をやる意味がきっとあるんだと思います」と非常に印象的なエピソードを明かした。
島は「エディという人物を通して、何も知らなかった子ども時代を思い出して、毎日が新鮮で楽しいです。ちょっと辛くなるところもあるけれど心温まる物語でもある、いっぱい魅力の詰まった素敵な作品です。両ペアとも観にご来場いただけると幸いです」と純粋な想いを述べ、山田は「稽古を重ねるたびに、この作品が長く上演され続けている意味を感じる瞬間がたくさんあります。僕たちにしかできない表現で、皆さんにお届けしたいなと思います。楽しみにしていてください」と決意を新たにした。

渡邉は、人間の心の複雑さに触れ、「誰しも最良の選択をしているはずなのに、なんだか上手くいかないことってたくさんあって。近くで見ると悲劇的だけれど、一歩引いたところから見るととても喜劇的に思えたりもします。派手な作品をやると意識ではなくて、とってもリアルな、人間的な物語を演じさせていただくという自覚を持って、一生懸命やっていけたらいいなと思っております」と結ぶ。
そして小林は、劇中歌「キッズ・ゲーム」を引き合いに、「僕は、演劇というものはどこまでも遊びの延長線上にあると思っていて。でも、僕らがいかに真剣に遊ぶかによって、日常をがんばっているお客様の心にゆとりや遊び心を届けられるのではないかと思っています。精一杯準備をしてまいりたいと思いますので、ぜひ、“あおしま”と“こばやま”で楽しんでいただけたら嬉しいです」と、表現者としての矜持を覗かせた。

最後に演出の日澤が、「なぜウィリー・ラッセルは大人が子どもを演じる形にしたのか」という疑問を、翻訳の伊藤美代子と語ったことがあるという。「これを子役でやったら意味がない。大人がやるから意味がある。我々は皆、一度は子ども時代を経験し、それを経て大人になっている。自分の子ども時代はどうだったのか、大人になることで何を得て何を失くしたのか。それを2幕構成で見せることに意味がある。観客一人一人の人生とリンクする瞬間が必ずある作品だと思います」と上演へ込める想いを見せた。
さらに「僕はWキャストではなく、2本の違う作品を作っているような感覚で演出をさせていただいております。ぜひ両チームを劇場で観ていただければと思います」と呼びかけ、会見を締めくくった。
【歌唱披露】幻の4人バージョンで魅せた「あいつに」

会見の最後には、小林、渡邉、山田、島の4名による劇中歌「あいつに(That Guy)」の歌唱披露が行われた。この楽曲は、ミッキーとエディが互いに自分にないものを持つ相手をうらやましく思い、「あいつになれたら」「あいつに似ていたらよかった」と歌うナンバーだ。通常はそれぞれのペア(2名)で歌われるが、今回は製作発表だけのスペシャルバージョンとして、Wキャスト4名全員での歌唱となった。

「もし俺があいつだったら」と歌い出すミッキー(小林・渡邉)の切実な憧れと、「あいつなら知ってる」と歌うエディ(山田・島)の純粋な眼差しが交錯する。小林と渡邉の泥臭くもエネルギーに満ちた歌声と、山田と島の端正で伸びやかな歌声が見事なコントラストを描き出し、サビでは4人の声が重なり合って力強いハーモニーを響かせた。
歌詞に含まれる子どもらしいワードを、彼らは少年のような表情で生き生きと表現。互いを指差したり、顔を見合わせたりしながら歌う姿からは、役柄を超えたキャスト同士の信頼関係と、作品が持つ「青い輝き」が溢れていた。
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』は、3月9日(月)から4月2日(木)まで東京・シアタークリエにて、その後4月10日(金)から12日(日)まで大阪・サンケイホールブリーゼにて上演される。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部1号)
ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | ミュージカル『ブラッド・ブラザーズ』 |
| 公演期間・会場 | |
| スタッフ | 【脚本・音楽・歌詞】ウィリー・ラッセル 【演出】日澤雄介 【翻訳】伊藤美代子 【訳詞】小林香 |
| キャスト | ミッキー:小林亮太/渡邉 蒼(Wキャスト) エディ:山田健登/島 太星(Wキャスト) リンダ:小向なる サミー:秋沢健太朗 ナレーター:東山義久ミスター・ライオンズ:戸井勝海 ミセス・ライオンズ:瀬奈じゅん ミセス・ジョンストン:安蘭けい 菊地まさはる 白鳥光夏 菅井理久 田代 明 千葉由香莉 花咲まこと 平山トオル(スウィング) |
| チケット情報 | チケットぴあ ほか |
| 公式サイト | <東京公演>2026年3月9日(月)~4月2日(木) シアタークリエ <大阪公演>2026年4月10日(金)~4月12日(日) サンケイホールブリーゼ |
| 公式サイト | https://www.tohostage.com/blood_brothers/ |


\月額550円でアニメ、映画、ドラマ見放題!まずは14日間無料体験/
\新規登録なら31日間無料!/
掲載日時点での情報です。 最新情報は各公式サイトをご確認ください。





