松本幸四郎&尾上松也で新たな『朧の森に棲む鬼』が誕生!歌舞伎NEXT第2弾【レポート】

当ページには広告が含まれています

2024年11月30日(土)に東京・新橋演舞場にて歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』が開幕した。初日前日に公開稽古と囲み取材が行われ、松本幸四郎、尾上松也、中村時蔵、坂東新悟、尾上右近、市川染五郎、澤村宗之助、大谷廣太郎、市川猿弥、片岡亀蔵、坂東彌十郎が登壇した。

目次

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』とは

歌舞伎の新たなるステージを目指して銘打った“歌舞伎NEXT”。2015年に上演された『阿弖流為』に続く第2弾となる本作は、2007年に誕生した究極の悪を描いた伝説の舞台『朧の森に棲む鬼』を“歌舞伎NEXT”として、17年ぶりに上演する。2007年の『朧の森に棲む鬼』と同様に、本作でも脚本を中島かずき、演出をいのうえひでのりが務める。

「InouekabukiShochiku Mix」シリーズのオリジナル作品として製作され、市川染五郎(現:松本幸四郎)が主人公・ライを演じ、2007年に初演された『朧の森に棲む鬼』。嘘と欲望に支配される男の栄光と破滅の物語で、華やかでダイナミックな演出が話題を呼び人気を博した。

出演は、初演時にもライ役を演じた松本幸四郎とともに、尾上松也が主人公・ライとエイアン国の武将の一人・サダミツの二役をWキャストで演じる。共演は、中村時蔵、坂東新悟、尾上右近、市川染五郎、澤村宗之助、大谷廣太郎、市川猿弥、片岡亀蔵、坂東彌十郎。

歌舞伎NEXTとして「ゼロ」から作る気持ちで

囲み取材は、幸四郎からの「我々も今年の最後の舞台となります。ぜひともその最後の舞台、今年1番の刺激を受けに劇場に足を運んでいただきたいと思っております」という力強い挨拶からスタート。

幸四郎とのWキャストとなる松也は「念願の歌舞伎NEXTに出演が叶い。しかも『朧の森に棲む鬼』いう作品でライという役をサダミツと二役で幸四郎さんと一緒に務めさせていただけるというのは本当に嬉しい限りでございます。今年最後ですけれども、全力を尽くしますので、ぜひその熱気を観に来ていただきたいと思います」と意気込んだ。

さらに登壇者たちそれぞれからも挨拶が行われた。ツナ役の時蔵は「私も今回『朧の森に棲む鬼』に参加させていただきとても光栄ですし、1ヶ月間という稽古期間をとても楽しく過ごさせていただきました。とても面白く刺激的な作品になっておりますので、ぜひ皆さんお越しください」と呼びかけた。

前回の歌舞伎NEXT『阿弖流為』にも出演したシキブ役の新悟は「前回、本当にとても楽しく、勉強になりましたので、今回出させていただけることを本当に嬉しく思っております。他の劇場に負けないように精一杯盛り上げていきたいと思います」と意気込みを語った。

キンタ役の右近は「阿部サダヲさんが演じてらっしゃったあのキンタは僕も大好きな役で、劇団☆新感線を知った初めての作品なんです。憧れの作品であり、憧れの役を一生懸命務めさせていただきたいと思います」と気合い十分に意気込みを披露。

シュテン役の染五郎は「歌舞伎NEXTに出演させていただけるということでとても嬉しく思っております。シュテンは前回において真木よう子さんが演じられて女性の役だったんですけれども、今回は男性の役になるということで、おそらく今回の登場人物の中で1番前回と変わっている役かなと思っております。そういう意味でも新しく作るつもりで演じたいと思っております」と意気込みながら、「父が市川染五郎時代に演じた作品にこうやって私が染五郎となって出演させていただけるということもとても意義深く感じております」と感慨深い様子を見せた。

アラドウジ役の宗之助は「私も歌舞伎NEXTは2度目で、今回出演させていただくことになりまして、本当にありがたく思っております」と感謝を述べ、ピエロのような化粧について「皆様、私の顔を見て、某ジョーカーが浮かぶかと思いますけれども、ジョーカーではございません。どんな役かは舞台をご覧になってからお楽しみということで、よろしくお願いいたします」と笑いを誘った。

ショウゲン役の廣太郎は「ショウゲンという役なんですけども、本当に落ちぶれていく様をぜひご覧ください」と役どころをアピール。

マダレ役の猿弥は「とにかく大勢の方に観ていただけたらと思いますので、よろしくお願いします」とさらりと挨拶すると、「以上です。もうみんなのコメントが長すぎんだよ。使えるところは決まってんだから(笑)。どうぞよろしくお願いします」と思わず本音を語り、登壇者たちも爆笑。

ウラベ役の亀蔵は「前回の『阿弖流為』に引き続きまして出演させていただきます。歌舞伎NEXTでございますけども、9年ぶりということでですね、次の歌舞伎NEXTが9年後となると72歳になっちゃっうので、もっと早めにNEXTのNEXTをやっていただきたいと思います」と早くも次回作を待ちきれないとコメント。

イチノオオキミ役の彌十郎は「私はまだまだ若手だと思っていましたが、今回のお稽古を拝見したところ、本当に皆さん若くて元気なんです。立ち回りができないことが寂しいと思ってましたが、なくてよかったと思っています(笑)」と殺陣の激しさを語ると、「9年ぶりの歌舞伎NEXTですが、第3弾、第4弾と出られるように、自分でも体力作りを頑張ってやっていきたいと思いますので、また使って頂きたいと思います(笑)。楽しみにいらしてください」と訴えると、会場も笑いに包まれた。

そんな殺陣のシーンについて、幸四郎は「冗談じゃないぐらい、ふざけるなっていうぐらい多いです(笑)」とジョークを交えながら語ると、松也も「かなりびっくりしております(笑)」と同調。さらに、本作について、幸四郎は「来ていただいて、どこが見どころか、どこが1番刺激を受けたかっていうところを皆さん感じていただけれいただければと思います。それだけすごい作品だと思います」と自信を覗かせた。

製作発表会見で、大谷翔平の「憧れるのやめましょう」発言を引用して、幸四郎への憧れを封印して挑戦することを語っていた松也。そのことについて、松也は「憧れという気持ちは変わらないですけれども、でも本当にゼロから、いのうえさん含めスタッフの皆さんも、いらっしゃる皆さんも、前回とはまた違う『朧の森に棲む鬼』を作るという気概の中で稽古してましたので、その前回のということは一旦忘れて、本当にゼロから作る気持ちでやらせていただきました。それは自然といい意味で、そういう気持ちとは別な形で稽古を積むことができましたけど。でも、本番になって近づいてきて、やっぱりライここにいるなという風に感じることは多々あります」と思いを明かした。

公開稽古レポート:新しい歌舞伎、新しいエンターテインメントへと生まれ変わった『朧の森に棲む鬼』

いつとも知れぬ戦乱の世。その島国には「オボロの森」があり、古い神はそこで魔物になるという。我欲をむき出しにして舌先三寸、女や金を騙し取る日々のライは、弟分のキンタと落武者狩りで屍から金品を奪っていた。

ある時、ライはオボロの森へと入ってしまい、そこに現れたオボロの魔物から、ライの奥底にある欲望を呼び覚まされてしまう。それは、この国の王座を我がものにすること。思いがけない運命の変転に奮い立ち、条件つきで魔物と契を交わすライ。魔物が与えた「オボロの剣」は、ライの舌に合わせて動き、人を斬っては赤い血の雨を降らす。

ライの嘘に心を射抜かれた人々は、その思惑に絡め取られ滅ぼされてしまう。現世を地獄に変えてのし上がっていくライだが、それこそが破滅の始まりだった・・・。

シェイクスピアの「リチャード三世」を下敷きに、歌舞伎の題材にもなっている「酒呑童子伝説」の世界を融合させた本作。

中島作、いのうえ演出で、歌舞伎NEXTとして、見得や立廻りに拍子木をはじめ、歌舞伎俳優による歌舞伎ならではの演出や技法、様式美を追求した演出に、音楽も爆音ロックに竹本や太夫も盛り込むことで、歌舞伎NEXTならではの新たな『朧の森に棲む鬼』を創造している。さらに、歌舞伎NEXTとしての「オボロの森」をどうステージ上に具現化しているかも大きな見どころだ。

公開稽古ではライ役を幸四郎、サダミツ役を松也が演じた。中島の生み出した嘘と欲望に支配される男ライを演じる幸四郎は、ダークヒーローとして傲岸不遜な姿で観る者に強烈なインパクトを与え、周りを巻き込んでいく“究極の悪”ぶりを存分に振りまく。そして、松也は隈取り姿に異彩を放つキャラクターのサダミツで存在感を見せつける。

幸四郎と松也によるライとサダミツは2人の個性がぶつかり合い、Wキャストならではの魅力を放ち、2人の対決シーンも見どころだ。

ライの弟分キンタを演じる右近は、ひょうきんな姿を見せつつも、武闘派として迫力ある殺陣で作品を盛り上げ、舞台上を駆け回る。そして、前作では真木が演じたシュテンを、染五郎が男性役として妖術的なミステリアスさを持った美少年として新たなキャラクター像を見せてくれる。さらに、華と実力を兼ね備えた歌舞伎俳優の面々が演じる個性豊かな登場人物たちによって舞台に彩りが添えられる。

中島といのうえ、そして歌舞伎俳優たちによって創り上げられる歌舞伎NEXT。その第2弾として、嘘と裏切りを重ねて王になる男を通して“究極の悪”を描く『朧の森に棲む鬼』が、新しい歌舞伎、新しいエンターテインメントへと生まれ変わった。

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』は、11月30日(土)から12月26日(木)まで東京・新橋演舞場、2025年2月4日(火)から2月25日(火)まで福岡・博多座にて上演。

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

『朧の森に棲む鬼』関連商品はこちら(Amazon)

あわせて読みたい
松本幸四郎が尾上松也に勝負宣言! 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表【レポート】 2024年11月から東京・新橋演舞場にて上演される歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』。その製作発表会見が9月28日(土)に都内にて行われ、松本幸四郎、尾上松也、中島かずき(...

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』公演情報(チケットなど)

【公式サイト】https://oboro-no-mori24-25.com/

 

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

目次