松本幸四郎が尾上松也に勝負宣言! 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表【レポート】

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歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

2024年11月から東京・新橋演舞場にて上演される歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』。その製作発表会見が9月28日(土)に都内にて行われ、松本幸四郎尾上松也中島かずき(脚本)、いのうえひでのり(演出)、松竹(株)取締役副社長 山根成之が登壇した。

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歌舞伎の新展開“歌舞伎NEXT”で17年ぶりの『朧の森に棲む鬼』

歌舞伎の新たなるステージを目指して銘打った“歌舞伎NEXT”。2015年に上演された『阿弖流為』に続く第2弾となる本作は、2007年に誕生した究極の悪を描いた伝説の舞台『朧の森に棲む鬼』を“歌舞伎NEXT”として、17年ぶりに上演する。

シェイクスピアの「リチャード三世」を下敷きに、歌舞伎の題材にもなっている「酒呑童子伝説」の世界を融合させ、中島作、いのうえ演出で、歌舞伎俳優による歌舞伎ならではの演出や技法、受け継がれてきた様式美をふんだんに盛り込み、さらに魅力の増した作品として描く。

出演は、松本と尾上がWキャストで主人公・ライとサダミツを交互出演する。そのほかの出演に中村時蔵、坂東新悟、尾上右近、市川染五郎、澤村宗之助、大谷廣太郎、市川猿弥、片岡亀蔵、そして坂東彌十郎と、歌舞伎界の今を牽引する華やかな顔ぶれが揃う。

歌舞伎ならではの派手な演出を盛り込んでさらに進化した歌舞伎NEXTを目指す

製作発表会見は、松竹㈱取締役副社長の山根による挨拶からスタート。今作の特徴として松本と尾上のWキャストを挙げて、「2人によるライというダークヒーローとしての役作りを非常に楽しみにしております」と期待を寄せ、「歌舞伎俳優によって生まれる様式美はもとより、今回は宙乗りとか、いろんな歌舞伎手法を駆使して、躍動感あふれる舞台になると存じております。何よりドラマチックな中島さんの脚本に、いのうえさんのダイナミックな演出が融合する誠に楽しみな本作をご期待いただければと思います」と挨拶。

 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

脚本の中島は、今回の公演について「この作品を歌舞伎NEXTでという話は以前からしていたんですけれども、コロナとかいろいろありまして、このタイミングになりました。歌舞伎NEXT第1弾の時にも非常に手応えを感じたんですけれども、それにも増して、今回は新しい形で新感線の手法と歌舞伎の手法が融合されるんではないかなと非常に楽しみにしております」と胸の内を明かした。

そして、脚本の変更点について「1番変更しているところはシュテンとキンタになります。キンタが以前は阿部サダヲくんが演じていて、今回は尾上右近くんということで、また違うアプローチで増強をしておりますし、シュテンも前回は真木よう子さんが演じられたんですけど、今回は男の子として立役にしています」と説明した。

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

演出のいのうえは「『朧の森に棲む鬼』は人気が高い作品でして、僕自身もよくできてるんじゃないかと自画自賛している作品です(笑)。そういうのをもう1回やるのはすごく自分自身に対する挑戦で、これを歌舞伎化する意味がないと、やる意味がないんじゃないかみたいな思いがありまして、まさに満を持しての歌舞伎NEXTになります」と胸を張った。

いのうえは、『阿弖流為』の時に、歌舞伎をどう作ればいいのか悩んだという。その時に故・中村勘三郎から「歌舞伎役者がやれば歌舞伎になる」と言われたことで「よし、じゃあやっちゃえっていうことで、結果的に歌舞伎役者がやることによって歌舞伎でしか出ない空気になったんじゃないかと思います」と当時を振り返り、今作の演出面について「歌舞伎にはいろんな演出があると思うんです、そういうものをできるだけ取り込んで、さらに進化した歌舞伎NEXTにしたいと思っています。スーパー歌舞伎に対抗するわけじゃないんですけど(笑)、宙乗りとか歌舞伎ならではの派手な演出も盛り込み、もちろん滝での立ち回りとか、前回好評だったところはしっかり残して、さらに歌舞伎として進化した作品になるんじゃないかと思っています」と解説した。

松本幸四郎、Wキャストの尾上松也に「これは勝負です!」

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

Wキャストでライ役とサダミツ役を交互出演する松本は、「歌舞伎NEXTとはなんだというのは、定義がないのがそもそも歌舞伎でありますけれども、でも前回、そして今回共に、いのうえさんと中島さんの世界観と歌舞伎を混ぜ合わせると何ができるのかということをテーマにしています。ですので、この世にないものを作る、誕生させるということを目指して作っています」と意気込みを披露。

新感線版『朧の森に棲む鬼』に出演した当時について、「1番思い出すことは1月公演ということで夏の暑さがないことにホッとしていたんですけど、寒い中での滝のシーンがあって、結局は大変だったという思い出は相変わらずではありました」と大きな見どころだった滝のシーンについて思い返しながら笑顔を見せた。

続けて「それから、個人的には2月の公演の時にうちの娘が生まれたということも思い出されることでもあって、そうというわけではないんですけど、今日、新感線さんの会見ということもあり、誰から注文されるわけでもなく、自分的にかっこいい、そして自分では絶対買わないものを着て会見に出ようと思いました」とド派手な衣装をアピールし、さらにアクセサリーも披露しながら「娘から借りたんですけど、手錠のネックレスなんです。なんでそんなものを持っているのか、これは家族会議で確認したいと思います(笑)」と親バカな一面を見せた。

 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

改めて、松本は「とにかく、今回は尾上松也さんとのWキャストということで、これは勝負です!」と尾上に向かって勝負を宣言しながら、「勝たせてね」と懇願し、会場は笑いに包まれた。

勝負宣言の松本幸四郎に、尾上松也は大谷翔平の名言で対抗

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

松本に続いて挨拶に立った尾上は「まずはこの格好について説明させていただきたいと思います(笑)」と松本に負けず劣らずの派手な衣裳について説明を始め、「事前に幸四郎さんがこういう風な格好をしてるということは聞いてませんでしたので、比較的抑え目な格好しか用意しておりませんで、ネックレスも急ぞろえの中途半端な状態になってしまって。先に言ってほしかったというところがあります(笑)」と冗談で場を和ませた。

『阿弖流為』で歌舞伎NEXTが発足した際に『四国こんぴら』で松本と一緒で、歌舞伎NEXTで共演したいという話をしていたエピソードを語りながら、「ちょうど僕が違う公演がすでに決まっておりまして、出られないということが分かっておりましたので、ようやく新感線の作品に関わることができたかもしれないと思ったのに、すごく悔しかったの覚えております」と振り返った。

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

今作で松本とWキャストということについて「お話を頂いた時には非常に嬉しゅうございました。自分にとってのレジェンド的な、いや、レジェンド的ではございません、レジェンドでございます(笑)。その幸四郎さんとWキャストでやるというプレッシャーは、今こうして普通に立っておりまして、冗談っぽく言ってますけど、強い思いを感じています。さっき『勝負だ!』と言われた時は勘弁してくれっていう感じがありました(笑)」と明かすと、会場も笑いに包まれた。

冗談を飛ばしながらも、改めて「でも、出させていただくのであれば、僕自身も自分のライというのをしっかりと出していきたいと思いますし、初演の時とは違ってますから、その辺を力にしながら、また初演をご覧になった方からも新鮮に観ていただけるように、全力でキャストの皆さんといのうえさんに導いていただきながら進めていきたいなと思います」と意気込みを語った。

そして最後に、「ですから、大谷翔平さんの名言を心に刻んで、まずは憧れるのをやめてですね、挑戦するという心を持って稽古を迎えたいなと思います(笑)」と語って、笑いを誘った。

 歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』は、11月30日(土)から12月26日(木)まで東京・新橋演舞場、2025年2月4日(火)から2月25日(火)まで福岡・博多座にて上演される。

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歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』 公演情報

【公式サイト】https://oboro-no-mori24-25.com/
【公式X(Twitter)】@kabukiNEXT_obr

(取材・文・撮影/櫻井宏充)

 
歌舞伎NEXT『朧の森に棲む鬼』製作発表

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この記事を書いた人

演劇、海外ドラマ、映画、音楽などをマルチに扱うエンタメライター。エンタステージ立ち上げからライターとして参加し、小劇場から大劇場のストレートプレイにミュージカル、2.5次元、海外戯曲など幅広いジャンルにおいて演劇作品の魅力を日々お伝えしています!

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