2023年4月22日に東京・新国立劇場 中劇場で丸美屋食品ミュージカル『アニー』が開幕。4月21日に初日前会見と公開ゲネプロが行われ、アニー役の深町ようこ、西光里咲(Wキャスト)、ウォーバックス役の藤本隆宏、ハニガン役のマルシア、グレース役の笠松はる、ルースター役の財木琢磨、リリー役の島ゆいかが登壇した。
『アニー』は、1924年からアメリカの新聞で連載された漫画「ザ・リトル・オーファン・アニー(小さい孤児アニー)」をもとに、1977年にブロードウェイでミュージカル化。同年のトニー賞では作品賞を含む7部門を受賞。映画化もされた世界中で人気のミュージカル作品だ。
日本では1978年に初上演。1986年から日本テレビが主催した公演は今年で38年目を迎え、日本中で愛されている国民的ミュージカルともいえる作品。2021年、2022年の公演はコロナの影響で1幕のみの90分バージョンだったが、本作は4年ぶりのフルバージョン(2幕)での上演となる。
90分バージョンでも『アニー』の良さが凝縮された素晴らしい公演だったが、4年振りのフルバージョン公演なので、初日前会見で深町は「今から気合入ってます!」と元気に挨拶。藤本も「今までよりもパワーアップした新しいアニーをお届けできると思います」と話す。
マルシアは稽古場で間違えて90分バージョンのセリフに行きそうになったと苦労を語り、さらに「昨日の稽古で財木くんがセリフを間違えちゃったりね」と暴露。マルシアの急な暴露にたじろぐ財木と、役柄同様姉弟のようなやり取りを見せた。
財木は「これまでコロナ禍の公演で残念な思いをした子たちの分も、フルバージョンを待っていた全国のアニーファンの皆さんに、この素敵な作品を届けられたらいいなと思います」と真摯に語りつつ、「でもセリフは間違えないようにしたいです」と記者たちを笑わせていた。
フルバージョンでの本公演の見どころとして笠松は“ウォーバックスとアニーのワルツシーン”を「初めて稽古場で見たときに涙がにじんでしまって、今でも袖で見て毎回ぐっと来てしまう楽しみなシーン」だと挙げた。また「90分バージョンではカットされたウォーバックスさんとグレースの恋物語も復活しておりますので楽しみにしていただければと思います」と挙げると、藤本は「恥ずかしいな・・・」と照れ、深町と西光が「ヒュー!」と二人を元気に盛り上げていた。
そして、財木は“N.Y.C”の場面を挙げる。昨年のクリスマスコンサートで財木も披露した曲だが、本公演では参加しないので袖で熱唱しているそうだ。「大好きな曲で、毎回全力で歌っているので、もしかしたら僕の歌声が袖から聞こえるかもしれないことが見どころです!」と笑った。
島は“Hooverville”などアンサンブルが総出で出演するシーンを挙げ、「アンサンブルのだれを見ても表情、歌、踊り、本当に楽しいです。心を動かされるので色んな人に焦点をあてて観てほしいです」と熱く語った。
『アニー』は夏に全国ツアー公演で4都市でも上演。西光は「チーム・モップ」のアニーを演じるが、大阪公演では「チーム・バケツ」の孤児役の子たちと演じるのが楽しみだと話す。笠松は「2年前に松本公演に行くはずだったが中止になってしまって、今年行くことが出来るので、松本の皆さんにお会いできるのが楽しみです」と思いを馳せた。
藤本はキャストの子供たちとツアーを回るのが楽しみだそうだ。「新幹線に初めて乗る子もいる。その土地の風景や劇場の様子に、初めてニューヨークの街をみたアニーのように口を開けて驚くと思う。そんな姿を見るのが楽しみですね」と微笑む。
財木は全国各地の子供たちの笑い声を聞くのが楽しみだと語り、島も「去年アニーで全国を回っているときに、本当に笑いのポイントだったり、悪役がはけるときに「やったー!」って声が聞こえたり、その各地で反応が違うんです!今年もどんな反応が見られるのかなとワクワクしています」と公演を楽しみに待つ観客同様に、キャストも皆に会えるのを楽しみにしているようだ。
初日前会見では楽しそうに笑いあう深町と西光に、それを優しく見守る大人たちという暖かいカンパニーの様子が伝わってきた。西光の言葉が詰まり「伝わったかな・・・」と不安を口にすると、役では悪役の財木が「大丈夫! 凄く伝わったよ!」と優しくフォローする姿も見られた。
公開ゲネプロは「チーム・モップ」の公演が行われた。初日前会見では普通の少女だった西光が、明るく元気で周りをキラキラとした光で照らすようなアニー役を好演。また孤児たちを含め子供たちの元気なパワーを沢山感じた。皆細かい部分での表情も良かった。
マルシア演じるハニガンはいじわるな孤児院の院長ではあるが、怖いだけではなく人間味が溢れていた。元気な子供たちに振り回される様は悪役ではあるのだが同情してしまった。財木と島との掛け合いも息がぴったりだ。二枚目なのにどこか三枚目にもみえる憎めない財木演じるルースターと、とびっきりチャーミングな島演じるリリー。長年愛される作品は、悪役が愛されてこそというのが伝わる3人だった。
藤本演じるウォーバックスは温かみのある歌声と眼差しで会場全てを愛で包み込むようだった。笠松演じるグレースの凛とした美しさの中にある無垢な愛らしさを感じた。またウォーバックスの屋敷の雰囲気が良く、観ているこちらにもぬくもりが伝わってくるようだった。
『アニー』は聞き馴染みの多い名曲の数々がオーケストラの生演奏にて上演される。音楽が持つエネルギーにも圧倒された。また『アニー』は実際の犬も出演するが、本作ではプードル(家康・おこげ)が出演。犬たちの愛らしい演技にも注目だ。
本作の未来を明るく照らすようなポジティブなメッセージはコロナが緩和されつつある昨今にぴったりな作品だった。長年愛されてきたミュージカルだけに何度も観ている人も多いと思うが、また新たな気持ちで感動を覚えることだろう。そして初めて『アニー』に触れる人は、なぜこの作品が多くの人に愛されるのかを身をもって実感するだろう。
上演時間は約150分(途中休憩20分含む)を予定している。
(取材・文・撮影:一本柳歌織)
あらすじ
舞台は1933年のニューヨーク。世界大恐慌直後の街は、仕事も住む家もない人であふれていました。誰もが希望を失っているなか、11歳の女の子アニーだけは元気いっぱい。11年前、孤児院の前に置き去りにされたというのに、いつか両親が迎えに来ると信じて、逆境にひるむことなく前向きに生きています。そんなある日、大富豪オリバー・ウォーバックスの秘書グレースに気に入られたアニーは、クリスマスの2週間をウォーバックスのもとで過ごすことに。ウォーバックスは、アニーを養女にしたいと思うようになります。しかしアニーは、本当の両親と暮らすという夢をあきらめきれません。その強い気持ちに打たれたウォーバックスは、懸賞金をかけて彼女の両親を捜すことにします。ところが、それを知った孤児院の院長ハニガンと弟ルースター、その恋人のリリーは、懸賞金目当てに悪だくみを始めて・・・。アニーの夢はかなうのでしょうか?
公演情報
上演スケジュール
【東京公演】
2023年4月22日(土)~5月8日(月)
新国立劇場 中劇場
【大阪公演】
2023年8月9日(水)~8月14日(月)
シアター・ドラマシティ
【名古屋公演】
2023年8月18日(金)~8月20日(日)
愛知県芸術劇場 大ホール
【新潟公演】
2023年8月27日(日)
新潟県民会館 大ホール
出演
アニー:深町ようこ/西光里咲
ウォーバックス:藤本隆宏
ハニガン:マルシア
グレース:笠松はる
ルースター:財木琢磨
リリー:島ゆいか
ルーズベルト大統領:ひの あらた
アンサンブル
伊藤広祥 鹿志村篤臣 後藤光葵 長澤仙明 望月凜 矢部貴将
太田有美 三上莉衣菜 村田実紗 横岡沙季
子供キャスト
モリ―:南里侑明/井手陽菜乃
ケイト:和田愛海/和田知怜
テシー:大矢結姫/川野未琴
ぺパ:難波夏未/橋元優
ジュライ:坂本柚月/小金花奈
ダフィ:能重歩実/山﨑結香
ダンスキッズ
あやね
及川結芽乃
松村芽依
宮原心空
山田葵
りこまる
岩崎百恵
戸辺葵
伴野未采
福岡大河
船戸晴
正木蓮央斗
スタッフ
【脚本】トーマス・ミーハン
【作曲】チャールズ・ストラウス
【作詞】マーティン・チャーニン
【翻訳】平田綾子
【演出】山田和也
ほか
主催・製作
日本テレビ放送網株式会社
公式リンク
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/annie/
公式Twitter:@marumiya_jp