特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」座談会!神永 学×三浦 香×佐野大樹「感覚の違いが生む新しい八雲像に期待」

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特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」座談会!神永 学×三浦 香×佐野大樹「感覚の違いが生む新しい八雲像に期待」

2023年3月に、上演される特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」-思考のバイアス-。シリーズ累計700万部を超える神永 学の大人気ミステリー小説が、装い新たに舞台に戻ってくる。これまでにストレートプレイが上演されているが、今回は「特殊ミステリー歌劇」。さらに、これまでは原作者の神永自身が舞台のために台本を描き下ろしていたが、今回は三浦 香が作・演出を手掛ける。

『心霊探偵八雲INITIAL FILE 魂の素数』(講談社刊)を原作に、オリジナル要素を取り入れて描かれる、新たな舞台の『心霊探偵八雲』。公演を前に、原作者の神永、作・演出の三浦に、舞台版『心霊探偵八雲 いつわりの樹』(2013年)、舞台版『心霊探偵八雲 祈りの柩』(2015年)、舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』(2017年)すべてに出演し、今回も友情出演という形で登場する佐野大樹に、作品の行方を占う座談会で語ってもらった。

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目次

男性と女性の感覚って、違うものがあると思うんです

――『心霊探偵八雲』、ストレートプレイから歌劇へと新たな展開が決まりましたが、神永先生は、この変化にどんな可能性を感じていらっしゃいますか?

神永:正直めちゃくちゃ可能性を感じている部分は大きいです。これまでの『心霊探偵八雲』の舞台化は、すべて僕が台本を書いていたので、僕以外の人が台本から舞台化を手掛けるというのは初めての取り組みになるんですよね。どんな風に仕上げていただけるのか。

それから、今の時代にそぐわない言い方かもしれませんが、男性と女性の感覚って違うものがあると思うんです。僕が見る八雲の格好良さと、今回台本と演出を担当してくださる三浦 香さんの見る八雲の格好良さって、多分違うはずなので。

僕の持論ですが、空間認識能力とか色彩感覚って女性の方が圧倒的にいいものを持っていらっしゃる。そこを僕がどうがんばっても勝てない。これ、小説を書いているとつくづく思うんですよ(笑)。だから、ロジックでがんばるんです。三浦さんが女性としての視点で、登場人物たちをどう見て、どういう描いてくださるのか、僕としては楽しみですし、そこから新しい作品のヒントが生まれそうな気もしているんです。

そして、何と言っても歌劇という点。想像だにしていなかったアプローチなので。でも、これが綺麗にハマったら面白くなる予感しかしないです。ただのプレッシャーになりますけど、八雲たちが普通に出てきて、普通になんとなく歌って終わらせる・・・なんてことは絶対にないはず(笑)。

三浦:そんなわけないですよ(笑)!

神永:ですよね(笑)。だからこそ、あれをどう表現するんだろうと。三浦さんが手掛けられたミュージカル作品を拝見しましたが、それらの感じとはまた違ったやり方をしないといけないはずなんです。歌劇としての良さをだしつつ、『心霊探偵八雲』らしさをどう見せるのか、本当に楽しみにしています。

原作にこだわるのではなく、どう化学反応を起こすのか

――今回のベースとなるのは「短編」なんですよね。

神永:そうなんですよ。今までのストレートプレイ3作では、舞台化することを前提に書いたんです。登場人物の人数なども含めて、舞台でまとまるように書いたんですが、小説はそういう書き方をしていないですから。これを舞台の台本にするとどうなるのか・・・これは、原作ファンの方にとっても未知の楽しみになるんじゃないかな。原作にこだわるのではなく、どう化学反応を起こすのか、作り手の皆さんも、八雲ファンの皆さんにも楽しんでほしいです。

――「特殊ミステリー歌劇」というタイトルも、『心霊探偵八雲』らしく名は体を表しているなと思いました。

三浦:これは、先生の本の帯に「特殊ミステリー」と書かれているところからいただいたんですよ。

神永:『ミス・サイゴン』みたいな感じとは違うってことなんですよね?

三浦:なんで『ミス・サイゴン』なんですか(笑)?

神永:僕が初めて観たミュージカルだからです(笑)。山梨の田舎に住んでいたから地元で舞台なんて観たことがなかったので、上京して初めて観たのが『ミス・サイゴン』だったんですよ。これが生のお芝居か!と衝撃を受けて、そこからいろいろ観始めちゃったんですけど。

佐野:最終的には演劇が大好きになりましたよね。

神永:そう、やっぱりエンタメが好きなんだと思う。でも、八雲が『ミス・サイゴン』ばりに歌い上げる、というのはちょっとイメージが違いますよね?

三浦:ちょっと違うかもしれないです(笑)。まだ詳しいことはこれからですが、名付けたからには“特殊”になる気がしています。

――佐野さんは、ストレートプレイ3作を通じてご出演されていましたが、『心霊探偵八雲』への思い入れは?

佐野:結構長く作品に関わらせていただいたので、芝居ができない時の自分、芝居を少し理解した時の自分として、石井雄太郎刑事という役を演じさせていただけたなと。同じ役の目で自分自身を見ることができたのは、芝居人生の中ですごく大きなことでした。同じ役を演じるからこそ「こんなことできるようになってる」「こんなことが見えてきた」って、分かることも多いから。僕自身の役者としての成長の過程を一緒に歩んだ作品であり、そういう意味で役にも作品にもすごく思い入れがありますね。

――「特殊ミステリー歌劇」では、初めて違う役として『心霊探偵八雲』に関わることになりますが、心持ちはまた違いますか?

佐野:どうだろう?!何か変わりますかね。

三浦:役が変わるというよりは、立場が変わるんじゃない?ストレートプレイの時は、座組で一番年上ではなかったでしょ?お客様には伝わらないところかもしれないけど、今回のカンパニーの中ではだいきっちゃんが一番お兄さんだから。

佐野:そうだよね、ほとんど20代の俳優さんたちだもんね。圧倒的じゃないですか!ヤバい、ヤバい・・・でも、誰よりも若く新人のつもりで!僕は誰よりも稽古場で声を出します!

運命の二つ返事――改めて聞く、『心霊探偵八雲』誕生秘話

――新しい『心霊探偵八雲』が誕生する前に、先生にぜひ、作品の誕生秘話を伺ってもよろしいでしょうか?

神永:僕が『心霊探偵八雲』を書き始めた頃って、「ミステリー」というジャンルの中に特殊能力を組み込む手法は、あまり使われていなかったんですよ。いわゆる、禁じ手のようなもの。それをあえて僕が使った理由は、自分が本格ミステリーを真正面から書いても、勝負できないと分かっていたからです。

では、どうするか。自分のフィールドで、自分のできるやり方を考えた時に辿り着いたのが、ホラーとミステリーを融合させ、1つ特別な設定を作ること。ただし、そこには条件を入れて、自分の中で一つ縛りを作る。そうやって生み出したのが『心霊探偵八雲』という作品でした。

――『心霊探偵八雲』の1作目『心霊探偵八雲 赤い瞳は知っている』は、よく知られた話ですが、神永先生が2003年に自費出版した小説『赤い隻眼』を改題・改稿したものなんですよね。

神永:そうです。ミステリー新人賞の一次選考落選作品でした。やっぱり自分は才能ないんだなって諦めようと、記念として自費出版で出したんです。何か形が欲しかったので。そこから、商業出版で「この作品に出し直しましょう」って話をいただいて。そこから18年・・・すごいことですね。普通のサラリーマンでしたから、最初にお電話をいただいた時は、詐欺の電話かと思いました(笑)。

――それは、驚きますね。

神永:でも、運命的でもあったんですよ。その電話で「今から会いたいんだけど、来れる?」って突然言われたんですが、仕事中だったから終わってから足を運んだんですよ。そうしたら、今度は「商業出版でこの作品を押し出したいんだけど、やるかやらないか?できるだけ早く返事欲しい」と言われ。さらに「いつまでに返事をすればいいですか?」と聞いたら、「今」と言われて(笑)。そこですぐに「やります」と答えました。

――すごいスピード感ですね・・・!

神永:実はちょうど、いろいろあって働いていた会社を辞めることを決めていたんですよ。そんなタイミングで電話がかかってきたので、二つ返事でOKをして、その翌日に会社に「辞めます」と伝えて、そこから今の人生が始まりました。今、兼業作家の方も多いじゃないですか。僕は兼業作家にしたかったんですが、作家一本でやらざるを得なくなったという(笑)。

――まさに、運命ですね。

神永:不思議ですよね。最初は貯金を切り崩しながらでしたが、楽しかったですし、僕自身を支えてくれた大事な作品になりました。でも、大事って言ってもね、色々な大事があるじゃないですか、作品って、よく子どもに例えられるんだけれども。

三浦:分かる。よくありますね。

神永:嫁に出す感覚とかいう話も聞きますけど、原作者としての僕の感覚は、嫁に出すならもうほっとけ、なんですよ。嫁ぎ先で、うちの娘は大事にしてもらってるのか!とか、いちいち口出しする親にはなりたくないじゃないですか。

だからね、僕は三浦さんにのびのびと作っていただいて、その結果が幸せであればいいと思っているんです。作品にとっての「幸せ」って、一つじゃないですし。少なくとも、今回の舞台化で今まで『心霊探偵八雲』を知らなかった、もしくは名前は知ってたけど触れたことがなかった方に届くことがあるのだから、これは「幸せ」なことですよね。その後、原作がおもしろいのか、その舞台がよかったのかは、 読んだ人観た人が判断すればいいことなので。

僕の中での「特殊能力」の捉え方って「個性」なんです

――『心霊探偵八雲』も『確率捜査官・御子柴岳人』も、登場人物がとても魅力的ですが、神永先生はどのように登場人物を生み出しているのでしょう。

神永:これは後書きなどにも書いたことがあるのですが、モデルがいるんです。若い頃のバイト仲間なんですが、頭が良すぎて言ってることがちょっとよく分からない男がいたんです。小説家になってから久しぶりに彼に会ったんですけど、開口一番に言われたのが「小説家って、神永さん程度の知能レベルでもなれるんですね」でしたから(笑)。

幼い頃から八雲を知っている後藤和利刑事のモデルは、僕のサラリーマン時代の上司です。その上司はよく僕のことを“神”って呼んでいたんですけど、「神、これやっといてくれ」「お断りします」「てめぇ、ぶっ殺すぞ!」「どうぞ、やれるもんならやってください」みたいなやり取りをしていたのを、そのまま小説の中に活かしました。

佐野:え~!先生の周りの人、個性強すぎませんか(笑)。

三浦:先生の周りの方は、モデルに気づくのでは?

神永:『赤い隻眼』を書いた頃、人の評価が知りたいと思って、何人かに「これ、友達が書いた小説なんだけど、評価が欲しいんだって」って渡してみたんですよ。そうしたら、同じ会社の同僚は「これ書いたの、神永さんですよね」って100%気づきましたね。理由は、「会社の人がいっぱい出てくる」からでした(笑)。

――想像以上に忠実、ということなんですね。

神永:こんな人いないって思うでしょ?いるんですよ(笑)。世の中、変な人がいっぱいいるんです。

佐野:でも、ちょっと分かるかも。役者も、真面目なんだけどなんか変な人多いんですよ。でも、そういうのがないと面白くないんですから。

神永:やっぱり、人の話を聞くと新しい発見があるね。だから、今回の舞台でもいろいろ起きてくれないかと密かに思っているんですよ。誰かと誰かが、喧嘩したりしないかな、とか(笑)。

三浦・佐野:(爆笑)!!

神永:今度は、それネタに1本書くよ。

――いろんな創作の仕方があると思うので、神永先生のお話、とても興味深いです。

神永:僕はとにかく人の感性をいただくようにしているんです。いろんな人に話を聞いて、その内容とか考え方とかを 1回全部ウェルカムで受け入れて。「なるほど、こういう考え方もあるのか」と思いながら、作品の中に投影していく。

佐野:先生にお話したいろんなことが、いつかそれが小説になっているかもしれないんですね。

神永:作家だけじゃなくて、役者さんも人間観察すごくしているんじゃないかな。三浦さんも。無意識に構図切ってたりしませんか?

三浦:します!構図だけじゃなくて、台詞とかも。遠くにいる喧嘩中のカップルとかに、ずっと台詞を考えていたりします。

神永・佐野:(爆笑)!!

三浦:喧嘩してるように見えているだけで、もしかしたら全然違うことを話しているかもしれないじゃないですか。すごい取引をしているのかもしれない。そういうことを考えています。だから、なるべく喫茶店は窓の外に駅が見えるところに行くんです。駅ってめちゃめちゃいろんなことが起こるから。空港とかも。そういうところで、ずっと1人でアテレコしてるんですよ。

神永:すごく腑に落ちました。三浦さんの舞台を観た時に、立ち位置にすごくこだわりを感じたんですよ。これって、舞台ですごく大事な要素じゃないですか。そこに立つまでが大事。面白いもので、「ただその場所に歩いていっている」のか、「気持ちを持って歩いている」のか、こちらにも見えますからね。

三浦:人によっては、「行けない」「行きづらい」っていう役者もいますからね。こっちとしては、「行けよ!」と思うんですけど。(その場所に)行ける気持ちを作る、行けるようにそこに物語を作るのが、役者の仕事だろう!って(笑)。

神永:そういう現場、見てみたい(笑)。

――先生のお話を伺っていると、「普通」だと思っているけれど、みんな何かしら「特殊能力」を持っているんですね。

神永:そうですね。僕の中での「特殊能力」の捉え方って「個性」なんです。ただ、個性は周囲からの見え方や自分の感じ方によって「特技」にもなるし、それこそ「欠点」にもなりうるわけで。 『心霊探偵八雲』は、一人の青年が成長しながら、自分を受け入れていく話でもあるんです。これまでの本筋はそこでしたが、今回の物語はその一歩手前なので、また違ったアプローチになると思うんです。それを三浦さんがどう表現として見せていくのか、楽しみなんです。お客さんも、これまでのストレートプレイをご覧になってから観るとより楽しめるかも。

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斉藤八雲と御子柴岳人、不毛な2人の絡みが魅力的すぎるんですよね・・・絶対絡みたくないけど!

――三浦さんは今回、作・演出のお話が来た時はどのように作品を捉えられましたか?

三浦:先生の書かれた短編を読ませていただいた時に、よくよく考えると、バディものって男性ものの方が圧倒的に多いなと思って。2人で喧嘩しながらも、仲良くなって高めあっていく、その構造自体が女性の間にはあんまりない感覚のような気がしたんです。女性の間では、喧嘩する前に「そうだよね」って落としどころを自分の中でつけていることが多いと思うんです。そういうところからして、私は「斉藤八雲と御子柴岳人」をどう見るんだろう。

そう考えた時に、私が考えられるのって、二人と同じ大学の教室にいるクラスメイトの視点なんですよ。きっと私が彼らを見ていたら、ちょっと羨ましいって思う。御子柴っていうすごくて変な先生と普通にしゃべることができて、目つけられている八雲がちょっと羨ましい。私の視点はそこにあるんだろうと思います。

――まさに、先生がおっしゃっていた男性と女性の見え方の違い、ですね。

三浦:もっと言ってしまうと、不毛な2人の絡みが魅力的すぎるんですよね。絶対絡みたくないけど!あんな面倒くさい人たちいない、何をしゃべっているのかきっと近くにいたらよく分からない(笑)。そういう2人を取り巻く空気も、ちゃんと舞台でも描きたいです。

神永:この感覚の違いは、やっぱり面白いですね。知り合いの女性が「何を言っているのかさっぱり分からない彼氏なんだけど、そこが素敵」と言っているのを聞いたんです。彼氏は理系、女性は文系なので、言っていることの 99%が分からないんですって。でも、それがキュンキュンするって聞いて、なるほど分からん、と思ったことがあります。でも、女性は知性に惹かれるところがあるのかな。

三浦:その感覚の違いって、恋愛の好みに結構出るのかも。

神永:恋愛とは違うと思いますが、僕の作品って女性ファンが多いんですよね。これはまったく意図していなくて。狙ってないんですが、女性が好んでくれるという結果は、多分僕が女性の感覚の方を多く取り入れているからなのかも。

というのも、男子ってなかなか本音を言わないんですよ。若い男子とかにもいろいろ取材しようとするんですけど、させてくれない。恋バナとかを聞いても、男子は見栄を張ってしまうのか、嘘が混じるんです。

佐野:先生にはバレてる(笑)。

神永:大体の人が「僕はもうとっくに割り切ってる」って言うんですけど、こっちが聞きたいのはそこじゃなくて、割り切る前に泣いた話なんですけど、まぁ、教えてくれない。

三浦:え~!私だったら率先してしゃべりたい。

神永:ぜひ一度じっくり聞いてみたいですね。

三浦:浮気をした人に、どうやって「浮気したでしょ」って言ったら一番効くか、考えながら3年間を過ごした私の戦いを聞いてほしいです!

佐野:(爆笑)!!

神永:これは小説になりますね(笑)。

人の視点を入れれば入れるほど、八雲と御子柴の関係性が浮かび上がってくる

――感覚の違いがどう作品ににじむのか、とても楽しみですが、今回は舞台のオリジナル要素も多く追加されると伺いました。

三浦:はい、先生からの優しいお心遣いで!

神永:原作が短編ですから、オリジナル要素を加えないと40分~50分ぐらいにしかならないんですよ。違う短編を持ってきて3本立てにするのか、それとも1本を膨らませるのか。膨らませるという判断ならば、絶対にオリジナル要素は必要になります。僕が台本を書くとしても入れます。なので、「逆にどうぞ」というところにどんな要素が入るのか、僕も楽しみなんですよ。

三浦:先ほどお話したように、人の視点を入れれば入れるほど、八雲と御子柴の関係性が浮かび上がってくると思うので、今はその方向で考えさせていただいています。そして、ミスリードをさせるような、撹乱をしていかないといけませんよね。1回観てくださった方が、2回目に観る時にまったく 違う見え方になるように、狙っていきたいと思っています。

――佐野さんは、初めての三浦さん演出、そして友情出演として御子柴岳彦役という、今までの『心霊探偵八雲』とは違う役でのご出演になりますが、その点は?

佐野:三浦さんとは、以前からお会いしていましたし、お芝居も拝見させていただいていて。舞台上の仕掛けもさることながら、セットの細部から照明の入れ方まで、細かいところにすごくこだわりを感じてきました。だから、今回の『心霊探偵八雲』は三浦さんが演出をされると聞いた時は、これまでとは世界観がガラッと変わるなと。新しく生まれ変わる作品にまた関われるというのは、すごく楽しみであり、嬉しかったです。新しい役については、どこまで触れるか、手探りではありますが。原作では台詞ゼロなんですよね?

神永:これは、小説と舞台の表現の違いが出ているところですよね。僕も、舞台用の台本として書くなら、さすがに台詞を入れます。小説って視点人物が特定されるんですよ。八雲を中心に物語が動いているの、八雲が見えていないことは、周りはまったく伝わらない。そう考えると、台詞が出てこないんですよ。

佐野:舞台ではしゃべる、はず(笑)!

――『心霊探偵八雲』なので、心霊表現も気になるのですが、一番演出家さんの表現の違いが現れそうな気がしています。

三浦:その攻め方はどうしようか、いろいろ相談しながらやっていきたいと思っているんですけど。

神永:ストレートプレイの演出をしてくれた伊藤マサミくんは、確か、歩き方を指導してましたね。幽霊だけ歩き方変えていた気がします。

三浦:なるほど、歩き方か。

神永:三浦さんの場合は、視覚でもすでに訴えかけてきていたので、確認が来た時に「なるほどね、 その発想は僕の頭では絶対に思い浮かばない」と思わされました。皆さん、舞台上の色の遣いにも注目ですよ。

実直実現!謎の肉体派カンパニー誕生の予感

――「特殊ミステリー歌劇」では、キャスト陣の顔ぶれも新しくなりましたが、今回の座組についての印象は?

三浦:私は8割方知っている顔ぶれなんですが、全員性格がいいですよ。で、全員芝居が好き。突き詰めていく現場になるだろうな。そして、こちらが思い描く絵、やりたいことをめちゃくちゃ理解してくれる、信頼の置ける人たちなので、私としてはありがたい座組です。

神永:じゃ、現場で事件は起きないんですね?

佐野:いやいや、起きますよきっと!すぐ電話します(笑)。

三浦:いろいろ、変なことは起こると思います(笑)。例えば、努力をしすぎる立花(立花裕大)とか。(役の方向性として)「そっちじゃない!なんでそっちにいくんだ」「そういうことじゃないよ!」って言われている姿とか、想像できます。

佐野:頑張りすぎる事件ですね。そんな子なんですか(笑)。会うのが楽しみ。

三浦:前に『ブルーピリオド』The Stageという作品で一緒にやった時、彼は強面だけど将来パティシエになりたいという夢を持つ男を演じていたんですよ。その夢を持って、親友を応援するシーンがあったんですが、最初「情熱が一切伝わってこないよ!」って私が言って、冗談で「お菓子作ったことないでしょ?だったら、明日までにフルーチェの1つでも作ってみなよ!」って言ったら、本当に作っていたらしくて。

佐野:めちゃくちゃ真面目じゃん!

三浦:しかも、それを立花本人から聞くんじゃなくて、他の人から伝え聞くっていうね・・・面白くないですか(笑)。

神永:なんだか僕も稽古場に行ってみたくなりました(笑)。

三浦:飯塚皇翔役の郁巳(井阪郁巳)もそんな感じの子だから、もう、化学反応しか起きないと思うんですよ。

佐野:みんな、言われたことを実直に実現する謎の肉体派なカンパニーになる気がしますね(笑)。

――「特殊ミステリー歌劇」として、『心霊探偵八雲』がどう生まれ変わるのか、いろんな意味で楽しみです(笑)。

神永:そうですね!とにかく観に来てください。新しく生まれる八雲を、私と一緒に楽しみましょう。

佐野:歌劇、がんばります!よろしくお願いします。

三浦:(上演の)発表があってから、いろんな人からも「なんで出してくれなかったんだ」ってクレームがすごくたくさん来たんですよ。そういう方々に、納得していただけるような新しい『心霊探偵八雲』を提示できるような座組を目指していこうと思います。ぜひ、ご期待ください。

(取材・文/エンタステージ編集部 1号)

\ストレートプレイ3作はDMM TVにて配信中!/

舞台版『心霊探偵八雲 いつわりの樹』

   舞台版『心霊探偵八雲 祈りの柩』   

   舞台版『心霊探偵八雲 裁きの塔』   

特殊ミステリー歌劇『心霊探偵八雲』-思考のバイアス- 公演情報

上演スケジュール

2023年3月2日(木)~3月21日(火・祝) 東京・Mixalive TOKYO Theater Mixa

<チケット>
【一般発売日】2023年2月12日(日)10:00~

【チケット料金】
プレミアムシート:15,000円(全席指定/税込)
1階席:9,000円(全席指定/税込)
2階席:8,000円(全席指定/税込)※未就学児入場不可
1階立見:7,000円(税込)
2階セミスタンドシート(P列):7,000円(税込)
2階立見(Q列):7,000円(税込)

スタッフ・キャスト

【原作】神永 学「心霊探偵八雲INITIALFILE魂の素数」(講談社刊)
【脚本・演出】三浦 香
【作詞】堤 泰之、三浦 香
【音楽】KYOHEI
【振付】IYO-P

【出演】
斉藤八雲役:後藤 大
御子柴岳人役:笹森裕貴

矢口役:永田聖一朗
飯塚皇翔役:井阪郁巳
中谷役:健人
右手川役:吉澤 翼
左近字役:長塚拓海
花菱役:江副貴紀
角田役:Rayshy
丸山役:轟 大輝
水川役:齋藤かなこ
亜紀役:菊池和澄
飯塚万里役:阿部紗英

後藤和利役:立花裕大

御子柴岳彦役:佐野大樹(友情出演)

【公式サイト】https://yakumo-stage.jp/
【公式Twitter】@stage_yakumo

(C) 神永学・講談社/歌劇「心霊探偵八雲」製作委員会




特殊ミステリー歌劇「心霊探偵八雲」座談会!神永 学×三浦 香×佐野大樹「感覚の違いが生む新しい八雲像に期待」

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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