音楽座ミュージカル35年の軌跡!高野菜々×土居裕子インタビュー「ライブでの夢の共演が実現」

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音楽座ミュージカル35年の軌跡!高野菜々×土居裕子インタビュー「ライブでの夢の共演が実現」

2022年2月20日(日)に東京・eplus LIVING ROOM CAFE & DININGにて、高野菜々ファーストアルバムリリース記念ライブ『プリズム』が開催される。高野は、2008年に『マドモアゼル・モーツァルト』で主役・モーツァルト(エリーザ)役をつとめ、その後『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』折口佳代役、『7dolls』にんじん役、『リトルプリンス』王子役、花役など、主要な役どころを常に担ってきた。

そんな彼女が「憧れてやまない存在」に挙げるのが、同団体の先輩でもある土居裕子。今年、東宝版『リトルプリンス』で王子役を務めるなど、退団後も縁の深い土居と、高野は「いつか共演したい」と夢見ていたという。

ライブのゲストという形で叶った夢のステージ。すでに会場チケットは完売しているが、配信も決定した。今年で35周年を迎える音楽座ミュージカルの、時が交わる瞬間に向けて、二人に話を聞いた。

(取材・文/エンタステージ編集部 1号、写真/オフィシャル提供)

――高野さん初のアルバム発売&ライブ開催ということで、おめでとうございます。昨年末の広島でのライブに続き、東京での開催も間近に迫ってきました。

高野:ありがとうございます!故郷である広島では何度かライブをやらせていただいていたんですが、ソロライブ自体は2回目、東京では初めてやらせていただきます。ドキドキすぎて心臓が持つかなと思うぐらい、今から緊張しています(笑)。

――東京公演はすでに会場チケットが完売しており、配信も行われることが決まっていますね。

高野:ライブを配信されるのは初めてだし、ゲストの方に来ていただくのも初めてで・・・!偉大な先輩である土居さんと、畠中祐さんにゲスト出演していただけて、共演できることが夢のようであり、奇跡のようです。

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――今日は憧れの土居さんとたくさんお話をしていただこうと思うのですが、まず、故郷・広島でのライブを終えてどんなことを思われましたか?

高野:広島では2010年からほぼ毎年音楽座ミュージカルの公演を行っていたんですが、コロナの影響で2019年以降できていなかったんです。個人的に思い入れのあった最新作『SUNDAY(サンデイ)』も、実は広島での上演予定があったのですができなくなってしまって。ライブで約2年ぶりに故郷の人たちの顔を観ることができて、改めて私の原点はここだと実感しました。

――高野さんがミュージカルへの道に進んだのも、広島での“ある出会い”がきっかけだったんですよね?

高野:私、もともと『CATS』を観てこの世界に憧れて・・・。最初は劇団四季に入りたかったんです。その後ひょんなことから宝塚を目指したんですけど、結果はダメで。私がミュージカルの道に進む未来はもうない・・・と思っていた時に、広島交響楽団さんと新妻聖子さん、今井清隆さんがコラボレーションするコンサートに、バックコーラス・バックダンサーとして出させていただいたんです。

その時、新妻さんが「あなた輝いていたわ!」と声をかけてくださって。嬉しくて新妻さんのことを調べていったら、音楽座ミュージカルと出会うことができました。

土居:菜々ちゃんのことは、私も新妻さんから聞いていたんですよ。「すっごく素敵な子がいたんだ~」って。菜々ちゃんは、今のミュージカル界を見渡してもトップクラスの歌唱力を持っていると思います。ただ「上手い」だけじゃなくて、音楽座ミュージカルのスピリッツがある。心をぐわっと解き放つことに毎回チャレンジしているのが伝わってくるのね。そのひたむきさに私もすごく魅力を感じています。

――土居さんと高野さんは、音楽座ミュージカルの先輩と後輩になりますが、演じていらっしゃる役の変遷が似ていますよね。

高野:私、音楽座ミュージカルに入ってから初めて経験した作品が『マドモアゼル・モーツァルト』だったんです。初舞台で主演をさせていただけるなんて、ほかでは絶対ありえないことだと思うんですけど(笑)。その時、映像で土居さんのモーツァルト役を何度も何度も観ました。

観て、同じ役を経験して、オリジナルキャストが作品をゼロから作り上げていく姿は何にも代えがたいものなんだなと改めて思いました。私も土居さんに憧れると同時に、オリジナルミュージカルを作っているカンパニーにいるからこそ、「ゼロ」から様々な作品を作り上げていきたいなと思っています。

土居:私にとって音楽座ミュージカルは育ててくださった場所ですから。「育ったのが音楽座ミュージカルでよかったな」といろんなお仕事をさせていただく中で感じています。東宝版の『リトルプリンス』をやっている時も、井上芳雄さんに「土居さんっていつも100%だね」って言われたんです。自分でもいつも言ってるんですけどね、「私は全力でやるしか、方法を知らないから」って。

私ね、音楽座にいる時はいつも「お前は100出さないとクソみたいな役者だ」って言われていたの(笑)。「いつでも初日のような気持ちでやれ」と言われ続けていたから、それは今も心の中にあります。私が音楽座に教えてもらったことは、すべて後輩の皆さんが受け継いでる。井上さん、「この間『7dolls』の配信を観たんだけど、やっぱりみんな全力だった!」とも言ってましたから(笑)。全力で心を動かす、これが今も昔も音楽座の魅力なんですね。

――高野さんのアルバムには、そんな全力の音楽座ミュージカルさんが歌い継いできた名曲がたくさん詰め込まれていますね。

高野:音楽座ミュージカルに入団してから14年目にしてファーストアルバムなので、19歳で入団してからここまでの時間を、音楽座ミュージカルの楽曲を通して一つの物語にしたいなと思って、並びも含めて選曲させていただきました。

土居:私も聞くのがすごく楽しみです。きっと、菜々ちゃんの想いが乗ることで、どれも菜々ちゃんらしい楽曲になっているだろうから。

高野:ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。私、スランプという迷いの森に入っていた期間が10年くらいあったんですよ。「これからどうやっていったらいいんだろう?」って、なかなか希望を見出せない時期が長くて・・・。そういう悩みも、転機も、楽曲や作品に入っているメッセージに乗せて、聞いていただいた方が「明日からもがんばろう!」って思っていただけるものにしたい。アルバムは、そんなコンセプトで作りました。

――高野さんは、土居さんとずっと共演したいと思ってたと伺いました。

高野:はい。2016年に、音楽座ミュージカルの創設者で創立から亡くなる直前まで音楽座ミュージカルの創作の中心にいた相川レイ子の追悼公演『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』で、カーテンコールの「特別イベント」に土居さんが来てくださったんですが、一緒にお芝居をできたわけではありませんでした。

「特別イベント」では、「公園のシーン」をやってくださったんですが、そのお稽古でお佳代役を演じる土居さんを直接目にした時、「なんて自由なんだ!」と衝撃を受けたんです。これまで映像でもたくさん拝見してきたんですけど、それを観て「どうしても面と向かって心を通わせていただく時間を持ちたい」とずっと夢見ていたんです。なのでゲストをお招きしようと決まった時、真っ先にお声がけさせていただきました。

土居:そんな風に言ってもらえてすごく嬉しいし、きっと上手くいくというのは、なんかもう分かってるんです(笑)。

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――土居さんにはソロ1曲、デュエット2曲でご参加いただくんですよね。

高野:はい。そして実は・・・少しですが、一緒にお芝居もさせていただきます。土居さんが出てくださることになって、真っ先に頭に浮かんだのが『ホーム~はじめてテレビがきた日~』という作品の中で、坂本いずみ先生と教え子の広子が河べりで話をしているシーンでした。

このシーン、私はどちらの役も演じたことがあるのですが、自身の“生きる糧”になっていて。土居さんの演じたいずみ先生を映像で拝見した時も、無常を感じる中でも生きていく強さなどを画面越しでも強く感じたので、どうしてもそのシーンを一緒にやっていただきたくてお願いしました。

土居:『ホーム~はじめてテレビがきた日~』は、この作品をやったあとに音楽座ミュージカルが一旦クローズすることが決まっていたので、私も1回しかやっていないんですよね。だけど、なかなか好きな作品だったなという想いがずっと残っていました。菜々ちゃんとお芝居をすることが決まって改めて台本を読んだら、いろいろ思い出しました。菜々ちゃんとの年齢の開き方も役と合っている気がするし、一緒にやれることがとても嬉しいです。

――ほか2曲は?

高野:『マドモアゼル・モーツァルト』からは「朝焼け」を一緒に歌っていただきます。音楽座ミュージカルの作品の中で、女性二人で歌う楽曲ってあまりないんですよね。だから外せないなと思って。もう一曲は『リトルプリンス』から「シャイニングスター」です。やはり、今一番聞きたい曲だと思って選ばせていただきました。

土居:「シャイニングスター」は、今、唯一ちゃんと歌える楽曲かも(笑)。どの曲も、昔のお客さんも、今のお客さんも「わ~!」って喜んでくれるんじゃないかな。

高野:私、土居さんにいろいろ伺いたいことがあって。『ホーム』のいずみ役の時も、『リトルプリンス』の王子の時もめちゃめちゃ悩んでいたと聞いたんですが。

土居:そう!めちゃめちゃ悩んでました。『リトルプリンス』なんか、悩みすぎて変なことをやった時があってね。

高野:えっ、何をされたんですか?

土居:王子を「クレヨンしんちゃん」のイメージでやったことがあるんです。ふざけてじゃないですよ!役のことが分からなくなりすぎて。最初の方はよかったんですけど「頭が悪い子みたいに見える」って言われて。自分もやりながら、「これは最後の方につながらないな」と思ってました(笑)。

なかなか役が掴めなくて、それほど悩んでいたんです。でも、周りに「クレヨンしんちゃん風に演じてみよう」と相談したことはなかったの。でも、終わったあと誰かに「・・・クレヨンしんちゃんイメージしてる?」って聞かれちゃって(笑)。

高野:(笑)!でもそれ、ある意味ハマってたんですね。

土居:とは言ってもダメだよね(笑)。それぐらい試行錯誤した役だったの。それでね、実は最近、LINEのスタンプで「クレヨンしんちゃん」がおすすめで出てきたので、何の気なしに買って使ってたんです。なんでこれ買おうと思ったんだろう?とある日考えていたら、「あっ、私クレヨンしんちゃんで王子様を演じたことあった・・・!」と思い出しました(笑)。

――オリジナルミュージカルで演じるということの苦労がよく分かる思い出を教えていただきました(笑)。

土居:今でも、音楽座ミュージカルは『7dolls』などゼロからの作品作りを続けていますけど、その工程の大変さはよく分かります。

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――ちなみに、高野さんはライブのあとに文化庁の令和3年度新進芸術家海外研修員として、1年間ニューヨークに行かれることが決まっていますよね。

高野:そうなんです。日が近づく今、音楽座ミュージカルの中に生きられないんだなと思うと正直ちょっと不安で。寂しいというよりも・・・食べ物がなくなってしまうぐらいの感覚です。でも、行く前にこのライブができることは、すごく大きいです。

ニューヨークでは、しんどいこと、つらいことをできる限り経験してこようと思っています。なるべく自分を崖っぷちに追い込もうと思って。そのためにも、これまで出会ってくださった方、今応援してくださってる方々にコンサートを通じて感謝をお伝えしたいなという思いがあります。

土居:菜々ちゃんもきっと、ニューヨークでいろんなことを経験して、すごく頼もしくなって帰ってくるんだろうなと思ってます。技術がめちゃくちゃ伸びるとか、そういうことももちろんあると思うけど、経験って心の栄養であり何にも代えがたい宝だから。私自身もここまで生きてきてすごく思うの。

高野:ありがとうございます・・・!

土居:そして、菜々ちゃんが帰ってきたら菜々ちゃんたちが作り上げた『SUNDAY(サンデイ)』をもう一回上演してもらいたいですね。

高野:ニューヨークに行くにあたって、何か目標、ミッションを自分の中で持たないといけないなと思っていて。もっと大きくなって帰ってこれるようにがんばります!

土居:でもね、あんまりそんなこと思わなくていいのよ。めっちゃくちゃ傷ついても、後で考えたら「よかった、あの時傷ついて」って思うから。それよりも、一歩踏み出そうと思って、踏み出さなかった方がものすごく後悔するから。踏み出して、結果的に失敗って言われても、長い目で見ればいつか繋がるものだっていつも思うので。あんまり遠慮せずにガンガンいってほしい。

高野:当たって砕けろ、ですね。

土居:そう!がんばってね。

――音楽座さん35周年は、エースの高野さん不在の年になりますが、それぞれにどんな変化が生まれるか楽しみですね。

高野:35周年の始まりは、『JUST CLIMAX(ジャストクライマックス)』という音楽座ミュージカルの物語を集めて再構築した作品から始まるんですが、その次に控えているのがこのライブです。音楽座ミュージカルの基礎を作ってきてくださった土居さんとご一緒させていただくのは、奇跡であり夢のようなコラボレーションなので、そのスパークする瞬間をぜひ映像からも感じていただけるよう、真心込めて歌いたいなと思ってます。

土居:まずは、菜々ちゃんのありのままをお客さんに楽しんでいただきたいですね。そして、何十年かの時を越えて、彼女の母のような存在の私が一緒のステージに立たせていただけることも素晴らしい出会いだし、私もコツコツと続けてきた甲斐があったなと思いますし。これからの音楽座の発展もお祝いしながら、昔のお客様も、今のお客様も、昔からずっとのお客様も、初めて見てお客様になろうとしてる人たちも、みんなに楽しんでいただけるようなライブになるといいし、したいですね。

高野:なんか泣きそうです、まだ始まってないのに(笑)。

目次

高野菜々ファーストアルバムリリース記念ライブ『プリズム』

日時・場所

2022年2月20日(日) 東京・eplus LIVING ROOM CAFE & DINING
【1回目】open 13:45/start 14:30
【2回目】open 17:45/start 18:30
出演:高野菜々 ほか 演奏:高田浩/金子浩介/田島朗子
ゲスト:土居裕子(1回目)/畠中祐(2回目)

配信チケット

生配信&アーカイブ視聴:2,200円(税込)
申込:イープラス https://eplus.jp/kounonana0220/

【音楽座ミュージカル公式サイト】http://www.ongakuza-musical.com/

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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