植田圭輔と石田明(NON STYLE)のW主演で上演される舞台『トキワ荘のアオハル』が、2021年11月3日(水・祝)・11月4日(木)の2日間、東京・芸術劇場 プレイハウスにて上演される。本作は、漫画家・手塚治虫など昭和を代表する漫画家たちが、若手時代に暮らした実在のアパート「トキワ荘」をモチーフに、ある大学の学生寮「トキワ寮」で夢を持った若者たちを描いた作品。久馬歩と寺本覚の脚本・演出のもと、植田、石田のほか、お笑い芸人たちが多数出演し、コメディを盛り上げる。
「アオヅカハルオ」のペンネームで多くの漫画賞を獲得し、“新人賞あらし”と呼ばれる二人組を演じる植田と石田、そして脚本・演出のひとり久馬に、公演に向けて話を聞いた。
あらすじ
豊島芸術大学の学生寮「トキワ寮」。
漫画家、声優、ミュージシャンなどを夢見る若者たちが今日もにぎやかに暮らしている。
かつて同区に存在した伝説の「トキワ荘」のように夢をもった若者が才能をぶつけあう場になってほしいという願いから命名されたが、中には「トキワ荘」と間違えて入ってくる学生もいるとか。
その中には”アオヅカハルオ”のペンネームで多くの漫画賞を獲得し、”新人賞あらし”と呼ばれる二人組がいた。現役大学生漫画家として名を広め、デビューも決まっていたが卒業を前に「1年間は好きなことをやろう」と青塚がコンビ活動休止を提案。
二人で住んでいた1つの部屋には仕切りができる。そんな時、大学のキャンパス移転にともないトキワ寮の閉鎖話が浮かび上がって・・・。
「相方が出来ることに誇り」植田圭輔、石田明の間に見える信頼感
――植田さんと石田さんは、共演がとても馴染んできましたね。
石田:何回か共演させていただいていますけれども、植田くんは毎回それから「どんだけ舞台に出るの?!」っていうくらいいろんな作品をやっていますし、僕もいろいろ経験してきたので、今回もお互いの得てきたものを見せ合いっこできたらなと思いますね。
植田:僕は「芸人さん」は尊い存在だと思っているので、今回、共演者の皆さんのそうそうたる顔ぶれを観て萎縮しちゃいそうになったんですけど、今回はご一緒したことのある石田さん、演出の久馬さんがいてくださったのでほっと胸を撫で下ろしました。
石田:いやいやいや(笑)!
植田:今回、石田さんの相方・・・コンビ漫画家という関係なんですけど、相方って言っていいですよね?石田さんとそういう関係性の役をやらせていただけるのはとても誇らしく思っております。
――久馬さんはお二人とこれまでも作品作りをされていらっしゃいますが、お二人にどんな印象を持たれていますか?
久馬:何よりも舞台慣れしているお二人だし、お芝居の良さは言わずもがなですよね。ただ、この『トキワ荘のアオハル』は学生寮のお話なんですよ。二人に演じてもらうのも、現役大学生漫画家ということで、石田が大学生に見えるかが・・・。石田単体で見たら、まだいけるかなと思っていたんだけど、植田くんと並ぶとね。
石田:そうですよ、何考えてるんですか!久馬さん、俺もう41ですよ、そりゃあ無理がありますよ。寮母役をやるしずちゃん(南海キャンディーズ)と同年代なんですから(笑)。
久馬:そこは気にせずね(笑)。観てくださる方々にも意識しないで見ていただけたら。
植田:あはは(笑)。
「キッカケ台詞を言っても、戻ってきちゃうんじゃないか」
――お二人は、久馬さんの演出をどう見ていらっしゃいますか?
石田:久馬さんは、僕の中では稽古嫌いな方です(笑)。ある程度、完成形が見えてくると「もう大丈夫かな・・・」って稽古を終わらせちゃうんですよ。それは、芸人からすると「ラッキー!」なんですが、役者の子たちはビビるみたいです。
植田:ビビリます、マジで。でも、石田さんや芸人さんたちと共演する機会をいただく中で、だんだんと僕も「ラッキー!」側の人間になりつつあります(笑)。
久馬:僕は、演じる立場の時も「なんとなく覚えたぐらいがちょうどいいな」っていうのがあって。役者さんと違って、芸人さんはどれだけ稽古をしても、本番でしか力を出してくれないんですよ。稽古を早めに切り上げるのは、期待しているからこそ、信頼しているからこそ、ということです。ははは(笑)。
――今回も、手練の芸人さんが多い座組ですからね(笑)。
石田:そうなんですよ。台本見た時、まず思ったのが、アドリブぶち込まれるところ多そうだな・・・でした。河本準一さん(次長課長)とか、竹若元博さん(バッファロー吾郎)とか、恐ろしい逸材が揃っちゃってますから。前に久馬さんとやった舞台で、もともと1時間半の舞台が3時間以上になった伝説の公演があるんですよ。そうならないか・・・というビビりがすでにちょっとあります。
大前提として、ちょっと伸びるの覚悟して観に来てもらった方がいいかもしれない。3時間以上になった舞台も、台本でいうとそんなにページ数の多いものじゃなかったのに、そうなったから。
植田:進みましょうって、いくらキッカケ台詞を言っても「戻ってきちゃうんじゃないか」って思う節がありますよね。「いいから!今が笑いの瞬間だから!」って。ほんまにおもろいんですけど、そこに自分がちゃんと対応できるかが心配(笑)。僕も台本を読んだ時、いくらでも挟み込める隙間を感じたので、これはがんばらなければいけないなと思いました。
石田:僕ら、「主演」って言ってもらってますけど、ほんとの役割は「整体師」みたいな感じだと思うんですよ。
植田:あ~、物語からズレたところを戻していく、みたいな。
石田:それがほんとの僕らの役割(笑)。
圧倒的な頭の回転力――芸人さんはやっぱりすごい
――植田さんは芸人さんを「尊い存在」とおっしゃいましたが、芸人さんたちの「役者」としての顔はどのように映っていますか?
植田:舞台上での、圧倒的な頭の回転力がすごいんですよ。さっきの稽古の話もそうですけど、僕ら役者って、決まっていることや制約のある中でどれだけのことができるかを考えるんです。だから、0から何かをやってくださいって言われたら、出来ることって本当に少ない。出来るようになりたい、出来ることを増やしたいと個人的には思って取り組んでいるんですが、発展のさせ方とか爆発力は、なかなか真似できることではないので。芸人さんはやっぱりすごいって思います。
久馬さんと石田さんとは、2018年にやった『モニタリンGood!~それが大事~』という作品でご一緒させていただいていたんですけど、あの時も芸人さんに囲まれてそのすごさを痛感したので、きっと今回も・・・。そういえば石田さん、『モニタリンGood!~それが大事~』で共演させてもらったさらば青春の光の森田(哲矢)さんと、あれからお仕事をさせていただく機会が多くなって。おかげさまで、今、一緒に日本モルック協会のアンバサダーをやらせていただいています。
石田:えっ、そうなの?!
植田:その節は、ご縁を繋いでくださってありがとうございました。
石田:いやいや。ちなみに、俺はまだモルックのルールがよく分かってない(笑)。
植田:(笑)。
――石田さんは、役者さんとして舞台に立つ時のと、芸人さんとして舞台に立つ時の違いってどのように感じていらっしゃいますか?
石田:そうですね、一番考えるのはワードチョイスかなあ。芸人の比重を増やして考えるとワードチョイスの幅を広げられるんですけど、演劇として冷めてしまうこともあるので、そのバランスを取るのが難しいんですよね。現場ごとにも違いますし。でも、久馬さんの作る舞台はそのあたり、だいたいOKなので楽しいですね。久馬さん、そのへんは今回もOKですか?
久馬:OKです。今回もまた、稽古時間は少ないので、信頼しておまかせする部分は多いです。
――(笑)。久馬さんは、皆さんの個性を活かしつつ、どんな演出でこの物語を見せようと思っていますか?
久馬:この作品の舞台は大学の学生寮で、そこでは「トキワ荘」と同じように夢を持った大学生たち暮らしているんですね。僕はもともと「トキワ荘」の持つエピソードが好きなので、実際の要素をうまく舞台の物語とコラボさせられたらなと思っています。
“大人のアオハル”を思い出してくれるきっかけになったらいい
――「トキワ荘」と「アオハル」という言葉は、ぴったりですよね。ちなみに、皆さんにとって「アオハル」は何と結びつきますか?
石田:僕は「baseよしもと」ですね。あそこで、日々揉まれながら喧嘩しながらやっていた、そんな頃のことが、先輩と話していても後輩と話していても何かと出てくるんですよ。M-1優勝とかも僕の中ではすごい思い出なんですけど、僕のアオハルは「baseよしもと」に詰まってるんですよね。
植田:僕は・・・役者やってたら、一生アオハルやなって思うんですよね。
石田:うわ~出た!太字や、太字のやつ出たわ。ええな~。
植田:そんなことばっかり考えて・・・ツッコミなかったら言わなかったんですけど(笑)。でも本当に、学生時代というよりは、バイトしながら舞台をやればやるほど生活が回らなくなって、「こんなんしに東京来たんちゃうねん!」とか、先輩や仲間内に愚痴っていた時が、なんやかんや青春だったのかなって思いますね。久馬さんはどうですか?
久馬:アオハルね~・・・。20年以上前になるんですけど、コンビ組んでた頃、「マンスリーよしもと」というお笑い情報誌があったんですよ。トーナメントを勝ち抜いた時かな、そこに初めて載ったのが嬉しくて。東京の方には距離感が分かりづらいかもしれないんですが、当時住んでいた岸和田から、相方がプールの監視員をやっていた高槻まで急いで行って、そのプールの柵越しに「載ったぞ~!」ってやったことかなあ。
石田:それはアオハルやな~(笑)。
植田:絵に描いたようなアオハル出ましたね(笑)。
――この作品を観たら、アオハルを思い出したり、夢について考えたり思い出したりすることがありそうです。
石田:今って、挫折しやすい時代になってしまったと思うんですよね。すぐに叩かれたり、状況が整わなかったり、ライバルをすぐ見つけてしまったりとか。そういうことが多い中、そうじゃない、ちゃんと自分の持ってるものは通用するんだ、夢ってそんな簡単に諦めなくていいんやでって、軽くでも後押しできるような作品になったらいいですよね。そして、生の舞台、生の笑いは何よりのストレス発散になるって思ってもらえたら最高ですね。
植田:僕が演じる役は、石田さんが演じる相方に「二人でなければ意味がない」「どっちかの才能だけじゃ無理なんだ」って、まっすぐに言い切ります。こういう時代だからこそ、シンプルでストレートなものが一番心に届くと、僕は勝手に思っています。物語に散りばめられた大学生たちの「THE アオハル」と「笑い」を観て、もうちょっとがんばってみようと思ったり、ただただ楽しんでもらえたらいいなと思います。
久馬:まずは、このご時世に芝居ができることをありがたいと思います。舞台が好きな方も、お笑いが好きな方はもちろん、「トキワ荘」の時代を知っている方にも楽しんでもらえる内容になっていると思うので、ある程度人生経験を積んだ方とか、仕事が軌道に乗ったり一段落した方も、「そういえば、やりたいことがあったな」と思い出してくれるきっかけになったり、“大人のアオハル”に向かってもらえたらね。・・・これは太字にならない?
植田:(爆笑)!!
石田:顔がヘラヘラしてるんでなりません(笑)!
※太字にはなりませんでしたが、小見出しにさせていただきました!
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
舞台『トキワ荘のアオハル』公演情報
上演スケジュール
2021年11月3日(水・祝)~11月4日(木) 東京芸術劇場 プレイハウス
【脚本・演出】久馬歩/寺本覚
【出演】
植田圭輔
石田明(NON STYLE)
松島勇之介
竹若元博(バッファロー吾郎)
河本準一(次長課長)
矢部太郎(カラテカ)
しずちゃん(南海キャンディーズ)
坂本純一(GAG)
福井俊太郎(GAG)
宮戸洋行(GAG)
松浦志穂(スパイク)
小川暖奈(スパイク)
太田夢莉
西村竜哉
福田転球
※11月3日ゲスト出演:天竺鼠、11月4日ゲスト出演:野性爆弾