植田圭輔と石田明がコンビ漫画家になって夢を追う――舞台『トキワ荘のアオハル』レポート

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植田圭輔と石田明(NON STYLE)のW主演舞台『トキワ荘のアオハル』が、2021年11月3日(水・祝)に東京・芸術劇場 プレイハウスにて開幕した。本作は、数多の著名な漫画家を排出した伝説のアパート「トキワ荘」をモチーフにした、現代コメディ劇。初日公演後には、植田と石田、そして河本準一(次長課長)、しずちゃん(南海キャンディーズ)、脚本・演出のひとりである久馬歩が取材に応じた。

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物語の舞台は、豊島芸術大学の学生寮「トキワ寮」。かつて同区に存在した伝説の「トキワ荘」のように、夢を持った若者が才能をぶつけ合える場に・・・という願いを込めて名付けられたこの寮には、漫画家や声優、ミュージシャンなどを夢見る若者たちが夢を追いかけながらにぎやかに暮らしていた。

その中に、「アオヅカハルオ」のペンネームで、“新人賞荒らし”と呼ばれるほど多くの漫画賞を獲得する二人組がいた。“アオ”(石田)と“ハル”(植田)と呼び合う二人は、現役大学生漫画家として頭角を現しデビューも決まっていたが、卒業を前に、突然“アオ”が「1年間、お互いに好きなことをやろう」と、コンビ活動を休止したいと申し出た。

二人で住んでいた一つの部屋には、仕切りができた。そんな時、大学のキャンパス移転に伴って、トキワ寮が閉鎖の危機に陥る。トキワ寮を守りたいと立ち上がる住人たちだったが、アオとハルはぎくしゃくしたままで・・・。

石田、植田が牽引する芝居と、何を起こすか分からない芸人たちの底力。それぞれの良さをリスペクトしているから生まれる空気がとても心地よい。どこまでが台本どおりなのか分からなくなるアドリブの応酬、大喜利大会(?)、爪痕を残す日替わりゲストのインパクトなど、てんこもりの笑いが詰まった作品に仕上がっていた。

初日を終えた石田は、「ハプニングもたくさんありましたけど、やっぱり生の舞台はいいなあと思いましたね。歴史ある『トキワ荘』を題材に、笑いと芝居を交えて表現できるということは、このコロナ禍において本当に幸せなことだなと思います」としみじみ語った。

植田も「お客さんにとってもそうだったと思うんですけど、我々にとっても宝箱みたいな時間でした。何が起こるか分からない、という意味はもちろん(笑)。すごく楽しんでできました」と続いた。

植田に対して「仕上げてきたなあ」という石田に、「石田さんを前にしたら、どんなに笑っていてもすっと変われるんですよ」と植田。劇中では、二人が激しく喧嘩をするシーンなどもあるが、「石田さんって、細く見えますけどめちゃくちゃパワーが強いんですよ。本番中、取っ組み合ってる時死ぬんちゃうかなって思います(笑)」と、全方向に全力であることを明かした。

謎の中国人の住人役として登場する河本は、会見でも中国語で話だそうとする小ボケをはさみながら、「貴重なオリジナルの役をやらせていただいたんですけど、本番でまさかのハプニングがおきまして。今まで一回も失敗しなかったのに・・・」と切り出した。

河本が劇中(会見中も)でかぶっているカツラは、自前のものだそうで「以前作ったもののずっと使えていなかったので、久馬さんにお願いしますと頼んでいいよと言ってもらったのに。すみません」と恐縮しきり。初日はSEだけが鳴り響くシーンとなっていたが、残り2公演でリベンジなるか。

作・演出を手掛けた久馬は「本番直前までバタバタしていて、漫画家さんがリアルに締め切りに追われているような空気でした。やっぱり(芝居も笑いも)プロは素晴らしいですね。演出面では、漫画を描く作業は机の上がほとんどの世界であり地味なので、いろんな登場人物を交えながらどう表現するか考えるのは大変だったんですけど、トキワ荘のエピソードや漫画作品の要素をたくさん使わせていただけたので良かったです」と、手応えを感じている様子だった。

なお、本作には天竺鼠(3日)と野性爆弾(4日)がゲスト出演する。3日の天竺鼠は「ピンチはチャンス!」と身体を張っていたが、野性爆弾の回では「もしかしたら、ゲストの登場シーンで突然暗転したり、台本が登場したりするかもしれない」と石田。

久馬が「ロッシーに一度稽古場にきてもらったんだけど、とんでもないことになった」と言うと、石田は「そのあと少ししゃべったんですけど、『これってこういうこと?』って聞いてくる質問、7割間違ってました(笑)」と暴露していた。ゲストの人選は「絵が上手い人」という観点で行ったそうだが、本を書いていくうちに結構需要な役どころになり、台詞が多くなってしまったんだそう。

ちなみに、ゲストと二人で芝居をするシーンがあるしずちゃん。初日、舞台に出るタイミングが分からず困っていた天竺鼠の二人に対して、背中をぽんと押してタイミングを教えてあげていたという。河本が「しずちゃん、かっこよかったよ」と言うと、笑顔を浮かべながら「うまくその場でツッコんだりできるタイプじゃないから、アワアワしちゃいそうなんですけど、本番がんばります」と答え、野性爆弾の二人にも相対する意気込み十分だった。

日本の漫画文化の礎となった偉人たちも抱いた「夢」。こんな時代だからこそ、まっすぐな言葉が響くし、誰かの笑い声が沁みる。

舞台『トキワ荘のアオハル』、11月4日(木)は14:00開演と18:00開演の2公演。初日の上演時間は、約1時間50分。

(取材・文・会見写真/エンタステージ編集部 1号、舞台写真/オフィシャル提供)

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舞台『トキワ荘のアオハル』公演情報

上演スケジュール

2021年11月3日(水・祝)~11月4日(木) 東京芸術劇場 プレイハウス

【脚本・演出】久馬歩/寺本覚

【出演】
植田圭輔
石田明(NON STYLE)
松島勇之介
竹若元博(バッファロー吾郎)
河本準一(次長課長)
矢部太郎(カラテカ)
しずちゃん(南海キャンディーズ)
坂本純一(GAG)
福井俊太郎(GAG)
宮戸洋行(GAG)
松浦志穂(スパイク)
小川暖奈(スパイク)
太田夢莉
西村竜哉

福田転球

※11月3日ゲスト出演:天竺鼠、11月4日ゲスト出演:野性爆弾

【公式サイト】http://www.syumatsu.jp/pc/2021/11/post-42.php


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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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