2021年4月3日(土)東京・新国立劇場 中劇場にて『モダンボーイズ』が開幕した。初日前にはゲネプロと囲み会見が行われ、脚本を手掛けた横内謙介、演出の一色隆司、キャストの加藤シゲアキ、山崎樹範、武田玲奈が登壇した。
本作は1994年に都政施行50周年記念公演として上演された、幻の名作ともいわれる青春群像劇。プロレタリア革命を志す学生で、ひょんなことから浅草エフリィという芸名でレビューの人気者となった加藤シゲアキ演じる矢萩奏が、小屋の座付き作家と出会ったことにより、生きる居場所を見つけ、自分にしかできない革命を見出していく物語である。
27年ぶりの上演となる本作だが、当日主演を努めたのは木村拓哉。これについて加藤は「最初にお話をいただいた時、正直なところ畏れ多いと感じつつ、一方で同じ役に挑戦したい思いもありました。
ジャニーズ事務所に入るきっかけになった一人でもあり、憧れていた方なので、このように同じ役を演じられることは、この先なかなかないのでいはないでしょうか。僕じゃない誰かが演じたときに、きっと嫉妬してしまう、と思いこのお話を受けました」とコメント。
「情報が一般公開される前に挨拶に行きました。お忙しい方なので、端的に情報を伝えられるよう僕の中でガチガチに台本を作っていったのですが、僕を見た瞬間に『やるんでしょ、モダンボーイズ』と先に言われてしまい、僕の台本は総崩れになって、あわあわしてしまいました(笑)」
と、その時のしどろもどろな様子を再現しつつ、木村からあたたかくまっすぐなエールを受け取ったことを話し、続けて「当時の木村さんは21歳で演じられていましたが、それを超えることは不可能なので、僕なりの役を作っていけたらと思います」と思いを新たにした。
また稽古場は人見知りだらけで「2週間くらい皆でもじもじしていました(笑)。役の方が仲いいんじゃないの?みたいな」との振り返りも。しかし、加藤の吉川英治文学新人賞受賞のお祝いをきっかけに、徐々にカンパニーがほぐれていったそうだ。
会見の最後には加藤が「舞台の幕を無事に開くことができて嬉しいです。新年度になり、様々な心持ちでがんばられる方も多いと思いますが、この舞台は一歩踏み出す勇気を与えてくれるような物語ですし、心に響く作品になっておりますので、ぜひ楽しんでいただければと思います」と締めくくった。
コメント紹介
◆加藤シゲアキ
この物語は、演劇を上演することもままならない時代の物語なのですが、状況は違えど今の時代にもシンクロする部分があると思います。演劇界、ひいてはエンターテインメント界のこれからにも通じるヒントがあると思い、お話を受けさせていただきました。無事に幕が開くことにほっとしていますし、このまま完走したいです。
◆山崎樹範
個人的な話ではございますが、菊川英治文学賞受賞、本当にありがとうございます。本当に産みの苦しみが・・・(加藤「シゲ違いです!」のツッコミ)。
無事に初日が開けられることを感謝しています。幕が開く以上は、見ていただいた方に、生のエンターテインメントは必要なんだ、と思っていただきたいです。
◆武田玲奈
私が今ここに立っていられるのは、一色さんや横内さんはじめ座組の皆さんが、私の芝居を見てアドバイスをたくさんしてくださったおかげです。皆さんに助けていただきました。
今は自信を持って幕が開くのを楽しみに待っています。ぜひ楽しんでいただければ幸いです。
◆横内謙介
パルコ劇場さんから、古き良き戯曲を上演する機会を作りたいとお話をうかがい、その中で『モダンボーイズ』を選んでいたただけたことはとても光栄です。
27年前に作った台本ですが、いいブラッシュアップの機会をいただけたな、と考えています。27年前のものももちろん面白かったのですが、その間に様々な出会いや経験があり、今回このような形になりました。
ほとんどを直して“大改訂“になったのですが、途中で加藤シゲアキさんが入ってくださるような情報が入り・・・。加藤さんがやるなら、作家の菊谷栄の方がいいのでは?という話もありました。
どちらでも進行できるプランを立てていたのですが、加藤さんから「木村拓哉先輩がやったことを継承したい」という思いをいただき、加藤さんをはじめ、キャストの皆様に合わせたぐっと大人のスペシャルな1本となりました。キャストの皆さんは、台本の一字一句にこだわって読み解いてくださり、作者冥利に尽きる舞台となりました。
◆一色隆司
今の時期、劇場に足を運んでくださるお客様、そしてエンターテインメント業界に少しでも元気をお届けできるような作品にしたいと、キャスト・スタッフ一丸となって取り組んで参りました。
加藤さんは、素晴らしいバイタリティとエネルギーを持っていらっしゃる方で、そのエネルギーをこの役に注力してくれた時、舞台上にマジカルなことが起こると確信しています。
キャストの皆さんはこの骨太な台本を読み解いて、良いものを作ろうと日夜問わず、試行錯誤して取り組んで参りました。熱いものをお届けできると思います。
上演スケジュール
【東京公演】2021年4月3日(土)~4月16日(金) 新国立劇場 中劇場
【大阪公演】2021年4月28日(水)~4月30日(金) COOL JAPAN OSAKA WWホール
キャスト・スタッフ
【出演】加藤シゲアキ/山崎樹範 武田玲奈 坂口涼太郎 溝口琢矢 松田賢二 きづき 伴美奈子 羽子田洋子 清瀬ひかり 紺崎真紀 橋本菜摘 大川亜耶 須田拓未 / 加藤虎ノ介 神保悟志 大鷹明良
【作】横内謙介
【演出】一色隆司
あらすじ
日中戦争前夜、浅草のレビュー小屋。座付き作家の菊谷栄に、同郷(青森)の友人・工藤がプロレタリア革命を志す同じく青森出身の学生・矢萩奏を紹介する。
ある日、矢萩が警察に追われて劇場に逃げ込んでくる。菊谷と劇場の仲間たちは、矢萩に道化の扮装をさせて、警察から匿う。尋問を受け、菊谷はコーラスボーイだとごまかすが疑う特高刑事。仕方なく歌を披露する矢萩。故郷で合唱部だった矢萩の「My Blue Heaven」の歌声はすばらしかった。
矢萩は劇場に身を隠すことになる。そこで思想活動のために封印していた音楽の才能が開花し、やがて矢萩は浅草エフリィの芸名でレビューの人気者となっていく。しかし不景気と戦争が切迫する時代。不要不急と言われる浮かれたレビューの世界に生きることに悩み揺れながら、そんな時代に劇場の扉を開き、歌い、踊り続けることの意味を、矢萩は菊谷や仲間たちとともに噛みしめてゆく。