ミュージカル『GHOST』インタビュー!浦井健治&咲妃みゆ&桜井玲香が“伝えられなかった”こととは

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浦井健治が主演を務める『GHOST』が2021年3月から4月にかけて東京、愛知、大阪で上演される。本作は1990年に公開され大ヒットした映画「ゴースト/ニューヨークの幻」のミュージカル版で、『ミス・サイゴン』をはじめ数々の大作を手掛けるダレン・ヤップが日本版オリジナル演出を務めている。生と死を超えた究極の愛を描いた本作は2018年に日本初演され大好評のうちに幕を下ろし、2021年、2年半の時を経て再演されることに。今回、そんな注目作に出演する浦井、咲妃みゆ、桜井玲香にインタビューした。

浦井は暴漢に襲われ命を落としてしまう温厚で誠実な銀行員のサムを務め、咲妃と桜井は芸術家でサムの最愛の恋人・モリ―をWキャストで演じている。初日まで1カ月を切る中、徹底した感染対策をしながら稽古を進めているとのことで、演出のダレン・ヤップは時差2時間のオーストラリアからリモートで稽古に参加しているという。浦井は「本来の演出家の席に、振付の桜木涼介さんが座っているのですが、彼を中心に多くのスタッフさんたちが何十倍という仕事をこなしてくださっています。みんなで一丸となってという空気もすごくあります」とカンパニーのチームワークの良さを教えてくれた。

また、咲妃は「毎日のように演出のダレンさんと装置・衣裳のジェームズさんがリモートでお稽古場の様子を覗いてくださっていて、オーストラリアという遥か彼方にいるけれど、不思議と心の距離は近く感じるんです。見守ってくださっているという安心感がありながらお芝居をしています」と感じているようで、「特に今回感じるのが、新キャストの玲香や水田(航生)さん、そしてアンサンブルキャストさんが率先して意見を伝えながら濃厚な稽古が進んでいくので、すごく勉強になりますし、風通しがいいなと」と楽しそうに語る。

一方、今回が本作初参加となる桜井は「ソーシャルディスタンスを取っている分、どうしてもみなさんとのコミュニケーションが難しくなっている気がしますが、遠くても心を通わせられるよう、どうやったらこの短期間で絆を作っていけるかなということを日々考えながら稽古に取り組んでいます」とマスクをつけながら距離を保って進める稽古の難しさに直面しながらも前向きに取り組んでいる様子だ。

本作では生死を超えた愛の物語が描かれるが、サムのように恋人を残して先立ってしまったら、モリ―のように先立たれてしまったらどう思うかを聞いてみた。モリ―を演じる2人は「すごく辛いですよね・・・」と目を見合わせ、桜井は「そんなすぐには立ち直れないし、作中でモリ―とカールが、2人でサムが亡くなって間もない頃に遺品整理を家でするんですけど、私だったら階段の上り下りすら気力が湧かないんじゃないかなと思いながらやっています」と感じているという。また「サムの立場になったら・・・よく親とそういう話をするんですけど、母は『子供が先に行くなんて絶対親不孝だから!もし玲香が先に病気とかでいなくなったら私も一緒に後を追う!』ぐらいのことをよく言っていて、『それだけはやめて、それじゃ成仏できないから』と伝えてるんです。残される側はやっぱり何かきっかけを見つけて立ち直っていかないとお互いが救われないなとすごく思います」としみじみ語った。

また、咲妃は「私も全然すぐには立ち直れなタイプだと自分では認識してるんですけど、でもどこかで、前に進まないとこの世を去ってしまったお相手にも顔向けできないなと思って、一生懸命奮い立たせようとするすると思うんです。いろんな思いがこんがらがって、すごく感情がぐちゃぐちゃになる予感がします」と語り、「でも自分自身がもし、先立つ立場になったとしたらいつまでも悲しまずに、前を向いて先を進んでいってくださいとはすごく天国から願っていると思います」と力強く教えてくれた。

そしてサムを演じる浦井は「その人によりますかね・・・その時に相手の子がどれだけの状況になっちゃったとか。その子のために何を思うかということだと思うので。でもどっかでは僕の事を思っていてほしいなという部分もあると思います。嫉妬じゃないけど・・・そういうのは男としてあるのかなと。モリ―の立場であればずっと思っていたいと思うし」としみじみ語りつつ、「でも結論として、男目線から言うと『ちゃんとお金稼げる人と一緒になってください。安定した生活してください!』と思います(笑)」と相手を思うからこそ、幸せでいてほしいという願いが強いようだ。

本作では「愛してる」という言葉を伝えたかった、伝えてほしかったという気持ちも描かれていくが、「これ言えてないな」「言いそびれてたな」というエピソードを聞いてみると、咲妃から「幼少期は両親の仕事の都合上転勤族だったんですけど、よく家に出入りしてた近所の野良猫ちゃんをかわいがってたんです。でも次の引越し先には連れて行けないって言われて。引越しの日の朝、最後の別れを言えるかなと思ったら、もう姿を現してくれなくって、出発までに家の周り中探し回ったけど、どこにもいなくって、だから最後に『元気でね』という言葉がかけられなかったんですよね」と切ない思い出が。

さらに「引越しのトラックの中でわんわん泣いて、そこから何時間も離れた、もう子供の足では行けない場所に引っ越してしまったのですごい心残りで。猫ちゃんの気ままなとこが好きなんですけど、あまりにも幼少期の自分にとっては大きい経験だったんです」と振り返り、しんみりした雰囲気になったが「引越し先の学校でその思いを作文にしたためたら、給食の時間の作文コーナーで全校放送されて、『そんな子が転校してきたんだ』みたいになりました(笑)。別のクラスの担任なんか別のクラスの先生から『感動した』って声かけてもらいました・・・“どういうオチ?”っていう話ですみません(笑)」とお茶目に笑い、浦井と桜井からも笑顔がこぼれていた。

一方、桜井は「こないだマッサージに行ったんですが、足湯を最初にしてもらえるところだったんですけど、最初すごく熱かったんです。私の足がすごい冷えてたから担当の方が『ちょっと熱いかもしれない、大丈夫ですか?』と聞いてくださったんですけど、『大丈夫です』って答えてしまって・・・でも冷めないように保温されていたのでずっと熱くなって、でも、いまさら言えなくて・・・(笑)」と最近あった出来事を明かし、浦井と咲妃から「言いなよ(笑)」とツッコミが入っていた。

そして浦井は、2020年に桜井と共に出演を予定していたブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3でのことを振り返り「ゲネをやる前に場当たりまで玲香と一緒にやってて、かっきー(柿澤勇人)たちのゲネを見て・・・でも翌日の僕たちのゲネが中止になっておしまい、ってなっちゃったんです。その時に玲香が『やりたかった』って言っていて。『頑張ろうな、またやろうな』って伝えたんですけど、『俺も悔しかったよ』というのは言わなかったんです。何でそこでちょっとなんか先輩ぶっちゃったんだろ、『悔しい』って、『同じ気持ちだよ』って言えばよかった」と先輩として素直に言葉にできないことがあったよう。桜井はその時の浦井の印象を「大人だなと思いました」と語ったが、浦井は「でしょ?でしょ?全然違った!全然大人じゃなかった!(笑)」とその時の思いを爆発させていた。

最後に、不朽の名作のミュージカルならではの魅力が3人から語られた。浦井は「ろくろのシーンも有名ですけど、まず、森公美子さんのオダ・メイという召喚されたような・・・日本でオダ・メイを演じるなら、もう森公美子さん!っていうぐらいドンピシャの当て書きのような、素晴らしい女優さんのパフォーマンスが見られるというのが一つ」と楽しそうに語り、「あとはモリ―、サム、カールの関係性がどんどん変わっていく様子は教訓のようなものがあって、最後には希望のあるすがすがしさを感じられるような作品。そして、このコロナ禍だからこそ伝えたいメッセージっていうのがぎっしり詰まっている作品だと思います」と真っすぐな思いが。

また咲妃は「映画だと画面に映っている人物の様子しか視聴者としては見れませんが、舞台をご覧くださった皆さまが気になる人物の動向をご自分のタイミングで追えるっていうのは映画とは違う魅力のひとつだと思いますし、やっぱりミュージカルというだけあって、楽曲での心情表現がかなり色濃く提示されるので、映画とはまた違った角度からこの作品を楽しんでいただけるんじゃないかなと思います」としみじみ。

最後に桜井が「映画のもともといいもののさらにいいところ、全部いいとこ取りした上に、すごくいい楽曲が合わさって、目の前で行われる分、『ゴースト』の世界にまた一歩奥に入り込めるのがミュージカル版の魅力。日本の方が見て理解しやすい演出だったり、心情の変化の描き方をされていると思うので、そういうの全部ひっくるめて魅力だと思います」とアピールした。

(取材・文・撮影=エンタステージ編集部3号)

公演情報

ミュージカル『GHOST』
【東京公演】2021年3月5日(金)~3月23日(火) シアタークリエ
【愛知公演】2021年4月4日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2021年4月9日(金)~4月11日(日) 新歌舞伎座

【演出】ダレン・ヤップ
【翻訳】寺﨑秀臣
【訳詞】高橋知伽江

【出演】
浦井健治、咲妃みゆ、桜井玲香、水田航生、森公美子
ひのあらた、松原凜子、栗山絵美、松田岳、西川大貴
小川善太郎、染谷洸太、宮野怜雄奈、山野靖博、吉田要士、上田亜希子、國分亜沙妃、華花、湊陽奈、元榮菜摘

【公式サイト】https://www.tohostage.com/ghost/

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この記事を書いた人

舞台・映画・YouTubeなどが好きな生粋のエンタメっ子。現場取材や動画撮影・編集などやってます。人生で一番好きな作品は映画『ムーラン・ルージュ』(ミュージカルも最高!)。休日は推し活に勤しんでます。動画編集のスキルアップ中!よろしくお願いします。

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