『プラネタリウムのふたご』壮一帆インタビュー「“だまされる”って、他人と触れ合う中で生まれる解釈」

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『プラネタリウムのふたご』壮一帆インタビュー

2021年2月6日(土)より、音楽劇『プラネタリウムのふたご』がプレビュー公演で開幕を迎える。昨年、新型コロナウイルス感染拡大防止の影響で、やむなく中止となっていた本作。星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名付けられたふたごの物語を、ウォーリー木下の演出で装い新たに紡ぐ。

念願の幕開けを迎える公演について、ふたごの母親役などを演じる壮一帆に話を聞いた。

『プラネタリウムのふたご』壮一帆インタビュー

目次

ウォーリー木下の演出は「驚きの多い現場」だった

――『プラネタリウムのふたご』、いよいよ開幕となりますね。壮さんは、まずこの作品を読まれた時はどんな印象を持たれましたか?

最初に読んだ時は、主人公の子どもたちが13歳ということもあって、メルヘンな印象を受けました。でも、ただただメルヘンで楽しい物語ではなく、ノスタルジックな部分が、大人にも響くお話なんだなと思いました。音楽劇になることで、その一面が一層増しているんじゃないかなと思います。

――いしいしんじさんの原作小説が、どのように舞台上で描かれるのか楽しみです。

ファンの方も「いしいしんじさんにハマって、ほかの作品も読み始めました」という方がいらっしゃいました。私も読みましたが、おもしろいですよね。ウォーリーさんが戯曲としてとてもうまくまとめてくださっていると思います。

――ウォーリー木下さんの演出を受けてみていかがですか?

人の動かし方、見せ方がすごく面白いんです。場面転換も、かなり細かいんですよ。登場人物をうまく動かしながら、同じ舞台の上で、いくつもの場面を同時進行させていく。「ウォーリーさんの演出っておもしろいね」って、よく春風(ひとみ)さんと話していました。

――驚きの多い現場でしたか?

驚きも多かったんですが、ウォーリーさんは、とりあえずまずは自由にやらせてくださるので、そこに役者も気持ちよく乗っかっていける感じでした。とりあえず自由に動いてみてと言われて、そこで躊躇なくできるのは、そういう空間を演出として作ってくださっているからだろうなと。日々、楽しくやらせていただいていますね。

――原作を読むと、かなり登場人物が多いですよね。

私も主軸となる役と、いくつかの役をやらせていただいています。結構出ずっぱりなので、常に早替えなんですよ。同じウォーリーさんが演出した『リューン〜風の魔法と滅びの剣〜』の時も、皆さん大忙しだったと聞いていたんですけど。今回もふたご以外はそうなるんだろうな~と思ってます。ふたごも、着替えはそんなにないけど、自転車漕いでいるか走ってると思います(笑)。みんなバタバタなんですけど、そういう活気が舞台上にもの投影されるんじゃないかと。

それから、人だけじゃなくてセットの一部になったりもします。それはご覧になってのお楽しみですが(笑)。そういうのも、ちょっとメルヘンで楽しいです。

――今回、音楽劇でもありますよね。台本の中に「タイプライターで音楽が出来る」と書かれていて、想像が膨らみました。

「い」のないタイプライターですね。台本で、文字で読んだ時は「読みにくいな~」って思った部分だったんですけど、台詞として、さらに歌として口に出したら「い」がないというのがすっごく分かりやすく、楽曲も、とても可愛らしいので、楽しみにしていてください。

――壮さんのソロも聞けますか?

ソロもありますね!ふたごのお母さんとして歌います。ふたごのお母さんは、すでに亡くなっている存在なので、抽象的な登場の仕方というか・・・ある意味、美化された、誰かのお母さん像なんです。音楽に乗せて、その理想の見せ方をうまくできたらなと思っています。

そのほかにも、原作とは少し違う一面を見せる人物なども演じます。自分のオリジナリティで勝負出来るところですし、舞台でやるからこそ膨らませることが出来るかなと思うので、役者としてはやりがいがありますね。大いに想像力を働かせて、作品の色になっていけたらいいですね。

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永田崇人・阿久津仁愛の“ふたご”っぷりに母性が刺激されまくり

――壮さんから観て、永田崇人さんと阿久津仁愛さんのふたごっぷりは、壮さんの目にどう映っていますか?

2人とも可愛いんですよ~。稽古中、ずっとマスクをしているというのもあるんですが、2人、本当に似ていて!正確もまっすぐだし、なんというか、バランスが良いです。「思いを遂げるってなぁに?」「こちょこちょするってことだよ!」という台詞のシーンでは、わしゃわしゃ~!ってしたくなります(笑)。佐藤アツヒロさんに抱きついて「どこにも行かないで!」というシーンとかもあるんですが、見ていると母性が刺激されまくりですね。

――本作には「だまされる才覚が人にないと、この世はかさっかさの世界になってしまう」という言葉がありますが、今、すごく刺さる言葉だなと思いました。

そうですね。こういうご時世ですが、エンターテインメントの灯は消してはいけないものだと思います。そういう意味で、この作品はメッセージ性のある作品です。楽しいだけでなく、すごく心に刺さるんじゃないかなと。「だまされる」って、他人と触れ合う中で生まれる解釈だと思うんです。あっ!と驚かされたり、気づかされたり、何かを思い出すきっかけになったり。そういうものが詰め込まれた作品なので、今だからこそ、余計に刺さるものに仕上がっているんじゃないかなと思います。

改めて考えたコミュニケーションのあり方

――壮さん自身は、このコロナ禍でどんなことを考えていらっしゃいますか?

コロナの影響で舞台がなくなってしまったりしたんですけど、自分自身が悩んでしまうところまではいかずにいました。忙しい時は手が回らない部分の掃除をしたり、時間があることを楽しんでいましたね。研ぎ石を買ってきて、包丁を研いだりするのも楽しいなと(笑)。でもやっぱり、早く舞台に立ちたかったです。オンラインでお芝居をする機会などもいただきましたが、その時、やっぱりお客さんの顔が見たいなと思ったんですよね。

今も、マスクでお客さんの顔は半分見えない状態ですが、それでも、有機的な存在がどれだけありがたいか。言葉を交わすわけではないですが、舞台上と客席のキャッチボールが出来る喜びを改めて感じていますね。

――コミュニケーションのあり方を、すごく考えますよね。

ね~、今、みんなでご飯にも行けないんですからね。稽古場で言えなかったことも、稽古が終わったあとに一緒にご飯食べに行った時に話せることがすごく多かったから。その話をした後の稽古場で、芝居の質感がすごく変わった!と思うことがたくさんあったんですよ。でも!嘆いていても仕方がないので、今出来ることを精一杯やります!

『プラネタリウムのふたご』壮一帆インタビュー

――心がかっさかさになってしまっている方々に、ぜひ観ていただきたいですね。

今、皆さんがどれだけの覚悟と緊張感を持って劇場に観に来られるのか、普段、ファンの方からいただくお手紙からもひしひしと感じています。そうして、エンターテインメントが必要なんだ、大切なんだと思ってくださる皆さんに応えられる作品を提示できるようにやっていきたいと思います。舞台裏でも、スタッフさんがすごく気を配って感染対策をしてくださっているんですよ。なので、皆さんも気を付けながらも、劇場には安心して観に来ていただけたらと思います。来てよかったなと思っていただけるよう、私たちも一丸となって千穐楽を無事に迎えたいですね。

公演情報

公演情報

『プラネタリウムのふたご』
【プレビュー公演】2021年2月6日(土)・2月7日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】2021年2月13日(土)・2月14日(日)
【東京公演】2021年2月19日(金)~2月23日(火・祝)

【演出・脚本】ウォーリー木下
【原作】いしいしんじ(講談社文庫)
【音楽】トクマルシューゴ
【作詞】森雪之丞

【出演】
永田崇人 阿久津仁愛 佐藤アツヒロ
前島亜美 菊池修司 サイクロンZ 冨森ジャスティン
齋藤桐人 山﨑秀樹 安田カナ 黒木夏海 谷啓吾 田鍋謙一郎
壮 一帆 春風ひとみ 大澄賢也 松尾貴史

【公式サイト】https://www.planetarium-twins2020.com/

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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