2021年3月から4月にかけて東京、愛知、大阪で上演されるミュージカル『GHOST』の製作発表会見が行われ、浦井健治、咲妃みゆ、桜井玲香、水田航生、森公美子が登壇。本作の魅力や再演となる今回の稽古場での様子などを教えてくれた。
ミュージカル『GHOST』は、1990年公開、世界中を感動の渦に巻き込んだ大ヒット映画「ゴースト/ニューヨークの幻」のミュージカル版。2018年に日本初演、東京をはじめ全国に多くの感動の涙を届け、大絶賛のうちに惜しまれながらその幕を閉じた。今回、2年半の時を経て再びシアタークリエなどで上演されることになった。
会見ではまず最初に本作の魅力を聞かれ、温厚で誠実な銀行員であり不運な死を遂げる主人公・サムを演じる浦井が「コロナ禍でたくさんの思いをいろんなところでそれぞれに感じているかと思いますけれども、人と人の繋がりだとか、寄り添う心の素晴らしさとか、人は1人じゃないんだというような思いだとか、そういったメッセージがこもったミュージカルというのが第一の魅力かなと思っています」と語り出し、「この時期だからこそ伝えられるようなメッセージがあるなと稽古場でもすごく感じています」としみじみ。
芸術家でサムの恋人であるモリ―役の咲妃は「やはり楽曲の美しさも見どころの一つではないかと思います」とコメントし、「約2年半ぶりに『GHOST』に挑戦させていただけるということで、過去のがんばりも培ったものとして大事にしつつ、今回また新たな気持ちで作品に向き合うということを一番大切にしていきたいなと思っています」と再演に向けて意気込んだ。
Wキャストで今回新たに咲妃と共にモリ―を演じることになった桜井も「海外版では演出がちょっとイリュージョンというか・・・豪華な感じになっているのを、日本版はストーリーを重視してより作品に入り込めるような演出になっていて、日本にしかない演出というのが魅力」と語り、「今回初参加組なんですけども、稽古中もすごく私の考えだったり表現を周りの皆さんが尊重してくださっているので、形にとらわれずに伸び伸びと自分らしく、演じられるようにがんばりたいなと思います」と共演者のあたたかさに感謝していた。
サムの親友・カール役で同じく本作初参加となる水田は「一言で言ったら本当に“THEエンターテイメント”。ラブシーンだったり、コメディーシーンだったり、サスペンス要素だったり、いろんな要素がこの作品一つに込められてるなと思うので、本当にエンターテイメント性が高い作品だなというのが魅力の一つだと思います」と印象を明かし、「初演で作りあげられたこの素晴らしさを踏襲しながら、再演ならではというか、自分なりのカール像というのを突き詰めて、考えて演じていきたいなと思っております」と力強く意気込む。また、そんな水田のカールとのことについて浦井は「弟的な平間壮一くんとはちょっと関係性が違う、男と男の友情関係のサムとカールというのが水田くんと出来ているので、そこがまた自分の中でお芝居のしどころだなと思います」と語っていた。
初演に引き続きオダ・メイを務める森は「私は再演組なんですけど、(初演は)セリフでもういっぱいいっぱいだったのが今回は少し余裕があるので、踊りにちょっとずつ参加させていただいておりまして(笑)。踊れる霊媒師になっております」と教えてくれた。
約2年半ぶりの再演ということだが、初演の際の印象的なエピソードについて聞かれると、森から「とにかく浦井健治さんのズボンがよく壊れるという・・・1ヶ月の公演で5本替えてるということを衣装さんから聞いて。『私の衣装、生地代かかってるよね?』という話から『意外と浦井さんもズボンいっちゃうんですよ』って(笑)」という裏話が。すかさず「申し訳ございません!」と浦井が謝罪し、森から「よく動いてるからね、膝つくしね」とフォローが入ると、「そうなんですよ、幽霊なので人とちょっと違う動きしてるんですよ、滑り込んだり・・・という言い訳(笑)」と茶目っ気たっぷりに笑った。
一方、咲妃からは「開演前に皆さんで毎公演必ず円陣を組んで、『今日も心を一つに舞台をお届けしましょう』という一種のがあ儀式があったんですけど、今このご時世なのでなかなか難しいですが、(演出の)ダレン(・ヤップ)さんがそういう皆さんとの繋がりを『大事に大事に』と言い続けてくださったのがすごく印象的です」と心温まるエピソードが語られた。
名場面や名ナンバーの多い本作だが「ここは見逃せない!」というようなお気に入りシーンについて聞かれ、水田が「昨日、1幕をざっくりですけど通すという形で僕自身が出てないシーンも含めて初めて見させてもらったんですけど、やっぱりオダ・メイのシーンが大好きで。曲もかっこいいし、森さんが出てくるだけでワクワクするというのを稽古場で一足先に感じさせてもらいました。先ほども少し仰っていたんですけど、オダ・メイが踊るというのも今回の見どころのひとつだと思います」と楽しそうに語った。
一方、森は「そんなに踊ってないけど・・・(笑)」と語りつつ、「映画でもおなじみの、ろくろを回すシーン。『ゴースト』といえばあのシーンだと思うんですけど、そのシーンはもちろん、(モリ―が)ちゃんとろくろで作るんですよ。手を拭くときに階段とかに跳ねちゃって、階段を下りる時に滑らないように気を付けたりしてるんですけど(笑)」と裏話を交えつつ、「あの印象的なシーンがちゃんとありますよ!というのをお伝えしたいですね」とアピール。
劇中で陶芸シーンを披露することになる桜井は先日初めてちゃんと陶芸の練習をしたということだったが「惨敗したんです、こないだ(笑)。本当に難しくて・・・あれをあの時間内に本番中にできるんだろうかと不安残したまま終わっちゃいました」と不安げな表情。そんな桜井に咲妃は「森さんのおっしゃる通り印象的なシーンですし、モリ―としてもサムとの大切な時間を思う瞬間でもあるから、陶芸にあまりにも没頭しすぎないようにちゃんとお芝居をしつつというのを気を付けたい・・・(笑)。公演毎に全然違う形が生まれるというのはなかなか面白い経験でした。そのときに生まれる心情、感情で形が変わるんです。どんどん楽しくなると思います!」と自身の経験を交えつつエールを。桜井は勇気をもらえたようで「がんばります!」と笑顔で応えた。
会見の最後には改めてそれぞれが意気込みを。森は「『いつもそばにいるよ』『誰でも傍に思ってくれる誰かがいるよ』というのがテーマだと思うんです。皆さまの心の中に誰かそういう方がいらっしゃると、生きていて支えになったりするんじゃないかなと。心のエネルギーをもらえるようなミュージカルだと信じております」と語り、「・・・私自身2019年に母を亡くしたんですけど、母がこの作品を観てものすごい喜んでたんです。すごい泣きじゃくって帰ってきて。『すごく良かった、おばあちゃんを思い出した』って。そんな風に誰かを急に思い出すこともできるし、そうするとなんかその方も浮かばれるんじゃないかなってちょびっとだけ思った作品でもあるので、こういう状況下でがありますが・・・この作品を観ると、ちょっとだけ心が強くなれるという瞬間があると思うので、ぜひ見に来てくださればと思っております」と目に涙を浮かべながらメッセージを送った。
また、水田は「このご時世、身体的な接触というか繋がりが難しくなっているんですけど、この時期にこそこういう作品を見て、人と人との繋がりや心と心が繋がっているっていうことを再認識していただいて、その大切だったり、尊さをより感じていただけると思います。皆さまにあたたかいものが届けられる作品だと思うので、まだまだ稽古が続きますが、体調に気をつけて、本番が迎えられるようにがんばっていきたいです」と改めて意気込んだ。
そして桜井は「この作品は、甘いラブストーリーだけではなくて、ものすごい急ピッチでストーリーも展開していきますし、サスペンスなところがあったりとか、ハラハラしたりワクワクしたり、感情になると思うんですけれども、見終わった後にが何かあたたかいものに包まれているような、そういう何か穏やかな気持ちになれる作品だと思います。きっと劇場の中でいろんな人の思いが交わる場所にこの作品を通してなるのかなと思うので、皆さんのお声もたくさん受けとめながら日々進化していく作品にできるように精一杯がんばりたいと思います」とコメント。
咲妃も「2018年の初演を経て、今回2021年版の『GHOST』はよりブラッシュアップされたものになっているなとすでに感じています。舞台に立たせていただけることって当たり前ではないなと痛感する毎日で、感謝すべき物事は数え出したらきりがないんですが、全ての身の回りの出来事に感謝しつつ。お客様に劇場で無事お目にかかれる日を心待ちにしながら、私も健康第一で稽古に励んでいきたいと思いますので、皆さんぜひ体を大事に、劇場でお待ちしております」とメッセージを送る。
最後に浦井は「この時代だからこそ、コロナ禍だからこそ伝えたいメッセージというものがこの作品にはしっかりと息づいている気がしております。人を思いやることとか、寄り添うことの意味、そういったものをたくさん感じられる作品になっていると思います」とコメント。さらに、「実は僕も2019年に父を亡くしまして」とこの場で初めて明かし、「『その先に生きている我々がやっていこう』『生きてるといいことに巡り会える』そういうことを感じていただけるような作品だと思います。ぜひとも劇場に足をお運びください」とメッセージを送り会見を締めくくった。
(取材・文=エンタステージ編集部3号/写真:オフィシャル提供)
公演情報
ミュージカル『GHOST』
【東京公演】2021年3月5日(金)~3月23日(火) シアタークリエ
【愛知公演】2021年4月4日(日) 愛知県芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2021年4月9日(金)~4月11日(日) 新歌舞伎座
【演出】ダレン・ヤップ
【翻訳】寺﨑秀臣
【訳詞】高橋知伽江
【出演】
浦井健治、咲妃みゆ、桜井玲香、水田航生、森公美子
ひのあらた、松原凜子、栗山絵美、松田岳、西川大貴
小川善太郎、染谷洸太、宮野怜雄奈、山野靖博、吉田要士、上田亜希子、國分亜沙妃、華花、湊陽奈、元榮菜摘