「能楽男師」から「狂言男師」へ!桑野晃輔、健人、赤名竜乃輔、岩崎孝次らが想い継ぐ「秋の章」稽古場レポート

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『狂言男師~秋の章【柿山伏・附子】~』が、2020年9月20日(日)・9月21日(月・祝)の2日間に東京・宝⽣能楽堂にて上演される。「狂言男師」は、「能楽男師」の新展開として「狂言」に特化し、若手俳優のコラボにより日本の伝統芸能を広く伝えていく企画。この第3弾には、桑野晃輔、健人(20日のみ)、赤名竜乃輔(21日のみ)、岩崎孝次、上堂地かんきが参加する。その稽古現場を取材した。

「能楽男師」は、今年1月に始動。伝統芸能の世界に若手俳優たちが真っ向から挑み、サブカルチャーとして気軽に楽しめるコンテンツに昇華させてきた。「能楽」とは、能と狂言を合わせた呼び名。約650年前の室町時代、三代将軍・足利義満の時代に現在まで続く形ができた(江戸時代までは猿楽と呼ばれ、能楽となったのは明治時代以降のこと)。

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面(おもて)と呼ばれる仮面をつけて演じる能と、つけずに素顔で演じる狂言。簡単に言うと、能は歴史や神話を題材にしたミュージカルやオペラ、狂言は日常生活をおもしろく演じて見せるコントやコメディと考えると分かりやすいかもしれない。

「能楽」は、能・狂言・能という順で同日に上演するが、「能楽男師」では主に狂言を取り上げており、3回目となる今回は、より一層狂言の世界を分かりやすく伝えたいと「狂言男師」として上演していくことに。演目には、第1弾と同じく「柿山伏」と「附子」を揃えた。

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「柿山伏」は喉が渇き柿を食べてしまった山伏と、その柿の畑主との珍妙な攻防戦、「附子」は主人が隠したある物を食べてしまった使用人の兄弟がその事実を“とんち”で乗り切ろうとする姿をコミカルに描いている。

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両日出演する桑野は「柿山伏」では畑主、「附子」では太郎冠者。健人と赤名は「柿山伏」では山伏、「附子」では次郎冠者。岩崎は「附子」の主。このほか、上堂地が両演目共に後見を務める(後見とは能楽における舞台監督的役割を持ち、舞台左奥に座る者)。

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取材日は、自主稽古日。それぞれが、本番の動きを意識できる稽古着を用意して稽古に励んでいた。ほぼ本番の舞台と同じ広さの稽古場の中ではしっかりとマスクを着用しソーシャルディスタンスも保ちつつ、細かな動きが確認されていた。

本企画、実は岩崎が昨年7月に設立した株式会社HEROによるもの。ご縁から能楽に興味を持ち、若手俳優がチャレンジすることが伝統芸能を親しみやすく後世に伝えていくためのスパイスになるのでは、という考えからこの企画をスタートさせたという。

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第2弾で初めて狂言に取り組んだ健人は、「ガッチガチに緊張していました(笑)。同じ舞台とはいえ、入場の仕方から何もかもが初めてだったので、緊張しながら舞台に立ったことが強く記憶に残っています」と初挑戦を振り返った。

桑野・赤名は今回が初挑戦。稽古では、そんなことを感じさせない器用さで、狂言ならではの所作を披露していた。「台本をいただいた時に、コメディだと思ったんです」と桑野。伝統芸能と言うと構えてしまいがちだが、現代にも残るような間のとり方や、リズムの良さがあるので、「きっと、初めての方でも観やすいと思いますし、僕らが取り組んだことが文化に触れる窓口になったらいいなと思っています」と、本作にかける意気込みを聞かせてくれた。

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第1弾を観たという赤名は、「歌舞伎は学生時代に社会科見学で観たことはあったんですけど、狂言その時が初めてでした。昔の言葉だけど意味も分かってクスッと笑えるし、何よりお客さんとの距離が近いなと思いました。本番が楽しみです」と実際に舞台に立つのを楽しみにしている様子。

冒頭で「能楽」についていろいろと説明したが、4人が口を揃えて言っていたのは、「何も知識がなくても楽しめる」ということ。第1弾・第2弾の時も、初めて能楽堂に足を踏み入れる人も多く客席にも緊張感が漂っていたそうだが、リラックスして足を運んで大丈夫と口々に言っていた。

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台詞は古語だが、知らなくても聞いているとなんとなく意味が分かってくる。例えば、「みなになる」という言葉。「全部なくなってしまった」という意味だが、「覚えた言葉を帰路で使うぐらい、おもしろいと感じてもらえたら嬉しい」と岩崎。確かに、「スマホの電池がみなになってしまった・・・」などと使えるかもしれない。

今回の演目を第1弾と同じものにしたのは、本企画の総合プロデュース(演出・構成)を手掛けてきた善竹富太郎氏の急逝を受けて、「狂言をもっと身近に」というその思いを継ぐべく改めて取り組むためだという。

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前回、富太郎氏の教えを受けた健人は「(稽古をしていて)教えていただいたことがよぎります。はーっはっはっはって笑い声が聞こえてきそう・・・今回もどこかで観ていてくださっているかもしれません」と語り、岩崎も「この企画を続けていくことが、富太郎さんの願いでもある」と、監修に大蔵流狂言師・善竹十郎、狂言指導に富太郎氏の弟である善竹大二郎を迎え、その意思を継ぐ決意を新たにしていた。

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桑野は、健人と赤名と日替わりでタッグを組むことになる。「全然違って、大変です(笑)。頼りがいのある健人くん、フレッシュで勢いのある赤名くん、二人とも違う良さがあるので、どちらも新鮮に受けてやれたらと思います」と桑野。特に「附子」については、第1弾で健人が太郎冠者を演じていたため、その違いにも注目だ。

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「個人的に、劇場でお待ちしていますと言えることにとても喜びを感じています」(桑野)、「前回来られた方も、初めての方も、心から楽しんでもたえたら」(健人)、「このコロナ禍の中で舞台に立たせていただけることはありがたいことなので、全力で笑かしにいきます!」(赤名)、「エンターテインメントに携わる者として、笑顔と元気をお届けしたいです」(岩崎)と、それぞれに思いを噛み締めて、舞台に立つ4人。「能楽男師」改め、「狂言男師」の新たな一歩は、まもなくだ。

目次

公演情報

狂言公演『狂言男師~秋の章【柿山伏・附子】~』
2020年9月20日(日)・9月21日(月・祝) 東京・宝⽣能楽堂

【出演】
9月20 日(日)
桑野晃輔、健人、岩崎孝次、上堂地かんき、善⽵大二郎
9月21日(月・祝)
桑野晃輔、赤名竜之輔、岩崎孝次、上堂地かんき、善⽵大二郎

【上演タイムスケジュール】
第1部15:00~16:30(14:20開場)
第2部19:00~20:30(18:20開場)

チケット料⾦(全席指定・税込)
S席:8,800 円(税込)
A席:7,200 円(税込)

【公式サイト】https://www.gaku-dan.com/

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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