アニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』と歌舞伎がコラボレーションした朗読劇「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」が、2025年1月11日(土)・1月12日(日)の2日間、京都・南座で開催された。『PSYCHO-PASS サイコパス』のキャラクターたちが歌舞伎に挑戦するという、特別な舞台のレポートをお届けする。
『PSYCHO-PASS サイコパス』のキャラクターとして野島健児、関智一、花澤香菜が歌舞伎に挑戦
『PSYCHO-PASS サイコパス』は人間のあらゆる心理状態を数値化し管理する巨大監視ネットワーク<シビュラシステム>が人々の治安を維持している近未来の世界観。本公演では厚生省公安局においてシビュラの要請に依り、定期的に歌舞伎の上演を行っているというオリジナルのパラレルワールドの設定。
『PSYCHO-PASS サイコパス』の BGM が流れる中、歌舞伎の劇場らしい定式幕が静かに開かれる。まず演じる演目は、上方歌舞伎の代表作『廓文章(くるわぶんしょう)』「吉田屋(よしだや)」。
恋人である廓・扇屋の夕霧太夫に入れ揚げ大借金を負ったことから勘当され、行方不明となっていた藤屋の若旦那伊左衛門。この一組の男女の恋心が織りなす華やかな物語だ。日本三大太夫の一人の夕霧を演じるのは宜野座伸元(CV:野島健児)。男性がヒロインの夕霧を演じるという歌舞伎らしい配役の妙が光る。
吉田屋の主人・喜左衛門が伊左衛門を気遣い、羽織を肩にかけるシーンでは、狡噛慎也(CV:関智一)が実際に須郷徹平(CV:東地宏樹)に羽織をかける演技を通して、温かい絆が丁寧に描かれる。
歌舞伎の舞台で義太夫が出語りする際に太夫と三味線の居所である「文楽廻し」が語りのシーンで使われるところも注目ポイント。また、実際の歌舞伎の衣裳である刺繍の美しい打掛を身にまとい、花道から出てくる夕霧の姿は非常に印象的で、会場からもうっとりとしたため息が聞こえてきた。
伊左衛門と夕霧の仲が認められ、身請け金が用意されました。年明けを控えた吉田屋の座敷は喜びに包まれ、二人は幸せな新年を迎える。華やかな結末で物語は幕を閉じた。
二作目は、人間の諦念と執着が描かれた近松門左衛門の名作『平家女護島(へいけにょごのしま)』「俊寛(しゅんかん)」。平家滅亡を企て鬼界ヶ島へ流された俊寛僧都が、赦免の船が訪れるも自らの身を島に残し、孤独と絶望に沈む様子を描いた物語だ。
俊寛を演じるのは狡噛慎也(CV:関智一)。俊寛の運命を変える海女千鳥と、非情な役人である瀬尾太郎兼康という対極的な2役を巧みに演じ分けるのは常守朱(CV:花澤香菜)。
ご赦免船に乗ってやってきた瀬尾太郎兼康が読み上げる赦免状に、自分の名前がないことに俊寛は絶望するが、若い夫婦・成経と千鳥に希望を託し、自ら島に残る決意をする。しかし、千鳥を都へ連れて行くために上使を討ち、罪を背負って孤島に留まることに。船が去り、一人残された俊寛の悲嘆が人間の本質的な弱さを浮き彫りにし、観客の涙を誘った。
舞台は花道も用いて、巧みな演出で感動的な別れを描き、声優陣に惜しみない拍手が送られ幕となった。
古典の物語を通じて厳しい環境においてもなお輝く人間本来の力強さを体験できるメディアとしてシビュラシステムが選択した「歌舞伎」。常守たちはこの上演を通じて、物語の力と祈りという感情に触れ、生きていく道を照らす光の存在に気づかされるのだった。
朗読劇の終幕後は、熱演した出演者4名がステージに再登場し、狡噛慎也役・関智一の司会によるアフタートークへ。朗読劇の興奮そのままに、今回の「こえかぶ」挑戦の裏話や、各々の一番好きな台詞といったテーマで、大いに盛り上がった。関智一からは、観客に「次回以降の回では、歌舞伎ならではの『●●屋!』などと屋号を呼ぶかけごえ(大向う)をお願いしたい」というリクエストも。
また、初めて歌舞伎に挑戦した出演者から客席に投げかけられた「歌舞伎は難しいという印象があったかと思いますが、想像していたよりも楽しめましたか?」という質問には、お客様の多くが「楽しめた」と満場一致の挙手で応えるなど、朗読劇からトークショーまで、熱気に包まれた公演となった。
「PSYCHO-PASS サイコパス 京都南座歌舞伎ノ舘×こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」企画展も開催
なお、1月18日(土)からは南座の会場全体を使用した企画展が行われる。詳細は、公式サイトにてご確認を。
【公式サイト】https://www.shochiku.co.jp/pj/event/psycho-pass-kabuki
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