2017年12月7日(木)より東京・博品館劇場にてオールナイトニッポン50周年記念 舞台『太陽のかわりに音楽を。』が開幕した。放送開始から50周年を迎えるラジオ深夜放送「オールナイトニッポン」。本作は脚本を正岡謙一郎、演出をノゾエ征爾(はえぎわ)が手掛け、ラジオ制作現場の変わらぬ熱気や情熱をテーマとしたオリジナル青春群像劇だ。その初日前には公開ゲネプロと囲み会見が行われ、別所哲也、宮近海斗(Travis Japan/ジャニーズJr.)、高田翔(ジャニーズJr.)、ノゾエが登壇した。
「オールナイトニッポンZERO」のパーソナリティを務めるミュージシャンのトロイ(宮近)はラジオが好きではなかった。ある日、ラジオのない世界に行きたいとトロイが呟いた時、彼の乗ったエレベーターは「オールナイトニッポン」が誕生したばかりの1967年にタイムスリップする。戦争を知る伝説のアナウンサーでパーソナリティの糸居志郎(別所)、適当すぎるディレクター・倉本洋二郎(小松利昌)、ラジオに夢を持つAD・三雲淳之介(高田)という誕生したばかりでまだどうなるか誰にも分からない「オールナイトニッポン」番組制作スタッフたち。彼らと触れ合う中で、トロイは「ラジオの力」を見つけ出していく。
LPレコードが積み上げられて作られたカラフルなスタジオブースの中心で糸居の語りから始まり、伝説の深夜放送を作っ人々の思いが50年の時を超えて蘇る。開演前には出演者たちの思い出の曲が流れ、劇中に流れる数々の洋楽や邦楽が当時を彷彿させつつ、舞台を彩る。
その音楽の力について、ノゾエは「脚本に描かれている音楽の力をこのままのせればいいと思って音楽を増やしたことで、ほぼ“音楽劇”と言っていい作品になりました。舞台版『オールナイトニッポン』と言っても過言では無いぐらいの音楽を盛り込んでいます」と解説。その点について、別所も「色あせないエバーグリーンな楽曲ばかりで、今聞いても素晴らしい音楽が人に力を与えています」と絶賛した。
物語は、主人公トロイがタイムスリップすることによって、歴史あるオールナイトニッポンを振り返り、ラジオの素晴らしさや「オールナイトニッポンがどのように生まれたのか」が、ストーリーの展開と共に自然に楽しめる構成となっている。
ジャニーズ制作以外の舞台への出演が初めてだという宮近は「オールナイトニッポンのパーソナリティを1回だけやらせていただいたことがあり、勉強になりました。ストレートプレイも初めてなので、トロイがラジオを知っていくという過程が、僕自身が演技を知っていくことと重なって素直に取り組めました」と役作りの影響を明かした。続けて「いつかはオールナイトニッポンのパーソナリティをできるようにがんばりたいです。こう言っておけば、いつか叶うかな(笑)」と笑顔を見せた。
三雲とトロイの関係が高田と宮近の関係に似ていることについて、年下のジャニーズと外部舞台で初共演するという高田は「一人に慣れているので、最初は接し方が分からなくて緊張しました(笑)。(宮近と)色々と話していく過程が、そのまま三雲とトロイの役作りになりました」と打ち明けた。
実在の人物である糸居五郎をイメージした役を演じる別所は「僕はパーソナリティの経験がなかったことから、舞台でやらせていただくことが新鮮でした。僕にとっては、原点の糸居五郎さんに、舞台上で“演じる”という形で出会わせていただいたことが本当に光栄です」と役への熱い思いを語った。
その糸居とトロイの関係について、ノゾエは「舞台上での役者・別所さんと役者・宮近くんとの関係が近くて、その関係性が美しく、そのまま作品に転化されていて僕は好きですね」と二人を讃えた。その二人と高田を中心に、小松や、西原亜希、成清正紀(KAKUTA)、川上友里(はえぎわ)、蒼乃菜月という出演者たちがしっかりと脇を固める。特に小松のスチャラカな演技は、作品に笑いのスパイスを効かせていて目をひいた。
劇中で、別所演じる糸居が「君が踊り、僕が歌う時、新しい時代が生まれる。太陽のかわりに音楽を、青空のかわりに夢を・・・」とリスナーとも言うべき観客へ語りかける。その言葉が持つ当時の思いとラジオの力。それを現代で、エンターテインメントとして観客を楽しませつつ、再認識させる舞台となっていた。
オールナイトニッポン50周年記念 舞台『太陽のかわりに音楽を。』は、12月17日(日)まで東京・博品館劇場にて上演。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)