2024年7月3日(水)にPARCO&CUBE produce 2024 ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』が開幕する。初日前日に行われた取材会には、W主演のTravis Japan 七五三掛龍也と吉澤閑也をはじめ、伊原六花、加藤梨里香、松尾貴史、中村梅雀、脚本の後藤ひろひと、演出のウォーリー木下が登壇した。
本作は、ユーモアと切なさと残酷さが混じり合ったダークファンタジーを得意とする後藤ひろひとによるダークファンタジー作品。ケルト民話を思わせるファンタジックな世界観で、哀しくも美しい恋の物語を描いている。2002年、2005年、2015年とストレートプレイとして公演を重ねてきたが、9年ぶりとなる今回は、ウォーリー木下の手でミュージカル化される。
トラジャ七五三掛龍也・吉澤閑也が取材会で明かした新たな挑戦“
登壇するなり、七五三掛が被っていた帽子を”くるりんぱっ”とさせると、一同はそれに倣って思い思いに帽子や髪を”くるりんぱっ”とさせた(理由は会見の後半で判明)。
開幕を控え、まずW主演としてカビ人間役を演じる七五三掛は「今回初めて、 Travis Japanのメンバーである閑也と一緒にW主演を務めさせていただくんですが、本当に緊張しています。同時に同じくらいワクワクしていて開幕が楽しみです」と挨拶。
同じく、W主演を務める聡(さとる)役の吉澤が「ミュージカル初出演なんですけど、聡と閑也は性格もとても近いんです。見た目も(ご覧のとおり)ほぼ閑也!みたいな感じで。皆さんにいじられたりしながら、和やかな雰囲気で稽古させていただきました。29歳にしてお芝居にちゃんと打ち込むのは初めてなので・・・」と心境を語っていると、周囲からは「29歳?」「まだだよ、来月だよ(吉澤の誕生日は8月10日)」と周囲から訂正の声が・・・。
これに対し、吉澤は「ツッコミがすごい!」と苦笑いしつつ、「いい29歳を迎えられるように、聡役、がんばります!」と意気込んだ。
おさえ役の伊原は「最初に戯曲を読んだ時にもうめちゃくちゃに心掴まれてしまって。稽古がすごく楽しみでした。稽古が始まってからも、悩みながらもすごく楽しい日々を過ごさせていただき、劇場入りしてからも照明や演出の仕掛けを見て、また新しく発見することがたくさんありました。頼もしい皆さんと、一緒にこの素敵な作品をお届けするのが本当に楽しみです」と開幕を心待ちにしている様子。
真奈美役の加藤も「この作品を観て、お客様がどんな顔するんだろうと想像すると、すごくワクワクします。真奈美は聡と一緒に物語の中へと入り込んでいくキャラクターなんですが、お客様も一緒に入り込んでいって、最後の結末をぜひ見届けていただけたらと思います。そして、真奈美と悟はとにかくよくしゃべる2人なので(笑)。その掛け合いも、楽しみながら作れたらと思います」とにっこり。
市長・老人/賢者役と様々な役で登場する松尾は、本作の初演を観ていたそうで「下北沢のザ・スズナリの客席で観ておりまして。小劇場でこんなに壮大な世界が繰り広げられるのか、素晴らしい作品だ!と思っていました。その後、パルコ劇場でやった時もそれぞれ観ていたので、まさかこの名作に自分を呼んでいただけるとは。イメージはすでに頭に入っているんだけど、自分がそれをやるとなるとどうしたらいいのか分からないものですね」とコメント。
ミュージカル仕立てになったことでの変化も大きいようで、「要素がすごく多くて。あちらを注意していると、こちらが疎かになる。前を見ていると後ろが分からなくなる。セットが回転するもので、最終的にどっちを向いているのか分からなくなるという(笑)。出演者全員、あるいはスタッフもそんな気持ちだと思いますが、そのあたりも含めて想像して楽しんでいただけたらと思います」と笑った。
セットについては、おさえ父(ジジイ)役の中村梅雀も驚きを語る。「このステージ、ほんとにびっくりするような仕組みがたくさん。一方で、なぜか非常にアナログで動いている部分もたくさんあるので、1人1人が一瞬も注意をそらせない目まぐるしいステージになっています。でも、これはお客さんが喜んでくれるだろうなと思うと本当にワクワクします。どうぞご期待ください」と目を細めた。
本作のミュージカル化はウォーリー木下たっての希望で実現した。物語の生みの親である後藤は「(話を聞いた時は)驚きましたが、実は私自身もやってみたいなと思っていたことだったんです。だから、これはもう彼に任せるしかないなと思って、安心してお任せしました。30年ぐらい前に書いた悲しいストーリーなんですけれども、こんなに幸せな2人はいないんだなと感じました」と経緯を教えてくれた。
「筋立てがしっかりしていますし、寓話的な要素もあれば、現実的な要素もある。登場人物たちのカラフルな群像劇もあるので、これはミュージカルにするのにうってつけだと思っていました」とウォーリー木下。「実際に舞台稽古をしていて、ミュージカルにしてよかったなと思っております。いろいろと調整重ねて、120%のものを出せると思いますので、ぜひ期待しててください」と自信を見せた。
“カビ人間”という、ファンタジックな役を演じることになった七五三掛だが、「今まで挑戦したことのない役柄です。ビジュアルも含めて初めての挑戦だったので、どう演じたらいいかすごく考えながらの稽古でしたが、ピュアで心が綺麗でまっすぐな役と向き合って、自分の中で新しい扉が開いた感じがしました」と手応えを感じているようだ。七五三掛といえば、自身もピュアな人柄に定評がある。「僕も真っすぐすぎて空回りしている時もあるので、そういった部分では共感できる部分がたくさんありました」と語った。
また、目を引く“カビメイク”は「小さい粒を一つずつつけていくんですけど、メイクさんに付けてもらいつつ、自分でも付けていくんですね。だからすごく時間がかかるんです。1時間20分ぐらい。だから、隣のメイクの席はどんどん人が変わっていくんです(笑)」と明かした。
「僕のメイク時間は15分」という吉澤は、出演の話が来た際は「本当にびっくりして、『僕でいいんですか?』ってマネージャーさんに言ったんです。お芝居は初めてなので、まず台詞の覚え方も分からない。どうすればいいんだろう・・・ってなっていたら、周りのキャストの皆さんも、ウォーリーさんもたくさんアドバイスをくれて。本当に吸収することばかりで、毎日がもう本当刺激的で、時が過ぎるのが早かったです」と、初めての経験を振り返った。
グループの中でも“しめしず”として呼ばれるほど仲の良い二人。一緒の参加は心強いけれど、「舞台では、普段グループ活動で見せている“しめしず”とはまた違った“しめしず”になってくるのかなと思います」と七五三掛。
吉澤は「しめとはシーンも結構別のことが多いので、全然しゃべる機会がなかったんですよ。こっちがしゃべりかけないと、集中しすぎていてほんとに話さない。緊張しているから、猫をかぶっているというか、ちょっとよそ行きの顔で稽古してるなって感じたので、ちょっとそれを崩したいなという想いでいました。そして、崩れました(笑)」とニヤリ。
また、本作はラブストーリーでもあり、カビ人間とおさえ、聡と真奈美の関係性も描かれる。七五三掛の印象について、伊原は「七五三掛さんはすごく品があって“七五三掛さん”という感じなのかなと思っていたんですけど、実際には“しめかけ~!”って感じでした」と表現。
その心は、「男らしいというか、ストイックだなと。2人のシーンのところはとにかく細かく話し合いながら、意見を交換しながら作り上げていけたので、本当に信頼できる素敵な方です。カビ人間の真っすぐさに触れ、おさえも変わっていく部分があるので、本当に引っ張っていただきました。幕を開けてもどんどん進化させていけたらと思います」。
そんな伊原について、七五三掛は「伊原さんはとても元気で、稽古場でもずっと笑顔でいてくださるんです。伊原さんの周りには常に誰かがいて、稽古場でも輪の中心でした」と振り返った。
吉澤と加藤は互いに“人見知り”だったそう。加藤が「聡と真奈美の距離をどうしていったらいいか考えながら、日々二人で成長していったという感覚があります。稽古とは別にたくさん台詞合わせをしたり、歌を合わせたり、そういう時間を過ごす中で、聡と真奈美の関係を作っていきました」と言うと、吉澤も「すごく引っ張ってくれたので、本当に真奈美って感じでした!僕も聡って感じて引っ張られながら成長させていただいたので、感謝してます」とうなずく。
役作りについては、「自分に近かったので、そこをどうすり合わせるか」が大変だったという吉澤。「すり合わせながら、閑也の部分をどんどん薄めて聡にしていくんですが、それがすごく難しくて、稽古中にウォーリーさんから『閑也が出てるよ!』って言われることもあって(笑)。でも、一つ一つの動きや仕草に理由をつけたり、芝居の楽しいところだなって思いました。大変でしたけど、楽しかったです」と、しっかり成長しているようだ。
一方、“カビ人間”という特殊な役に対し、七五三掛は「感情をどう自分に落とし込むか、自分事にしていくかという作業にすごく時間がかかりました。伊原さん演じるおさえちゃんとコミュニケーションを取る中で、カビ人間はいろんな発見をしてしていくんですけど、一つ一つ繊細に発見しながら見つけていった時に、自分の中にカビ人間がすっと入ってきた感じがしました」と向き合った日々を振り返った。
また、カビ人間はかぶっている帽子を劇中で何度もくるくると回す。「カビ人間はハットを友達のように扱っているんです。だから、ハットの先生に結構難易度の高いハットの技を教えていただいたんですけど、カビ人間が日常的にハットを使っているように見えるようになるまで2週間ちょいかかりました」と、実際に技を見せてくれた。
稽古後も自宅に帽子を持ち帰り、野球の素振りのように練習を重ねてきたという。「1日50回やるって決めて、やってたんですよ。最初は全然できなかったんですが、徐々にできるようになってきました。だから、稽古前に触ると自然とカビ人間を演じるスイッチが入るので、僕にとって大切なアイテムです」と七五三掛。七五三掛の努力にぜひ注目したいところだ。
そして、七五三掛は本作でもう一つ大きな挑戦をしているという。「どこかで、階段落ちをやります。僕たちの先輩である堂本光一さんの伝統の技なんですけど。先輩の階段落ちを映像で観て勉強したんですけど、とにかく本当に難しかったです。ぜひ、楽しみにしていてください」とのこと。
最後に、開幕に向け吉澤は「本当にすごくいい作品で、毎回やっていて泣きそうになるぐらい感動するシーンもあり、楽しくて面白いシーンががくさんあります。舞台をあんまり見ないよって方とかでものめり込める作品だと思うので、ぜひこのミュージカル楽しんでいただけたらなと思います。よろしくお願いします」とアピール。
七五三掛は「この作品は、普段自分たちが生活している世界とは全然違う異世界に連れていってくれる作品です。ケルト音楽とともに、このミュージカルにどっぷり浸かっていただけたらいいなと思っています」と呼びかけ、取材会を締めくくった。
上演は7月3日(水)から7月10日(水)まで東京・東京国際フォーラム ホールC、7月20日(土)から7月29日(月)まで大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて。
ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』あらすじ
物語は、聡(吉澤)と真奈美(加藤)が、とある山の中で深い霧に迷い込み、ある老人(松尾)の住む洋館に一夜の宿を求めるところから始まる。二人に対し、老人は問わず語りに昔話を始める。その話にだんだん心を奪われていく二人・・・。
気がつくと、二人は物語の中にいた。そこでは人々が不思議な病に襲われていた。病の症状は人によって異なる。その中で、最も不幸な病に冒されたのが、心と身体の美しさが入れ替わってしまったカビ人間(七五三掛)。心は水晶のように美しくなった。しかし、醜さに誰も近づきたがらない。カビ人間は村人たちに疎まれながら、ただ一人で時を告げる鐘を鳴らしていた。
そんなカビ人間とある日出会ってしまったのが、病に冒された美しい娘・おさえ(伊原)。最初はカビ人間におびえるおさえだったが・・・。
PARCO&CUBE produce 2024
ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』公演情報
<上演スケジュール>
【東京公演】2024年7月3日(水)~7月10日(水) 東京国際フォーラム ホールC
【大阪公演】2024年7月20日(土)~7月29日(月) COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
<スタッフ・キャスト>
【作】後藤ひろひと
【脚色・演出】ウォーリー木下
【音楽・音楽監督】中村大史
【出演】
七五三掛龍也(Travis Japan) 吉澤閑也(Travis Japan) 伊原六花 加藤梨里香
入野自由 コング桑田 小松利昌 竹内將人
安田カナ 安福毅 Ema 工藤広夢 半山ゆきの
松尾貴史 中村梅雀
<演奏>
中村大史 奥貫史子 石崎元弥