2017年5月27日(金)に東京・東京グローブ座にて、舞台『蜘蛛女のキス』が開幕した。関ジャニ∞の大倉忠義が初の単独舞台主演、初のストレートプレイ、初の二人芝居と、初めて尽くしの経験となる舞台としても話題を本作。初日前日には、プレスコールと囲み会見が行われ、大倉共に共演する渡辺いっけい、演出の鈴木裕美が登壇し、それぞれ意気込みを語った。
『蜘蛛女のキス』とは、アルゼンチンの作家マヌエル・プイグが1976年に発表しベストセラーになった小説を元に、プイグ自身の手で戯曲化され、1981年に世界初演された二人芝居。ストレートプレイにとどまらず、ミュージカル、映画など、形を変えて何度も上演されてきた名作。演出の鈴木は、上演決定時に「素晴らしさにおいても、難易度においても、指折り」とのコメントを発表していたが、大倉は初日を目前に控えた状態でも「まだ実感がない」という。
「客席のざわめきを聞いて、初めて実感できるのだと思います」と率直な心境を明かしていたが、会見前に行われたフォトコールについては「(芝居中に)パシャパシャと撮影していただくのが初めての体験で・・・挫けそうになりました(笑)」と感想も。すると、渡辺も「僕も初めてで・・・何度も挫けそうになりました(笑)」と大倉に被せてコメントし、会場の笑いを誘った。
物語の舞台は、ブエノスアイレスにある小さな監房。舞台奥には大きな壁がそそり立ち、天窓からは月光が漏れている。上手には渡辺演じるモリーナのベット、下手には大倉演じるヴァレンタィンのベットが置かれている。若き革命家で政治犯のヴァレンタィンと、未成年者に対する背徳行為で捕まった同性愛者のモリーナ。監房という密室の中で異様なコントラストが独特の色彩で輝きあう。
渡辺が「大倉くんと密着すると、改めていい男だと実感する」と語っていたが、確かに大倉演じるヴァレンタィンは、ヨレヨレの服に無精髭姿ながらも、ニヒルな微笑みと独特の退廃感で、惚れ惚れするようなセクシーな若き革命家を熱演していた。一方、渡辺は女性のような口ぶりや振る舞いでモリーナに対しておどけたり、腹を立てたりと不安定な情緒でモリーナにアプローチ。やがて二人は “とある映画”の話に花を咲かせ、徐々に絆を深めていく。
演出の鈴木は、本作の内容について「どこまでがネタバレかというのが難しいのですが『究極のラブストーリー』だと言えます」と含みをもたせた。同性愛者のヴァレンティンと若き革命家モリーナが収容される監房で描かれる愛は究極的でもあり、禁断の愛でもあるようだ。鈴木の発言に続き、大倉もラブシーンがあることを明かし「ちょっとざわっとする気持ちはあるんですけど、最後は・・・なんと言ったらいいか難しいですが“ハッピー”なんじゃないですかね」と自身の解釈を明かす。渡辺は「僕は受け身なので、受け入れるだけですけど、役に入ると一瞬、恍惚とした気持ちになりますね」と照れた様子。つられて照れ臭そうに微笑む大倉の姿が印象的であった。
また、鈴木の演出について大倉は「厳しい方と聞いていたのですが、稽古に入ったら優しく熱心に演出してくださったのでホッとしました」と振り返ると、鈴木は「稽古に入る前に『腕のある俳優は皆演じたいと思う程の良い戯曲だし、初めての二人芝居にしてはハードルが高い戯曲なの』とこんこんと脅してしまったので、稽古場では脅さないようにしていたんです(笑)」と笑っていた。
渡辺は、稽古場での様子について触れ「大倉くんに対する裕美ちゃん(鈴木)の演出レベルが段々と上がっていって、最終的にはとんでもなくハイレベルな演出になっているなって思っていました。でも大倉くんはそれを全部受け止めていたのですごい」と、大倉を賞賛。鈴木も「すごくレベルの高いことを言っているんですけど、大倉くんはシレッと受け止めてくれました」と太鼓判を押す。対して大倉は「『はい』って言いながら、分かってないこともたくさんありましたよ(笑)」と謙遜していたが、プレスコールの短い時間で垣間見えた大倉の姿は、初めて尽くしの舞台とは思えない堂々としたもので、時にコミカルに、時にシリアスに、夜な夜な語られる渡辺とのやりとりを演じきっていた。
最後に大倉は「難しいお芝居と言われていますけど、普通に、とてもおもしろい舞台になっています。ですので、そんなに構えずに来て頂けたら嬉しいです」と、呼びかけていた。
舞台『蜘蛛女のキス』は、6月18日(日)まで東京・東京グローブ座にて上演。
(取材・文/大宮ガスト)
(撮影/阿久津知宏)