2023年7月9日に東京・THEATRE MILANO-Zaで、THEATRE MILANO-Zaオープニングシリーズ COCOON PRODUCTION2023『少女都市からの呼び声』が開幕。初日前日に囲み取材と公開ゲネプロが行われ、主演の安田章大、咲紀みゆ、三宅弘城、風間杜夫、演出・出演の金守珍が囲み取材に登壇。唐作品の魅力や本作に対する思いなど語った。
本作は唐十郎の傑作戯曲。1969年初演の『少女都市』を改作、1985年に唐主宰の劇団状況劇場が『少女都市からの呼び声』として初演。その後、1993年に金守珍が自身の劇団・新宿梁山泊で上演し文化庁芸術祭賞を受賞。以後、国内外で高い評価を受け、幾度も再演されている。
演出を手がける金は、唐十郎と蜷川幸雄の両虎を師とし、多くの唐作品を喧騒の野外テントから広壮な劇場空間に蘇らせ、唐の劇世界を美しく紡いで魅せてきた。また、6月に本劇場と同じく新宿に位置する花園神社の紫テントでも本作を上演し、2ヶ月連続上演という異例の試みを果たした。
主演には、関ジャニ∞安田章大が憧れの唐作品に満を持して挑んでいる。そしてヒロインは元宝塚歌劇団雪組トップ娘役、本作が初のストレートプレイとなる咲妃みゆ。また、咲妃と共に唐作品初参加の三宅弘城、2019年『唐版 風の又三郎』、2021年『泥人魚』と立て続けに金演出の唐作品に出演した風間杜夫が座組を支える。
公開ゲネプロでは唐の描き出す“ファンタジックホラー”の世界観が見事に可視化されていくのを目の当たりにした。主人公の田口(安田)は手術台の上におり、今まさに体の一部を切り落とす手術が行われるその瞬間に、田口は妹の雪子(咲妃)を探しに夢の世界へと旅に出る。
夢の世界で出会う奇妙な人々。再会を果たした妹は3本の指を失い、フィアンセと語るフランケ醜態博士(三宅)によって体の一部をガラスへと変える手術をされていた・・・。変化する体によって心とのバランスが崩れていく雪子を、咲妃が表情巧みに演じているのが印象的だ。
そんな雪子に翻弄されていく田口、そして過去に囚われ続けていているのが明らかになるフランケ。隙をみて雪子を救い出そうとする田口が、劇中で歌うのは“さすらいの唄”。最初の演出プランになかったのが嘘の様な完成度で、複雑な心情が歌として溢れることでリアルになっていく。安田が歌声と共に妖艶な表情で劇場の空気を変えていく姿に、目と心が奪われてしまう。それぞれの登場人物が抱える気持ちは愛なのか・・・ぜひ劇場で体感してほしい。
ゲネプロ前に行われた囲み取材では、常に最高の作品を届けようという熱い想いが伝わってきた。幾度となく上演されている本作について、今回が“完成品”だと演出の金は語る。演出も随所変更したそうだが、劇中歌の曲全てがニューバージョンとして手直しされているそう。
特に安田が歌う“さすらいの歌”は通し稽古後に風間の一言で急遽追加になった曲で、ゲネプロの1日前にアレンジが完成、練習時間が短い中でも見事に仕上げてきた安田の歌唱に「ファンがイチコロになりますよ! 唐さんが一番愛していた歌です」と金は絶賛した。
そして、「唐戯曲っていうのは、一遍の詩みたいなところがある」と表現する風間。詩的で美しく、難解でもある戯曲に出演者それぞれが翻弄されつつ魅了されていった様子で、「どんどん唐十郎さんの魅力の虜になっていく自分が確実にいて・・・毎日わくわくしながらお稽古していました!」と咲紀も笑顔をこぼす。一方、金が演じ続けてきた役を引き継いだ三宅は「重圧にほぼ押しつぶされていたのですが(笑)なんとかちょっとだけ僕なりのフランケができたのかな・・・」と稽古を振り返った。
また、今回この作品に参加したことで“唐作品を途切れさせてはいけない”と改めて思ったと語る安田。「ジャニーズ事務所ってすごく大きな事務所ですから。唐十郎さんっていう世界を広げていくためにも、届けられる立ち位置に(自分が)いるんだなぁと考えていて。これからは金さんと、関わっていく僕たちで、唐さんの凄さや大切さを途切れさせないようにしていこう!って改めて心に決めましたね。だから今回の作品で終わるのではなく、次もすぐにやってやろう!なんて思っています」と意気込む姿に、アイドルというアングラとは真逆の立ち位置にいるからこそ、 “文化”として唐の想いと作品を引き継いでいく、という強い意志に胸を打たれた。
最後に安田は「今まであった作品が少しずつ色を変えながら、エンターテイメント性も含まれつつ、過去の大事なものは残しつつ、進化しながら変化していく。そうすることによって文化というものは廃らないでしょうし、これからも語り継がれるのかなと思っています」とコメントし、「今回のスタートを機に2回目、3回目と続けていくための準備。皆さんに対しての僕たちの誠心誠意を受け取ってもらえたらなと思います! 唐十郎さんの世界、そして金さんの演出する世界を楽しんでいただきたい。今しか見れない作品になっていると思います!」と熱く語り、締め括った。
THEATRE MILANO-Zaオープニングシリーズ COCOON PRODUCTION2023『少女都市からの呼び声』は2023年7月9日(日)から8月6日(日)まで東京・THEATRE MILANO-Zaにて、8月15日(火)から8月22日(火)大阪・東大阪市文化創造館Dream House 大ホールにて上演。
(取材・文・撮影/カヤシマヒデミ)
THEATRE MILANO-Zaオープニングシリーズ COCOON PRODUCTION2023『少女都市からの呼び声』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年7月9日(日)~8月6日(日) THEATRE MILANO-Za
【大阪公演】2023年8月15日(火)〜8月22日(火) 東大阪市文化創造館Dream House 大ホール
スタッフ・キャスト
【作】唐十郎
【演出】金守珍
【出演】
安田章大、咲妃みゆ、三宅弘城、桑原裕子、小野ゆり子、細川岳
松田洋治、渡会久美子、藤田佳昭、出口稚子、板倉武志、米良まさひろ、
宮澤寿、柴野航輝、荒澤守、山﨑真太、紅日毬子、染谷知里、諸治蘭、本間美彩、河西茉祐
金守珍、肥後克広、六平直政、風間杜夫
【公式ホームページ】https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/23_shojotoshi/