ミュージカル『蜘蛛女のキス』が、2021年11月26日(金)に東京・東京芸術劇場プレイハウスにて開幕した。本作は、作家マヌエル・プイグのベストセラー小説のミュージカル化作品。今回は、石丸幹二、安蘭けい、相葉裕樹と村井良大(Wキャスト)らで上演される。
1993年にトニー賞ミュージカル作品賞などを多数受賞した不朽の名作『蜘蛛女のキス』。ジョン・カンダー&フレッド・エブによる華やかな楽曲にのせて、極限状態での究極の人間ドラマ、”ラブストーリー”が繰り広げられていく。
今回の演出を手掛けているのは、劇団チョコレートケーキの日澤雄介。人間ドラマを得意とする日澤は、これがミュージカル演出初挑戦。映画を愛する同性愛者のモリーナと、獄中で同室となり関係を深めていくバレンティン二人のドラマ、ラストへ向けて生じていく心境の変化を丁寧に描く。蜘蛛女のあり方についてもこだわり、”運命の象徴”としての、日澤ならではの蜘蛛女を造形した。
物語の舞台は、ラテンアメリカの刑務所の獄房の一室。映画を愛する同性愛者のモリーナ(石丸)は、社会主義運動の政治犯バレンティン(相葉/村井)と同室になる。人生も価値観も全く違う二人。お互いを理解できず激しく対立するが、時を重ねるうちに次第に心を通わせていく。モリーナは、心の支えである映画スター大女優オーロラが演じる蜘蛛女(オーロラ/蜘蛛女:安蘭)について語り、運命を支配するように、“彼女”は現れるようになる。
極限状態で距離を縮めていく二人。モリーナは所長から、バレンティンに関する秘密を聞き出すよう取引を持ちかけられている。しかし、バレンティンへの想いから、モリーナは動かない。ついに所長は、モリーナがバレンティンの仲間と接触することを期待し、モリーナを仮釈放にすることを決める——。
映画を愛する同性愛者モリーナを演じるのは石丸。稽古場から役に寄せた稽古着を身に着けるなど役作りに徹してきた石丸は、愛と優しさに溢れるモリーナ像を見事に体現した。時に少女のような可愛らしい一面も見せ、愛する人のために人生をかけた究極の決断を迫られる場面では、苦しいほどの切なさで観客に訴えかける。
安蘭は、2役を演じる。モリーナが憧れる映画スター・オーロラ役では、華やかな衣裳に身を包み、宝塚トップスター時代を彷彿とさせる伸びやかで切れのあるダンスを。もう一役は オーロラが演じる役の一つ、モリーナの恐れる蜘蛛女役では、劇中随所に現れては存在感を放ち、終盤で歌われるビックナンバー「蜘蛛女のキス」で劇場をのみ込んでしまうような迫力を示した。
モリーナと獄中で同室となり関係を深めていくバレンティンは、相葉と村井のWキャスト。相葉は、信念に満ちた力強い眼差しが印象的。一方で村井バレンティンは、労働階級出身である泥臭さや雄々しさを感じさせる。終盤のモリーナとの重要なシーンについては、演出の日澤、石丸とも熟考を重ねて、丁寧にシーンを創りあげた。
囚人たち、 オーロラの男たちとして、 ショーアップシーンを盛り上げるダンサー陣からも目が離せない。劇場を後にしてからもなお、劇中曲が頭の中でループし鳴り響き続ける中毒性。“蜘蛛女”は、劇中同様に観客も囚えてしまうようだ。
また本作品は、観客に安心して観劇してもらうため、稽古中から感染対策を徹底。楽屋や大道具小道具にはすべて抗菌処理を施し、楽屋内に菌を持ち込まないよう衣服・靴・マスクの取り替えなど厳密にルール化。主催者は劇場での対策も徹底し、検温・消毒、劇場内のこまめな消毒、ロビーでの密を避ける動線確保や換気の強化にも努めるなど、様々な対策を講じている。
ミュージカル『蜘蛛女のキス』は、12月12日(日)まで東京・東京芸術劇場 プレイハウス、12月17日(金)から12月19日(日)まで大阪・梅田芸劇場 シアター・ドラマシティにて上演。上演時間は2時間55分(途中休憩20分含)。
(撮影/エンタステージ編集部 3号)
コメント紹介
◆日澤雄介(演出)
ミュージカルは初めての演出ですが、キャストスタッフの皆様にお力添えを頂きながら、 漸くここまできた、という感慨深いものがあります。とても素晴らしい作品で、楽曲もバラエティ豊かです。オーケストラさんが素晴らしい演奏を奏でてくださっています。
ぜひとも、劇場にお越し頂ければと思います。
◆石丸幹二(モリーナ役)
コロナ禍で色々なことが順調に進められない状況にあって、私たちは、感染防止に務めながら稽古を重ねてきました。
今、世の中は回復傾向にあり、皆さんも徐々に外に心を向けておられるのではないでしょうか?観劇もその一つですよね。
この作品の舞台は、何十年も前の南米ですが、まだ同じようなことが今も世界のどこかで起こっています。人間の尊厳を守ること、人を信じること愛することの大切さを描いています。 ぜひ劇場でリアルに体験してください。お待ちいたしております。
◆安蘭けい(蜘蛛女/オーロラ役)
とても素敵なミュージカルで、素晴らしい楽曲が詰まっています。お話の結末も、モリーナとバレンティンの二人だけのドラマが最後どうなっていくのか、愛って何だろうと思わせてくれるミュージカルです。ぜひ、池袋芸術劇場に来て頂き、その愛を観て頂ければと思います。劇場にてお待ちしております。
◆相葉裕樹(バレンティン役 ※Wキャスト)
モリーナとバレンティン、対立しあう二人がどうやって混ざり合っていくのか、化学変化を起こしていくのかを、楽しんで頂ければと思います。愛とは何なのか、愛の尊さとは、という普遍的なテーマが込められた作品です。その答えは、見つけることができても、見つけられなくても、良いと思います。ぜひ楽しんで頂ければと思います。劇場でお待ちしております。
◆村井良大(バレンティン役 ※Wキャスト)
海外の作品ですが、予備知識がなくてもフラットに観て頂ける、胸に感じるものや心に響くものが沢山ある作品です。ぜひ、お友達やご家族と観に来て頂き、観終わったあとに、意見交換をすると面白いのではと思います。この当時の刑務所の中では、今でいうコンプライアンスに反するような、酷い台詞が沢山出てきます。そういう時代があったのだということを知って頂いて、心に何を感じるかを、ぜひ体感して頂きたいです。
ミュージカル『蜘蛛女のキス』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2021年11月26日(金)~12月12日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【大阪公演】2021年12月17日(金)~12月19日(日) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ・キャスト
【出演】
モリーナ:石丸幹⼆
蜘蛛女/オーロラ:安蘭けい
バレンティン:相葉裕樹/村井良大(Wキャスト)
所長:鶴見⾠吾
モリーナの母:香寿たつき
マルタ:小南満佑子
マルコス:間宮啓行
エステバン:櫻井章喜
アウレリオ、囚人、オーロラの男たち(所長役カバー)ほか:藤浦功一
囚人フエンテス、オーロラの男たち とか:佐々木誠
アムネスティ国際オブザーバー、囚人エミリオ、看守、オーロラの男たち(マルコス、エステバン役カバー)ほか:俵和也
ガブリエル、 囚人、 オーロラの男達 他:伊藤広祥
脱走囚、囚人カルロス、オーロラの男たち ほか:半澤昇
オーロラの男たち、囚人 ほか:当銀大輔
オーロラの男たち、囚人レイモンド、看守 ほか:荒木啓佑
オーロラの男たち、囚人、 看守 他:⽮内康洋
オーロラの男たち、囚人 他:橋田康
モリーナの母/マルタ役スウィング:小島亜莉沙
オーロラの男たち/囚人たち役スウィング:上條駿
【脚本】テレンス・マクナリー(マヌエル・プイグの小説に基づく)
【音楽】ジョン・カンダ―
【歌詞】フレッド・エブ
【演出】日澤雄介(劇団チョコレートケーキ)
【翻訳】徐賀世子
【訳詞】高橋亜子
【25歳以下限定チケット詳細】https://horipro-stage.jp/event/spiderwoman20211013/
【対象公演来場特典詳細】https://horipro-stage.jp/event/spiderwoman20210712/
【公式サイト】https://horipro-stage.jp/stage/spiderwoman2021
【公式Twitter】@spiderwoman2021